(2017.2.15 国連WFP)
国連WFPシリア事務所のジェイコブ・カーン所長は1月末、大勢の住民が避難先から破壊された自宅へと戻り始めているアレッポの街を訪れました。荒廃した街、被害を受けた家族や生活、そして復興を目指す人々を支える国連WFPの活動を、カーン所長の日記から伝えます。
2017年1月25日(水)
今朝は激しい空爆で目が覚めました。前日に結ばれた停戦合意はまだアレッポに及んでいなかったのでしょうか。ここはまだ安全からは程遠いことをあらためて感じました。カーテンを開けると、そこには曇った冬の空と、再利用された国連WFPの食糧袋が見えました。袋には、ロケット攻撃に備え砂が入れられ、窓を補強するために置かれています。紛争下で編み出された知恵です。
国連WFPがシリア国内で400万人に食糧支援を届けるためには、国内移動や、ビザの承認、トラックの運行許可に至るまでの全てに渡って、シリア政府の協力が不可欠です。この日面会したアレッポ県知事はアレッポ東部のパン屋を再建することの重要性を強調していました。シリア人はパンを毎日食べます。しかし、アレッポ東部にはパン屋が一軒もなくなっており、主食を手に入れる手段がない状態では住民が戻ることは難しい状態です。国連WFPは、アレッポ西部で9軒のパン屋を支援しており、今後、アレッポ東部に最大15軒のパン屋を建設予定です。
この日訪れた中で、最も印象的だったのは、毎日5万人に炊き出しを提供する慈善団体の存在です。モスクがその拠点となっており、事務所や倉庫、調理場などの機能があります。ここの炊き出しでは、国連WFPの豆をはじめ、国際赤十字委員会(ICRC)の米、国連開発計画(UNDP)のパン、慈善団体の提供した野菜や肉が、このモスクの地下で調理されて提供されています。炊き出しは一人あたり400g。試食してみると、美味しかったです。しかし、これが1日に食べる唯一の食事とすると、十分とは言えません。
2017年1月26日(木)
主要な道路からは瓦礫が取り除かれましたが、コンクリート片、電線、金属片、家具などの山は残っています。 この街では、ライフラインや窓も無い家、地雷や不発弾の脅威、崩壊する建物や凍える寒さの中で人々が暮らしているのです。
人々は毎日1時間以上行列に並んで、小さなプラスチック製の容器一杯の温かい食べ物、そしてパン一包みを受け取ります。この日は、缶詰、ジュース、毛布、衣服、おむつ、衛生用品なども受け取っていました。配給を待つ人々は口々に、空爆や手りゅう弾での攻撃や、絶え間なく聞こえた爆発音に恐怖を感じていた話や、アレッポが包囲される中で、ほんの少しの米や豆を手に入れることがいかに大変だったかを教えてくれました。そして、今は静かすぎるほど静かだ、飛行機が爆弾を抱えて飛ぶ音も砲弾も銃弾も無く、車も通らない、ゴーストタウンのような静けさの中に住んでいるようだと。
2017年1月28日(土)
マイッサと3人の娘は最近、自宅アパートに戻ってきました。ロケット弾によって階段脇の壁に穴が開き、部屋は荒れ放題なことを除けば、なんとか住めそうとのことです。アパートの前の道路に前日に降った雪がうっすらと残る中、彼女たちは、割れた窓から冷気が入り込まないよう、ビニールシートを貼ってしのいでいました。
この家では壊れた家具を小さな薪ストーブにくべることで暖を取っていました。水道も、電気も、料理をするためのガスも、トイレも無い状況です。この状況でも彼女は「それでも私は家に帰ってくることができました、そして、アパートも崩壊していません。これから、国連WFPや、水、薬、衛生用品などを提供してくれる他の支援団体からの支援を頼りに、人生を立て直していきます」と話してくれました。
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問題と希望を両方感じた私のアレッポ滞在記をお読みいただき、ありがとうございます。国連WFPは今後も、アレッポ東部のみならず、シリア国内で最も食糧支援を必要としている地域において、支援活動を続けていきます。シリアの人々の命を支える食糧支援に、引き続きご支援をお願いいたします。
寄付方法> お電話で 0120-496-819(通話料無料)▼ゆうちょ銀行から口座番号:00290-8-37418 加入者名:国連WFP協会 ※通信欄に「シリア緊急支援」とご記入ください。
(2017.2.9 Catholic News Service/Tablet) 「いかなる国も、臓器売買と無関係ではいられない。世界的に広がっているこの問題への対応で協調する必要がある」。2月7日から8日にかけて、バチカンの科学アカデミーが世界各国の関係閣僚、裁判官、取り締まり当局者、医療専門家、人権活動家などを集めて開いた臓器売買に関する会議で、これが多くの参加者の意見だった。
この会議で、マスコミの注目を集めたのは、バチカンが中国からも代表者を招いたことだった。中国に対しては、人権団体が「処刑者の臓器を移植に使っている」と批判しているが、バチカンは中国以外にも、臓器売買が問題になっている50以上の国、とくに臓器売買が合法化されているメキシコ、インド、パキスタン、イランからも代表者を参加させた。会議の最終セッションの司会を務めたバチカン・科学アカデミーの会員で臓器移植政策の専門家でもあるそフランシス・デルモニコ医師は、彼らを会議に招いた狙いは、こうした国々の政府、関係の専門家、組織が協力して対応するきっかけを与えることだった、という。
会議資料によれば、会議が目指したのは、臓器売買と〝移植ツーリズム″の実態を明らかにし、その防止と法的な規制の枠組みについての考えを共有し、共通の目標を立て、関係するあらゆる立場の人々が臓器売買を止めるように協調体制をとることだった。協調体制は、検察官、法律専門家、政府、国連、その他の関係の公的機関で構成され、臓器移植を待つ多くの患者がいる中で、その提供者となる貧しい人々、弱い人々が増加していることを、まず認識することだ。
そして、デルモニコ医師は、インドから参加した国立腎臓移植研究所のメンバー、サニープ・グレリア医師に「ただ話しているだけでなく、実際に現状を改めていくことが急がれているのです」と対応を求め、さらに、中国の国立臓器提供・移植委員会のファン・ジィフ会長に対して、「科学アカデミーは声明に、処刑者からの臓器摘出禁止を盛り込むことを求めます」と言明し、「それをあなたの政府が実行するために、私たちはどうすればいいのか」と問いただした。
これに対して、ファン会長は、中国は文化、政治制度の面で「西側の国々とは異なる」とする一方で、現在の中国指導部は「とても開明的」であり、「中国で現在起きていること」を改めるようにとの、あなたの呼びかけを「強く支持する」と答え、改革への熱意を強調するとともに、「国際的な圧力よりも国際的な協力」が、中国を「世界と連携するように動く」ための助けになる、と述べた。グレリア医師は「私たちもそのような協力を約束する」と応じた。
また米紙ロサンゼルス・タイムスのシャシャンク・ベンガリ・南アジア地域特派員は「問題は世界中に広がっている。誰もが無関係ではいられない」とし、各国の政府関係者や法律や医療の専門家に、世界の人々にこの問題への理解を広げるために、マスコミも活用するよう求めた。「ジャーナリストたちは臓器売買とその犠牲者たちに関する報道に熱意をもっており、読者が視聴者に強い影響を与えることができる。人々が多くの質問や意見を寄せてきている」と強調した。パキスタンの英字ニュース通信のナジハ・シエド・アリ記者も、「メディアは政府に説明責任を果たさせるために有効。隅の暗がりに光を当てることができる」とし、犯罪行為を医師たちが暴くための安全な手段ともなるが、一方で臓器売買をしている犯罪組織に〝復讐″される心配もある、と指摘した。
カナダ・バンクーバーのセントポール病院の医薬専門家、ジョン・ジル教授は、医師たちには、海外で臓器移植を受けることを希望する患者たちに健康上の危険などについて説明する義務があるとし、「患者たちは臓器移植を、足の爪を切るように軽く考えている」と語り、臓器についての何の記録も保証もないままでの移植は、危険をもたらしかねない、と警告した。さらに、臓器が売買によるものなど、問題があると見た場合、医師は移植を拒否すべきだが、臓器移植を必要としている患者の中には、臓器提供者が貧しさゆえに、あるいは騙されてそうする、ということを知らない場合はとくに、臓器売買を軽く考える、と語った。
