A Ukrainian mother
(2026.1.21 Vatican News Svitlana Dukhovych & Benedetta Capelli)
ロシアによる武力侵略が間もなく5年目を迎える厳冬のウクライナで人道危機が悪化する中、バチカン支援援助省のコンラッド・クラジェフスキ枢機卿が21日、ローマの聖ソフィア大聖堂による募金活動への支援を強く訴えた。毛布、防寒着をはじめ物資の支援も求めている。
蝋燭の灯りが、赤ちゃんを抱く母親の顔を浮かび上がらせる。何枚もの毛布に包まれた赤ちゃんの姿は見えなかった。優しい光景に見えるかもしれないが、この4年間、平和を知らないウクライナ国民の悲劇を物語っている… ウクライナ国民は今、暗闇の中で暮らしている。気温は氷点を大きく下回り、暖房も電気もない。ロシア軍による首都キエフへの激しい空爆で、電気・ガスなどエネルギー供給が至る所で断たれている。空爆は昨夜も行われた。
クラジェフスキ枢機卿は、戦争によって「殉教」したこの国への心からの支援を訴えた。バチカンを代表して、少なくとも10回はウクライナの現地を訪れている。食糧や発電機、さらには救急車を届けるため繰り返し現地を訪れ、具体的な行動と祈りの支援を通じて教会のウクライナの人々に寄り添ってきた。
「痛みや苦しみに無関心ではいられない。行動しなければなりません。教皇が言われるように、世界は、『無関心のグローバル化』よりもっと深刻な『無力感のグローバル化』の危険に直面しています。キリスト者として行動せねば」と訴える。具体的には、ローマのウクライナ教会、聖ソフィア大聖堂からの要請に応え、カイロ、保温下着、保温ソックス、緊急用保温ブランケット、保温マグカップ、キャンプ用ガスコンロ・ガスボンベ、固形燃料用アルコール、ドライシャワーから、食料、お菓子まで、あらゆる支援物資を集め、トラックで現地に運ぶ。「困窮する人々にとって、これらの支援は、生存の機会を意味する」。
*日中でもマイナス10度から12度の極寒、ロシアの空爆でキエフでは住宅の半分が暖房を失っている
カトリックの支援組織、カリタス・スペス・ウクライナの執行責任者、ヴィャチェスラフ・グリネヴィチ神父は、「ウクライナで起きている事態から目を背けてはなりません。遠くの戦争や、欧州の国境で起きている他国同士の紛争だと思ってはいけない。私たちは困窮する人々に、わずかでも普通の生活がおくりたい、未来に希望を持ちたい、と願う人々に寄り添わねばならないのです」と述べ、ロシアによるインフラ攻撃で、人々の困窮がさらに多様化する中で、あらゆるニーズへの迅速な対応の必要を訴えた。
状況をさらに悪化させているのは極寒だ。夜間は摂氏マイナス15度まで下がり、日中もマイナス10度から12度の間を推移する。ロシアによる1月19日から20日にかけての首都への攻撃後、5635棟の建物が暖房を失った。このうち約80%は、サービスが復旧したばかりの建物だった。「多くの人々が避難を余儀なくされています。爆撃から逃れるためだけでなく、寒さから逃れるためにも一時的に家を離れざるを得ないのです」とグリネヴィチ神父は語る。
日常生活は一段と困難を極めている。例えば通勤は容易ではない。道路の除雪・凍結対策が必要で、地下鉄や路面電車は電力不足のためダイヤ通りの運行ができなくなっている。そうした中でも、「「爆撃や長時間の停電の最中でさえ、人々が集い、分かち合う瞬間を求める姿を見ると、ウクライナの人々が真に回復力のある民族だということが分かります。人々は分かち合う術を知り、互いを支え合っている」ことが、支援する側にも大きな励ましになっている。
*家庭で調理ができず、商店も閉まり、炊き出しを求める人々も急増
キエフでは、「毎回、約200人が食事を受け取りに来る。時が経つにつれ、ニーズは拡大しています。当初は最も脆弱な人々が炊き出しに頼っていたが、今では利用する人々の数が増加している。人々を支援し、たとえ数時間でも温かな場所を提供し、寒さに耐えられるようにするための支援がますます必要になっているのです」と神父は語り、支援体制強化のため、キエフには、発電機を備えた『レジリエンス・ポイント』も設置、人々はそこで電子機器を充電し、体を温め、温かい飲み物を摂取できるようにした。
こうした取り組みはハルキウにも拡大された。カリタス・スペスは、就労再統合や住宅再建プロジェクトと並行して、温かい食事の配布を組織し、物資支援を受けられ、体を温められるセンターを設置した。「毎日100人から150人が受け入れられている」とヴィャチェスラフ神父は述べた。「状況は依然として極めて厳しい。キエフには300万から400万の住民がおり、首都の建物の約50%が暖房を失っている。空襲は施設にも被害を与え、寒さが事態を悪化させている。完全な機能停止の危険性がある」という。
各教区は組織化を図っており、キエフ=ジトミル教区のラテン系司教ヴィタリー・クリヴィツキー司教の主導で、各教区が管轄区域内に避難所を開設しようとしている。「暖房付きテントの設置可能性も検討中。ある教区では公共の洗濯施設を設け、人々が衣服を洗えるようにしています」。
連帯と親密さから生まれる温もりについて、ウクライナ・ギリシャカトリック教会広報部副部長のタラス・ジェプリンスキー神父も語っている。Vatican Newsに送られた動画で、彼は「火力発電所やエネルギーインフラ」への頻繁なロシア攻撃に疲弊したキエフ住民の日常的な苦難を語りつつ、「見捨てられていない」と感じる人々の慰めについても言及した。
「国連のデータによれば、昨年の犠牲者数は2024年比で30%以上増加しています。近年で最も厳しい冬になっている。気温はマイナス16度を下回り、停電状態。約6000棟の建物が暖房を失い、首都の一部地区では水道すら止まっている。キリスト復活大聖堂は車のヘッドライトだけが頼り。発電機が機能しなくなったため、商店もショッピングモールも閉まっています」と窮状を説明する。
*それでも闇を克服する希望を失わない人々を助けねば
このような困難な状況の中でも、タラス神父はまた、小さなことから大きなことまで、神に仕える者として生きる喜びにも目を向けている。
「この暗く危険な日々の中、私たちの司祭の一人の家族に三番目の子ども、男の子が生まれました。真の幸福であり、同時に使命でもある。この子の命を、他の何百万ものウクライナの子どもたちと同じように、全力を尽くして守る義務を感じています。そしてこの使命において、ウクライナの教会は独りではない。世界カトリック教会の近さ、教皇の連帯、そして我々を思いやる人々の温もりを感じています」。
そして、こう語った。「私たちウクライナ人は確信しています。この冬と攻撃を乗り越え、戦争がもたらす闇を全て克服できる、と。『見捨てられてはいない』と知っているからです。降誕された救い主を迎え、預言者イザヤが言うように『闇の中を歩む民は大きな光を見た。深い闇の地に住む者たちに光が輝いた』のです。私たちは闇と死の影の中にいるが、私たちの上に、キリストの光と、世界中からの連帯の光が輝いています」。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)