教皇フランシスコは11日、日曜のアンジェラスの祈りの前に起きた、エジプト・カイロのコプト教会とトルコ・イスタンブール市街で相次いでおきたテロの被害者のために祈りを捧げた。
この日、カイロではコプト教会の聖マリア大聖堂の外で爆弾テロがあり、73人が死傷、ソマリアではモガデシュで自爆テロがあり12人以上が死亡、トルコのイスタンブールでは前日、土曜日にサッカー競技場の外で二つの爆破テロが起き、200人近くが死傷した。
教皇は「この数時間の間に、いくつもの国で起きた悲惨なテロ攻撃の犠牲者のために祈ります」としたうえで、「悲しいことですが、現在、いくつかの場所で、暴力が死と破壊の種を蒔いています。しかし、それに対するべきは、神への信仰、人類の一致、そして市民社会の価値です」と言明。
「親愛なる私の兄弟、教皇タワドロス2世(コプト教会の代表)とコプト教会共同体に心から語りかけます。そして、 命を落とした方々、傷ついた方々のために祈ります」と励まされた。
(2016.12.6 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
南米ベネズエラで毎12分から18分に一人が殺されている―彼あるいは彼女の名前は分からないが、統計は嘘をつかない。世界最大の原油埋蔵国のひとつ、ベネズエラでは、何年も続く独裁政治と経済失政から、絶望的な人道危機が起きている。
ニコラス・マドゥロ政権の代表が12月6日、バチカンの仲介による和平協議を求める反対派代表と会談の場を持つ。国民に最も人気のあるレオポルド・ロペスら批判派の主要人物の幾人かは欠席、その妻たちも出てこない。というのは、彼らは今、ローマにいて、バチカンで陳情活動をし、カトリック教会に危機解決に立ち上がってくれるように要求しているのだ。マドゥロ政権が反対派が求める和平協議に応じないなら、教皇代表が和平協議実現に動いて欲しい、と。
「私たちはここバチカンで、国際社会はベネズエラの政治犯の釈放を求めているということを認識してもらいたいのです」とティントリ・ロペス夫人は語った。元運動選手でテレビやラジオの司会者を務めるティントリは今、彼女がベネズエラの「イデオロギーの囚人」と呼ぶ政治犯問題に取り組む国際的な顔になっている。批判派は、107人の政治犯の実名を公表し、釈放を要求した。彼女の夫、レオポルド・ロペスは運動の最重要人物の1人に数えられることになった。
「私たちは彼ら全員のために、ここにいます」と語るティントリ夫人。「明日には全員が自由になっていなければなりません。そうでないなら、和平協議は成立しない。そのような事態になったら、バチカンが事態の打開に立ち上がってくれるのを期待してます」。4日の夜、ティントリと義母、それに批判派の夫人たちがサン・ピエトロ広場で手をつなぎ、国際的な理解を求める示威行動に出た。
時を同じくして、囚われの身となっているレオポルド・ロペスらが釈放を求めるハンガーストライキを開始した。「残念ですが、彼らはそのために暴行を受けている、という知らせを受けました」とティントリは言う。彼女たちは4日の夜にローマに着いたが、「バチカンに願いが届くまでここにいます。マドゥロ政権は国際条約を守らねばなりません」。レオポルド・ロペスは政府に対する平和的な抗議デモを指導したあと、2014年2月に収監された。もうひとりの批判派のリーダーは、米政府の助けを借りてマドゥロ政権の転覆を図ろうとした、として昨年、逮捕されている。国連人権高等弁務官事務所やアムネスティー・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウオッチなど国際的な人権保護機関、団体が彼らの釈放を求めているが、釈放は実現していない。彼らを含む政治家、活動家、学生たち107人はマドゥロ大統領によって軍刑務所に収容されている。批判派が主張しているのは、まず和平協議の前提としての彼らの釈放、そして人道的な回廊地域の開設、選挙日程の再確定だ。
レオポルド・ロペスの母親は、釈放を最優先することを訴える。「彼らは餓死寸前です。病院には資材がなにもない。がん患者は、政府が薬の輸入を港で止めているために、救われるはずの命を落としている。そうしている間に、12分か18分おきに、1人の命が失われているのです」と窮状を説明した。そのような中で、彼らの要求をマドゥロ大統領が受け入れなければ、頼りはバチカンしか残っていない、とバチカンの調停に期待をかけている。
バチカンは批判派から要請され、マドゥロ政権にも受け入れられている。同じ南米のアルゼンチン出身の教皇フランシスコがベネズエラと結びつきがあるのに加えて、もうひとりのバチカン高官がカトリック教会による和平プロセス推進の力となることを期待されている。国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿だ。彼は教皇によって国務長官に任命されるまで、2009年から2013年までベネズエラの教皇大使を務めていた。
パロリン国務長官は12月2日付けでマドゥロ大統領に部外秘の書簡を送り、その中で、批判派が求めている政治犯釈放などとともに、大統領によって停止されている国民議会の憲法上の権限を回復するよう要請した。4日、ベネズエラでは、バチカンでの任命式から帰国したバルタザール・エンリケ・ポラス・カルドーゾ枢機卿が、枢機卿としての初ミサを捧げたが、ミサには教皇大使のアルド・ジオルダーノ大司教も参加しており、両者のミサ後の会談で、ポラス枢機卿は、教皇に「ベネズエラの国民は信仰と希望と喜び、そして憎しみと暴力を超えた平和と対話をもたらすための堅い意志をもっています」と伝えてくれるように大使に求めた。枢機卿はマドゥロ政権を強く批判していることで知られており、11月にローマで、記者団に対して、枢機卿に選ばれた理由は、ベネズエラの危機にある、と語っている。