また、ルギーのアントワープ大学のクリストフ・ヴァン・アッシェ教授は、医療情報の秘密漏洩を規制する法令が、医師に患者の個人情報を明らかにさせないために、医師たちが検察当局との十分な連携をとれなくなっている、と指摘し、「立法に携わる人々は、海外から有料で臓器の提供を受けることを患者が希望するなどのケースについては、情報開示を認める法律上の特例を設けるべきだ」と提案した。
BBCで働いているアフガニスタン生まれのネルファ・ヘダヤト記者は、医療専門家と弁護士たちが共謀して偽のパスポートを提供するなどすることで、違法な臓器移植が可能になっている例もあることを挙げ、バングラデシュにおける臓器売買を調べた際、ある外科医から「誰も臓器売買で死ぬわけじゃないから、悪いことをしているとは思わない。命を救っているんだ」と言われたという。「医師たちは神のようになり、人助けをしていると思われている。そして、貧しい、脅しに弱い臓器提供者は、臓器売買者のゲームに取り込まれ、犠牲者が仲介者となって、さらなる臓器提供の犠牲者を生む、際限ない連鎖の〝ねずみ講″のようになっている」と警告した。
(翻訳・南條俊二=Tablet から許可を得て、翻訳、掲載をしています。“The Tablet : The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher” and that you quote our website address http://www.thetablet.co.uk )
(2017.2.6 Tablet ローマ特派員 クリストファー・ラム)
教皇フランシスコとトランプ米大統領の初の会見が、5月末に行われる可能性が出てきた。外交筋が明らかにしたもので、大統領が主要国首脳会議出席のためイタリアを訪れる際に実現する見通しという。
日米欧など世界の主要先進7か国首脳による会議(サミット)はシチリアで開催が予定されており、ホワイトハウスが5日、大統領の参加を確認した。バチカンは公式には、教皇がいつ大統領に会うかについてコメントしていないが、バチカン内部関係者によると、シチリアのタオルミナで5月26、27の両日開かれるサミット期間中に実現する可能性がある。
米大統領の就任後初の教皇との会見は、過去にもバラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ両氏がそれぞれイタリアでのサミット開催の機会におこなわれており、それが今回の会見実現の可能性を高めている。
これについて、ある外交関係者は「サミット参加のためのイタリア訪問は大統領にとって、教皇と会見する機会になる」とし、「教皇と会見しないなら、移民問題で意見対立があった後だけに、相手を侮辱する行為と受け取られるだろう。トランプは、政治的な立場からどこにいようと教皇を攻め立てるのは賢明でない、と分かっている」
もっとも、いつ会見が行われようと、二人の間に緊張が起きるだろう。すでに公けに意見対立は起きている。昨年の大統領選挙の際、教皇は共和党候補だったトランプについて、メキシコとの国境に壁を立てることを計画するのは「キリスト教徒ではない」と批判し、また最近の報道機関とのインタビューで、ヒットラーのような独裁者となるポピュリスト(大衆迎合主義者)的〝救国者″が生まれる可能性を警告していた。バチカンはまた、現在、世界的な批判を浴びている中東・アフリカ7か国からの入国禁止の大統領令、米国の難民受け入れに人数の制限をかける計画を批判している。
それにもかかわらず、二人には、一般大衆に人気のあるリーダーとして、人々に直接メッセージを届けることで、それぞれが拠って立つカトリック教会と米連邦政府という組織に刺激を与えることができる、という共通点がある。
大衆人気が対立の種になる可能性もあり、実際、ローマ市内の至る所に最近、反フランシスコのポスターが貼られたが、これは19世紀にローマ教皇領が崩壊して以来初の教皇に対する公けの批判の動きの一つとされている。だが、ローマの外では、移民、不平等、気候変動の問題に積極的に発言し、思いやりのある世界の仕組みを訴え続けるフランシスコは、世界的な進歩派のリーダーとしての名声を高めていると見られている。
“The Tablet : The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher” and that you quote our website address http://www.thetablet.co.uk
(2017.1.30 CJC通信)中国最高人民法院と最高人民検察院は、このほど連名の通達で、「未成年者に対する宣伝広告」など7項目に対して厳しく処罰する方針を明示した。社会に大きな危害をもたらす「邪教」に対する取り締まり、処罰をより強化する狙いと見られる。投資情報サイト『株探』などが1月29日報じた。
今回の通達では、厳格な処罰の対象として7項目を列挙。その主なものには、前述の未成年者向け活動のほか、▽海外(域外)の組織や個人と結託して、邪教活動を行うこと、▽省・自治区・直轄市をまたいで人を集めたり宣伝活動を行うこと、▽公共場所や祭日などに大衆の面前で活動すること、▽国家公務員が邪教の活動に参加すること――などが含まれている。□
【2017.2.6 CJC通信】バチカン(ローマ教皇庁)の国務省次官のポール・リチャード・ギャラガー大司教(外務局長)は2月2日、東京都内で記者会見し、1951年に断交した中国との国交正常化について「双方の信頼は深まってきているが、現時点では深いレベルの政治的な協議までは行っていない」と述べ、早期の国交回復が難しいとの見解を示した。毎日新聞報道から紹介する。
ギャラガー大司教は「懸念しているのは中国国内でのカトリック教会の権限の問題だ」と語り、長年両者が対立する原因となってきた「司教の任命権限」に関する問題が依然として関係改善の妨げになっていることを明らかにした。さらに「現状は中国側と教会の権限の問題を話し合っている段階に過ぎない」とも述べた。□
(2017.2.7 朝日新聞) 2015年夏に中国で人権派弁護士らが一斉に拘束された事件で、逮捕された弁護士の1人が取り調べ中、当局から拷問や虐待を受けていた、と面会した弁護士が明らかにした。精神的に追い込まれた状況で罪を認める調書にサインさせられたが、本人は無罪を主張しているという。
■40時間休みなし・カメラ死角で暴行
拷問などを受けていたのは、15年7月に拘束された湖南省 の謝陽弁護士(45)。ネット上で政府や司法機関 、法制度などを攻撃したとして、昨年12月に国家政権転覆扇動罪で起訴された。1月、弁護人として5日間にわたって面会した陳建剛弁護士(37)らが、本人から聞き取った内容をネット上に公開した。
面会記録と陳弁護士の話によると、謝弁護士は湖南省 の公安当局に拘束された後、40時間以上休みなしで取り調べを受けた。その後も1週間は、ほぼ連日20時間ほど取り調べられ、睡眠時間は2時間ほどだった。
拷問や虐待の態様は様々だ。足が宙に浮く状態でイスに座らされ、下半身は腫れてマヒ状態に。カメラの死角で殴る蹴るの暴行を受けたり、周りから一斉にたばこの煙を吹き付けられたり。「罪を認めなければ、大学で働く妻や友人も苦しめるぞ」といった脅しなども受けていた。
謝弁護士は途中、休憩を求めたが認められず、3日目には泣き出すなど精神的におかしくなった。それでも休ませてもらえないため、当局の要求通りに罪を認める文章を書き、署名した。当局は、 売名目的か金銭目的か共産党 に反対する目的か、三つのうちのどれかの動機を自供するよう求めてきた。
16年1月には逮捕され、身柄が看守所(拘置所に相当)に移された。当局は自白の強要がなかったとする調書に何度も署名させようとしたが、謝弁護士は拒否し続けたという。
