(2025.8.8 国境なき医師団ニュース)

パレスチナ・ガザ地区で医療援助を行う国境なき医師団(MSF)は、医療データ、患者の証言、2つのMSF診療所での目撃情報を元にした報告書「これは援助ではない──『ガザ人道財団』、組織的殺害の現場(This is not aid. This is orchestrated killing)」(英文)を発表。いわゆる「ガザ人道財団(GHF)」が運営する食料配給所において、イスラエル軍と米国の民間請負業者が、飢餓状態にあるパレスチナ人を狙った無差別な暴力行為を行っていると指摘する。
MSFは、GHFによる配給制度の即時中止を求めるとともに、国連による援助物資配給の仕組みの回復を強く訴える。また、各国政府、特に米国、ならびに民間ドナーに対し、事実上『死の罠』であるGHFの施設に対する財政的・政治的支援の停止を呼びかる。
*子どもへの銃撃も
イスラエルと米国の代理機関である GHFは食料の配給を軍事化しており、その現場で発生した暴力によりMSFの2つの診療所には多数の負傷者が搬送されている。これらの診療所で MSF スタッフが目撃した恐怖の状況を、報告書は伝えている。
2025年6月7日から7月24日の間に、GHFが運営する配給所の近くにあるガザ南部のMSFマワシ診療所とアル・アタール診療所に、28人の死者を含む1380人の負傷者が運ばれた。この7週間の間に、MSFは銃創を負った71人の子どもを治療し、そのうち25人は15歳未満だった。家族の中で動ける唯一の男性として、10代の少年たちが家族の食料を得るために危険な場所に送り出されている状況が浮かび上がる。
その15歳未満の患者には、弾丸が腹部を貫通した12歳の少年や、胸部に銃創を負った8歳の少女を含む5人の少女も含まれる。
MSF事務局長のラケル・アヨラはこう話す。
「食料を手に入れようとして胸を撃たれた子どもたち。混乱の中で押しつぶされ窒息死した人びと。配給所でひとまとめに銃撃された群衆。MSFの54年近くの活動の中で、このような無防備な民間人に対する組織的な暴力は、ほとんど見たことがありません」。
「GHF の『援助』を装った配給所は、残虐行為の実験場と化しています。この状況は今すぐ止めなければなりません」(MSF事務局長 ラケル・アヨラ)

*医療データが示す意図的な攻撃
マワシ地区の診療所に搬送された患者の銃創を初期診断した結果、頭部と首の銃創が 11%、胸部、腹部、背中の銃創が 19% を占めた。一方、ハンユニスの配給所から搬送されてきた人びとは、下肢に銃弾による負傷を負っているケースが圧倒的に多かった。こうした負傷の明確なパターンは、この攻撃が配給所内とその周辺にいる人びとを意図的に狙ったものであり、偶発的あるいは無差別な発砲ではないことを強く示している。
MSF のマワシ診療所で治療を受けたモハメド・リアド・タバシさんは語る。「私たちは虐殺されています。私は10 回近く負傷しました。そして私の周りに 20 近い死体が横たわっていたのをこの目で見ました。全員が頭やお腹を撃たれていました」。
今年5 月、イスラエル当局は、国連主導の人道援助活動を解体し、GHF が運営する軍事的な食料配給制度へ置き換えようとした。GHF が運営する 4 つの配給所はすべて、イスラエル軍が完全に支配する地域にあり、米国の民間軍事会社によって「警備」されている。
GHF は、イスラエル政府と米国政府によって「革新的な解決策」として宣伝されてきた。「ガザでの援助の流用」や「国連の失敗」という根拠のない主張に答えるものだとされた。この施設は、3 月 2 日に始まったガザ地区を全面封鎖するジェノサイド(集団殺害)の一環として、イスラエル当局がガザに対して実施している飢餓政策を制度化した、まさに死の計画に他ならない。