Cruxが何人かの関係者に取材したところでは、政治犯の釈放、和平協議の成功に大きな期待をかける声は少ない。しかし、教皇フランシスコは、先日のスエーデンから帰国途中の機内での記者会見で、「和平交渉を支持する対話が紛争から抜け出る唯一の道です。他の道はない」と語った。そして、レオポルド・ロペスの母親は言う。もう時間は残されていない。「こうしている間に、これ以上、何人の人が殺されるのでしょうか」。
(訳・南條俊二)
こうしている間にも、ベネズエラでは新たな殺戮が明らかになっている。ベネズエラのカトリック司教団の正義と平和委員会は6日、12人の若者がマドゥロ大統領が作った人民解放軍によって殺害されたことを明らかにするとともに、戦争犯罪であり、殺人行為であると強く非難した。12人は10月25日に人民解放軍の手で拉致されていたが、11月28日、同国ミランダ州バルロベントの大規模墓地で遺体となって発見された。
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」(欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。最近、映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、ご紹介しています。
(2016.12.6 TABLET ローズ・ギャンブル)
かつては多民族の共生と平和の希望の光だった南スーダンのエイの町が、今や、再発した南スーダン内戦の中心になっている。カトリック、エイ教区のエルコラノ・ロドゥ・トンベ司教は「10万以上の人びとが 恐怖と不安の中で暮らしています。彼らは町を離れることがでないのです」と語る。司教の話では、11月の初め、エイの町を出て旅をしていた11人がスーダン人民解放軍の兵士たちにとらえられ、藁葺き小屋に入れられて、焼き殺されたが、それから二週間も黒焦げの遺体は放置されていた、と言う。AP通信の記者が現地で取材したところ、遺体は七体確認され、そのうちの何人かは両手を背中で縛られたままだったという。
司教によると、殺害の対象になっているのは、リエク・マチャ前副大統領の支持者とみなされた人々だ。「少数民族への嫌悪が広がり、市民を標的にした大量虐殺が起きる兆候が見られる」と、11月下旬に現地を訪れた国連特別顧問のアダマ・ディエンは語った。狙いを定めた殺害、襲撃、傷害、強姦、そして山刀で家族を切り刻むという蛮行がいたるところで起きている、という。こうした状況を受けて、国連事務総長が11月16日に、南スーダンについて「残虐行為が現実のものとなっている」と厳重な警告を行っているが、国連の平和部隊にはそれを抑えるだけの「兵力も能力も十分にない」ことも認めている。事務総長は国連安全保障理事会に繰り返し南スーダンへの武器禁輸を実行するよう求めているが、「兵器に圧倒されている」と嘆いてもいる。
今年7月以来、およそ15万人がエイの町からウガンダに脱出し、12万人が南スーダンの他の地域に避難している、という。国連難民高等弁務官事務所は9月に、約10万人が軍事作戦によって閉じ込められているとし、石鹸や毛布の配給支援を行っていた。
(写真は、支援物資を配給する国連高等弁務官事務所の南スーダン、エイの現地サイトの外にたたずむ女性たち) (訳・南條俊二)
(以上は、カトリック修道会・イエズス会がイギリスで発行する、世界的に権威のあるカトリック週刊誌TABLETから、許可を得て翻訳・転載したものです。Tabletのウエブサイトはhttp://www.thetablet.co.ukです。こちらもご覧下さい。)
(2016.12.1 Tablet ミーガン・コーンウェル)
カトリックの司祭たちは精神的な重圧を感じ、うつ病と不安に駆られる人数が増えている。だが、精神面でのケアはバラバラでわずかしかされていない。
今年9月、英国エセックス州の65歳の司祭が、自分の担当する小教区に隣接する二つの小教区を担当していた年配の司祭が引退し、亡くなり、これらの小教区を兼任させられることになり、担当司教に「あらたに二つの小教区を兼務することはできません」と訴えた。 彼はすでに毎週末にミサを四回捧げ、地元のカトリック系の複数の学校、複数の病院、ホスピスを担当しているが、司教区に彼を助ける司祭の余裕はないのだ。
このような問題は、イングランド、ウエールズの教会にとどまらない。アイルランドでも、聖職者の人数が減り続けており、先行きへの不安が高まり、カトリック司祭協会によると、最近の何年かの間に少なくとも5人の司祭が自らの命を絶っているという。
過去二、三十年に、英国とアイルランドのカトリック司祭たちは深刻な心理的緊張のもとに置かれている。子供たちへの性的虐待事件の波及的な影響は確かに大きな原因になっている。だが教会に通う信徒の減少、召命の崩壊、そして教会の影響力と社会的地位の低下-欧州全土のあらゆる教会に浸透しつつある世俗化の影響-が彼らを取り巻いている。
教区司祭にとって、洗礼や婚姻の秘跡を授ける回数よりも、葬式を執り行う回数が多いことがしばしばだ。いくつもの教会が閉鎖され、教区は再構成され、司教たちは司牧よりも管理運営に多くの時間を割いている。変化を管理することは環境がいちばんいい時でさえ難しい。ひび割れが起き始めている・・・。
(翻訳・南條俊二)
(以上は、カトリック修道会・イエズス会がイギリスで発行する世界的に権威のあるカトリック週刊誌TABLETから、発行責任者の許可を得て、翻訳・転載したものです。TABLETのウエブサイトはhttp://www.thetablet.co.uk です。こちらもご覧下さい)