陳弁護士によると、面会には当局は同席せず、カメラはあったが、音声はとられていなかったとみられる。謝弁護士は1年半以上の拘束でやせたものの、今は精神的に落ち着いた状態。「調書の内容は事実ではない。虐待され、生き地獄のような状況で自白を強要された」と話している。面会記録の公開は、謝弁護士と相談して決めたという。
一斉拘束事件では、捕まった人に、家族らが依頼した弁護人が面会できないケースが多い。「本人が拒否した」などの理由で当局寄りの弁護士を付けるためだ。仲間の弁護士が面会できたのは珍しい。
陳弁護士は「当局は法律の規定など全く気にせず、やりたい放題だ。捕まっている他の弁護士も同じような虐待を受けているはずだ」と憤った。面会記録は中国内のネット上からは削除されているが、弁護士仲間が「拷問反対」などと書いた紙を掲げて抗議する写真が広まっている。
中国政府は謝弁護士らへの拷問について、「でたらめだ。中国は一貫して法に基づいて処理している」(3日の外務省 会見)と反論している。
■「薬飲まされた」
一連の事件では、1月中旬に保釈された李春富弁護士(44)が精神を病んでいたことから、取り調べ中の虐待が疑われた。その後、捜査当局が取り調べ期間中、拘束した人たちに何らかの薬物を使っていることが分かってきた。
春富さんは拘束が続く李和平弁護士の弟。和平さんの妻、王峭嶺さん(45)によると春富さんは拘束直後、身体検査を受けて高血圧と判断され「降圧剤」とされる2粒の薬を毎日飲まされていたという。王さんは「春富さんはそれまで健康で悪いところはなかった。高血圧の薬とは思えない」と疑う。
王さんは、夫と同様に拘束中の王全璋弁護士の妻、李文足さん(31)と一緒に、釈放された別の3人からも「薬を飲まされていた」との証言を直接聞いた。病気の症状がないのに、統合失調症 の薬や睡眠薬を処方された人もおり、1人は毎日20粒飲まされていた。4人とも「薬を飲んだ後は、意識がもうろうとした」と話したという。
王さんと李さんは「弁護人と面会できていない夫たちの境遇も心配。ただ、虐待の真相が明らかになれば、国際社会の注目も集まり、当局への圧力になる」と話した。
(北京=延与光貞)
■「目的は弾圧・迫害」 面会の陳弁護士
――家族が依頼した弁護人に面会できない人もいるのに、なぜ会えたのか。
謝弁護士は、死んでも当局の弁護士は断る姿勢を貫いた。法律上、弁護人がいなければ裁判は開けない。裁判が近づき、当局も仕方なく面会させたのだろう。
――謝弁護士の話した内容に疑問や誇張はないか。
取り調べだけが彼が向き合う全てだし、裁判に備えて一部記録も残している。真実のみを語ってくれと何度も伝えてある。真実を語っていることは保証する。
――今回の事件で当局の目的は何だと考えるか。
人権派弁護士の弾圧、迫害だろう。特に活動の先頭を走る弁護士らが狙われた。当局は弁護士事務所への管理を強め、人権派弁護士を制度内から消し去ろうとしている。地方の警察の判断でやっていることではなく、中央政府の意思だ。
――この状況を改善するには、どうしたら良いか。
問題は法律ではない。法律の規定はあるが、役に立っていない。法律も無限の権力を縛ることはできない。根本的な問題は体制だ。民主国家 には権力の均衡が働く。三権分立 があれば、法を執行する警察を立法府が法律で拘束し、独立した司法が裁く。市民やメディアの監督も受ける。それが中国にはない。
――あなた自身は怖くないのか。
もちろん怖いが、問題があるのに避けることはできない。捕まったら、自分がどこまで耐えられるか分からないが、外にいるうちは発言できる。これは人として最も基本的な権利だ。
(聞き手・延与光貞)
■取り調べ中に当局者が謝陽弁護士にかけた言葉
「人権派弁護士グループを反共産党 、反社会主義と判断した。お前が抜けるなら、寛大に処理してやる」
「狂うまで苦しめてやる。外に出てまた弁護士ができるなんて思うなよ。お前は今後、ただの廃人だ」
「外に出たら告訴できるなんて思うなよ。これは北京(中央政府、党中央)の案件なんだ。お前が死んだって、俺たちがやったという証拠は一切残らない」
「監視カメラは我々が管理している。役に立つなんて思うな。お前は反革命罪なんだ」
「他の人権派弁護士の関与を明かせば、寛大に処理してやる。保釈してやってもいい」
「党と政府を信じることだけが唯一の道だ。罪を認め、おかしなことを言わなければ、早く家に帰れる」
(謝陽弁護士の面会記録から)
◆キーワード
<人権派弁護士らの拘束事件> 2015年7月、著名な人権派弁護士や民主活動家らが国家政権転覆容疑などで一斉に拘束された。香港のNPOによると、今年1月20日までに計319人が調べられ、弁護士ら8人が拘束中。当局は「弁護士らが一般的な事件を政治化し、反政府感情をあおり立てた」としているが、「政治的弾圧だ」との批判も根強い。
(2017.2.3 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)現在19歳のカタリナ(安全上の事情で仮名)は、13歳の時にコロンビアのゲリラ活動に加わった。三年間、戦闘に加わった後、ゲリラ集団から脱出し、サレジオ修道会が進める子供兵の社会復帰プログラムの指導を受けている。
彼女によると、コロンビア政府とコロンビア革命軍 (FARC) の52年にわたる戦闘を終わらせようとする和平交渉は失敗した。和平交渉が進んでいる時は「うれしかった。これ以上、子供たちがゲリラにならなくて済む。家に帰れる、と思ったから」。13歳でゲリラに加わった時、それが国内紛争を無くす道だと考えた。今も自分の国で平和が実現ができる、と考えているが、そのためには、自分たちのことだけ考えず、相手のことも考えなければ・・でも、FARCはなぜ政府と話し合いを続けているのでしょう?」
彼女がFARCに参加した当初は「何もかもがよく見えた」。だが、8日経つと、「自分の体よりも大きい」銃を渡され、その一週間後には、政府軍との戦闘に駆り出された。その日、彼女の隊は、八機のヘリコプターに攻撃された。「攻撃が始まった時は子供と大人あわせて44人のゲリラ仲間がいましたが、終わったら22人になっていた。私自身も深手を負いました」「私たちはこれで最後かどうかもわからず、お互いに顔を見合わせました」と語る。三年後、彼女は勇気を振るい、集団から脱出した。見つかったら殺されるのを覚悟していた。そして今、彼女は看護師になる長年の夢を実現するために保険学校に通おうとしている。
FARCなど数多くのゲリラ組織とコロンビア政府の武力紛争は50年以上続いており、800万人に上る犠牲者を出している。そして何千人もの子供たちが誘拐されて、武装集団に入れられ、戦うことを強要され、アルコールを飲むことが法律で認められる18歳になる前に人殺しをさせられる、という形で、彼らも犠牲者だ。
カタリナは同じく子供兵だったマヌエルと2月2日にローマで放映された番組に出演し、コロンビアのゲリラ兵から立ち直った子供たちについて語った。マニュエルはもともと兄について2013年にゲリラ兵となり、一年間先頭に加わったが、兄はルールにうまく従わなかったために殺された。「僕はもともと字が書けなかったが、学校に通い、仕事に就けました」。この番組はコロンビアで和解を実現しようと52年間活動してきたサレジオ会が制作したもので、現在ゲリラに参加している子供たちの人数は定かでないが6000人はおり、戦闘中に18歳で成人したものは何千人にも上ると見られている。
メデリンの町で活動を続け、1300人以上の子供たちを戦闘から救い出した「ドン・ボスコの町」プロジェクトの責任者であるラファエル・ベヤラノ・リベラ神父は、「サレジオ会がコロンビアで進めている『動きを止められた弱い人々」の立ち直りを支援するプロジェクトは二つあるが、そこでまず行われるのは三つのカギ―信頼し、希望を持ち、連帯を創ること―を学ぶことだ。若者たちに希望を与えるために、心理学者と教師も働いている。
