(2019.6.14 Crux Rome Bureau Chief Inés San Martín)
ローマ発ー教皇フランシスコは14日、バチカンの人間開発のための部署とノートルダム大学共催の「私たちの共通の家のエネルギー移行と保護」をテーマにしたシンポジウムであいさつし、世界の代表的な石油企業幹部を前に、気候変動が人類の未来を脅かしており、「世界終末の予測」はもはや軽視できない段階にある、と訴えられた。
教皇はシンポジウムでのあいさつで、「時間切れになりつつあります。何ができるかを考えている場合ではない。なすべきことに力を集中させねばなりません。他人が問題解決を進めるのを待つ余裕も、目先の経済的利益を優先させる余裕も、私たちにはないのです」と述べ、「気候変動の危機は、決然とした行動を私たちに求めています。そして教会は、自らの役割を果たすことに全力を尽くします」と言明された。
ご自身の環境回勅「Laudato Si’」を引用され、「私たちは長い間、科学的な調査研究の成果に耳を傾けることをせず、世界が終末を迎えるとの予測はもはや、知らないふりをしたり、軽んじたりすることができません」とし、「気候変動とエネルギー消費の転換についてのどのような議論も、現在入手可能な最高の科学的調査・研究の結果を基礎に置かねばならず、深い認識をもってなされなけれがならない」と強調。
そして、昨年10月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した評価報告書の「地球温暖化を産業革命前に比べ1.5°C以内の上昇に抑えるためには、社会のあらゆる側面で急速かつ広範な変化が10年程度でなされる必要がある」との提言をもとに、教皇は「気候面での緊急事態に直面している私たちは、貧しい人々と将来の世代の人々に対する正義にもとる蛮行を避けるために、必要な行動をせねばならない。短期と長期の影響を考慮に入れて責任ある行動をする必要があります」と訴えた。
さらに、気候変動に対抗するには”勇気”が必要であり、台風、干ばつ、洪水によって一番被害を受けるのは貧しい人々であることから、行動が必要だ、とするとともに、将来の世界のためにも、ひどく台無しにされた世界を受け継がせないように、危機に対抗せねばならない、と強調した。
今回のシンポジウムの焦点となったのは、適切な移行、炭素排出量の価格付け、気候変動リスク報告の透明性の3点だったが、教皇は「そうした移行には、低酸素社会を目指す動きの社会面、雇用面への影響にどのように対処していくか、という課題も含まれ、適切に対応すれば、移行過程で新規の雇用が生まれ、不平等が少なくなり、気候変動の影響を受ける人々の生活の質が改善する」と語られた。
また、炭素排出量の価格付けに関連しては、人は天然資源を”賢明”に使うように求められており、天然資源を使うことの経済的、社会的コストがはっきり分かっており、将来の世代の人々ではなく、今、実際にその恩恵を受けている人々によって消費されているのであれば、その使用には倫理的な考えが必要、と指摘。気候変動リスクの報告の透明性については、それが全人類の共通の利益につながる、と述べた。
最後に教皇は、対応に残された時間が無くなりつつあるが、気候変動の最悪の影響を避けることのできる可能性は残っており、「人間として、最悪の可能性がある一方で、良いものを選び、新たなスタートを切ることも可能です」と強調された。
このシンポジウムにはロイヤルダッチシェル、オクシデンタル石油、レプソル、シェブロン、エクソンモービル、エキノール、イタリアのEniから代表が出席し、会議の最後に、地球温暖化ガスの排出量削減に向けた炭素燃料価格設定と気候変動に関する戦略、行動、管理手法、実績に関する明確な情報の開示の重要性を確認する声明に署名、「世界のエネルギー産業、投資機関、その他の組織を代表して、我々は、将来の低炭素社会への移行を、現在の計画を上回って大きく加速するために、人間的、経済的繁栄を進めつつ、地球の温暖化を2°C以内に抑えるための大規模な行動とさらなる技術面での解決策が必要とされていることを、認識する」と言明した。
翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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