評論:米新大統領と教皇フランシスコの協力の可能性は?(CRUX)

(2016.11.9 CRUXエディター ジョン・L・アレンJr)

 米国が世界の舞台で演じる役割から、世界中の演技者が今や、トランプの勝利が米国の今後の行方にどのような意味をもち、どのように対応するべきかを探るのに躍起になっている。そして、その演技者のひとりは当然ながら、バチカンの主だろう。

ハーバード大学ケネディー・スクールのヨセフ・ナイ教授の有名な分類によれば、バチカンは世界で最も重要な「ソフト・パワー」、全世界に自らの外交官を置く主権国家をもった唯一の世界宗教団体であり、米国は世界のすべての国々を合わせたよりも多い軍事費を支出する、地球上で最も重要な「ハード・パワー」だ。

 ということは、必然的に、両演技者の関係は重要であり、トランプが米国の次期大統領となることが確実になった今朝、バチカンの国務省の職員たちが、このことの意味するところを探ろうと必死になったのは間違いない。

 正直なところ、現在のバチカンの政権とワシントンの次期政権が良好の関係になるとは思われない。これまでの米国の歴史で、次期大統領に選ばれた人物が選挙期間中に教皇に直接批判されたことは一度もない。

教皇は今年二月、メキシコ訪問からの帰路の機上で、同乗の記者からメキシコと米国の国境に壁を作りたいという政治家についてどう思うか、と質問されて、こう答えた。

「壁を作りことだけ考える人は、それがどこであろうと、そして(国境に)橋を渡すことをしない人は、キリスト教徒ではありません」「これは『福音』ではない」。

 教皇は、トランプの立場についての記者の表現を額面通り受け止めてこう答えることで、自身の見解に含みを持たせた。トランプも、選挙戦当初の教皇を問題外とするような短絡的な言い方をその後、和らげていた。したがって、次期大統領には、まだ教皇フランシスコを盟友とする余地は残っている。

 トランプのホワイトハウスとフランシスコのバチカンの間で目立つような課題となりそうなものを予想するのは容易なことだ―移民問題、気候変動対策、貧困対策、外交政策上の多国間主義、犯罪と処罰などである。

ごく自然の見方からすれば、ドナルド・トランプとフランシスコ教皇が米国とバチカンのトップに立っている限り、両者は不安定な関係になると思われるだろう。だがその一方で、トランプは勝利宣言のスピーチで、おそらくバチカンも含めて他の国々との「偉大な関係」を追求することを誓った。したがって、もっと興味をそそる問いは、現教皇と新大統領がどの分野で仕事ができるか、ということだ。堕胎問題のようなテーマを除いて、可能性のあるのは三つ、キリスト教徒迫害、女性差別、信教の自由だ。

 トランプの政権準備チームにとって重要なのは、両者の円滑な関係自立に真剣に取り組む人物、世界の課題解決に果たすべきバチカンの役割を認識している人物を、バチカン大使に選ぶことである。そのためのひとつの方法は、次期副大統領のマイク・ペンスにその主導権をとらすことだ。彼は不安のない宗教用語と信仰を持っている。

 バチカンにとって重要になると思われるのは、開かれた態度で、対話を強く希望しているとのシグナルを送り、米国の新政権との間で戦端を開くような動きを避けることだ。

 トランプ次期大統領と教皇フランシスコのはっきりとした対比を額面通りに読めば、両者の関係は、緊張した、複雑なものになる可能性がある。その一方で、現体制に与えるショックが世界中の政治的な進路にとって平等なものだとすれば、おそらく、両者の協力関係は最大級の驚きをもって受け止められるようなものになりうるのだ。

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2016年11月11日