「私たちがしていることは、真実を語ることであり、それは私たちを傷つけた人々を傷つけたいのではなく、歴史的な記録を作り、何が今起きているかを理解しようとするためなのです」と語る神父はさらに、「教会としてどのような党派にも加わらずに私たちがしているのは、コロンビア政府がFARCと共にやろうとしていることを支援すること。ゲリラに活動をやめさせ、武器を捨てさせるのではなく、共に前に進むことなのです」。それが、この国に平和をもたらす唯一の道であり、双方ともにそのような対話をする能力を持っている。そしてそのような政治文化が、コロンビアではまだ有効です」と期待を語った。
英国に本部を置く「世界の子供兵たち」によると、子供たち―4歳の子がいることは不思議でない―が戦闘に、性的目的に、そして、料理人、運び屋、連絡係、密告者、その他、隊長が命ずるあらゆることに使われている。多くの戦闘地域では、「人間の盾」にさえ利用されている。コロンビアに限らず、50もの国で子供たちに軍事訓練を施すことが合法とされている。2016年現在、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、ミャンマー、ソマリア、南スーダン、そしてイエメンで軍事組織が子供たちを使っている。
また国連によれば、そうしたことは、アフガニスタンにおけるタリバン、イラクやシリアにおけるISISのような非国家武装集団の間にも広がり、子供たちは自爆攻撃にも利用されている。NGOのHuman Rights Watchは、貧しい地域では子供たちが家族から引き離され、戦闘地域で子供兵にさせられ、学校で勉強することもできなくされている、と報告している。
教皇フランシスコはこの問題の解決を望んで、新年1月の世界共通の祈りにした。教皇は昨年12月、イエズス会が運営する世界規模の祈りのネットワーク「祈りの使徒職」の助けを受けて、「l子供兵たち」というタイトルの毎月のビデオ放送を始めた。教皇はその中で、現代の奴隷制と呼ぶ「子供兵の恥ずべき慣行」をこの世から廃絶するように訴えている。
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」(欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。最近、映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、紹介しています。
(2017.2.2 Crux スタッフ 記者)イラク・エルビルのバシャール・ワルダ・カトリック大司教がCruxのインタビューに応じ、米大統領選でのトランプの勝利をイラクに住むキリスト教徒は「米国の我々に対する無関心の終わりを示すもの」と理解して歓迎した、とし、トランプの大統領令がキリスト教徒にとどまらず、イスラム国(ISIS)の犠牲となっているすべての人々に特別の配慮を払う限りにおいて、助けになるものだ、と語った。大司教はこれまでも、中東におけるキリスト教徒の声を代表する人物とされてきた。一問一答は次の通り。(「カトリック・あい」抄訳)
CRUX :トランプ大統領の中東・アフリカ7か国からの入国停止命令が出て、あなたの米国出張は取り消されてしまいましたね。
Warda :米国出張の 主目的は、 連邦議会での聴取に応えることでしたが、延期されました。イラクのキリスト教徒のために、すみやかに聴取が行われることを希望します。
C:米国の新たな難民政策が安全保障上の理由によるものだ、ということに同意しますか?
W:新政策と懸念国と懸念国からの難民と安全保障上のリスクの関係を、大統領が分かっているのか、私には分かりません。私に分かっているのは二つです。まず一つは、テロと隣り合わせに暮らすのは恐ろしいことだということです。イラクでは、人々は日々、テロとともに暮らしていますが、仮に米国が厳しい入国審査のプロセスを導入したいというのであれば、理解できるし、評価できる。世界の皆さんは、欧州が難民の受け入れを抑制しようとしたことを早くも忘れているようです。欧州連合はトルコに難民をとどまらせるのに全力を挙げ、そのためのコストを負担するということをしました。欧米などテロが起きている国々では、人々が自分の国に誰が入ってくるのか心配するし、理解できます。
もう一つは、カトリック教会は基本的に、信じる宗教や出自に関係なく移民たちの側に立っている。残虐な世界において複雑な場面に遭遇することがある。本当の問いは、残虐な扱いを受けているすべての罪のない人々に対する、米国だけでなく、国際社会全体の義務は何か、ということだ。教会として、とくにここイラクで、私たちは移動を余儀なくされている人、そうでない人を含めて、何の罪もない人々に対しての羊飼いなのです。あらゆるメディアは今、国を出ようとしている人々にだけ焦点を合わせて報道し、母国にとどまって必死に生きようとしている人々を忘れている。メディアだけではない。米国政府も、イラクのキリスト教徒や他の少数者を無視してきました。トランプ大統領の就任で、彼のやり方が乱暴かどうかはともかく、私たちがここにいて、苦しみあえいでいる少数派の人々を助けたいと努力しているのを知ってくれれば、ありがたいと思います。
C:トランプ大統領の難民に対する対応について、どう考えますか?
W:誰もが対応の内容をもっと明確すべきだと考えているようです。大統領令の意図について多くの混乱があり、多くの人が大騒ぎしています。イラクにいる私から見ると、大統領に抗議している人々がなぜ、ISISがキリスト教徒やクルド人など少数派を殺害しにやってきた時に批判の声をあげなかったのが不思議に思います。2014年以来、故郷を追われた何万人ものキリスト教徒が助けを求めているのに、米国政府からも国連からも財政支援を受けることができないことも、批判していません。シリア人キリスト教徒人口の20分の1以下しか米国への入国が認められなかったときにも、批判の声はあがらなかったのです。
恐ろしい虐殺に直面している多くの少数派の共同体が何らかの形で優先順位を与えられようとしていることに、米国民の中になぜ大騒ぎする人がいるのが、理解できません。大統領令を「イスラム教徒排除だ」と叫んでいる人たちは皆、自分たちがそうすることで、私たちキリスト教徒を傷つけ、危険にさらすのだ、ということを理解すべきです。大統領令はイスラム教徒だけでなく、キリスト教徒、クルド人、その他の少数派に影響を与えるのです。イラクにいる私たちは西側メディアのように無神経な言葉を投げることはできません。私たちの間の分裂をあおるようなメディアの人々に、そのことを分かってもらいたい。騒ぎ立てることが、私たちにとって現実の危機をなるのです。
ISISに襲われながら私たち少数派が生きるということはどのようなことなのか、米国民のほとんどは考えたことがない。人々は故郷を捨てるか、ISISの仲間になるか、殺されるか、選ぶしかない。そして多くが、考えられる限りの残酷なやり方で殺されているのです。イラクのキリスト教徒など少数派は自分たちの信仰の故に何もかも失い、信仰の故に残虐行為の標的にされています。信仰の故に迫害されているのに、米国などで抗議をしている人々は「宗教は関係ない」と言う。宗教を理由にした迫害が国連憲章にもとづく難民の条件とされているにも関わらすです。
これは、まったく、信じられないことです。宗教は米国の政策の要素とされず、その結果、イラクで苦しめられているキリスト教徒や少数派は米国や国連の援助プログラムから見過ごされている。その間にも、絶えることのない迫害で私たちの小さな共同体が消え去ろうとしているのです。私たちを助けようとする人がいても、声高に抗議を繰り返す人々は、宗教を理由にISISの迫害の標的にされているにもかかわらず、難民認定に宗教は関係がないと言う。そのような声を代弁するような政策は正しくない。カトリックの信仰と教えに明確に反しています。私が理解しているような政策ではありません。私がとても理解できないのは、どうして西側で安泰な暮らしをしている人々が虐殺の危機に直面して命を守ろうと苦闘している人々と絶滅の危機に彼らの共同体に特別の配慮をしない、ということです。いったい誰が私たちのために抗議の声をあげるのでしょうか。
C:イラクのあなた方キリスト教徒は、何を米国政府に求めていますか?
