2016.9.18 イネス・サン・マーチン CRUX バチカン特派員
9月10日から18日にかけて、教皇フランシスコが昨年中に任命した世界の150人を超える新司教たちを対象に、ローマで“赤ちゃん司教訓練キャンプ”と一部で言われる研修が行われた。2001年から始まったこの研修は、非公開だが、理解のある高位聖職者たちがその内容のさわりをソーシャル・メディアで共有しているので概要はつかむことができる。
一週間の研修は前年に教皇が任命した司教全員を対象とし、彼らの司教区の運営の仕方について教授するのが狙いだ。内容は、財政、家族司牧、司教と司祭との付き合い方、宗教間対話、デジタル・メディアを通じての宣教など多岐にわたる。
この研修で一つの文書全文が配布されたが、これは教皇フランシスコが16日の40分の講話のために準備したものだ。
その中で、教皇はまず、新人司教たちに、天職を果たそうとして「数のゲーム」にとらわれてはならない、質の高い、成熟した司祭―気まぐれな思いつきの餌食になったり、ひ弱さの奴隷となることのない、いつも神の求めに喜んで応じるような司祭―を育成することに力を傾けてください、と強く求めた。
さらに、自分の執務室を利己的な目的のために使わず、神の神聖さ、真理、愛を分かち合うために使うことを強調し、「世の中の人たちは虚言を振りまく雄弁家たち・・“流行を追う司祭や司教に嫌気がさしています。彼らは神の匂いに対する感覚をもっており、そうした聖職者たちの危うさに気づいています―そして、自己陶酔者、人を巧みに操ろうとしている者、自分の主義に固執している者、無益な社会運動を競り売りしている者だ、と判断すれば、そうした聖職者たちから離れていくのです」と警告した。
教皇はまた、彼らに自分たちが慈しみの特別聖年の期間中に司教に任命されたことを改めて思い起こし、そのために、一人ひとりが、ローマの一週間からそれぞれの司教区に持ち帰ることのできる最も「価値のある豊かさ」は、「あなたたちを見て、選び出した神の慈しみを自覚すること」だ、と述べた。「慈しみは、わたしたちの教会の司牧の構造を物心両面から形作るもの」であり、司教たちは、慈しみ深い司牧を行うように求められている。なぜなら、「神に愛されているという感激」を体験しているからだ、と続けた。
昨年のセミナー終了後に、司教協議会のトップで研修の担当者、マーク・ケレ枢機卿は、これまでの研修の成果を高めるための提案を求めていた。そこで明確に出てきたのは、聖職者による性的虐待への戦いと、弱い人々を守る教会の責任について、もっと強い対応の提示を求める声だった。
この問題がカトリック教会にとってどのような癌であるのか考え、バチカンは今回、将来の崩壊を避けるという観点から最良の慣行について、現在考えられる最も高い水準の提案を、司教たちに行おうと計画した。研修でこの問題の講師陣は、バチカンの未成年者保護のための委員会のメンバーで構成され、委員会の長であるボストンのショーン・P・オマリー枢機卿、聖職者による性的虐待の被害者のアイルランド人女性、マリー・コリンズ女史も入っている。またバチカンの性犯罪担当の前検察官、チャールズ・シクルナ現マルタ大司教も講義を受け持った。
委員会のメンバーたちは、特に昨年の研修との差が際立ったことを高く評価した。昨年は、講師を務めたフランスのトニー・アナトレラ師が、性的虐待の責任は被害者かその親にあるのだから、検察当局に対して被害の申し立てをしてはならない、と語っていたのだ。彼はまた、世界各地で現地の司教たちが進めている性的虐待防止や虐待把握の対策について、話そうとしなかった。
今回のセミナーでの、オマリー枢機卿の詳細な発言内容は明らかになっていないが、彼は、教皇が設けた9人の枢機卿顧問団のメンバーで、個人的なブログに次のような発言の抄録を載せている。
「三十二年前、私が司教に任命された時、このような研修はありませんでした。このような研修があり、子供たちの保護について話し合っていれば、教会の昨今の歴史はもっと別のものになっていたでしょう。しかし、教会は過去の過ちから学び、新たな道を歩むことができます。新たな道では、子供たちの保護に高い優先順位がつけられます。教会の生命にとってこれ以上に重要な課題はありません」。
「もし、教会が子供たちの保護を約束しないなら、福音宣教の努力は何の効果もない。私たちは信徒たちの信用を失い、世界から激しい非難を浴びるでしょう」。
枢機卿はさらに、研修の講師としてのコリンズ女史の参加の意味を強調し、教会の指導者が「被害者と会って、話を聞くことは、現在の多くの教会が置かれた状況の深刻さ、子供たちや弱い成人たちを守り、教会内外の数限りない性的虐待被害者をケアする教会の果たすべき役割について理解を始めるために重要だ、と力説した。
以上の抄録には出てこないが、何人かの研修参加者によると、枢機卿はまた、教区運営の透明性、説明責任、ゼロ容認の原則(暴力行為などに対して断固として法を適用する原則)の必要性について語った。
他の講師では、シリア・アレッポのジャン・クレメン・ジャンバール大司教が、中東におけるキリスト教徒の現状と、「なぜ神は今、目の前で起きているシリアの破滅をお認めになるのか」という信徒たちの問換えに対して答えねばならない悩みについて語った。
新人司教たちが、研修期間中も自分の教区の信徒たちや同僚とインターネットでやりとりすることが多く見られたが、参加者の一人、オーストラリアのリチャード・アンバース司教はフェイスブックでビデオを流し、154人の新人司教の資質についての印象を述べている。「皆、『フランシスコ効果』を見ることができる。ここに来た司教全員が素晴らしい男たち、良い司祭だ。聖職権主義はここにはない。まさに一致を生きるための何かがある」。