・数十人の女性から告発されたブラジルの元司祭、まず、3歳児への強姦罪で有罪判決(Crux)

(2026.1.21 Crux   Contributer  Eduardo Campos Lima

 サンパウロ発―ブラジルで数十人の女性から性的虐待で訴えられている元司祭が、2016年に3歳の女児を強姦した罪で先週、懲役24年9ヶ月の判決を受けた。また別の被害者に対しては、3万ブラジルレアル(約5580米ドル)の賠償金を支払うよう命じられた。

 元司祭は78歳のベルナルディーノ・バチスタ・ドス・サントス。幼児強姦は、女児がミナスジェライス州ティロス市にある元司祭の所有する田舎の別荘を訪れた際に起きた。彼女は母親に被害を伝え、複数の目撃者が被害者の泣き声を聞いたと証言した。母娘は現在ブラジル国外に居住している。当初、司祭を告訴するのをためらっていたが、別の幼い子供が虐待されていることを知って、告訴に踏み切った。

 ドス・サントスの有罪判決は、34歳の弁護士でこの男の被害者でもあるカロリナ・ロシャを喜ばせた。彼女は同司祭を告発した女性グループのリーダーでもある。「彼が有罪判決を受けるなんて、夢にも思わなかった」とロシャはCruxに語った。性的虐待を受けたのは1999年、わずか8歳の時だった。「私の家族は熱心なカトリック信者で、ベロオリゾンテのドス・サントスが司祭を務める教区の活動に積極的に参加しており、両親は彼と友人関係にありました」。

 ところが両親が離婚することになり、彼女と母親は近隣の家族と共に、司祭から牧場へ招待されて宿泊し、「朝、母がパンを買いに出かけた後、司祭が、まだ寝ていた私に突然、覆いかぶさり、性器を触り始めた。怖くて逃げ出し、母親が戻るまで木々の間に隠れていた。被害を知った母親が司祭に抗議すると、「子供は”想像”するものだ」と認めようとしなかった。彼らはその後も教会に通い続けたが、母親は二度と彼女を司祭と二人きりにしなかった。「絶望的な状況だった。教会で彼と会わねばならず、死ぬほど怖かった。初聖体の式が間もなくありましたが、涙を止められなかった」とロシャは語った。

 ドス・サントスはあらゆる機会を利用して子供を虐待したという。牧場への訪問、自宅や教会の聖具室での出会い、告解の時など。助任司祭としての職務に加え、ドス・サントスは教区付属の私立学校の校長も務めていた。「彼はいつも子供たちに、告解のために一人で部屋に入るよう要求したが、私の場合は、あの事があった時以後は、母が一緒に来てくれた」という。

 年月が経つにつれ、彼女は虐待の悪い記憶を押しやり、やがて考えることさえやめようとした。時にはそれが「ただの夢だった」とさえ思うこともあった。だが、多くの感情的な問題を抱えるようになり、摂食障害やパニック障害に悩み、長期にわたって精神科医の処方する薬を飲まなければならなかった。そして数年前、セラピーのセッションでようやくその出来事を話すことができた。

 2021年になってロシャはドス・サントスを称賛するブログ記事を見たが、彼が「性的捕食者」だと批判するコメントも多く載せられていた。そこで、自分の電話番号を載せ、他の被害者に、自分と連絡を取るよう呼びかけ、被害者グループが出来上がった。「記者が私の呼びかけをブログで読み、取材を受けました。その記事がきっかけで、警察はドス・サントスに対する捜査を始めたのです」。警察の捜査と並行して、ベロオリゾンテ大司教区も同司祭に対する調査を開始、2021年11月に司祭職を停止した。

 事件報道を受けて彼女に連絡する女性が増え、これまでに73人の被害者がドス・サントスの犯罪について彼女に話したという。ロシャによれば、2024年にドス・サントスが逮捕された時、これまで、何の連絡もしてこなかったベロオリゾンテ大司教区が彼女に接触してきた。当時、教会側は「司祭は既にバチカンによって聖職を追われている」として責任を回避しようとしたが、ニュースサイト『G1』が2024年版の大司教区名簿にドス・サントスの名前が掲載されていることを見つけ、それが報道されてから、彼の名前は名簿から削除された。

 ドス・サントスの被害者を代理するアナ・カロリーナ・オリベイラ弁護士は「ほとんどの事件がすでに時効を迎えている。ドス・サントスは1975年に児童への虐待を始めた。多くの被害者は、こうした性的犯罪について心を開くまでに何十年もかかります」とCruxに語った。「被害者たちの年齢は犯罪発生当時3歳から11歳だった。大半は少女でしたが、ここ数年で数名の男性もドス・サントスによる虐待を訴えている」という。

 「ドス・サントスの有罪判決後、さらに被害者が名乗り出てくるでしょう。そしておそらく、まだ時効にかかっていない犯罪が裁判に持ち込まれるでしょう。賠償金の支払いを命じた判決についても控訴します。200万ブラジルレアル(約37万2千米ドル)の賠償金支払いを求めたが、判決の額ははるかに少なかった。しかし調査中に彼がティロスに持っていた不動産を400万ブラジルレアル(約74万4千米ドル)で売却した事実を突き止めました。支払い能力は十分あります」とオリベイラは語った。

 また彼女は、大司教区が数十年前からドス・サントスが性的虐待を犯していたことを知りながら、何の対応も取らなかった、と述べた。「私たちは、大司教区が2000年代初頭から事態を把握していた証拠を入手しています。ですから、この元司祭だけでなく教会も対象とした集団訴訟を計画中です」と述べた。

 ドス・サントスは現在自宅軟禁中だ。弁護人のレオナルド・ディニズはCruxに声明を送り、「ティロス地方裁判所が言い渡した判決の根拠となった事実は一切発生していないことを、技術的かつ慎重な方法で示す控訴を準備中だ。判決の完全な覆しと、それに伴う被告人の無罪判決を求める」とし、「被告の有罪判決は不当。被害者とされる人物が警察捜査中も法廷でも一度も聴取されず、事件記録に彼女自身の直接証言が一切存在しないからだ。検察側の立証根拠は全て被害者の家族による供述に限定され、不可欠な技術的証拠や直接的証言証拠が全く提出されていない」と主張。

 ディニズによれば、検察庁自体が「被害児童の聴取請求を取り下げた。その理由は、彼女が現在ブラジル国外に居住しているため、事実関係の有効な認定が不可能となり、対審手続と完全な防御権が著しく損なわれるという事情による。ドス・サントスは被害者とされる人物すら知らない」と指摘した。

 カロリナ・ロシャをはじめとする多くの被害者は、ドス・サントスに対する訴訟を今後も見守り続ける。「加害者は、今も教区近くに住んでいる。今でも教区の多くの人々が私を侮辱する。コミュニティは私に反発した。数多くの精神的後遺症と向き合い続けねばなりません。信仰は失わなかったが、今では教会の話を聞くことすらできず、ミサや洗礼式に出席すると気分が悪くなる」とロシャはCruxに訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.
このエントリーをはてなブックマークに追加
2026年1月22日