新しい年は、世界の教会がそれぞれの地域の課題を認識する機会(CRUX)

 (2017.1.10 CRUX バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)

 新聞やソーシャル・メディアに目を通すと、教会は限られた課題にしか関心を払っていないように見られるかもしれない。教皇が昨年出された、家庭に関するさまざまな課題への教会の対応についての使徒的勧告「愛の喜び」をめぐる議論、難民問題、そして貧困問題など、だ。しかし、世界の教会には、それぞれの属する大陸、国、あるいは教区のレベルで多様な課題が山積している。

 例えばアフリカの多くの国では、教区司教と一般信徒が、信徒の増大に対して、どのように聖職者が対応していくべきか、そして大半の宣教地域で月末の収支合わせに苦闘している。ジョージタウン大学の調査によると、アフリカのカトリック信徒数は1980年当時の3倍、2億人以上に増えている。その一方で、ドイツなどでは、聖職者の新規叙階の減少が懸念材料ではあるものの、信徒の維持がそれよりも大きな課題だ。同国の司教協議会によると、2015年一年だけで、前年よりも22パーセントも多い21万7716人の信徒が教会を去った。

 だが、特定の司教協議会にとって特別に重要な課題がいくつか存在し、これらの司教協議会などからクリスマスと新年に発せられるメッセージが、今年1年、彼らが何を課題と考えているかを知るうえでの参考になる。

 フィリピン:大統領が進める死刑と非合法的殺人にノー・・

 バチカンのニュース通信社によると、フィリピン司教協議会会長のソクラテス・ビレガス大司教は、死刑復活の支持と麻薬取り締まりに関連した殺人の多発でドゥトルテ大統領を非難した。大司教は大晦日のミサでの説教で「死刑復活の法案が議会で支持されれば、大統領は人々を殺すだろう、その多くは、麻薬取引やその他の犯罪で訴えられ法廷で戦うための弁護士を雇えない、貧しい人々だ」と批判し、フィリピンの人口の86パーセントを占めるカトリック信徒たちに、こうした動きに反対するだけでなく、無実の人々、その多くが不正と貧困の犠牲者である人々を不当に扱う政府の麻薬撲滅戦争に反対するよう、強く呼びかけた。大統領は昨年6月に政権に就いた厳しい言葉で大衆の人気を集める人物で、不法な麻薬取引を根絶するために何千人もの非合法殺人を進めていることで国際社会から非難を浴びている。。

 ベネズエラ:バチカンの仲介も成果生まず・・

 世界最大の原油埋蔵量を持つ産油国ベネズエラが今、政治的、経済的、社会的な危機に沈みつつある。犯罪が急激に増え、何千人もが飢えと治療可能な病いで命を落としている。マドゥロ大統領と反対勢力の同盟は、バチカンの仲介で、危機に対する共同の解決策を見つけるとみられていたが、年末になって交渉が不調に陥った。

 仲介に努めていたベネズエラ司教協議会会長のディエゴ・パドロン枢機卿は新年の1月7日に司教総会を開き、「2016年はベネズエラにとって極めて好ましくない終わり方をした。人々はこの半世紀で、最も厳しく、先の見えない、不公平な状態に置かれている」と訴えた。そして、「対話のテーブル」は「中傷の羅列、大統領派、反大統領派の双方に対話の意思がないことで、壊れてしまった」

 「双方ともに、対話の呼びかけを単なる政治的な戦略に使い、厳しい経済的な危機-インフレが加速し、治安の悪化、食料と医薬品の欠乏-に取り組む意思を持っていない」と批判。「ほどなく、政治指導者たちは国を破壊する危機を脱出するために、民主主義の名において対話をし、交渉をし、合意する方向に向かわずにおれなくなるだろう。権力の不条理、汚職、暴力に対する唯一つの解決方法だからだ」と付け加えた。

 ナイジェリア:死の文化を終わりにしよう

 「我々はあまりにサディスティックになり、そのような残虐な行為が、刑罰を受けない、無秩序、無政府、破滅の文化を創り出していることが分からなくなっている。ボコハラムによる不必要な殺害が十分ではないかのように」。ナイジェリア司教協議会のイグネーシャス・カイガマ会長は新年のメッセージで訴えた。

 「人間の命と牛や山羊、羊、鶏の命の違いが分からないような文化が出来つつあります」とも。会長は、イスラム過激派のテロ集団・ボコハラムが生まれたジョスの大司教を務めており、人種や民族、宗教を動機とする暴力の恐ろしさを肌身で感じている。「聖書は、神は男と女を創り、産めよ、増えよ、地に満ちよ、と求めた。暴力によって人口を減らせとは言っていません」と強調し、人間の尊厳を損なうような殺戮への無感覚は、ソーシャル・メディアで流される首をはねられ、損壊された遺体の写真とで〝頭を混乱〟させ、国際社会の懸念を増大させている、と付け加えた。

 そして、政府に現在の事態を収拾する解決策を見出すように改めて訴えるとともに、軍・警察に対して、武器を乱用しないように求めた。

 コンゴ民主共和国:森林が消えていく・・

 この国の司教団はクリスマスのメッセージで、過度の伐採と森林再生政策の欠陥のために森林が徐々に消えていることを批判し、環境の保護を強く訴えた。バチカンの通信社によると、司教団は、コンゴ共和国は「神に祝福された国」で、林業、農業、鉱業、水産業などの分野で資源に恵まれている、としたうえで、「我々はこのような恵みを使って何をしているのだろうか」と問いかけた。

 さらに、廃棄物の回収システムが不在で、市街地にゴミが捨てられ、道路や河川がゴミ捨て場になっている、と指摘。飲用や水浴用の水を供給する湖や河川が住民によってトイレやゴミ捨て場にされ、人々の健康を害している、と指摘した。

 教皇フランシスコが2015年に環境に関する回勅「ラウダートシ」を発表した後、司教団は自然と教育を大切にする「環境的な回心」を呼び掛け、学校とテレビ放送を通じた市民教育プログラムなどを提案した。「だが、運動は、通りにゴミを捨てないことで始まったが、ゴミ箱に入れることをしていない」と嘆いている。

 以上は、4つの例でしかないが、これ以外にも、世界中で多くの問題が起きている。米国の司教団は、現地のキリスト教指導者とともにイラクの平和実現へ祈りを捧げ、クリスマスのメッセージで、移民・難民を支援する意向を強調している。教皇の母国、アルゼンチンでは、教会指導者の何人かが政府に対し、汚職と非合法麻薬取引の刑罰のがれの撲滅に取り組むよう強く求め、ブラジルのサルバドーレ・デ・バヒナ教区は年少者労働や非行の増加で、海外からの旅行者に認識を高めてもらう2か月のプログラムを始めた。

 

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2017年1月13日