・北朝鮮や中国、インド、アフリカなどで教会破壊、投獄など急増ー信徒迫害の監視団体年報

(2020.1.19 カトリック・あい)

 キリスト教系の世界の迫害を監視をする「オープン・ドアーズ」が15日、キリスト教徒に対する迫害が目立つ50か国に関する年報「ワールド・ウォッチ・リスト2020」を発表、教会やキリスト教関連施設に対する攻撃や、信仰を理由としたキリスト教徒の投獄が急増していることを明らかになった。北朝鮮や中国、イラン、ソマリア、エリトリアなどが引き続き問題国の上位を占め、イスラム過激派によってキリスト教の共同体が破壊され、大きな混乱が引き起こされている国々も新しく追加された。

 年報の発表会は、ワシントンで米政府の代表や米議会議員、国際宗教自由委員会、著名な人権活動家たちを集めて開かれ、冒頭、オープン・ドアーズ米国のデイビッド・カリー会長は「今年報は、キリスト教徒に対する迫害に関して最も信頼性のある草の根活動の中で集めたデータをもとにしており、世界に、迫害の激化に警笛を鳴らすものになるだろう」と述べた。

 年報では、2018年11月1日から2019年10月31日の間に、50か国で前年比6%増、約2億6千万人のキリスト教徒が「高レベルの迫害」を経験し、9488か所の「教会もしくはキリスト教関連施設」が被害を受けた。裁判の手続きなしに逮捕、投獄されたキリスト教徒は、前年の2625人から3711人に大きく増えている。信仰を理由に殺害されたキリスト教徒の数は、少なくとも2983人。

前年の調査4136人より少なくなっているが、カリー会長がクリスチャンポストのインタビューに答えたところによれば、ナイジェリアのイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による殺害件数が減ったことが理由の一つだが、「ボコ・ハラムが『暗殺』から『路上での襲撃や誘拐』に戦術を変えており、その件数は急増している。ボコ・ハラムはカメルーンやチャド、ブルキナファソに勢力を拡大している」という。

 2019年の現状調査をもとにした年報で、国別の迫害10か国に入ったのは、前年と同様にトップが北朝鮮。地下教会が成長を続けてはいるものの、金正恩政権が数千人のキリスト教徒を強制労働所に収容し続けている。

 2位はアフガニスタン。3位から順に、ソマリア、リビア、パキスタン、エリトリア、スーダン、イエメン、イラン、インド。インドでは2014年に、ヒンズー至上主義を理念とするインド人民党が政権を取った後、キリスト教徒への迫害が急増している。

 様々な宗教団体に対する不適切な取り扱いや、大量のイスラム教徒を収容していることで強く批判されている中国は、前年の27位から順位を上げ23位となった。中国政府は、登録されていない家の教会で礼拝をしたという理由で、数え切れないほどの牧師や信者を投獄している。

 カリー会長によると、中国では5596の教会が閉鎖され、その理由のほとんどは、教会が監視カメラの設置を拒否したため、という。「監視を通して国民を支配する中国は、人権に対する最も大きな脅威を象徴している」と非難した。

 東南アジアでは、スリランカが前年の46位から30位に順位を上げた。同国では昨年のイースター(復活祭)に、イスラム過激派が3つの教会と3つのホテルをターゲットにした自爆テロを行い、250人以上が死亡、500人以上が負傷した。

 また、イスラム過激派の活動がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国、特に政府の支配力が弱まった地域で急増し、教会が閉鎖され、多数の住民が自宅から避難を余儀なくされている。新たに迫害国のリストに追加された一つがブ西アフリカのルキナファソで前年の51位から、今年は28位となった。

 同国北東部で、イスラム過激派によるキリスト教徒に対する攻撃が激化しており、2019年には推定で250人以上のキリスト教徒が殺害された。12月には礼拝中の教会が襲われ、少なくとも14人が殺されている。国連も同国について、「最も住民が緊急避難を要する危機が拡大しているアフリカの国の一つ」とし、急速な治安の悪化で、多くの住民が避難を余儀なくされている、としている。

 他のアフリカ諸国でも、中央アフリカが25位、マリが29位。ニジェールはも今回、初めて50位となり、”迫害国”のリストに入った。

年報の全文はhttps://www.opendoorsusa.org/wp-content/uploads/2020/01/2020_World_Watch_List.pdfでご覧になれます。

 

 

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2020年1月20日