・この映画は、映像的には優れているが、内容は、波乱万丈、‶地獄” を体験した半生を二時間弱に圧縮したこともあり、浅い。教皇を深く理解するために、この映画の原本になったと思われ、バチカンの高位聖職者も読んでいる「教皇フランシスコの挑戦―闇から光へ」(ポール・バレリー著、南條俊二訳、春秋社刊)をお読みいただきたい。(「カトリック・あい」南條俊二)
(2017.6.7 読売新聞)2013年3月に就任した第266代ローマ法王フランシスコ。映画「ローマ法王になる日まで」(公開中)は母国アルゼンチンの軍事独裁政権下で難しい教会運営を担うなど、時代に翻弄された彼の半生の物語だ。イタリアのダニエーレ・ルケッティ監督は「一人の人間の成長を描く教養小説」と語る。
本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。カトリック中央協議会(東京都江東区)によると、1936年ブエノスアイレス生まれで、イエズス会入会後、73年にアルゼンチン管区長に任命された。76~83年の軍事独裁政権時代には、軍の圧力に苦しみ、神父が虐殺される悲劇に見舞われながらも職責を果たしていった。
独裁政権は宗教を否定する共産主義と対立する点で教会には都合が良く、神父の中には様々な立場があった。「政権に好意的か、政権に無関心だが虐待されている人に手を差し伸べるか、政権に反対するか。教会が持ったニュアンスをできるだけ正確に表現しようと思った」といい、ベルゴリオは「2番目の立場」と監督はみる。
映画では、軍の弾圧で多くの人が失踪していることについて、彼が海軍大将に批判的な言葉を投げるシーンも描かれる。「聖職者になる過程をまっすぐ描く古典的な映画でなく、彼の変化や教会が複数の立場を持っていたことを明らかにしたかった」と語る。
法王は、トランプ米大統領の移民流入阻止政策について、大統領選時に批判するなど国際情勢に対して積極的に発言。政治的な影響力も見せている。「人間の中心にあるべきものはお互いの愛情であると、彼はずっと主張してきている。法王は今、平和のために行動している唯一の進歩主義者と言えるかもしれない」(文化部 武田裕芸)