【2016.12.5 CJC】 世界教会協議会(WCC)常議員会が初めて中国で開催された。11月17日から23日まで開かれた常議員会は、中国基督教協議会と三自愛国教会の主催によるもの。 三自愛国教会は、世界最大のプロテスタント組織の一つ。
中国は1970年代後半に開放政策を展開、宗教に対する寛容も徐々に増加、今日では宗教上の自由が公認されている。無神論政権が成立した1949年、キリスト者は約70万人と推定されていた。現在、プロテスタントは3800万人以上、年約50万人増加していると見られる。
常議員会のメンバーは上海の中国基督教協議会を訪問、南京では『愛徳基金会』代表者と会談した。11月24日には北京で国家宗教事務局を訪問、王作安局長と会談した。
常議員会では、オラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事が、6月にノルウェーのトロンハイムで開催した中央委員会以後の問安活動、コロンビア、南スーダン、韓国の平和構築に焦点を当てた作業に関する報告書を提出した。中国、米国、中東における加盟教会の働きについても言及した。常議員会は、2017年の活動計画を承認した。アフリカに焦点を定めた正義と平和活動、特にナイジェリア、南スーダン、コンゴでの課題が取り上げられた。
中国の『愛徳基金会』がWCC加盟を申請した。同会はすでにジュネーブのエキュメニカル・センターに事務所を設置している。常議員会は、南京で『愛徳基金会』を訪問、同会の運営とともに、聖書印刷や、中国内外の社会福祉活動などについて議論した。同会の加盟は中央委員会が2018年に決定する。
次の常議員会は、2017年6月5~10日にスイスのジュネーブ近郊ボッセイで、11月17~23日にヨルダンのアンマンで開催される。□
――――――
◎「脱北者の半数以上がキリスト者」と韓国の人権団体
【CJC】北朝鮮専門の情報サイト『デイリーNK』が、韓国に住む脱北者の半分以上がキリスト教を信仰していることが明らかになった、と報じている。
韓国のNGO『北韓人権情報センター』は、2007年以降に韓国に入国した脱北者1万1730人を対象に調査を行い、その結果を『2016北朝鮮宗教自由白書』という報告書にまとめた。
「どの宗教を信じているか」という問いに、回答者の44・2%がプロテスタントで最も多く、続いて仏教(10・7%)、カトリック(10・2%)の順となった。□
【2016.12.5 CJC】 北朝鮮専門の情報サイト『デイリーNK』が、韓国に住む脱北者の半分以上がキリスト教を信仰していることが明らかになった、と報じている。
韓国のNGO『北韓人権情報センター』は、2007年以降に韓国に入国した脱北者1万1730人を対象に調査を行い、その結果を『2016北朝鮮宗教自由白書』という報告書にまとめた。「どの宗教を信じているか」という問いに、回答者の44・2%がプロテスタントで最も多く、続いて仏教(10・7%)、カトリック(10・2%)の順となった。
(2016.11.28 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
ローマ発―「なぜ、自分たちのことを話さないのですか?ヨーロッパ人ではないからですか?」。
昨年、ニューヨークで開かれたキリスト教徒に対する迫害をテーマにした集会で、中東で活動しているアルゼンチン生まれのシスター、グアダルペ・ロドリゴが発した厳しい問いだ。「パリで起きたテロを覚えていますか?人々の反応はものすごかった。メディア、ソーシャル・ネットワーク・・テロは金曜日に起き、土曜日に、さらに日曜日にも起きた。それに対する反応を考えてみてください」「でも、シリアでは同じことが毎日、起きているのですよ」。
近年、中東に住むキリスト教徒や他の少数派の人々は誘拐され、縛り首や磔けにされ、処刑にされ、性的奴隷にされるなど、さまざま暴力や迫害だけでなく、見捨てられている、とシスター・ロドリゴは訴えた。「西欧は私たちに背を向けています」と、中東で20年間に渡って奉仕活動を続けてきた彼女は語る。このような状況はシリアだけで起きているのではない。UNICEFによると、50万人にのぼる子供たちが捉えられており、人道援助や基本的なサービスから完全に遮断されている。
バングラディシュでも、11月26日、ダッカ近郊のマスバリにあるカトリック教会が、ナイフで武装した強盗団に襲われた。イスラム教徒、仏教徒、キリスト教徒が平和的に共生する見本とされることの多い国で、3500人の小さなカトリックの共同体が三年間に八回も襲撃されているのだ。マスバリの主任司祭、ビンセント・ビマル・ロザリオ神父は、襲撃を受けた時に縛られ、さるぐつわを噛まされた。「警察は保護の強化を約束していますが、惨事が繰り返されている。安全が保証されないのです」としている。2014年には地方にある修道院が襲われ、二人の修道女が暴行され、レイプされた。キリスト教徒を含む、このような、宗教的な理由による暴力、迫害、処刑は、決して特異なものではない。増え続けている惨事の一つの過ぎないのだ。
「Papal charity Aid to the Church in Need(ACN・助けが必要な教会に対する教皇の慈善援助)」が先週、英国で、世界の信教の自由に関する報告書を発表した。
報告書は、ジャーナリスト、学者、評論家などが協力してまとめたもので、”イスラム超過激主義”の動きの深刻化など、世界中で宗教的な理由による暴力と迫害の連鎖が増大している。2014年6月から2016年6月までの間に、世界の国々の5か国に1か国の割合で、少なくとも一回、イスラム過激派の襲撃が起きている。アフリカの17の国、オーストリアからスエーデンにいたる欧州諸国でだ。
