司教たちは一般的に、自分たちの〝店〟を自分が良いと思うやり方で経営する自由度を持っている。教皇が昨年春に出した 使徒的勧告「Amoris Laetita(愛の喜び)」の実現のために様々な司教たちが選んだ対照的な方法が支持される範囲においてだ。結果として、教皇が行うことで重要なものを一つだけ選ぶとすれば、それは司教たちの選任だろう。
そうした見地から、些細だが注目される司教人事が4日にあった。それはカナダ・カルガリー教区の司教をフレッド・ヘンリー氏からウイリアム・マクグラッタン師に替えた人事だ。ヘンリー師は、〝生命最優先”陣営のヒーロー的存在で、性的感染病の罹患を防ぐ政府支援事業のワクチンの接種をカトリック校で認めるのを、乱交を引き起こすものだ、として拒否した。これに対して、マクグラッタン師は対立よりも対話と協力に重きを置く〝教皇フランシスコ〟の姿勢に近い立場にあると見られている。
カトリック教会の従来からの方針に沿って、世界に5000人以上いる司教一人ひとりが、75歳を迎えた時、教皇あてに、現在勤めている役職の辞任を表明する書簡を送ることになっている。それを受理するかどうかを決めるのは教皇本人だが、一般的に75歳は退職勧奨年齢とされている。
教皇庁の役職に就いている高位聖職者ですでに75歳を超えているか、2017年中に75歳を迎えるのは①フランチェスコ・コッパメリオ枢機卿(法文評議会議長)②アンジェロ・アマート枢機卿(列聖省長官)③ベニアミノ・ステラ枢機卿(聖職者省長官)④ジェージ・ペル枢機卿(財務事務局長官)⑤ジャンフランコ・ラバージ枢機卿(文化評議会議長)⑥ロレンツィオ・バルディッセーリ枢機卿(世界代表司教会議=シノドス=事務局長)⑦マルチェロ・サンチェス・ソロンド司教(科学・社会科学アカデミー総裁)だ。
このうち、ペル財務事務局長官については、すでに教皇が75歳を過ぎても現職に留まることを公にしており、ステラ、ラバージ、サンチェス・ソロンドの三枢機卿も現職に留任とみられている。
それ以外の三人のうち、アマート列聖省長官は6月に79歳になり、退任がうわさされている。教皇が彼を更迭した場合、主要官庁のトップで、教皇フランシスコが選任していない、あるいは主要課題で教皇と同じ立場をとらないと見なされている者はマルク・ケレ司教協議会長、ゲルハルト・ミュラー教理省長官、そしてペル財務事務局長官の3人のみとなる。
カトリック教会のリベラル派は、教皇の使徒的勧告「愛の喜び」巡る議論などで強硬な立場をとった69歳になるミュラー長官の退任を支持するだろう。教皇はこの人事について、二代前の教皇ヨハネ・パウロ二世が国務省長官にアゴスチノ・カサロ‐ーリ枢機卿の指名を考えたことを想起するかもしれない。ポーランド人教皇は、カサローリ枢機卿を指名すれば共産主義者に対して強硬な反対の立場をとることを知っており、バランスを重んじ、緊張緩和をもたらす人物を充てることを望んだのだ。教理的に言えば、教皇フランシスコのもとでは、別の道がとられることが考えられる。彼は緊張緩和を重んじる人であり、おそらくは、〝赤ん坊を風呂の湯と一緒に放り出す〟ように教理の責任者を扱うのを好まないだろう。
世界の大司教区長については、次のような若干の大物がすでに75歳を超えているか、2017年に75歳の一里塚を過ぎることになる。
①ローレント・モンセングォ枢機卿(キンシャサ・コンゴ民主共和国)②ドナルド・ウァール枢機卿(ワシントンDC)③ウィルフリッド・フォックス・ネイピア枢機卿(ダーバン・南アフリカ)④アンジェロ・スコラ枢機卿(ミラノ)⑤ノルベルト・リベラ・カレラ枢機卿(メキシコシティ)⑥アンドレ・バン・トロワ枢機卿(パリ)⑦オスカー・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿(テグチガルパ・ホンジュラス)⑧ジョン・トン・ホン枢機卿(香港)⑨ペトロ岡田大司教(東京)
繰り返しになるが、教皇が以上のどの人物も更迭しなければならないルールはない。実際のところ、ウァール枢機卿を含む大部分は、当面は留任が確実と思われる。
だが、2017年の劇的な事件が、ダーバン、メキシコシティ、ミラノの三つの大司教区で主役交替という形で起きる可能性がある。これらはそれぞれの大陸全体の教会の基調を定める力を持つ大司教区であり、そのトップは伝統的に、〝教皇フランシスコ型の司教〟という辞典的な定義には必ずしも当てはまらない。ネイピア枢機卿はフランシスコが主宰した二度のシノドスで保守派の代弁者の役割を演じ、リベラ枢機卿は権力と特権を好む旧世代の聖職者とみなされており、スコラ枢機卿は福音主義の〝ヨハネ・パウロ2世〟タイプの思想家であり指導者とされている。
仮に、教皇が米国において行った枢機卿の選択と同じこと-つまり自身の見方に同調する人物を引き立てること-をこの3つの大司教区で行えば、世界の様々な場所で自分の成果を際立たせようとする人物とみなされるだろう。だが、仮に、別の方向をとり、今よりもさらに伝統主義的あるいは保守的とみなされている人物を指名すれば、教会内部の一致に向けたジェスチャー-そうしたグループにとっても自分たちの教皇だと確信させようとする―と受け取られるかもしれない。
いずれにしても、これからの12か月の間の、いつ、あるいはどのような選択がされるか、前もって知るすべはない。確実なのは、いつその時が来ようとも、それが重要な意味を持つ、そしてカトリック教会の本質に関わるものになるだろう、ということだ。
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