・”聖職者性的虐待サミット”目前、全世界レベルでの問題解決求める声高まる(CRUX)

(2019.2.12 Crux Rome Bureau Chief Inés San Martín

ローマ発-21日から24日にかけ全世界の司教協議会会長と他の教会関係者がローマに集まって聖職者による性的虐待と児童保護に関する会議を開く。その会議を目前に、この問題は「世界全体で解決すべき世界の問題だ」と会議の行方を注目する声が世界的に高まっている。

 メキシコ司教協議会の会長で、モンテレイ教区長のロゲリオ・カブレラ大司教はこの会議に出席を予定しているが、10日の記者会見で、メキシコで過去9年間に性的虐待の訴えを受けた152人を司祭としての職務から外したことを明らかにし、「非行司祭の一部は刑務所に入り、他の者は司祭としての職務をはく奪された」と説明した。

 性的虐待を受けた被害者の数は明らかにしなかったが、「最近、被害者の何人かと面会した」と語り、メキシコのそれぞれの教区が虐待の訴えを司直の手に委ね、司祭による虐待に関する情報網を作ることの重要性を強調。

 さらに「私たちがせねばならないことの一つは情報をしっかりと集めることです。メキシコには情報を集めるセンターがない。なぜなら、司教たちがばらばらに問題に対応しているからです」と現状の不備を認めたうえで、「カトリック教会としてzero tolerance(例外なく厳しく対応する)を明確にすることで、犯罪が減少すること、そして、法に従って、司教たちが問題の対処に全力を挙げることを希望します。訴えを受けたら、速やかに司直に伝えねばなりません」

 スペインでは、聖職者による性的虐待事件が今も次々と明らかになっているが、一般信徒と聖職者がチームを組み、21日からの会議への準備にとどまらず、被害者と会ウ活動が始まっている。今月初め、男女の教師、心理学者、医師、ジャーナリスト、民法と教会法の専門家が集まって作られた「ベタニア協会」がそれだ。

 代表のマリア・テレサ氏は11日、Cruxに、協会は自主独立、継続的に活動することを保証するものとして「組織的」に作られた、とし、教会の教理の原則を認めるが、いかなる教会の規則にも縛られない、自主独立の組織であることを強調。「被害者とともにあることを第一としています。彼らは協会の存在理由ー虐待に苦しめられた人々と、私たちの心に訴える具体的な状況のもとで個人的、専門的につながること」「私たちの選択は被害者のため、私たちの活動は被害者との協力です」と語り、自分たちは「同じ精神的外傷を負った人々に対して、補助的に接しようとする者」の、個人ではできない活動を目指す集まりであることも強調した。

 スペイン政府のサラマンカ大学で「カトリック教会の社会教説」の修士課程の科長、コンテ氏は、ベタニア協会のメンバー全員が被害者との関わりによって動かされ、被害者と共に活動し、彼らの生きざまだけでなく、彼らの能力と素質が「加害者が彼らに伝える罪の意識から彼ら自身を解放し、自己の存在を回復するのに役立っている」ことが分かってきた、と言う。

 そして、今回の全世界司教協議会会長たちが集まる会議について「被害者たちが『私たちの家族のメンバーたち』だ、ということを想起することが大事。教会で虐待された人々は、私たちの”家”で虐待されたのです-学校で、司祭館で、神学校、告解場など、霊的な寄り添い、召命の識別をする神聖な場所において」と語り、「被害者と会い、前に座り、目を合わせ、神に心を開く真実の告白に耳を傾ける。それは神秘-一方で悪に心を開き、また一方で、復活の神秘なのです」。教会によって虐待された犠牲者と会う人は誰でも、悪と出会うことを覚悟する必要がある、と説明した。

 さらに、「私たちは作業の初まりにいるのではない。途上にいます。数多くの情報を持っています。心の痛む証言を読み、報告を知り、とても強力な制度的な立場を手に入れました。そして、被害者たちに対して開いた心を持ちます。本当の話、彼らは時たま、怒ります。でもそれは正常なことです。ドアをたたいても相手が返事をしなかったり、返事をしてもドアを開けなかったりすると、怒るでしょう(それと同じです)」と語る。「何が問題でしょう?被害者たちが怒ることでしょうか?そうではありません。問題は、彼らが苦しまされてきた殊にあります… 被害者たちを恐れてはなりません。加害者たちを恐れるべきなのです。なぜなら、私たちは悪を受けた人たちではなく、悪を恐れねばならないからです」。

 コンテ氏はまた、教会共同体全体が、一般信徒も含めて、弱者虐待が問題になった時に敏感に対応するかどうかを問うように求められている、と指摘し、「私たちは、組織の評判を気にする思いに打ち勝ち、(問題があったら)ピンと反応する感性を持たねばなりません」とも述べている。

 バチカンの今回会議の準備委員会は、昨年12月18日付けで全世界の司教協議会の会長に個別に書簡を送り、「教皇フランシスコはご自身の証しと模範を通して、私たちに何をすべきかを語っておられます」と述べ、「何がイエスの見習うべき行為か?福音書が私たちに教えていますーキリストは、病んでいる人たち、罪人たち、助けを必要としている人たちの側に行かれました」「それに倣う第一歩は、何が起きていたのか、について真相を知ること」としたうえで、会議前に、それぞれの国で被害者のところに出向き、彼らのこれまでの苦しみを直接、知るように、強く求めていた。

 教皇が会議開催を発表した後、会議の重要さを弱めようとする試みが見られ、教皇ご自身も、過大な期待を持たないように、と発言されている。教皇の顧問会議は当初、聖職者による性的虐待に対してどのように対応したらいいか分からない司教たちがまだいることを知って、昨年の会議開催の可能性を議論した、という。ローマでの3日間の会議を「虐待を受けた子供たちの悲劇」を、一人ひとりの司教たちに理解させる土台とする、と教皇は言われた。すでにこの問題が深刻な事態を招いている地域に限ることなく、である。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

 

 

 

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2019年2月13日