・ウイルス感染拡大の原因は-コウモリ、ゼンザンコウ、それともCCP(中国共産党)?(BW)

 科学者は依然としてコロナウイルスの起源について議論しているが、重要な点を見逃してはならない。中国共産党の嘘と対応の遅れが世界に流行を封じ込めることを妨げているということだ。

 中国政府から教育部直属重点大学に指定されている華南理工大学(広東省広州市)の2人の研究者が国際学術データベースResearch Gateに掲載した論文-掲載されて数日後に抹消されたーを紹介した17日付けの記事で述べたように、BitterWinterの私たちは科学者ではなく、研究の信頼性を評価する方法を持たない。だが、この研究者は優れた科学者であり、国際的な学術出版物に12を超える論文を掲載した実績を持つ。

 この論文は、新型コロナウイルスの感染源がコウモリだ、としたが、武漢市内あるいは周辺に野生のコウモリはいない。しかたがって、そのコウモリは、武漢市内と郊外にあり、活動が秘密にされている二つの研究所のうちの一つ、あるいは両方に由来する可能性が高い、と判断される。

 著名な科学雑誌「ネイチャー」は17日付けで、クリスチャン・G・アンダーセン博士、アンドリュー・ランボー博士、W・イアン・リプキン博士、エドワード・C・ホームズ博士、ロバート博士が執筆した新型コロナウイルスに関する記事を発表した。 彼らは、ウイルスが「実験室の操作によって生れた」ことは「ありそうもない」とし、コウモリあるいはセンザンコウという哺乳類を介してヒトに伝染した可能性が高い、と述べた。

 中国関係者からの情報提供を無しとないと思われる、ある国際的なメディアは、新型コロナウイルスの”実験室起源説”をフェイク・ニュースとして、これを”暴く”記事を素早く流した。確かに、このメディアは、”米国の研究所起源説”を主張する中国製のフェイク・ニュースも暴いた。

 「ネイチャー」の記事は、先の華南理工大学の研究者たちがResearch Gateに論文を載せる前に書かれた可能性が高いが、この二つの見解は矛盾しない。華南理工大学の研究者の論文は、新型コロナウイルスが中国の研究所で「意図的に作られた」とは主張したのではなく、武漢地域で活動している二つの研究所の一つ、あるいは両方で感染したコウモリの可能性を示唆しているからだ。

 一方、フランス・ソルボンヌ大学の系統分類学・進化および多様性研究所のアレクサンドル・ハッサニン教授は20日、新型コロナウイルス肺炎を引き起こしているウイルスは「2つの異なるウイルスの組み換えの結果生まれた可能性がある」という見解を明らかにした。「一つは(コウモリ由来とされている)RaTG13に近似しており、もう一つは、哺乳綱鱗甲目のゼンザンコウに由来する可能性が高いものだ。言い換えれば、二つの既存のウイルスの『キメラ(注:同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のこと。嵌合体あるいは異質同体ともいう)』だ」。

 RaTG13はベータ・コロナウイルス、すなわち、アルファ、ベータ、デルタ、ガンマの四つのコロナウイルスの1つで、コウモリの遺伝子を(アルファ・コロナウイルスのように)起源としている。 ハッサニンは「ベータ・コロナウイルスは、主にコウモリから発見されているが、ヒトからも見つかっている。たとえば、中国の雲南省で収集されたコウモリから取り出されたRaTG13は、最近、現在のコロナウイルスと非常によく似ている、と言われており、実際、ゲノム配列が96%一致しています」としているが、これは、華南工科大学の2人が論文で報告したものだ。

 今週号の「ネイチャー」誌に掲載された新型コロナウイルスに関する二つの記事は、感染者から検出されたウイルスのゲノム配列が、ナカキクガシラ・コウモリから最初に発見された Bat CoV ZC45コロナウイルスと96%または89%一致したことを明らかにしている。 華南工科大学のこの研究者は、最近発行された「ネイチャー」誌の二つうちの2月3日付けに掲載された記事は中国の彼の同僚たちの共同研究結果、もう一つの記事も同日付けで、やはり同僚たちの別の共同研究を基にしたものだ、と指摘している。

「ネイチャー」誌は、新型コロナウイルスに関して他にもいくつかの論文を掲載しており、新たなデータが利用可能になると、それをさらに更新している。これは、科学が経験的に、試行錯誤によって発展していくからだ。

 科学者が注目する2つの重要なポイントは、(1)2つの異なるウイルスの組み換えの経路と(2)人間に感染させた中間宿主ーだ。ハッサニン博士によると、2つのウイルス(それぞれコウモリとセンザンコウによって伝達される)の組み換えの仕組みはコロナウイルスですでに説明されていた。「重要なのは、組み換えの結果、新しいウイルスが新しい宿主種に感染する可能性があること。また、組み換えが起こる条件は、2つの異なるウイルスが同じ生物に同時に感染することです」。

 彼によれば、問題は「どの生物で組み換えが起こったのか。コウモリ、センザンコウ、あるいは他の動物か。そして、どのような環境の下で、このような組み換えが起きたのか」だが、これらは、ほとんど解明されていない。

 注目すべき彼の記事にある他の箇所には、「今、我々が対処せねばならない新型コロナウイルスは『以前から存在している二つの間にあるキメラ』だ」とある。筆者の私はvirus学者でも、医者でもない。ただのジャーナリストだが、知っているのは、キメラが複数の異なるDNAをもつ細胞で構成される生きた個体で、その名の由来がギリシャ、エトルリア、ローマの神話に出てくる伝説の怪物に由来している、ということだ。

 2000年に初上映された米国のアクション映画「ミッション・インポッシブル 2」では、「キメラ」はあらゆるものを破壊できる恐ろしいウイルスの名前だが、幸いなことに”いい奴”たちがそれをやっつけるのに成功する、という筋書きになっていた。そして、Research Gateに掲載され、”何者か”によって消されてしまった華南理工大学の二人の研究者の論文で使われていたのは「キメラ・ウイルス」だった。

 「ネイチャー」誌の記事は、この「キメラ」が自然の組み合わせの産物だ、ということを示唆するものとなっている。先の二人の研究者は、そのように見ることも可能だ、としているが、恐らく、武漢の実情を考慮に入れないとした場合に、そう言える、ということだろう。

 疑問は解けていない-華南理工大学の二人の研究者が指摘した「武漢にある二つの研究所」が具体的に何の研究をしているのか?中国共産党(CCP)は新型コロナウイルスの発生源に関する重要な事実を隠ぺいしたのか?中国は宣伝工作で、新型ウイルス危機解決の立役者としてCCPを持ち上げようと試みた。だが、実際には、CCPが問題を隠蔽しようとし、対応が遅れさせた張本人なのだ。

 コラムニスト、ジョシ・ロジンが米国の有力日刊紙「ワシントンポスト」に新型コロナウイルスについて書いているように、私たちは、このウイルスを「中国ウイルス」ではなく「CCPウイルス」と呼ぶべきだ。そして彼はこう述べているー「そう呼ぶ方がずっと正確だ。気分を害するのは、そう呼ばれるに値する人々だけである」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2020年3月24日