教皇「主要な関心は移民と難民対策」ートランプ次期米大統領で(CRUX)


 (2016.11.11 CRUXバチカン特派員 イネス・サン・マーチン)

 ローマ発:教皇フランシスコは人々と政治家について判断を示すことはない。少なくとも、これはトランプ米次期大統領について聞かれた教皇フランシスコの答えだった。

イタリアのジャーナリスト、92歳の無神論者で左翼系の新聞 La Repubblica の創立者、ユージェニオ・スカルファーリ氏の質問に、教皇はこう答えた。「わたしは人々や政治家について判断を示すことはしません。ただわたしは、彼らの対応が貧しい人やのけ者にされている人に及ぼしている害は何かを理解したいのです」。

教皇がこれまでトランプ氏について語ったのは、米大統領選挙前の2月、メキシコ訪問から帰る機上での記者会見で、一度だけだ。トランプ氏の名を上げなかったが、随行記者団の「もしカトリック信者が彼に投票するとしたら、どう思うか。彼は米国とメキシコの国境1550マイル以上に壁を作り、不法移民を強制送還する、と言っているが」との質問に対し、「どの候補に投票すべきかを言うつもりはない」と述べ大統領選挙に影響を与えるような言動を避けながら、「場所がどこであろうと、壁を作ることだけを考え、橋を作ることを考えない人物は、キリスト教徒ではありません。それは福音ではない」と答えた。ただし、この機上会見では、教皇は「もしも彼がそういうことを本当に言ったのだとしたら、そのようなことを言う男性はキリスト教徒ではない、とだけ申し上げているのです。真偽が明らかになる余裕を差し上げましょう」と”解説”を付けていた。

教皇はブエノスアイレス大司教時代に、汚職に対して厳しく批判を加えることで知られていたが、政治家を名指しで非難したのは一度だけ、同性婚を認める判決に介入しなかった当時のブエノスアイレス市長で現在のアルゼンチン大統領、マウリシオ・マクリ氏に対してだけだった。

今回のスカルファーリ氏とのインタビューで、「(米国の次期大統領にトランプ氏が選ばれた)今現在の主要な関心事」について、教皇は「それは難民と移民の人々です」とし、「彼らの中で、キリスト教徒は少数ですが、それが彼らの悲惨な状況を変えるわけではない。そうした状況を生んでいる原因はいくつもあり、そうした状況を終わらすために、わたしたちは出来ることをするのです」と語りさらにこう続けた。これまで、職を失ったり、給料を減らされたりするのを恐れた人々が、そうした可能性のある対策に反対したことが何回となくあったが、「お金は移民や難民に逆らい、貧しい人々に逆らうものですが、豊かな国々にも貧しい人びとは存在し、貧しい国々からやって来る人を迎えるのを恐れています」と指摘。

「このような悪循環は止めなければなりません。わたしたちは、豊かさと貧しさを分けている『壁』を打ち破らなければなりません」「そして、人々の福祉を充実するために、不平等を減らし、権利と自由を増すための『橋』を掛ける政策が強く求められているのです」と訴えた。

 スカルファーリ氏はまた、このインタビューでの話として、教皇は「隣人を自分のように愛しなさい」という戒めの言葉を「隣人を自分以上に愛しなさい」に改めることをほのめかした、という。氏は、この意味は、教皇が平等によって支配される社会、マルキストの社会主義、共産主義のプログラムを望んでいるに違いない、と解釈している。氏の「あなたの頭にはマルキストのような社会があるのですか」との問いに対して、教皇は「どちらかと言えば、共産主義者はキリスト教徒のように考えるのでしょう。キリストは貧しい人、弱い人、蔑まれている人が決定する権利を持つ社会について語りました。扇動者やバラバのような暴動を起こす者ではなく、神を信じる人々、貧しい人です。平等と自由を成し遂げる助けをするのはそうした人々なのです」と語ったという。

 このインタビューが行われたのは、教皇が先週、ローマで開かれたPopular Movementの集まりで4500字の話をした直後だった。教皇は、アルゼンチンのダンボール回収運動のグループが廃棄物リサイクルの共同組合に成長するのを助けるなど、この種の運動を支援した来た。この運動で、2001年のアルゼンチン経済危機の際、何千人もの男女の失業者が仕事を得ることができ、現在では、アルゼンチンで最も重要な廃棄物リサイクルの推進力になっている。

インタビューで教会内部で起きている教皇への「敵対」について聞かれた教皇は「彼らのことを『敵対者』と呼ぶつもりはない。『信仰はわたしたち皆を一つにする』からです」と答えた。「もちろん、わたしたちは個人として、同じことを異なる方法で見ます。描かれる絵は、客観的には同じものでも、主観的には異なるものなのです」と付け加えた。

最後に氏は、教皇に働きすぎないように、もっと休みをとるようにと助言したが、教皇は「あなたも休みを取るべきです。あなたのような無信仰者は、できる限り『肉体的な死』から離れていないといけませんから」と言葉を返した、という。

(南條俊二訳)

*CRUXは、カトリック専門のニュース発信、分析、評論を行う米国のインターネットメディアです。2014年秋に米国の主要日刊紙、Boston Globe(欧米を中心としたカトリック聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけになった世界的スクープで知られる。最近、このスクープに至る苦労が映画化され、日本でも全国上映されました。現在は、米国のカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受け、独立系カトリックメディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」はCRUXが発信するニュース、分析、評論の日本語訳、転載について、了解を得て、ご紹介しています)

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2016年11月14日