(2017.2.19 ニルマラ・カルヴァーリョ)
ミャンマー初の枢機卿、チャールズ・マウン・ボー師が、最近は見過ごされがちになっていた同国に対する国際社会の関心を引いている。ミャンマーで「憎しみの商い人」が再び活発な動きを始め、外部の助けが必要な事態を迎えている、というのだ。
ミャンマーは欧米諸国にとってあまり知られていない国だ。アウン・サン・スー・チー女史が20年近くも自宅軟禁状態に置かれていたことなどが話題になる程度だ。最近、話題となったのはマルタ騎士団が慈善事業の一環として同国でコンドームの配給計画を進めたということで人事にバチカンが介入したとして騒がれもした。 そうした中で、教皇フランシスコによって一昨年、同国初の枢機卿に任命されたチャールズ・マウン・ボー師が、戦争犯罪についての否定的な関心が高まろうとしているのを受けた取り組み始めた。
教皇はミャンマーの平和と安定について祈り、とくに回教徒系少数民族に降りかかった悲劇について関心を向けている。そして、国連も今月初め、ミャンマーの軍と警察がロヒンギアの人々に対して行った非人道的行為を非難する報告書を発表した。それによれば軍や警察が女性に対して性的暴行を加え、大量殺人を行い、自宅からの退去を強要している。
ボー枢機卿は、この発表を受けて声明を発表し、報告に国民が注意を向けるよう訴え、とくにそこで明らかにされた残虐行為を強く非難した。枢機卿は同時に、明るい面も出てきていることを指摘し、「5年間の肯定的な変化を経て、この国は以前よりもオープンになった」と強調しているが、楽観的な見方は長くは続かない。彼はこの先も、軍の残虐さと少数民族が受けている迫害について語らねばならないのだ。ミャンマーのキリスト教徒はしばしば二重の苦しみを味わっている。一つは信者が少数民族、おもにカチン族に集中しているため、人種差別の標的にされている。もう一つは、「西側の仲間と誤解され、急進的な仏教徒集団から「文化的、政治的よそ者」と見なされている、ということだ。
国際宗教の自由・米国委員会は最近発表した「ミャンマーにおけるキリスト教徒迫害」と題する報告書で、キリスト教徒が雇用の差別、改宗の強制、暴力を受けており、教会とキリスト教徒共同体が冒涜されている、と結論している。何千人もの住民-その多くがキリスト教徒で占められている-が隣の中国に逃げ込もうとし、援助団体によれば、国境沿いに展開する中国軍に2000人が捕まり、10000人以上がミャンマー側の国境の町、マンハイに避難している。
ボー枢機卿は、ミャンマー政府に対して、ラカイン州、カチン州、シャン州北部での軍事攻撃を終結させるよう求め、さらに、「国際的な人道援助機関やメディア、人権監視団体がこれらの地域に妨害されずに訪れ、・・国際社会と協力して国連が報告した犯罪について、正義と説明責任にもとずいて、どこからも妨害されずに捜査できるようにする」ことを希望した。
さらに、国際社会に対して、「注意を怠らないように。あなた方はミャンマーの前向きの変化を歓迎しました。ミャンマーの国民も、平和で前向きな変化を願っているのです」と呼びかけ、「兄弟に対して兄弟の血を振りかけることで生きる『憎悪の商人』の動きがまた活発になっています。暴力をふるうことはいかなる人々に対するものでも容認できない、と痛切に感じているミャンマー国民、その民主政権に対して、あらゆる支援を拡大する」ように求めた。
同時に枢機卿は、国民に対して、自分の国で何が起きているかを注意深く見届けるように求めたうえで、「国連の私たちの国の悲惨な状況に関する報告を、私たちへの目覚ましにしましょう」と呼びかけた。そして、「この国で起きている暴力と恐怖を終わらすために、一緒に働きましょう。そして、この国に生まれ育った、あらゆる人種、宗教の、男、女、子供の1人1人が、仲間として、人類の兄弟として認められるミャンマーを建設する」ように促し、「平和を目指す巡礼を続けましょう。戦争に戻ることのないように。」と締めくくっている。(南條俊二訳)
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