W:イラクのキリスト教徒たちは米国の人道援助を必死になって求めています。そして、援助が途中で消えることなく、本当に私たちに届くようにしてくれることです。私の大司教区は2014年以来、故郷を奪われたキリスト教徒のイラクで最大のコミュニティの世話―衣食住から教育、医療まで―すべてをしていますが、米国政府、国連からは一銭の援助もない。活動資金は私的なキリスト教徒の慈善グループなどからいただくなど、自分で手に入れる努力をしているのです。
繰り返し言いますが、私たちはキリスト教徒だけのために支援をしているのではない。クルド人の家族も対象ですし、私たちが運営する診療所もたくさんのイスラム教徒の治療をしています。しかし、その運営費も尽きかけています。数少ない医療スタッフが日夜を問わず働き、資金を得ようともしていますが、これまで三年間続けてきて、支援者の多くも援助の限界に達しつつあるのです。米国はイラク国内の人道援助にかなりの額の支援をしていますが、私たちのところにはほとんど回ってきません。「あなた方は教会だから資金を渡せないのだ」と言う人がいました。そこれ、言いたいことが二つあります。
まず第一に、私たちは米国議会の方々から「米国の法律は教会組織が人道援助資金を受けることを禁じていない。自分の宗教に改宗させる目的のために使われるのを禁じているだけだ」と説明されている。私たちは、さきに申し上げた通り、クルド人やイスラム教徒の世話もしており、彼らに尊敬をもって接しています。カトリック教徒して、私たちはいつも他の信仰を持つ人々に尊敬の心を持っているのです。
二つ目に、私たちの支援活動は、他の公的な援助機関の支援よりもはるかに効果的に行われています。私たちの教会のスタッフ―宣教師やボランティアは、そうするように〝呼ばれて″いるから、活動しているのです。ところが、これまでの米国政府や国連は、国内少数派を支援する教会の活動は援助をしない、という硬直的な姿勢を取り続けてきました。国連は「教会は援助がなくても活動している」という勝手な解釈で助けようとしない。
考えてもみてください。こうした無理解に、私たちがどれほど腹立たしい思いをしているか。トランプ氏が米大統領選に勝利した時、イラクのキリスト教徒は、「これで、米国政府は、私たちを無視してきた政策をようやく変えてくれる」と期待して、喜びました。どうして米国人は虐殺から生き延びている少数派が援助を受けるのを妨げるために「宗教的なテスト」だけをするのでしょう。理解できません。
イラクのキリスト教徒など少数派は今なお、故郷を追われ、これから何か月も、何年もそうされ続けるでしょうし、そうした中で生き延びるために援助が必要なのです。自分たちの家や村が繰り返しISISに破壊され、立て直しのための米国からの資金援助を強く求めています。たしかに安全保障の面からの難しい問題があり、実質的に安全を確保する背策が必要でしょう。そのうえで、イラクの少数派は、米国政府がイラクの他の人々と同じ権利を自分たちが得られるように主張してほしいのです。(抄訳・「カトリック・あい」南條俊二)
(写真はワルダ大司教・Credit: Daniel Ibanez/CNA.)
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」(欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。最近、映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、紹介しています。
(2017.2.2 Tablet ローズ・ギャンブル)
ジンバブエで拡大するムガベ大統領に対する抗議活動の先頭に立っていた聖職者が逮捕され、政権の転覆をはかった罪で最長20年の刑に処せれられる事態に直面している。エバン・マワリレ師は、昨年7月の市民の抗議活動のリーダーになっていたが、2月1日、米国から帰国したところをハラレ空港で逮捕された。
逮捕容疑には、米国に向かうまでに行ったデモのほか、昨年8月のニューヨークの国連本部前で国連総会に向けたデモも対象になっている。彼は逮捕後、空港内の留置場で一夜を過ごしたが、いつ法廷に立つのか分かっていない。
マワリレは長年、ムガベが率いるジンバブエ・アフリカ国民連盟・愛国戦線党に対する組織的な批判を続ける国民的な英雄だ。昨年7月にも逮捕されたが、その時には裁判所の外に数百人の支持者が集まり、裁判が行われている間、ずっと祈り続け、釈放され、その後、米国に移ることを余儀なくされていた。
裁判を受けて、ジンバブエのカトリック司教協議会はプロテスタントの諸団体とともに声明を出し、ムガベ政権に対して「弱い人々を代弁する」聖職者に対する脅迫、逮捕を止めるよう訴えるとともに、カトリック、プロテスタント両教会に対して、ジンバブエに憲法で認められた権利が尊重され、平和と繁栄が実現するまで祈り、正義に反する諸制度に反対の声を上げ続けるように求めていた。
“The Tablet : The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher” and that you quote our website address http://www.thetablet.co.uk
(2017.1.27 ミシェル・ショーン・ウインタース)
トランプの描く米国の理想のもとで、柔和な人は地を受け継ぎ(マタイ5章5節)損ねる
TABLETオンライン版では、世界が現在抱える重要課題について現地特派員が深層から分析・評論するシリーズを始めます。その第一回として、米国のトランプ新大統領を取り上げます。
米国の行政のトップとして、新大統領は就任式で国民に一致と希望を高揚させ、目的意識に満ちた演説をするのが常となってきた。だが、トランプ大統領はそうではなく、暗い、失楽園的でさえある国のビジョンを掲げた選挙戦からの大衆迎合的テーマの混合物だった。
「スラムで貧困の中にいる母親と子供たち、国中に広がった墓石のようになった錆びついた工場群、金にまみれた教育システムは若い素晴らしい学生たちを知識が奪われたままにする。そして、犯罪、ギャング、麻薬が沢山の命を盗み取り、我々の国の潜在的な可能性を奪っている」と、トランプは国民に語った。「このようなアメリカの”carnage(大虐殺)”はここで止まる。まさに今、止まるのだ」。”carnage”は歴代の大統領がかつて使ったのない言葉だった。
2009年の就任演説で、オバマ大統領が米国のありさまについて暗いビジョンを描いて見せることはできたろう。当時、米国では毎月80万人の雇用が失われていたのだ。だが実際には、オバマは”change”を希望と結びつけた。だが、トランプは民間部門が記録を取り始めて最長、75か月連続の雇用増加を記録している時に、政権に就いたのだ。
リンカーン大統領は1865年、南北戦争が耐え難い苦しみに満ちた結末を迎え、戦いで62万人もの命が失われ、米国民の傷が癒える可能性に悲観的な見方が広がる中で、全国民に「互いの恨みを捨て、すべての人に慈しみを」と訴えた。
これとは対照的に、トランプは「人々に負担をかけながら、政府の報酬を手に入れている我々の首都にいる小さな集団」を強く非難した。
