(2019.5.17 カトリック・あい)
教皇フランシスコが先日の記者団との機上懇談でされた「女性助祭叙階問題」への言及が、関係者の間で波紋を呼んでいる。
(2019.5.15 Crux Claire Giangravè)
ローマ発-教皇フランシスコが今月初めになさった女性助祭の叙階に対する警戒的な発言が、カトリック関係者、とくに女性たちの間で波紋を呼んでいる。ただし、女性信徒の中には、この発言を歓迎する声もある。
神学者で性的虐待からの立ち直りに関する多くの本の著者でもるドーン・エデン・ゴールドスタイン女史は「教皇のこの問題への発言は、カトリックの教理を発展させることに伝統的な考え方をお持ちだということを明確にしました」とCruxに語った。「実際には、教皇は女性の司祭あるいは助祭について問題が出た時に、ずっと同じ対応をされてしましたし、今回の発言は驚くようなことではない。教皇はまさに”カトリック”なのです」と述べた。
教皇は5月7日、訪問先の北マケドニアから帰国途上の機内での記者懇談で、女性叙階の可能性ついて意見を聞くために、ご自身が2016年に設置された委員会での検討内容について言及。「教会の教説にしたがって」の検討は最終的な結果が出るまでに至っていない、とされたうえで、初代教会でなされていた「女性助祭の叙階についての決まりは、男性の助祭叙階と同じではなく、現在の「 abbatial blessing of an abbess(大修道院長による修道士の最終誓願を受けた助祭叙階か?)に近いものです」と説明されていた。
ゴールドスタイン女史はこれについて、教皇は、委員会の委員たちが「初代教会が『そうだった(注:女性助祭が叙階されていた)』から『そうすべきだ』とするかどうか、の判断をすることに反対」だとうことを、”外交辞令”的に、そのように言われた、と解釈。「委員会の中で、教理の発展について伝統的な考え方をする委員とそうでない委員に意見の違いがあることを指摘し、「前者のグループは、助祭叙階に関する初代教会に決まりの中に。男性叙階の神学として現在理解されているものの源があるのかどうか、を教会は考えねばならない、と確信しています」。
換言すれば、初代教会当時の慣行を回復するには、そこにおいて、女性助祭が、説教をし、聖杯を扱うなどミサにおける役割を果たしていたという証拠が必要だ、ということを意味する、としているが、「教皇がおっしゃるように、そうした証拠はみつかっていないのです」と言う。
これに対して、こうした教理の伝統的解釈からは距離を置く委員会の後者のグループは、そのような証拠が見つからなくても、「教会には、祭壇奉仕に男性の弟子たちだけを選ばれたイエスの意向にも、最古の源からの教会の意向にも妥協することなく、伝統的な教理の考えを変える余地がある」という意見だ、という。
このように考え方の違う二つのグループからなる委員会は個々に検討を続ける、と教皇は言われるが、あるイタリア人神学者は、この問題についての識別は、”民衆レベル”で幅広く様々な意見を集める形でなされるべきだ、と主張する。教会法の専門家、クラウディア・ジアンピエトロ女史はCruxに「検討内容は透明にされ、それぞれの現地教会レベルでの議論にゆだねられねばなりません。そうした真剣な議論をもとに、わずかな人が最終判断をせずに、トップレベルの協議をするのがいい」と語った。
さらに女史は、この問題に関する理解を広げるために、この委員会のさまざまな委員の立場・見解を公表すすることを主張し、また、教会内にある「聖職者至上主義」が率直で真剣な議論に影響を与える可能性についても、控えめな表現で指摘。「私たち女性の一般信徒と修道女が異なった見方をしているのが真実だとしたら、教会に強く根を張っている権力構造と聖職者至上主義がもたらす危険が、対話と建設的の意見交換の扉を開かれなくすることも真実です」と警告した。
10日に800人以上の代表が参加して開かれた国際修道会総長連盟の会議で、教皇は、女性助祭の問題について、さらなる議論が行われることを歓迎しており、検討委員会の委員たちが、検討過程における新たな発見を示すように期待している、と語られた。米国の神学者でカトリック系のメディアNCRのコラムニストのジェイミー・マンソンは14日にCruxの取材にメールで「教皇は、この問題の検討で新たな専門家を見つけるか、検討委員の入れ替えを希望されているかも知れません」と述べ、この問題の議論、検討について透明性の向上を希望した。
さらに、マンソン女史は、問題の核心が「それぞれに独特のカリスマを持ち、教会内の役割を持つ男女の間の相互補完性に関する、教会の見方」にある、と指摘し、教会全体としてみた場合、バチカンと教会における力のある地位から女性は、大幅に除外されている、と批判。「教皇は、心を開くこと、勇気を持つことの必要性を強調され、教会は遺物でも博物館でもないと主張され、教会が頭でっかちになりすぎることを警告されてこられましたが、女性助祭の問題で、にわかに些細なことにこだわり始められたことを、興味深いと考えています」と述べた。
そして、教皇は、社会の周辺部にいる人々、貧しい人々、無視されている人々だけでなく、他の宗教を信じ、信仰告白している人々にも手を差し伸べることでも知られているが、女史は、ご自身の教会における女性の問題になると「ご自分のおっしゃることをなさらないように見えます」と見ている。「今の事実は、この教会で、女性たちは厳格に排除されている、ということです。女性たちのもつ賜物は歓迎されず、発言は大幅に抑えられ、自分の教会で奉仕し、指導し、決定することを妨げられています… 女性助祭について歴史的な前例がないとしても、それが正当なことなのですから、教皇は実施に踏み切るべきです」と訴えた。
神学者で、女性叙階の主唱者でもあるマンソン女史によれば、初代教会で女性たちが助祭を務めていたことを証明する「十分な証拠」があるが、教皇は、男女に関する神のご計画に対してのご自身の理解に与える影響を懸念して、この問題への判断をためらっておられるのだ、という。「教皇が叙階の秘跡を女性に授けることを認めたら、”パンドラの箱”を開けてしまうことになるのを心配されているのかも知れません」と語っている。
翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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