強調すべきなのは、超過激派の特徴の一つが、自分たちと考え方が合わない人々、穏健で異なる伝統を持つイスラム教徒も含めて、すべてを抹殺、あるいは排除しようとする組織的な動きであることだ、という。英国のグラスゴーで商店を営んでいたアサド・シャーは、彼のフェイスブックに「ご復活おめでとう」を書いたという理由で、他のイスラム教徒に殺された。
報告書によると、シリア、イラクを含む中東諸国、アフリカ、アジア諸国など、調査した世界196か国で、超過激派が、あらゆる形の宗教の多様性を排除し、多元的な共存を単独の宗教文化に変えようと活動している。しかも、こうした宗教的な不寛容はイスラム教に関係するものとは限らない。欧州では、反ユダヤ主義者によるテロが増えている。パリでは2015年1月、レストランや週刊新聞「シャルリー ・エブド 」本社が襲撃されるなど、イスラム過激派テロで計17人が犠牲になった。オーストラリアのユダヤ人協会は、2014年から2015年の18か月間に190件の反ユダヤの事件が起きたとしている。
また欧州ではアフガニスタンやソマリア、シリアからの難民流入が、右翼や大衆迎合主義者たちの活動を活発にし、少数の信徒集団に対する差別や暴力、社会的な結束の後退などに影響を与えている。
アジアでも、ミャンマーの僧侶が反イスラム運動を主導し、民族主義の草の根集団を通して反イスラム感情を煽っている。同国は国民の9割が仏教徒だが、イスラム教徒が国内で急激に増えており、危険な状態に置かれつつある、と主張している。こうした状況に関連して、カトリック教会のチャールス・マウン・ボー枢機卿は2016年3月、、国連の人権委員会で、国際社会がミャンマーに宗教的な自由を尊重するように強く求めるように訴えた。ミャンマー政府は、個人が改宗したり異民族や異宗教の相手と結婚する権利を制限する「人種、信教の保護に関する法律」を作っている。米フォーチュン誌によれば、国連の高官の一人は、ミャンマー当局が同国西部、ロヒンギアのイスラム少数民族の浄化作戦を進めていると批判している。
そして、政府が率先して宗教的な迫害をしている国は、ミャンマーだけではない。何十年もの間、北朝鮮はキリスト教徒にとって世界で最も危険な国であり続けている。中国では、東シナ海に面する浙江省と周辺地域で、2000以上の教会が、中国共産党の方針に従わない、という理由で、十字架を破壊された。報告書によれば、調査した28のアジア諸国の半分以上で、信教の自由が高度に、あるいは中程度に侵害されており、自由が侵されていないのは21パーセントのみだ。
中東では、状況はさらにひどくなっている。調査した16の国で信教の自由が欠落している。中程度ないし高度の迫害が行われている国が87パーセントを占めている。
欧州では、英国、フランス、ノルウエー、デンマーク、ドイツで信教の自由に懸念を抱く理由がある。キプロスとギリシャでは状況はさらに懸念される。国民の三人に一人に信教の自由がなく、キリスト教徒の六人のうち一人が迫害されている。
全体としてみると、2012年から2014年にかけて「信教の自由」が改善した国は6か国程度、逆に悪化している国は調査した23の国のうち11か国。教皇フランシスコが「細かく刻まれた戦争」とよぶ、あるいはバラバラの第三次大戦とも言える暴力のスパイラルが加速している。世界で起きている暴力ゆえに宗教的な信念を咎めようとすれば、宗教的に動機づけられた嫌悪の犠牲になった人々は異議を唱えるだろう。
「私たちの世界を呑み込むような脅威を与える暴力の連鎖を絶ちたいなら、平和を戦争にとってか代わらせる必要があります」とシリア・カトリックのジャック・ムラー神父は、この報告書の前文で書いている。彼は、自分が何を話しているか知っている。彼は2015年にイスラム国に誘拐され、84日後に脱出に成功するまで、一人の助祭とともに狭いバスルームに閉じ込められるという辛い体験をした。そして訴えている。「今の時代は、従来以上に、宗教的な嫌悪と個人的関心を捨てて、信仰の求めるままに他者を愛することを学ぶ必要があるのです」と。
(翻訳・南條俊二)
*CRUXは、カトリック専門のニュース発信、分析、評論を行う米国のインターネットメディアです。2014年秋に米国の主要日刊紙、Boston Globe(欧米を中心としたカトリック聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけになった世界的スクープで知られる。最近、このスクープに至る苦労が映画化され、日本でも全国上映されました。現在は、米国のカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受け、独立系カトリックメディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」はCRUXが発信するニュース、分析、評論の日本語訳、転載について、了解を得て、ご紹介しています)
(2016.11.28 バチカン放送)
教皇フランシスコは、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長の訃報に接し、フィデル氏の実弟、ラウル・カストロ国家評議会議長あての電報で、お悔やみのメッセージをおくられた。教皇は、その中で、カストロ前議長の死去に悲しみを表され、遺族をはじめ「愛する国」キューバの全国民に弔意を述べられた。またカストロ前議長の永遠の安息を祈ると共に、すべてのキューバ国民を同国の保護者である「コブレの慈悲の聖母」に託された。
教皇フランシスコは、キューバと米国間に建設的対話の機会を設け、両国の関係改善のために貢献した。そして、2014年12月に米国とキューバが国交正常化を見据え交渉を開始したことを喜ばれ、翌年9月にキューバを訪問されてフィデル氏と会見。訪問を通して、キューバと米国の対話の歩みが、全世界の「和解の模範」となるよう励まされていた。