トランプの就任演説は米国の同盟国にも安らぎを与えるものではなかった。「この、たった今から、アメリカ・ファースト、それだけになる」。彼は、1930年代のアメリカ・ファースト運動が第二次大戦に巻き込まれるのに反対しただけではなかったことを、知らないようだ。あの運動は、ファシストに強く共鳴したものだった。そして、彼には、指摘した問題のどれにも単純な解決策がある―自分自身だ。
就任 演説の前に、キリスト教会の牧師が、新約聖書のキリストによる「山上の説教」の「幸い」に関する箇所を朗読した。皮肉である。大統領就任式の日、少なくとも「柔和な人は地を受け継ぐ」(マタイ福音書5章5節)ことはなかったのだ。
*Tabletは、イギリスのイエズス会が発行する世界的に権威のあるカトリック週刊誌です。「カトリック・あい」は発行者から許可を得て、日本語に翻訳、転載しています。
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(2017.1.30 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
トランプ米大統領による、イスラム7か国からの入国一時差し止めと米国の難民支援プログラムの停止の決定 は世界中で広範な抗議を巻き起こしている。カトリック教会の指導者たちはその一線に立ち、その決定を批判し、「今は米国の歴史で暗闇の時だ」との声も出ている。
批判の声は米国内にとどまらす、決定の影響を直接受けている地域も含めて、世界中のカトリック教会の指導者たちからあがっている。
イラクのシャルデアン・カトリック教会の代表、ラファエル・ルイス・サコ総大司教は、「迫害を受けている国々からのキリスト教徒の移民を優先的に扱う」という大統領の約束は、「中東に住むキリスト教徒にとっての罠だ」と語った。「宗教的な理由で迫害され危害を加えられている人々を差別する政策は、どんなものであっても、中東のキリスト教徒を害するものだ。それによって、中東のキリスト教徒共同体は、西側諸国の力に支持され、守られている集団〝よそ者″として、宣伝と論争の標的にされてしまう」という。
ワシントンポスト紙の報道は、そうした警告を証明しているようだ。報道によれば、過激派集団「イスラム国」のメンバーが「トランプの入国禁止令は、西側がイスラムとの戦闘状態にある、という我々の主張を証明するものだ」と語った。
Cruxの週刊ラジオ番組に登場したバチカンの教皇慈善活動室 の中東地域責任者、アンドレジ・ハレンバ師によると、「イラクのバシャール・ワルダ大司教が入国禁止の最初の〝犠牲者″になっている」という。大司教は米国を訪問して、イスラム国によるキリスト教徒追放問題について助けを得るために米国議会の民主、共和両党の指導者と話し合う予定を取りやめるのを余儀なくされた。
だが、カトリックの反応が最も活発なのは米国だ。「この週末、米国の歴史で暗みの時だということが証明された」と語るのはシカゴのブレイズ・キュピッチ枢機卿だ。「大統領令は、難民たちから顔を背け、暴力、抑圧、迫害から逃れようとする人々、とくにイスラムの人々に対して、国の門を閉じるようなものだ。これは、カトリック教徒とアメリカ人の価値観に反する行為だ」と強く批判した。
シカゴは歴史的にみて、そして今も、移民の入国地であり、不法移民の人口は全市の人口の7パーセントを占めているとみられる。教皇フランシスコによって枢機卿にされたキュピッチは昨年11月、「これまで私たちは、暴力から逃れようとする人々に顔を背け、特定の人種、宗教に属する人々を軽んじたり、除外したりを繰り返してこなかったでしょうか」との問いに対して、「私たちカトリック教徒は、そうした歴史を知っています。そうした判断の別の側にいました」とクロアチア人にルーツを持つこの人は答えていた。
テキサス州オースチンの司教で全米司教協議会移民対策委員会の長でもあるジョー・バスケス師は12月27日の声明で、「教会は、迫害から逃れようとする人々が何を信じているかによらず、助けることを信条としています」と述べ、「助ける相手の中にはキリスト教徒だけでなく、シーア派イスラム教徒、ミャンマーのロヒンギア、その他の宗教の少数信者も含まれます。家族を、家を、そして国を失ったイスラム教徒を含め、信仰を持つすべての兄弟、姉妹を守る必要が、我々にはある。彼らは神の子供たちであり、人間としての尊厳をもって扱われる資格があるのです」と強調している。
ボルチモアのウィリアム・E・ロリ大司教は信教の自由に関する暫定委員会の委員長だが、ボルチモア・サン紙に「我々の大司教区は難民、移民を歓迎し続ける」を言明した。米国には、国境と市民の安全を守る権利がある。「だが、米国はこれまで常に素晴らしく寛大で、難民、移民を歓迎していたし、(大統領令を)そのような方向への一歩とは見ていない」。むしろ大統領令は「後退の一歩」だと断言した。
サンディエゴのロバート・マッケルロイ司教は29日に声明を発表し、カトリック信徒にとって「異邦人を迎えよ、という聖書の命じる言葉は、個人個人の人生の中だけでなく、苦痛と混乱に満ちた世界に正義が行われる社会を作るために分かち合っていく責任を示してもいる」とし、それ故に、カトリック教徒は、米国が「戦争と迫害から逃れようとする人々の安全の地」と同義であると見なすべきだ、と述べた。そして、今週は米国にとって責任を放棄した恥ずべき時だ、とも語り、「我々は黙って立っていることができないし、そうすべきでもない」と訴えた。
ワシントン大司教のドナルド・ワール枢機卿は29日、大司教区内に司祭たちあてに書簡を送り、自身のホームページにも公表して「この文を書いている時、法的状況は〝流動的″であり、報道も錯綜している」としたうえで、「だが、その間にも、人々と人間的な懸念は影響を受けている」と述べた。枢機卿は1月27日に行われた連続44年目の「命の行進」について語る中で「我々の声―我々の存在は、我々のまだ生まれない人々と人生の各段階での暮らし守る中で、を無視しえない」「難民たち、とくに宗教的迫害からの逃れようとしている人々を支援するために声を上げる時だ」と書いている。そうすることは「法的な国家安全保障に関わる問題になる可能性」があるが、「連邦政府が〝助けを求める罪のない人々を犠牲にすることなく職務を遂行する」ことに期待を表明した。さらに「政治的な議論は今後も続くだろうが、我々は戸口に立っている異邦人、傷つきやすく、助けを必要としている人々を日々世話する司牧と実務に注力し続けることにベストを尽くさねばならない」と言明している。
デトロイトのアレン・ビグネロン大司教はミシガンのイスラム教師協議会あての書簡の形で声明を出し、「カトリックの共同体は、どのような信仰を持とうと関係なく、移民、難民のために声を上げ続け、ケアを続けるつもりであることを知ってもらいたい」と励ましの言葉を送った。スクラントンのジョセフ・バンベラ司教、アーリントンのマイケル・バービッジ司教、そしてニューワークのジョセフ・トービン枢機卿も大統領令を批判する声明を出している。さらに、全米司教協議会の会長、副会長のガルベストン・ヒューストンのダニエル・ディナルド枢機卿、ロサンゼルスのホセ・ゴメス大司教が連名で30日、「人間としての尊厳を守る立場」から、難民、移民を排除する大統領令の事実上の撤回を求める声明を発表している。
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(2017.1.28 CRUX エディター ジョン・L・アレンJr.)
