・中国国内で加速する宗教迫害-地方官僚に”隠蔽指南”の学習も(BW)

(2020.1.29 BitterWinter 

 市民虐待が明らかにされた時、全体主義国家ではどうするかー嘘をつき、証拠を隠し、壊し、もっと厳しい抑圧法を採用するのだ。

*告発の海外への拡散で”肖像画”撤去

 2019年11月26日、BitterWinterは、江西省吉安市のカトリック教会で起きた事実を伝えたー聖母子のThe portrait of Xi Jinping hangs at the center絵画が地元当局の命令で撤去され、習近平主席の肖像画に置き換えらた、と。ニュースがこの写真付きで海外で広く報じられると、当局の職員が夜間、教会に出向き、習主席の肖像画と共産党のプロパガンダを取り外し、教会の入り口に掲げられていた「未成年の宗教活動を禁止する」と書いた木製の看板も撤去した。

 吉安市のカトリック教会の壁に飾られていた習主席の肖像画と党の宣伝スローガンー海外に”暴露”され、間もなく撤去された

 当局の職員は、この事実をBitterWinterの記者に認め、「海外にこのことが報道されたため、中国共産党のイメージが汚された」と批判した。

 同様のことは、河南省汝州市の「中原イーディアンホン寺院」についても起きている。この寺院で、中国の指導者たちが崇拝の対象となっている、とBitterWinterが報道し、海外に広く伝えられると、当局は時を置かずに、この寺院を解体した。

 当局の職員によると、破壊の命令は”上級当局”から”出され、中国共産党統一戦線工作部の現地職員が地方の連合戦線部の職員が解体を監督した、という。

The Zhongyuan Yidianhong Temple has been demolished, leaving behind only the statue of Mao Zedong.院は取り壊され、毛沢東の像のみが残された

*宗教抑圧政策の指南書発行・機密漏洩に厳罰も

 また、BitterWinterはこのほど、遼寧省の北東部で昨年発行された宗教抑圧政策の実施に関するいくつかの文書を入手した。それによると、中国共産党に関する否定的な情報を”適切”に処理し、排除するために、「国内での厳格な管理と海外での緩い規制」が必要だとし、「世論に注意を払うように」と関係機関に指示した。

 そして、BitterWinterや他のメディアが中国国内で行われている宗教的迫害のニュースを数多く流したことを踏まえて、中国共産党は全国的にの文書の機密保持を強化し、「そのような話を共有したり機密文書を漏らしたりする者を厳しく処罰する」と警告。

 党は、対宗教政策を改めるのではなく、迫害の真実を隠蔽し、住民を脅迫し続けている。このことは、新疆ウイグル自治区でのイスラム系住民の教育収容所による思想改造についての、矛盾した主張に、顕著に見られることだ。

 山東省の地方政府関係者によると、昨年9月、中国共産党の党員全員が、国務院情報室が作成した数多くのテキストを学習するように命じられた。文書の内容は、ウイグルの人々とその他の少数派イスラム教徒のに対する虐待を正当化するもの。「新彊における職業教育と訓練」「新彊におけるテロ、過激派、人権保護との闘い」「新彊に関する歴史的な事柄」などのタイトルがついたテキストは、国際社会からの抗議に対する回答として作成された。

 「山東省の公務員が新疆についての政策を学習する必要が、なぜあるのか?国内世論を操作する方法を学び、外国の人々に対して統一された答えを作るためだ」とその地方政府関係者は説明している。

*宗教迫害の暴露は続ける-国際社会の支持を得た香港に学ぶ

 また、中国におけるキリスト教迫害に関する2018年の共同声明に署名した「家庭教会」の牧師はBitterWinterに対して、「中国でなされている宗教抑圧はますます激しさを増しており、中国共産党の悪行を暴くことが難しくなっています」と訴えた。

 「政府当局は、私たちのインターネットによる通信をブロックし、多くのVPN(仮想プライベート・ネットワーク)のサービスを利用できないようにしており、私たちが迫害の情報を海外に発信することが難しい。また、王怡牧師(学者弁護士で、プロテスタント改革派教会牧師)が9年の刑を宣告されたという事実は、教会で働く同僚の間に不安をもたらしている。海外のメディアや人権活動家と連絡をとることで、自分たちが”国家転覆の罪”や”外国勢力の浸透に協力した罪”、あるいは”外国の勢力と共謀した罪”などで告発され、罰せられるのではないか、と恐れるようになっています」と深刻な状況を説明している。

 彼自身、共同声明に署名した後、彼が使っていた17か所の教会集会場が当局によって閉鎖され、関係していた他の教会も巻き込まれて、いくつかの集会場が閉じられた。「共同声明に署名したすべての説教者と牧師が、迫害の主要な標的になりました。彼らは警告を受け、あるいは、召喚され、監視され、追いかけられ、逮捕・拘束された人もいます」としているが、それでも、「中国における宗教的迫害について真実を暴露することは、必要なのです」と言明。

 さらに、「人々は立ち上がり、自分たちの宗教的自由を守るために声を上げるべきです。当局がやりたいようにするのを許すべきではありません。厳しい迫害をまだ免れている宗教グループは黙っているべきではない。今は良くても、当局の手で早晩、教会が打ち壊され、閉鎖されるかもしれないのです」と警告した。

 そして、香港の民主化運動から学ぶべきことがある、とし、「香港の人々は、中国本土の政府に妥協せず、声を上げたため、国際社会から支持を得ました。米国のように、2019年香港人権・民主主義法を制定し、中国共産党の全体主義的なやり方に対応する措置をとる国も出てきている」と述べた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日7言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

 

 

 

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2020年2月1日