フィデル・カストロ前国家評議会議長は、生前、フランシスコに先立つ2人の教皇とも会見している。聖ヨハネ・パウロ2世は1998年1月、ローマ教皇として初めてキューバを訪問し、フィデル・カストロ議長と歴史的な会見を行なった。ハバナで行われたミサで、「キューバが世界に向けて開き、世界がキューバに向けて開くように」と訴えられた。ベネディクト16世は2012年3月にキューバを訪問し、ラウル・カストロ議長と会談。フィデル前議長とも私的に会見、この訪問で同教皇は国際社会の共存のために「対立から、和解と協力へ」と外交の転換を促すと同時に、米国にキューバに対する経済制裁の停止を呼びかけた。
(2016.11.24 Crux CONTRIBUTING EDITOR オーステン・イヴァライ
Pope Francis speaking to the Jesuits on October 24 [Photo: Jesuit Communications Office, Rome]
ローマで先日行われたイエズス会の総会で、教皇フランシスコが同会代表者たちと交わした質疑の内容が24日明らかになった。それによると、教皇フランシスコは、彼が現在重大な関心を抱いている問題として、世界における「政治」の衰えと神学校の硬直化の二つを挙げている。
質疑は形式張らない雰囲気の中で一時間半に渡って行われ、その内容は24日のイタリア・イエズス会発行のLa Civiltà Cattolica 誌がウエブサイト上で公開された。
質疑の中で、教皇は、「大きな政治」が「小さな政治」に落ちぶれてしまっていることを嘆いて、「政治家たちは一般的に見て、”衰え”ており、もはやさまざまな意見の違いをまとめていくことができないようです」と述べ、「今日、世界の国々は、自分の描く理想に身を捧げることができ、対話や苦闘を恐れず、知性とカリスマをもって政治を進めようとするような、偉大な政治家を欠いています」と強く指摘した。
また教皇は、イエズス会士たちに、神の大いなる栄光を常に希求するカリスマに基礎を置いた「預言者的な大胆さ」を抱いてことに当たるように強く求め、「時として、説得や駆け引きで大胆さと努力を結びつけることも必要になる」と言明した。とくに注視すべき分野として、腐敗との戦い、その例として一国の憲法改正の力をもつ立場から、権力のある地位の在任期間を伸ばそうとする政治指導者による試みを挙げた。そのような試みは、教皇の故郷、アルゼンチンを含むラテン・アメリカでしばしばされてきた。アルゼンチンのキルチネル大統領(当時)は2013年に任期延長を試み、国民から支持を得るのに失敗したが、昨年には、ボリビアのモラレス大統領が四期目を勤められるような憲法改正に成功した。エクアドルとニカラグアでは憲法改正で、大統領がそれまでは認められていなかった三期目を勤めている。
「物事を教え、知らせるイエズス会は、『将来の統治を確かなものにする法の定めに敬意を払わないなら、そのような国は成長できない」ということを皆に納得させる大胆さをもって働いていると信じています」と述べた。
教皇はまた、フランスの司教団が最近、政治の再建に関する文書を更新したことを高く評価して、このことは、「人々の一致、多様性を持つさまざまな人々の諸集団の一致を作り出す名工の技」とは政治においてどういうものかを示している、と語った。そしてイエズス会士たちに、福音の”現地化”の立場に立って、信仰、思想、文化を画一化する動きに立ち向かうように強く求め、植民地主義の裏にある「解釈における中央集権主義者の典型」が存在していることを遺憾としたうえで、教会は今こそ、「一つ一つの人々の集団、文化、言葉を尊重して、物事を多様に解釈」していかねばならない、と訴えた。
さらに教皇は、今夏のポーランドでのイエズス会士たちとの集まりで行った呼びかけを繰り返す形で、魂の識別の技―イエズス会士の「特技」―を持って、次世代の司祭たちの育成を助けるように、参加者たちに求めた。そして、このところ数多くの神学校が識別とは正反対の形式主義や硬直的な姿勢へ逆行し、悪か善かで割り切る考え方で倫理道徳について詭弁を弄する傾向に陥っている、と警告。すべての道徳の領域が『あなたはしていい』と『してはいけない』、『ここではいいが、ここではいけない』に限定された教え方―第二バチカン公会議以前に教皇の世代の司祭たちが教えられた「衰退したスコラ哲学」―そうした「『識別』とは程遠かった過去に似てきていることを「とても心配しているのです」と強調した。
そして、客観的な道徳性を欠いた「ご都合主義」に陥ることなく、聖トマス・アクイナスと聖ボナベントゥラの「偉大なスコラ哲学」の特徴である「識別に内包された偉大な財産」を再び取り戻すことの必要性を説いた。二人の哲学的な手法―原則を踏まえながら、実際の状況に応じて援用していくやり方―は「カトリック教会のカテキズム」と教皇が先に公表した家族の問題に関する使徒的勧告「愛の喜び」の根底になっている、とし、この使徒的勧告は、再婚した人々に彼らの置かれた状況について識別しながら、寄り添うことを、司祭たちに求めているが、「(「家庭」をテーマに開いた2回のシノドス(全世界司教会議)を通して、全教会によってなされた識別」に沿っていることを強調した。
「現実の生きざまの文脈」の中で神学を学ぶことについて出席者から問われた教皇は、「自分の身の回りの人々の生きざまだけでなく、ずっと離れた辺境の人々の生きざまとも繋がりをもって、学問的な学習がなされ、それに祈りと個人レベル、共同体レベルの識別を伴う必要があります」と答え、「これらの一つでも欠けていたら、私は心配を始めるのです」と念を押した。
