・「世界平和のための兄弟愛」署名文書の意義を強調、性的虐待対応の前進訴え-教皇、帰国途上会見

(2019.2.5 VaticanNews Christopher Wells)

 教皇フランシスコは5日、アラブ首長国連邦訪問からの帰途に機上会見に応じ、アブダビでの諸宗教の会議の席上、アル=アズハルのグランド・イマーム、アフマド・アル・タイーブ師と共同署名した「世界平和のための人類の兄弟愛」に関する共同文書について、「第二バチカン公会議の精神を基に生まれ、カトリック教会にとっての前進」と評価された。

 教皇は、この文書を「多くの検討と祈りをもって準備された」としたうえで、今この時点での大きな危機は「私たちの間の破壊、戦争、嫌悪」であり、「もし私たち信じるものをもつ者が手を握り、抱き合い、接吻し、そして祈ることができなければ、私たちの信仰は打ち負かされてしまうでしょう」と語った。そして、この文書はすべての民の父、平和の父である神への信仰から生まれたもの。全ての破壊行為、カインから始まる全てのテロを糾弾するものです」と説明された。また、カトリックの立場から見て、この文書は「第二バチカン公会議よりも1ミリ先を行くものではありません… 公会議の精神を基に作られたもの」とし、イスラム教の間には様々な意見があるが、「彼らにとっても、この文書は一つのプロセスです」とされた。

 また、アブダビでのイスラム教指導者たちとの会合について、教皇が会合から得たキーワードは『叡智』と『誠実』だ、とし、「叡智と誠実の道は私たちを平和の建設へと導きます」と語り、「真の賢者たちの唯中にいる、という印象を持って会合を終えました。とても満足しています」と評価した。

 ベネズエラのマドゥーロ大統領から反対派との対話再開を望む書簡が送られてきたことについて質問が出たが、教皇は「まだ(その手紙を)読んでいません」としつつ、「何ができるか、様子を見ます」と述べ、「対話を助ける意思は、常にある」が、大統領支持派、反対派が共に対話を希望することをその条件に挙げた。

 最後に記者から、修道女に対する性的虐待の問題を問われた教皇は、「過去において、司祭たち、そして司教たちさえも、性的虐待の罪を犯したこと」を認め、さらに「これは今も起きているに違いありません。その問題を認識しただけでは、終わらないのです」とされ、教会は、いくつかのケースへの対応を前進させているが、さらに対応を進める必要があることを強調した。

 関連して、性的虐待が引き起こしている危機への対応で前任のベネディクト16世を讃え、「彼が、この問題について多くの事をする勇気を持っておられたことを強調したい」とし、彼の対応が弱かった、との批判があることに対しては、「まったく、そうではありません。彼は良い方です。一切れのパンも彼より劣る、彼は強い人です」と弁護した。さらに、教会は、祈りと共に、性的虐待への対応で前進することができる、と語り、「私は前進することを希望します」と述べて、実際に対応に進展がみられることを強調した。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2019年2月6日