(2017.9.15 Associated Press Crux staff contributed to this report)
フィリピンのドトゥルテ大統領が5月にマラウイ市を中心にイスラム系武装勢力が活発なミンダナオ全島に戒厳令を敷いて4か月が経過した。
この間、600人以上の武装勢力を含む860人がマラウイ市で殺害されている。同市は、カトリック教徒が人口の大半を占めるフィリピンで、イスラム教徒のセンターともなっている都市だが、デルフィン・ロレンザーナ国防相が15日の記者会見で明らかにしたところによると、大統領は今、反政府勢力が運動を拡大させ、フィリピン全土の治安を危うくする危険が高まっている、として全土に戒厳令を広げることを考えている、という。
目先、反政府勢力による大規模なデモが予想されるのは21日。この日は、1972年に当時のマルコス大統領が戒厳令を出し、国民に対する人権侵害、自由抑圧に踏み出した日にあたる。大統領は15日に放映されたテレビ・インタビューで、「左翼勢力が大規模な抗議行動に出れば、彼らは市街戦に火をつけ、国中を混乱に陥れるだろう。そういうことであれば、私にも考えがある」と語っている。
国防相は15日の会見で、大統領が言っているような戒厳令の拡大の可能性は薄い、とし、「軍にも、地方政府にも反政府勢力が大規模な抗議行動をするという情報は入っていない」とブレーキをかけた。
だが、このとろこマニラや他の地域での左翼による抗議行動は活発化しており、1986年にマルコス大統領を倒し、2001年にエストラーダ大統領を倒した際の大規模な市民運動に規模に膨れあがりつつある。左翼同盟Bayanのリーダー、レナート・レイエスは、大統領は市民が抗議行動に加わらないように脅しをかけようとしている、とし、「マルコスの戒厳令から45周年に向けた大規模行動は現政権の下で悪化する人権蹂躙、独裁の状況に対して、正当化される以上のものだ」と主張している。戒厳令に反対している反政府活動家とイスラム教徒の数百人のグループは15日、米国大使館に向けて抗議行動をしようとして警官隊に阻止された。ミンダナオ島での軍による武装勢力掃討作戦は目先最終段階を迎え、ラナオ湖の近くの家にたてこもった十数人に対する掃討作戦が行われている。
このような事態に対して、マラウイのエドウイン・デラ・ペーニャ司教は15日のテレビ番組で、「分裂と憎しみではなく、和解と共感の橋を架けねばなりません」と訴え、「マラウイでのカトリック教会の使命は和解の場所となること。キリスト教徒もイスラム教徒も、戦闘で荒廃したマラウイ市、そしてミンダナオ全島の和平再建にともに懸命に働いている。私たちは、お互いの文化、信仰に敬意を払っている。どちらかの側が危険な状態に置かれたままでは、私たちは幸せになれません」とドトゥルテ政権、反政府勢力双方に理解を求めた。
ドトゥルテ大統領はまた、数千人にのぼる死者を出している麻薬撲滅作戦に対する批判の高まりにも直面している。昨年11月に、マルコス大統領の遺体を同国の英雄を葬る墓地に埋葬することを認めたことも、不評を買っている。ソロソゴンのアルツーロ・バステス司教はインターネット・ニュースで「独裁者を讃える大統領の振る舞いは、私たちの国の歴史に大きな汚点を残すものだ」と批判している。
(翻訳・「カトリック・あい」岡山康子)
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