「召命」についての問いには、教皇は、司祭としての、宗教者としての生き方への呼びかけを窒息させるような聖職権主義を強く批判し、「聖職権主義は成長を認めません。洗礼のもつ成長の力を認めないのです」と語り、「召命は存在します―あなた方自身が、それをどのように扱おうとするのか、どのようにそれに加わるのか、を知らねばなりません」。「召命」は2018年に開かれるシノドスのテーマだ。「仮に司祭がいつも急いでいたり、何千もの管理上の仕事に忙殺されたり、霊的な方向が聖職者のカリスマでなく、一般の信徒のカリスマに向いていることに納得がいかなかったり、召命の識別において一般信徒にとどまることをもとめたりする場合には、召命を受けないことは明らかです」として、こう付け加えた。「若い人々は要求をしたり、疲れてしまったりしてもいい、だが、際限ない集まりに時間を費やすよりも、さまざまな企画の仕事について聞き、招かれる必要がある」。
このテーマについて最も強い言葉で、教皇は、召命を不胎化させてしまうのは「自殺」だ、なぜなら教会は「母」だからだ、とし、「召命を奨励しないことは、聖職者を生む卵管を結束すること。母親に子を持つことをさせないからです」と言い切った。
自らの「慰め」を受けた体験―聖イグナチオ・ロヨラの霊性で、神の現存の体験を意味するのだが―について問われた教皇は、「日々の終わりにその日起きたことや行いを振り返る時に、ほとんどいつも体験しています。慰めを受けることは、私がこれまでに見つけた最高の落ち込み防止薬。主のみ前に立つとき、それを見出し、その日一日、主がなさったことを明らかにしていただくのです」と答え、「一日の終わりに私を導いてくださったこと、私自身の抵抗する気持ちにもかかわらず、波に乗せられるように運んで下さる力が働いていることを確信した時、私は慰めをいただくのです」と付け加えた。さらに、教皇職に在って、「私は神の内にあると感じることで慰められます―私がここで踊っているのは、私への票が集まったからではなく、神がそこにおられたからだ、と」と確信を加えた。
(南條俊二訳)
(2016.11.12 クリストファー・ラム TABLET)
米国の有力な保守派枢機卿は次期大統領にトランプ氏が選ばれたことを歓迎し、「彼の堕胎についての立場は、民主党のヒラリー候補よりも良い選択につながった」と述べている。
レイモンド・バーク枢機卿はバチカンの前最高裁判所長官だが、「次期大統領にトランプ氏が決まったことは、有権者にとって、堕胎が辛い選択となり、難民受け入れや貧しい人々を助けることよりも重要な争点だった選挙でクリントン候補よりも、”間違いなく”望ましいことだ」と語った。
本誌に対して枢機卿は、前教皇が就任前の2004年、ラッツィンガー枢機卿の時に、米国の司教団に対して示した「戦争遂行と死刑の適用については”妥当な意見の相違”がありうるが、堕胎や安楽死にそのようなことはない」とした指針を引用して、「堕胎と、移民の福祉の間に道義的な同一性はない」と語った。さらに「仲間である米国の人々が新大統領を選び、近年、米連邦政府を襲っていた腐敗に断固として取り組む 権限を与えたことをとても喜んでいる」と歓迎を表明した。
教皇フランシスコは、11日発行のイタリアの新聞La Repabblicaのスカルファーリ氏とのインタビューで、トランプ氏が貧しい人々を忘れないように訴え、以前の記者団との会見でもメキシコとの国境に壁を設けて不法移民の流入を防ぐとのトランプ氏の選挙戦での主張に意義を唱えているが、その教皇から、最近、バチカンの最高裁長官から、マルタ騎士団の守護者という名誉職に移動させられた枢機卿は、難民は大切に扱わねばならないが、受け入れの規模について各国は”慎重な判断”をすべきです」と述べ、「移民と難民は区別する必要がある。どの規模の経済難民を受け入れるかは、慎重に扱うべき問題。それについて善意の人々が反対するのは自由です。ただし、人の心は常に、死や恐怖、迫害から逃れようとする、正真正銘の難民には開かれていなければなりません」。
さらに枢機卿は「わたしは、堕胎と移民の福祉の間に道義的な同一性があるとは見ていない。移民はあなたや私のように神の似姿の中で作られ、尊厳を持って扱われるべきだと思うのは当然ですが、先の二つの問題をひとつの飛行機に載せるのは単純に誤りです」とし、「堕胎は、人間の成長の最も傷つきやすい段階での組織的な殺害です。選挙戦で、トランプ氏は、性的暴行や近親相姦で妊娠した場合、あるいは母体に危険が有る場合を除いて、堕胎に反対すると主張し、クリントン女史は合法的な堕胎を明白に支持していたことを、思い起こす必要がある」と語った。
なお、民主党には伝統的にカトリック信徒の支持者が多く、オバマ大統領も二度の選挙でカトリック票を得ていたが、今回の大統領選挙では、トランプ氏のカトリック票がクリントン氏を7パーセント上回った。 (翻訳・南條俊二)
以上は、カトリック修道会・イエズス会がイギリスで発行する世界的に権威のあるカトリック週刊誌TABLETから、発行責任者の許可を得て、翻訳・転載したものです。TABLETのウエブサイトはhttp://www.thetablet.co.uk です。こちらもご覧下さい)
【2016.11.21 CJC】
ナイジェリアのカドゥナ州南部でキリスト教徒の村が武装勢力に攻撃され、11月13日、死者45人、数人が負傷した。抑圧監視団体『ワールド・ウォッチ・モニター』(WWM)によると、5村で、残忍な攻撃が行われた。「犠牲者の大部分は、女性、子ども、高齢者。「家の教会」6カ所をや住居120が焼かれた」と言う。
キタクム村の居住者、サムエル・アダムさんはWWMに、攻撃は午後7時ごろに行われたという。「襲撃者は村を包囲、散発的に射撃してから家屋に爆発物を投げ込んだ。彼らは銃、ナイフ、刀、爆薬で武装していた。逃げられなかった女性、子どもや老人を殺害した」。州政府は、13日の殺害を、「野蛮な」攻撃と非難、南カドゥナの平和構築へ継続的な努力を損なうことはない、と述べた。