難民に紛れ込んで潜在的なテロリストが入って来ないようにする必要があるという理由で、トランプ米大統領がシリア難民を含む中東・アフリカのイスラム7か国からの入国許可を停止する命令を発した時、私は同僚とエジプトにいた2015年6月のことが頭に浮かんだ。
当時、私たちは世界中で起きている反キリスト教徒の迫害に関する連載の取材で、その国にいた。それまでに、コロンビア、エル・サルバドル、インド、ナイジェリアを回っていたが、カイロで「ステファノ」と言う名の30歳前後と思われるシリア人キリスト教徒の青年と出会った。彼は妻と二人で米国に入国する許可を希望していた。「ステファノ」というのは、もちろん、本名ではないが、入国が認められやすくなるのではないか、という期待を込めて、そう呼ばれるようにしていたのだ。
ある晩の夕食の席で、彼は自分のことを話してくれた。彼は、シリアのイスラム教徒の家庭に生まれたが、鋭い霊的な感覚に恵まれ、「発見の旅」を続けるうちにキリスト教に目覚め、カトリック教会に通うようになった。家族から、そんなことをしたら殺される、という反対を受けながら、洗礼を受けたのだという。
彼はとても鋭い感覚の持ち主で、信仰を授かるだけでは満足せず、ほとんど独学でカトリックの知的な伝統について学び始め、その中で特に、前教皇ベネディクト16世の支持を得ていたスイス人神学者ハンス・ウルス・フォン・バルサザールの著書に心酔した。バルサザールの著作をアラビア語に翻訳するのを人生の仕事にしたいと望み、彼の神学に関する著作類が、因習を打破し、イスラム文化を福音化する強力な手段になると確信していた。その段階で、彼はアラビア語に加えて英独伊の三か国語も使えるようになっており、海外で暮らすに十分な語学力を蓄えていた。仮に彼が、潜在的なテロリストだったとしたら、そういうことは全く意味をなさなかったろう。
ステファノはほどなく結婚し、妻もキリスト教を信じた。家族からさらに強い反対を受け、シリアに留まることに危険を感じて、友人の車のトランクに隠れて国を出た。まずレバノンに行き、それからカイロに向かった。国連難民高等弁務官事務所に難民申請を出した。我々と会った時、彼は米国籍をとり、米国でカトリック信者と話ができることを期待していたが、彼のシリア政府発行の旅券は失効しかけており、エジプトからシリアに強制送還され、死刑になることを恐れてもいた。
彼はついていた。後援してくれる金持ちのエジプト人のカトリック信者を紹介され、我々とカイロの高級ホテルのイタリアン・レストランでワインとパスタを楽しむことさえできた。だが、私は、米国で難民再定住プログラムで働く友人たちに、手を貸してくれるように連絡をとったところ、実際に友人たちと連絡をとってみると、法的に解決せねばならないハードルがいくつもあるという返事があり、ステファノも次第にいらだつようになった。そして、結局、彼は失望して、我々に連絡してこなくなり、現在彼がどうしているのか分からなくなった。
彼がオーストリアのカトリック教会の幹部と連絡を取れるようにし、その幹部はもし米国が助けてくれないのなら、ウイーン大司教のシェーンボルン枢機卿の支援のもとオーストラリア政府が力になってくれる、と手紙をくれていたのだが。その後、どうなったのか何も情報がない。ステファノが妻ともども元気で、彼が希望していた翻訳を進め、カトリックとイスラムの関係の専門家になる道を歩んでいることを祈りたい。さらに、米国がステファノのような人物を見分け、入国を拒むことのないように、そして彼のようなキリスト教徒だけでなく、テロの恐怖を逃れ、保護を求めているシリア人イスラム教徒たちの入国を認めるようになることを祈る。
トランプ大統領は、27日の Christian Broadcasting Networkとのインタビューで、宗教的迫害を受けているシリア人キリスト教徒の難民申請を優先的に受け付けることになることを示唆する姿勢を見せたようだ。彼は、オバマ政権下での対応に関連して、「もしキリスト教徒だったら、米国に入るのが不可能、そうでなくともとても困難だ、と思うかね」と発言した。「イスラム教徒だったら、入国できるが、キリスト教徒だったら、ほとんど不可能というのが不公正というなら、皆が公正に迫害されるのがいいのか。首をはねられる者が、キリスト教徒の方が多いのはどうなのか。そういうことは全くもって不公正だ。だから、我々は彼らを助けようとするのだ」と語った。オバマ政権下ではシリア人イスラム教徒の入国が容易だった、という認識は少々歪められたものだが、迫害を受けている少数者を特別に優遇する、という考え方は評価するに値する。
トランプのこの言葉が「言葉のあや」以上のものであること、ステファノのような勤勉で、思いやりと品格を備えながら、宗教的な迫害を受けている人々に対する意味のある助けに結びつくをことを望みたい。(翻訳・南條俊二)
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」(欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。最近、映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、紹介しています。
(2017.1.24 CRUXエディター ジョン・L・アレンJr.) 教皇フランシスコの最近のインタビュー報道に対する大方の気を引いているのは、政治的なポピュリズム(大衆迎合主義)とドナルド・トランプについての教皇の言及だ。その一方で、信教の自由の主張についての中国に関する彼の言葉、特に、中国で「宗教を実践」することができる、という言い方は、関係者を当惑させている。
政治的”救済者”の「壁と鉄線」で危機を解決することを約束する誘惑に対する教皇の警告、あえてアドルフ・ヒトラーになぞらえての警告が、論争を呼ぼうとしている。だが、全世界における信教の自由の大義を重んじる人々にとって、一連のインタビューにおける中国に関する教皇の言動は、眉をひそめさせ、愕然させるものだ。
スペインの新聞El Paisによるインタビューの英訳版で、教皇は”In China, churches are crowded. In China they can worship freely.(中国では、教会は人々で混みあっています。中国では自由に礼拝できます″と語ったとされている。もとのスペイン語版では、教皇の発言はそれほど直接的な表現にはなっていない。彼の発言は “En China las iglesias están llenas. Se puede practicar la religión en China ,”これを直訳すると、“In China the churches are full … one can practice religion in China.(中国では教会は人々でいっぱいです・・中国では宗教を実践できます)” だ。「宗教を実践できる」-つまり、困難と危険にもかかわらず、ということを意味しうる―と言うのと、「自由に礼拝」できる、と言うのとでは、大きな違いがある。
こうした実際の言葉のニュアンスの差にもかかわらず、教皇フランシスコが「中国における信教の自由の風潮が基本的に肯定的なものだ」と示唆したように見えることは、中国における現実を知り、宗教上の少数者のために働いている人々をいらだたせ、憤慨さえさせるだろう。
教皇の発言の最初の部分、「教会がいっぱいだ」というのは経験的に正しい。中国では、キリスト教は興隆を続けており、それほど遠くない将来、一国として世界最大のキリスト教信者を抱える国になると見られるほどだ。公式には、増加している信者の大半は福音派と聖霊降臨派のプロテスタントで占められており、対照的にカトリック教徒の共同体は、中国の人口増加のテンポからみてせいぜい横ばいだ。
宗教を実践できる、と教皇が述べている点については、教皇の短い言葉よりも、実情は複雑で、少なくとも課題を認識していないように思われるのは、少々、悩ましいことである。彼が「知らない」というのは、奇妙な話だ。昨年11月にバチカンで、過去一年間に亡くなった司教たちのためにミサを捧げた時に配られた典礼の小冊子には、中国で刑務所あるいは強制労働収容所で働かされ、刑死したか健康を害して釈放後に死亡した5人の司教の名が刻まれていたのだ。
中国が宗教団体に対して厳しい規制政策をとっている、という情報を入手するのは、たやすい。米国の「世界の宗教の自由に関する委員会」の最新の年次報告は、中国を「特に注意を払うべき国」、つまり信教の自由を侵す度合いが世界の国々の中で最も高い国、に特定すべきだ、としている。報告は、2015年の中国における状況について「中国で信教の自由がひどく侵されている状態は2015年も続いている」とし、「従来と変わらず、中国の中央政府、地方政府は、教会から十字架を力で剥ぎ取り、建物を破壊し続けている。差別を進め、新疆ウイグルの回教徒、チベットの仏教徒を暴力で弾圧し、脅迫し、捕らえ、法輪功の信者や人権擁護の活動家などを投獄している」と明記している。
キリスト教徒はしばしば、宗教的な威圧、脅迫の矢面に立たされている。教皇がEl Paisのインタビューに答えた日の数日前にも、中国南西部で、大規模教会の牧師が、教会の建物から十字架を撤去する地方政府の方針を支持しなかった、として再逮捕された。これが、キリスト教徒を政府の定める規律従わせようとする恐ろしい合図であり、文化大革命以後のキリスト教弾圧の最も重大なこと、とみる関係者もいる。この牧師は2016年初めにも汚職の容疑をかけられて逮捕され、3か月後に釈放された後、自宅軟禁の状態に置かれていた。同様の容疑をかけられ、逮捕された一般信徒や聖職者は、数百人に上っている。
教会を管理しようとする政府の動きに反旗を翻すカトリック教徒も、しばしば同じ目にあっている。中国では2016年なかば現在、少なくとも3人の司教と12人以上の司祭が投獄されており、国内の各地で日常的に監視、脅迫、逮捕の脅しが行われている。
昨年12月末に、中国の宗教担当相は「北京政府はバチカンとの対話に意欲を持っているが、(信教の自由を)認める代価として、中国人カトリック信徒は『愛国の旗を高く掲げ』ねばならない。つまり、信仰生活を政府が管理することに異議を唱えない、ということだ」と言明した。その一週間前、中国政府高官が「〝正当″司教-教皇の同意を得ずに叙階された者を指す―は、北京政府とバチカンがともに同意した2人の新司教の叙階式に出席しなければならない」と命じた際、バチカンはこれを遺憾とする声明を出していた。
中国は、何万人ものキリスト教徒が強制労働収容所に入れられている北朝鮮と同じではないし、シリアやイラクのようにキリスト教徒が日常的に殺害されている国ではない。それでも、〝宗教の実践″以上のことが実際にできるように言うのは、重大な誇張のように思われる。
教皇は「空間よりも時を優先」する戦略を採っているのかもしれない。中国との関係進展に、時間をかけて取り組み、挑発的な言動を控え、前向きの変化に影響力を発揮する、という戦略だ。また、教皇は中国の現実の中で暮らすキリスト教徒がこれ以上苦しい目に合わないように神経を使っているのかもしれない。
それでも今、中国で獄中にいる、さもなければ投獄される恐怖の中にあるカトリック教徒には、教皇が自分たちが払っている犠牲について公然と、明確に語ってくれるよう望む資格があるだろう。その日はいつだろうか。いずれにしても、El Paisのインタビューがあった日でなかったことだけは、はっきりしている。
(翻訳・南條俊二)
(写真は、香港の中国政府代表部前で、「信教の自由に敬意をはらえ」のプラカードを掲げ、投獄中のマー上海教区補佐司教の釈放を要求するヨゼフ・ゼン枢機卿ら=2012年7月11日=Credit: Kin Cheung/AP.)
