・中国がキリスト教の「中国化」強化ー聖職者に政治研修、信者に愛国主義の曲(BW)

(2019.8.18 BitterWinter 王安陽)

 中国共産党はキリスト教の「中国化」を強化しており、国営の三自教会(中国共産党主導で設けられた中国のプロテスタント各派の合同教会)の聖職者たちは政治的な再教育を強制的に受けさせられている。

 中国全域で当局が 三自教会 の聖職者向けの研修を実施している。聖職者を改心させ、忠実な 中国共産党 の公僕へと変え、共産主義の概念を信者の心に植えつけさせることで、信者の政治的な姿勢を強化することが目的だ。礼拝の場がプロパガンダの中心地に転用される中、脅しと威嚇に晒され、聖職者たちは中国からキリスト教の教えが消滅する事態を目の当たりにしている。

*「未改心」の聖職者は説教禁止

 7月中旬、中国北東部、遼寧 の政府は瀋陽神学院で三自教会の聖職者向けの研修を開始した。研修の講師陣には、省の宗教事務局の課長が含まれていた。

 研修に参加した牧師は「研修中、聖書には1度も言及されませんでした。講師は「中国化」のことばかり話していました。説教を実施する際は伝統的な中国の衣服を着用し、ヨーロッパ調やゴシック調の教会は全て破壊し、代わりに中国式の教会を建てるべきだと講師は話していました。説教の内容に関しては、政府が指示した内容に徹しなければなりません。説教を行う者は学習会に参加する必要があります。参加しない者は修了証を受け取ることができないため、演壇に上がって説教を実施することができなくなります」と明かした。

 さらに牧師は、政府の高官が中国共産党の政策と聖書のうち、影響力が強いのはどちらかと尋ねた際に聖書と答える者は、その場で説教の資格を取り消されると話した。

 6月には中国北部、山西省忻州 の政府が管轄内の14の県と市の著名な70人の聖職者に対し、中国共産党が運営する北京の中央社会主義学院で行われる研修への参加を手配した。

 参加者の1人によると、政府の職員は 新宗教事務条例 や 愛国心 等の話題に関する話に終始していたという。6人の講演者が 習近平 の業績、中国の歴史及び政治に関する内容の講義を行った。

 「参加は必須でした。参加を拒否する者は後で処罰をすると脅されました」と参加者は話した。また、この参加者は研修の全体的なトーンは過激であり、キリスト教を中傷し、参加者に共産主義のプロパガンダを吹き込んでいたと明かした。一部の講演者は、キリスト教は阿片戦争の結果として中国に強制的に持ち込まれたと主張した。(阿片戦争とは、19世紀半ばに二度起きた清王朝(1644年-1912年)と西洋諸国の間の軍事紛争であり、中国では欧州諸国による「薬物と砲艦」を用いて中国を破壊するための陰謀と見なされることが多い)尚、第二次阿片戦争後の条約の締結により、中国は開港を受け入れ、香港を英国に譲渡した。そして、中国が「百年国恥」と呼ぶ時代が始まった。

 中国全土の三自教会が、キリスト教の中国化を目指す当局からの脅しと嫌がらせに晒され続けている。中国東中央部、遼寧省では、警察署の署長が遼陽  の教会を訪れ、宗教に関する政策を推進した。「党を神、神同然と見なさなければならない」と署長は信者たちに呼び掛けていた。

 5月下旬、遼寧省の「キリスト教の中国化推進班」が「母国を祝福し、中国の夢を叶えよ」をテーマに掲げ、鞍山市内外の教会で講演会ツアーを実施した。このテーマは、2013年に立ち上げられた習近平主席による定義があやふやな国家の復活の要求に言及するものであった。

 キリスト教の中国化推進班が遼寧省の信者向けの会議を開催している。

*愛国主義で信者をふるいにかける

 10月1日に建国70周年を迎える記念行事の一環として、三自教会全体で 愛国主義 的な行事が行われている。

 7月10日、遼寧省の沈陽市遼中  にある三自教会で演奏会が行われた。その際、国旗が教会全体に吊るされ、キリスト教の絵画を遮っていた。また、愛国的な映像が大型のスクリーンに映し出された。

 中華人民共和国建国70周年記念行事が行われた際の遼中区の三自教会の内装は、政府の講堂を彷彿とさせるものであった。国旗が教会内のキリスト教の絵画を遮った。

 教会の信者は、この行事では合計で11曲の演奏が行われたと述べた。信者が最初に歌った曲は『共産党がなければ、新しい中国はない』であった。その他の曲の大半は、信者以外の者が演奏し、宗教とは関係のない曲であった。

*曲目リストは「共産主義」の歌で占められた。

 遼中区の 統戦部 の職員は、「共産主義」の曲を信者に歌わせる主な目的は、信者が本当に愛国者かどうかを確認するためだと話した。

 信者たちは政府が主催する演奏会に参加し、中国共産党を崇拝することを望まなかった。同地区のある教会の責任者が行事への参加を公然と拒否した際、現地の当局の職員は、政府に逆らう場合は教会を閉鎖すると責任者を脅した。ある信者は腰痛のため行事に参加することができなかったが、参加は必須であると告げられた。参加を拒否する者は、「政府に反抗」する者と見なされた。

 7月9日、中国南東部、江西省撫州市の中国基督教両会が建国70周年行事を資渓県の蒙恩堂で実施した。このプログラムには共産党に関する詩と礼拝が含まれていた。

 参加した信者は「会合で行われた公演の全てが党と愛国心を称賛するための詩でした。キリスト教の讃美歌は皆無でした。このような退廃的な詩を教会で聴くことになり、呆れてしまいました。これが神を信仰する行為なのでしょうか?共産党を崇拝しているのではないでしょうか?現在、全ての教会は共産党の支配下にあり、党の好きなように操られています」と非難した。

 8月上旬、南昌市の中国基督教両会が中華人民共和国建国70周年を祝うための愛国合唱コンクールを開催した。

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

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2019年8月23日