【2016.11.21 CJC】世界的な人の移動、移住の問題を専門に扱う国際機関『国際移住機関』(IOM、本部ジュネーブ)は11月17日、2016年にヨーロッパを目指して地中海を渡り、途中で遭難して死亡した難民がすでに4500人を超え、過去最悪になったと発表した。
(2016.11.11 CRUXバチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
ローマ発:教皇フランシスコは人々と政治家について判断を示すことはない。少なくとも、これはトランプ米次期大統領について聞かれた教皇フランシスコの答えだった。
イタリアのジャーナリスト、92歳の無神論者で左翼系の新聞 La Repubblica の創立者、ユージェニオ・スカルファーリ氏の質問に、教皇はこう答えた。「わたしは人々や政治家について判断を示すことはしません。ただわたしは、彼らの対応が貧しい人やのけ者にされている人に及ぼしている害は何かを理解したいのです」。
教皇がこれまでトランプ氏について語ったのは、米大統領選挙前の2月、メキシコ訪問から帰る機上での記者会見で、一度だけだ。トランプ氏の名を上げなかったが、随行記者団の「もしカトリック信者が彼に投票するとしたら、どう思うか。彼は米国とメキシコの国境1550マイル以上に壁を作り、不法移民を強制送還する、と言っているが」との質問に対し、「どの候補に投票すべきかを言うつもりはない」と述べ大統領選挙に影響を与えるような言動を避けながら、「場所がどこであろうと、壁を作ることだけを考え、橋を作ることを考えない人物は、キリスト教徒ではありません。それは福音ではない」と答えた。ただし、この機上会見では、教皇は「もしも彼がそういうことを本当に言ったのだとしたら、そのようなことを言う男性はキリスト教徒ではない、とだけ申し上げているのです。真偽が明らかになる余裕を差し上げましょう」と”解説”を付けていた。
教皇はブエノスアイレス大司教時代に、汚職に対して厳しく批判を加えることで知られていたが、政治家を名指しで非難したのは一度だけ、同性婚を認める判決に介入しなかった当時のブエノスアイレス市長で現在のアルゼンチン大統領、マウリシオ・マクリ氏に対してだけだった。
今回のスカルファーリ氏とのインタビューで、「(米国の次期大統領にトランプ氏が選ばれた)今現在の主要な関心事」について、教皇は「それは難民と移民の人々です」とし、「彼らの中で、キリスト教徒は少数ですが、それが彼らの悲惨な状況を変えるわけではない。そうした状況を生んでいる原因はいくつもあり、そうした状況を終わらすために、わたしたちは出来ることをするのです」と語りさらにこう続けた。これまで、職を失ったり、給料を減らされたりするのを恐れた人々が、そうした可能性のある対策に反対したことが何回となくあったが、「お金は移民や難民に逆らい、貧しい人々に逆らうものですが、豊かな国々にも貧しい人びとは存在し、貧しい国々からやって来る人を迎えるのを恐れています」と指摘。
「このような悪循環は止めなければなりません。わたしたちは、豊かさと貧しさを分けている『壁』を打ち破らなければなりません」「そして、人々の福祉を充実するために、不平等を減らし、権利と自由を増すための『橋』を掛ける政策が強く求められているのです」と訴えた。
スカルファーリ氏はまた、このインタビューでの話として、教皇は「隣人を自分のように愛しなさい」という戒めの言葉を「隣人を自分以上に愛しなさい」に改めることをほのめかした、という。氏は、この意味は、教皇が平等によって支配される社会、マルキストの社会主義、共産主義のプログラムを望んでいるに違いない、と解釈している。氏の「あなたの頭にはマルキストのような社会があるのですか」との問いに対して、教皇は「どちらかと言えば、共産主義者はキリスト教徒のように考えるのでしょう。キリストは貧しい人、弱い人、蔑まれている人が決定する権利を持つ社会について語りました。扇動者やバラバのような暴動を起こす者ではなく、神を信じる人々、貧しい人です。平等と自由を成し遂げる助けをするのはそうした人々なのです」と語ったという。
このインタビューが行われたのは、教皇が先週、ローマで開かれたPopular Movementの集まりで4500字の話をした直後だった。教皇は、アルゼンチンのダンボール回収運動のグループが廃棄物リサイクルの共同組合に成長するのを助けるなど、この種の運動を支援した来た。この運動で、2001年のアルゼンチン経済危機の際、何千人もの男女の失業者が仕事を得ることができ、現在では、アルゼンチンで最も重要な廃棄物リサイクルの推進力になっている。
インタビューで教会内部で起きている教皇への「敵対」について聞かれた教皇は「彼らのことを『敵対者』と呼ぶつもりはない。『信仰はわたしたち皆を一つにする』からです」と答えた。「もちろん、わたしたちは個人として、同じことを異なる方法で見ます。描かれる絵は、客観的には同じものでも、主観的には異なるものなのです」と付け加えた。
最後に氏は、教皇に働きすぎないように、もっと休みをとるようにと助言したが、教皇は「あなたも休みを取るべきです。あなたのような無信仰者は、できる限り『肉体的な死』から離れていないといけませんから」と言葉を返した、という。
(南條俊二訳)
