チベットの宗教とアイデンティティを消し去ろうとする中国当局が4日、中国青海省のゴロク・チベット族自治州にある数少ない独立したチベット語学校の責任者を拘束、学校を閉鎖に追い込んだ。
(写真は、チョグル・ドルジェ・テンジン=出典:Voice of Tibet)
当局が拘束したのは、高名な
チベット仏教僧侶で教育者、同自治州ミンタンのオセル・テチョク・リン寺とミンタン民族職業学校の責任者であるチョグル・ドルジェ・テンジン師。
1967年ミンタン生まれのドルジェ・テンジン師は、第7代チョジェ・ダンパ・イェシン・ノルブ法王をはじめとする著名な高僧たちから仏教哲学を学び、セルタールのラルン・ガル五科学仏教学院でケンポ(仏教学博士)の称号を取得し、仏教教義の三蔵を専門とした。宗教指導者と教育者という二重の役割から、文化保存の強力な擁護者であり、中国政府・共産党が排除しようとしているタイプの人物だ。
独立系放送局チベットの声(VoT)によれば、逮捕は透明性なく行われた。警察、秘密警察、国家安全保障局のいずれが関与したかは不明であり、公式な説明もなされていない。師の現在の所在は明らかにされていない。
ドルジェ・テンジン師が設立した学校は地域で唯一無二の存在だった。2007年にゴロク地区人民政府の正式認可を得て設立されたミンタン民族職業学校は2010年に開校し、チベット語教育と職業訓練を組み合わせた珍しいカリキュラムを提供していた。生徒たちはチベット語と中国語、数学、英語、書道、政治、体育に加え、チベット医学、裁縫、タンカ絵画、歌と踊り、観光ガイドといった専門科目を学んだ。2015年から2018年にかけ、同校は文化・職業訓練の拠点として認知されるようになった。
しかしチベット文化と言語を重視する姿勢は、北京の同化政策と対立するものとなり、当局は以前から独立したチベット系学校を警戒しており、特にチベットの子どもを家族から引き離し、中国語のみの教育に浸らせる強制寄宿学校を推進する中でその傾向は強まった。ドルジェ・テンジン師が拘束された後、生徒は帰宅を命じられ、学校は閉鎖を余儀なくされた。当局は生徒に対し政府運営の教育機関への転校を圧迫している。
ドルジェ・テンジン師拘束は孤立した事件ではなく、より広範な動きの一部だ。中国当局は「発展」や「安全」を名目に、チベット語学校を体系的に解体し、僧院を閉鎖し、文化指導者を犯罪者扱いしてきた。ミンタン学校の閉鎖はチベット全域で繰り返される弾圧を反映しており、教育は文化抹殺との闘いの最前線となっている。
チベットの子どもたちを国営寄宿学校へ強制的に送り込むことで、北京は次世代が自らの言語、伝統、宗教的遺産から疎外されたまま成長することを保証している。ドルジェ・テンジンのような教育者の拘束は明確なメッセージを発している。国家の管理外でチベットのアイデンティティを守ろうとする試みは、いかなるものであれ罰せられるというのだ。
ドルジェ・テンジン師の拘束は、中国によるチベット仏教徒への継続的な弾圧を象徴している。彼の学校はゴロクにおける文化的生存の命綱だった。その閉鎖と彼の拘束は、チベット人を同化させ、その独自のアイデンティティを消し去ろうとする北京の執拗なキャンペーンにおける新たな一歩を記すものだ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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