(2020.6.2 Bitter Winter編集者、Massimo Introvigne)
米国でのジョージ・フロイド氏の死と香港での民主化運動の弾圧に抗議する人たちに共通するのは何だろうか?-不正に対する抗議がもととなっており、民主主義諸国のほとんどのメディアの共感を得ていること。
異なるのは、香港では、警察当局の暴力的取り締まりに対する抗議が起きているが、暴力を振るう者はほとんどいないのに対して、米国では、発生当初から、抗議行動を口実にした一部の人々が、関係のない建物の窓を破り、店を襲撃し、商品を盗み出していることだ。
そして、フロイド氏の死への抗議活動に、米国メディアがどのように反応したか。香港の中国政府・共産党の人権弾圧への抗議活動に、共産党管理の中国のメディアがどのように反応したか。この二つは正反対だ。ほとんどの米国メディアは一部の者の暴力を否定しつつ、フロイド氏への残虐行為につながった人種差別的”文化”を激しく批判しました。これに対して、中国教官等管理下にある中国メディアは、すべての香港の抗議活動参加者を「分離主義者、暴徒」と非難し、街頭に抗議に出た人々の正当な批判の声を完全に無視し、警察の残忍な対応を称賛しました。
当然予期されたことだが、中国共産党の内外へのプロパガンダは、米国での出来事を都合よく解釈した。「暴動に対する米国の誤った寛容は、民衆のフロイド事件後の不安と破壊につながった」と中国共産党の機関紙・人民日報の系列紙「 環球時報」は”論評”し、暴力行為が、あたかも「米国の都市に侵入した香港の暴動団」によって行われたかのように書き立てた。
環球時報の胡锡进 ・編集局長は、自身のツイートで「香港の抗議は”美しい光景”」との米下院のナンシー・ペロシ下院議長のコメントを取り上げ、「米国の政治家によって定義された”美しい光景”は、香港から米国に広がった。今、彼らは自分たちの家の窓からそれを目撃できる。ペロシ議長とポンぺオ国務長官に聞きたい。北京は、あなた方が香港で暴動を起こしている者たちを讃えたように、米国での抗議活動を支援すべきだろうか?」と皮肉り、中国外務省幹部たちもそれをツイートで追随した。国営テレビ放送の中国中央電視台(CCTV)も「自分の足元を撃った米国の政治家たちは、香港で暴動を煽るという、苦渋を味わっている」と揶揄している。
中国はまた、これを利用して、アフリカにおける反米感情を刺激しようとしている。中国外務省の趙立堅・報道官はこう述べた。「米国の状況に対応して、アフリカ連合と多くのアフリカ諸国の指導者たちは人種差別に対する正義を求めている。彼らの声は国際社会の一致した意見であり、米国も注視すべきだ。中国はアフリカの人々の訴えを支持し、協力して、人種的敵意と憎悪のこもった扇動的な言葉を含むあらゆる形の人種差別に断固、反対する」ー中国自身が、新型コロナウイルスの大感染の最中に中国に住むアフリカの人々を差別している、と批判されたのを考えると、このような発言は、いささか矛盾しているようだが。
中国政府・共産党のプロパガンダは圧倒的な量で行われてはいるが、その言動は矛盾に満ちている。彼らは、米国での抗議デモを「人種差別に対する正当な批判」と讃える一方で、中国が国家安全法を施行し、人権侵害に抗議する香港の人々のデモを禁止し、人権派の人々を抑圧している。そうしておきながら、中国共産党は、香港デモを支持することで示された抗議と暴動に対する米国人の寛容さが、米国における現在の暴力行為の根本原因であり、「中国の安全保障と統制システムの優位性を立証している」と主張しているのだ。
このような論理は誤りだ。全体主義が、民主主義より優れていることは、絶対にない。民主主義の国では抗議行動が容認されるし、暴力化するかもしれないが、公正な司法制度と社会的責任あるメディアが、正当な抗議と違法な暴力を分けて扱い、違法な活動にブレーキをかけ、人々の自由、基本的人権を保障するのだ。全体主義の国では、政府や党に対するすべての抗議を抑圧し、抗議するすべての人を投獄することで、迅速に”解決”する。それが、中国共産党は香港に対して考えている”解決策”だ。それは、「”安定”が”自由”よりも重要だ、という魅力的な、しかし誤った考えに基づいている。しかし、」自由のない安定」は、「死の安定」と「墓地の平和」に過ぎないのだ。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。