・ズッピ和平特使が訪米、バイデン大統領に教皇の書簡を手交、ロシアが連行のウクライナの子供たち帰還実現へ協力

File photo: Cardinal Matteo Zuppi with a portrait of Pope FrancisFile photo: Cardinal Matteo Zuppi with a portrait of Pope Francis 

(2023.7.19 Vatican News  By Salvatore Cernuzio & Devin Watkins)

    教皇フランシスコのウクライナ和平特使、マテオ・ズッピ枢機卿が17日から訪米し、18日、ホワイトハウスでバイデン米大統領と会談し、ロシアに連行されたウクライナの子供たちの帰還の方策などについて意見を交換した。

  ホワイトハウスの発表によると、会談は現地時間18日午後5時から約2時間半にわたって行われ、 大統領は、教皇の奉仕的な活動に感謝し、今後も世界を視野に入れた指導力を発揮してくれることへの希望を表明。また、先日の20人の新枢機卿発表に米国の大司教が加えられたことに歓迎を述べた。

  大統領と和平特使はまた、ロシアによるウクライナ軍事侵略が続いていることで、ウクライナの人々にもたらされている苦しみに対処する一環としての、バチカンによる人道援助の努力、さらに、2022年2月24日のロシアの軍事侵攻開始以来、ロシアに連行された推定1万9000人に上るウクライナの子供たちを本国に取り戻ためにバチカンが進めている活動についても意見を交換した。

 ロシアに抑留されているウクライナの子供たちの人数について、ウクライナ政府は、この数字よりもっと多い可能性がある、としているが、この問題は、ズッピ特使が6月上旬にウクライナの首都キエフを訪問した際、ゼレンスキー大統領ら同国高官と、同月下旬にモスクワを訪問した際にも、プーチン大統領の外交政策顧問、ウシャコフ氏、大統領府児童権利局長のリヴォヴァ=ベロワ氏とこの件について意見を交換。同局長は、自身のウエブサイトで、このことを確認するとともに、和平特使が「軍事作戦」に関連する人道問題と子どもの権利保護について語った、と述べていた。

(2023.7.19 Vatican News By Linda Bordoni)

 バチカン報道局は19日、ズッピ和平特使の3日間のワシントン訪問について声明を出し、特使がバイデン米大統領はじめ、ヘルシンキ委員会(米政府の独立機関、正式名称は「欧州における安全保障協力委員会」)の委員や米連邦議会議員と意見を交換、戦争で引き裂かれたウクライナ国民の苦しみを軽減し、平和への道を支持するという特使の使命を一歩進めた、と述べた。

 今回のワシントン訪問は、特使が6月、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談したキエフ訪問、ロシア正教総主教キリルや他の政府関係者らと会談したモスクワ訪問に続くものだ。

 報道局は声明で、和平特使は「教皇フランシスコから託された任務を継続するため、バイデン米大統領との会談も含め、バチカン国務事務局職員とともにワシントンを訪れた」とし、日を追って特使の活動を説明。まず初日、17日夜にワシントンに着いた特使は、駐米バチカン大使公邸で、米国カトリック司教協議会会長のブロリオ大司教と会い、 ロシアの軍事侵略で犠牲となっているウクライナの人々への対応、和平実現に向けたバチカンの対応について意見を交換した。

  翌18日朝、特使は、ピエール駐米バチカン大使、ホーガン首席公使とともに、ヘルシンキ委員会の委員たちと会談し、教皇から託された使命の性質とこれまでの取り組みについて説明し、より効果的にする方法についてお議論した。 そして、同日午後、ホワイトハウスでバイデン大統領の出迎えを受け、教皇からの書簡を大統領に手渡し、ロシアの軍事侵攻で苦しみ続けるウクライナの人々に教皇が深く悲しんでいることを伝えた。

 会談について、報道局発表は、「午後5時過ぎに始まり、1時間以上続いた会談は、誠意に満ち、相互に傾聴する真摯な雰囲気の中で行われた」とし、「特に人道支援の準備が整っていること、特に、 子どもたちと最も弱い立場にある人々のために、バチカンと米国の両者が共に、現在の緊急事態に対応し、和平の道を確実にすること、が確認された」としている。

 最終日の19日の朝、和平特使らバチカン代表団は、米議会の祈りの朝食会に出席し、和平特使から、ウクライナ和平、ウクライナの人々の支援に向けたバチカンのこれまでの様々な取り組みなどについて説明さら、朝食会主催者からは、「バチカンの努力に謝意が示され、平和のために努力する各個人の責任が強調された」という。

 また、Vatican Newsの取材に応じた、ピエール駐米大使は、ズッピ和平特使の枢機卿の今回の訪米を含めた活動が、特に「ロシアに連行されたウクライナの子供たち(の帰還実現)」に向けた進展につながること、への期待を表明した。

 また、バイデン大統領との会談について、「大統領は多くのことを聞き、教皇の取り組みについて満足していると述べた。またこの問題についての大統領と教皇の見解について、時間をかけて語り合った… ズッピ特使は、『たとえすべての問題がすぐに解決できないとしても、バチカンは問題解決に貢献する意思を持っている。問題が複雑であることも認識している』と強調した」と説明。「現時点ではまだ、具体的な成果は出ていないが、苦しんでいる人たちのためにあらゆる努力を続けることが重要。特使の訪米中の米側関係者たちのとの様々な出会いで、彼らがこの問題に強い関心を持っており、ウクライナの人々を助ける用意ができていることがはっきりした」と、訪米の成果を語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年7月19日