(2017.7.5 AP/Crux Teresa Cerojano)フィリピン南部での政府による武装勢力との戦いが続く中で、戒厳令が継続されることになった。カトリックのリーダー、タグレ枢機卿は、過激な動きに共同で反対するよう、国内のキリスト教徒とイスラム教徒に呼びかけている。
マニラ発―フィリピンの最高裁判所は4日、同国南部のイスラム武装勢力による動きを鎮圧するための大統領戒厳令を支持する決定をした。同裁判所のテオドレ・テ広報担当は、同国のドトゥルテ大統領が南部地域に60日間の期限付きで発令している戒厳令の解除を求める陳情を15対11で却下した、と発表した。戒厳令は、「イスラム国(IS)」の黒旗を掲げる数百人の武装集団が5月23日、南部マラウイ市を襲い、占拠したことに対して発せられていた。
戒厳令解除を求める人々は、武装集団による同市占拠が戒厳令を正当化するような反乱の要件を満たしていないと主張しており、運動の一員である左翼政党のマチリス・カブレロス氏は「最高裁が、情報活動の失敗と暴力を誇示する詭弁の上になされた全く馬鹿げた決定に対する最後の防衛線となると期待していた。だが、彼らは我々の期待と反対に、さらに権威主義をはびこらせる道を開いた」と批判した。
一方で、政府の主任弁護人であるホセ・カリダ訟務局長は「我が国の良心として、最高裁は国が分解するのを座視することはなかった」と、この決定を歓迎。「ISと連携した四つの地元過激派集団が東南アジアにイスラム過激派の領地をつくる企みの一環」として、「イスラム教徒が多く住むマラウイ市の占拠を狙ったことを示す証拠がある」と述べ、他の政府の関係幹部も「大統領の措置は、政府軍が彼ら戦闘集団を捉え、そうした動きを阻止する助けとなっている」と戒厳令の意義を改めて強調した。
軍関係者によれば、戒厳令発令後の43日にわたる政府軍の空と陸からの攻撃で、マラウイ市の大部分の地域の治安は中心のビジネス街も含めて回復され、学園地域では、攻撃用の武器15点とシンガポール人とみられる外人兵士が残っているのが発見された。ドトゥルテ大統領は、首都マニラ北部のクラーク自由貿易区で行われた空軍創設記念式典で演説し、マラウイ作戦には40機以上の空軍機が参加したことを明らかにし、「マラウイ市解放の戦いは終結したが、フィリピン空軍がこの市の再建においても積極的な役割を果たしてくれると確信している」と激励した。
デルフィン・ロレンザナ国防相は記者団に対して、一部に残っている過激派の支配地域も政府軍が一週間以内に奪還する、と述べる一方で、「武装集団が最後の一兵まで戦うつもりなら、完全平定はそれより長くかかるだろう」と見通しを語った。国防省関係者は、7月24日に予定される大統領一般教書演説の前に危機は終息する、との希望を宣べているが、国防相は部隊を危機にさらす圧力を加えないように戦闘のペースを定めることを現場の司令官たちに指示する考えを明らかにした。
また、一部地域でまだ激しい市街戦が展開されており、自宅に閉じ込められている住民が300人ないし500人残っている。軍部隊や政府系のボランティアによって救出された1700人以上の住民も、多くが精神的にダメージを受けたり、飢えや病に冒されているという。約40万人が、数百のモスクのあるイスラム教の信仰拠点であるマラウイ市や、マニラ南部800キロにあるラナオ・デル・スル地方の村々から避難している。
今回のマラウイ市にみられる突然の都市攻撃は、東南アジアや西側政府に強い衝撃を与えている。シリアやイラクを支配していたISの武装集団はそれらの地域での拠点を失い、崩壊しようとしており、失地回復のため、中東の聖戦支持者の資金を使ってアジア地域の武装集団を刺激し、新たな活動拠点をこの地域に作ろうとしている、と懸念する声も出ている。
ドトゥルテ大統領は、過激な麻薬撲滅作戦に批判的な米国や豪州の政府関係者に対して敵対的な姿勢をとっているが、西側同盟国はこの地域に偵察機を展開してフィリピン軍の武装集団掃討作戦を支援している。ロレンザナ国防相は、豪州軍はマラウイ市地域に対潜哨戒機P3オライオン二機を展開し、米軍も数週間前に偵察機の運用を始めている事を認めた。大統領の”口先攻撃”の対象になっている欧州政府関係者も4日、住民避難へ4900万ペソ(98万ドル)を支援する、と発表した。新編成の韓国製戦闘攻撃機による連日の空爆で爆弾のストックが底をつきつつあることから、フィリピン空軍輸送機が米軍から補給を受けるため米国に向かったことを国防相が明らかにした。
こうした事態に対して、フィリピンのカトリック教会は5月、過激派による攻撃を受けたミンダナオ島への戒厳令布告に対して、南部地域の司教団は「一時的なもの」とすることを条件に支持を表明していたが、リーダー的存在であるマニラのルイス・アントニオ・タグレ枢機卿は4日、同国のキリスト教徒とイスラム教徒が協力して過激な動きに対抗するよう、呼びかけを行った。「キリスト教徒とイスラム教徒を分離させようと画策する者は今、腹を立てているでしょう。彼らの画策は成功することなく、反対に、私たちは一致を目の当たりにしています」と述べた枢機卿は、フィリピン国民に対して、ミンダナオ島における暴力の中に現れている「愛、希望、光のしるし」に注意を払うように呼びかけた。「平和は誠実、正義、そして愛によってのみ達成されます。そうした基盤がなければ、平和はもたらされません」と。
(翻訳・「カトリック・アイ」南條俊二)