・米大使館エルサレム移転に抗議のパレスチナ人に死傷者多数-教皇が哀悼、和平訴え(Crux)


(2018.5.16 Crux  VATICAN CORRESPONDENT Inés San Martín)

ローマ発―米国の在イスラエル大使館のエルサレムへの移転強行をきっかけに、これに抗議するパレスチナ人に対してイスラエル軍が銃撃、パレスチナ自治区ガザで60人を超える死者、3000人を超える負傷者が出る大惨事となっているが、教皇フランシスコは16日の定例一般謁見の最後に、この問題を取り上げ、聖地と中東での暴力の連鎖に強い懸念を示した。

 教皇は「私は聖地と中東地域での緊張の拡大、そして、和平、対話、交渉の道から外れた暴力の連鎖に強い懸念を表明します」と述べ、犠牲者と負傷者に哀悼の意を示すとともに、被害に遭ったすべての人々に心を寄せ、「暴力によって、平和は絶対にもたらせません。戦いは戦いを、暴力は暴力を生むのです」と訴え、「神が私たちをお見捨てになりませんように」と祈った。そして、「すべての関係者と国際社会が、対話、正義、そして和平の道に戻るように求めます」と、イスラエルと世界の関係者に呼びかけた。

 また、連合軍のローマ進軍の端緒を開いたモンテカシーノ作戦の記念式典に参加するためイタリアを訪問し、一般謁見に参加した第二次大戦の元ポーランド兵たちを謁見し、「前世紀、二つの大きな集団が(悲惨な戦いを繰り広げた)、そして私たちはそこから教訓を学んでいない。神が、私たちをお助けくださいますように」と述べ、また「あなた方が経験した戦争の悲劇、聖霊の力をもって、理想への誠実さと命の証しが、世界中で続く紛争の終結と和平の道への力となるように」と祈った。

 トランプ米大統領が昨年12月、選挙公約だった米大使館のエルサレム移転の実施を表明した際、教皇は、エルサレムのために「深い懸念を表明せざるを得ない」としたうえで、「聖都の現状維持を定めた国連決議」を尊重するように、強く訴えていた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年5月17日