*CRUXは、カトリック専門のニュース発信、分析、評論を行う米国のインターネットメディアです。2014年秋に米国の主要日刊紙、Boston Globe(欧米を中心としたカトリック聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけになった世界的スクープで知られる。最近、このスクープに至る苦労が映画化され、日本でも全国上映されました。現在は、米国のカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受け、独立系カトリックメディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」はCRUXが発信するニュース、分析、評論の日本語訳、転載について、了解を得て、ご紹介しています)
(2016.11.9 CRUX バチカン特派員)
教皇フランシスコの右腕、教皇庁国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は9日、米国の次期大統領に選出されたトランプ氏に、世界平和のために働いてくれることへの強い期待を込め、「真に実りのある」政権運営を希望して祝意を送った。
ローマでの大学の新学期開講式で記者団で明らかにしたもので、パロリン枢機卿は「私たちは祈りを込めて、彼を信頼します。主が彼を啓発し、国への奉仕と、世界の幸福と平和に力を尽くすのを助けてくださるように」と語り、さらに「今、世界の状況を変革するために働くことが、全ての人に求められています」とした。枢機卿はまず、民主主義の行為として示された米国民の意思を尊重することを求め、今回の投票で有権者に大きな動きがあったことを思い知らされたとの認識を示した。
以前、トランプ氏の米・メキシコ国境への壁建設発言に対して、教皇が「キリスト教徒ではない」と語ったことについて、記者団から聞かれたのに対しては、「新大統領がどのように対応するか、注目しましょう」と慎重に答え、選挙戦中の言葉と実際に大統領として責任を負っての行動は異なる、との考えを付け加えた。「具体的な問題について、どのような選択がされるのかを見て、その上で判断することができます」と述べた。
新大統領選出については、他の宗教指導者も発言している。英国国教会のカンタベリー大主教、ジャスティン・ウエルビー師も「米国民が選挙戦で生じた亀裂を修復することができるように祈り続ける」とし、ツイッターで「次期大統領が、職務を果たすにあたって、「英知と洞察力、慈愛」をもってするように、米国のすべての人々のためにともに祈りましょう」と呼びかけている。
(2016.11.9 CRUXエディター ジョン・L・アレンJr)
米国が世界の舞台で演じる役割から、世界中の演技者が今や、トランプの勝利が米国の今後の行方にどのような意味をもち、どのように対応するべきかを探るのに躍起になっている。そして、その演技者のひとりは当然ながら、バチカンの主だろう。
ハーバード大学ケネディー・スクールのヨセフ・ナイ教授の有名な分類によれば、バチカンは世界で最も重要な「ソフト・パワー」、全世界に自らの外交官を置く主権国家をもった唯一の世界宗教団体であり、米国は世界のすべての国々を合わせたよりも多い軍事費を支出する、地球上で最も重要な「ハード・パワー」だ。
ということは、必然的に、両演技者の関係は重要であり、トランプが米国の次期大統領となることが確実になった今朝、バチカンの国務省の職員たちが、このことの意味するところを探ろうと必死になったのは間違いない。
正直なところ、現在のバチカンの政権とワシントンの次期政権が良好の関係になるとは思われない。これまでの米国の歴史で、次期大統領に選ばれた人物が選挙期間中に教皇に直接批判されたことは一度もない。
教皇は今年二月、メキシコ訪問からの帰路の機上で、同乗の記者からメキシコと米国の国境に壁を作りたいという政治家についてどう思うか、と質問されて、こう答えた。
「壁を作りことだけ考える人は、それがどこであろうと、そして(国境に)橋を渡すことをしない人は、キリスト教徒ではありません」「これは『福音』ではない」。
教皇は、トランプの立場についての記者の表現を額面通り受け止めてこう答えることで、自身の見解に含みを持たせた。トランプも、選挙戦当初の教皇を問題外とするような短絡的な言い方をその後、和らげていた。したがって、次期大統領には、まだ教皇フランシスコを盟友とする余地は残っている。
トランプのホワイトハウスとフランシスコのバチカンの間で目立つような課題となりそうなものを予想するのは容易なことだ―移民問題、気候変動対策、貧困対策、外交政策上の多国間主義、犯罪と処罰などである。
ごく自然の見方からすれば、ドナルド・トランプとフランシスコ教皇が米国とバチカンのトップに立っている限り、両者は不安定な関係になると思われるだろう。だがその一方で、トランプは勝利宣言のスピーチで、おそらくバチカンも含めて他の国々との「偉大な関係」を追求することを誓った。したがって、もっと興味をそそる問いは、現教皇と新大統領がどの分野で仕事ができるか、ということだ。堕胎問題のようなテーマを除いて、可能性のあるのは三つ、キリスト教徒迫害、女性差別、信教の自由だ。
トランプの政権準備チームにとって重要なのは、両者の円滑な関係自立に真剣に取り組む人物、世界の課題解決に果たすべきバチカンの役割を認識している人物を、バチカン大使に選ぶことである。そのためのひとつの方法は、次期副大統領のマイク・ペンスにその主導権をとらすことだ。彼は不安のない宗教用語と信仰を持っている。
バチカンにとって重要になると思われるのは、開かれた態度で、対話を強く希望しているとのシグナルを送り、米国の新政権との間で戦端を開くような動きを避けることだ。
トランプ次期大統領と教皇フランシスコのはっきりとした対比を額面通りに読めば、両者の関係は、緊張した、複雑なものになる可能性がある。その一方で、現体制に与えるショックが世界中の政治的な進路にとって平等なものだとすれば、おそらく、両者の協力関係は最大級の驚きをもって受け止められるようなものになりうるのだ。
投稿ナビゲーション