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(2017.1 .24 Tablet ローズ・ギャンブル)汚職・麻薬問題をめぐって、ドゥトルテ・フィリピン大統領とカトリック教会の対立が激化している。
大統領は24日朝、2年前の大量虐殺事件で命を落とした44人の警察官の家族との集まりで演説し、「カトリック司教団全員が辞めれば、私も辞任する」と圧力をかけた。「私は司教団の全員に言う。明日、皆、全員で辞めよう。いいかね。辞任だ。私が先に辞める。辞表を出すから、彼らはそれまで辞任を待て」、そして「我々は同じ不名誉を受けている」と語った。
演説で、大統領は参加者たちに、ジャーナリストのアリエス・ルフォがカトリック教会の腐敗と性的虐待を告発した本「秘密の祭壇」を読むよう勧め、「私はカトリック教会に戦いを挑む。お前たちは大馬鹿野郎だ。皆、悪臭と腐敗、全部のにおいがする」と怒りを振りまいた。
ドゥトルテ大統領は、違法な麻薬取引の取り締まりに関連して大量殺人が行われていることにテオドロ・バカーニ司教が懸念を表明して以来、カトリック教会を公けに攻撃するようになっている。バカーニ司教は1月18日にマニラで開かれた会合で、「ドゥトルテの対麻薬戦争」について「死をもたらすもの」と述べていた、と地元のニュース・サイトが伝えていた。
その翌日、マラカニアン宮殿でのスピーチで大統領はこれに反撃し、教会の腐敗を指摘し、子供たちに性犯罪をおかし、同性愛的と疑われる行為を大目に見、自分自身も仲間入りしている司祭がいる、と決めつけた。さらに、教会の高位聖職者には自分たちの罪を棚に上げて、麻薬取り締まりを批判する権利はない、と言明。「お前たちは私の恥をさらす。いいだろう。私もお前たちの恥をさらしてやる。自分たちが過ちを犯した時は許して、我々がそうする時は許さない?馬鹿な話だ」と批判し、「フィリピン人の中で、お前たちが道徳的に、何が優れているというのか。宗教か?その意味は何だ。お前たちは我々を助けない。話し続けるだけだ」と付け加えた。
このような大統領の教会批判に対し、ラモン・アルゲレス大司教は1月20日のフィリピン・カトリック司教協議会でのインタビューで、同僚の司祭、司教を擁護し、「医師は自分が病気であっても、他の人の病気、そしてもちろん、彼(ドゥトルテ)の病気も治そうと努めなければならないのです」と語り、「教会人は完璧ではありません。それでも、自分が教えることに十分従えていない場合でさえも、何が正しく、適切なものかを訴えねばならないのです」と国民の理解を求め、「何人かの過ちで、全員を非難するべきではありません」と付け加えた。
ドゥトルテの激しい教会非難は、彼の政権のジェズ・ドゥレザ上級顧問がバチカンで教皇フランシスコに謁見した後に始まっている。教皇はその顧問に、私はフィリピンの人々を祝福し、「あなたの大統領も祝福します」と語ったという。上級顧問は、2015年に教皇が自国を訪問してくれたことへの感謝を表明する大統領の書簡をバチカンに届けるのが目的だった。
フィリピン国家警察のまとめによると、同国では2016年の1月初めから12月末までに大統領の麻薬撲滅戦争に関連して前年よりも51パーセント多い5927人が死亡している。ドゥトルテは大統領選挙に当たって、犯罪、とくに違法麻薬取引の絶滅を公約に掲げ、昨年6月に大統領に選ばれて間もなく、暴力的な撲滅戦争を開始している。
(写真は、フィリピンでの麻薬の違法取引絶滅の戦いの一環として昨年12月に開かれた「麻薬の無い世界」セミナーに参加した警察官たち)
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【2017.1.23 CJC通信】ドナルド・トランプ新大統領の就任に際し、全米で大規模な抗議デモが行われるという極めて異例な事態は、米国における宗教の存在への懸念を改めて示すことにもなった。これまで宗教には無関心であるばかりか、特にキリスト教には批判的な姿勢を露わにしていたトランプ氏が、就任式典の一連の過程であたかも忠実な信徒のように振るまう姿勢には、その場に居合わせた各派指導者も戸惑ったのではないか。
第58代大統領に就任する1月20日の朝、ドナルド・トランプ一家は、『セント・ジョン・エピスコパル教会』で祈祷会を行っていた。聖公会の同教会は、ホワイトハウスとはラファイエット広場を挟んだ向かい側にある。ロバート・ジェフレス司祭が説教したという。
11時から連邦議事堂で開かれた就任式では、ティモシー・ドーラン枢機卿(ニューヨーク大司教)、サムエル・ロドリゲス牧師(『ナショナル・ヒスパニック・クリスチャン・リーダーシップ』創設者)、女性テレビ伝道者ポーラ・ホワイトさん(『ニュー・デスティニー・クリスチャン・センター』牧師)、ラビ・マービン・ハイヤー(ユダヤ人抑圧監視団体『サイモン・ウイゼンタール・センター』の創設者)、フランクリン・グラハム牧師(『ビリー・グラハム伝道協会』会長)、アフリカ系市民に向け「プロスペラス・ゴスペル」を唱導するウエイン・T・ジャクソン牧師らが登壇した。
大統領は就任から一夜が明けた21日朝、聖公会の『ワシントン大聖堂』で行われる恒例の超教派祈祷会を訪れ、キリスト教やユダヤ教、イスラム教など、さまざまな宗教の聖職者が祈りをささげる伝統行事に参加した。教皇の顧問格とされるワシントン大司教ドナルド・ワール枢機卿も参列した。
一方で、ワシントンをはじめ、ニューヨークやボストン、シカゴ、ロサンゼルスなど、全米各地で新大統領に反発するデモが行われ、参加者は合わせて数百万人に上った模様。
ワシントンでは多くの著名人もデモに参加しており、呼びかけ人の女優アメリカ・フェレーラさんは「胸が締めつけられる思い。ともに立ち上がらなければ、私たちの自由と安全が失われてしまうかもしれない」と述べ、トランプ新大統領に強い警戒感を示した。
歌手のマドンナさんも、「変革はここから始まる。私たちが自由で平等であり続けるために闘おう」と訴えた。□
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キング牧師の子息がトランプ次期大統領と面会
【CJC】米国の人権活動家マーチン・ルーサー・キング3世とドナルド・ トランプ次期米大統領が1月16日、ニューヨークで面会した。同日はキング氏の父で公民権運動の指導者だった故キング・ジュニア牧師の誕生を記念する祝日となっている。キング氏は報道陣に、「米国を一つにすることを目標にしなければならない」と語った。特に「満足に機能しない投票制度」に関して「非常に建設的な会話」をしたという。□
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◎キング牧師の娘は「神はトランプ氏に勝つ」
【CJC】米公民権運動の黒人指導者、故マーチン・ルーサー・キング牧師をたたえる祝日の1月16日、同牧師の末娘バーニス・キングさんはアトランタの集会で「神はトランプ氏に打ち勝つ」と訴えた。牧師の長男キング3世は、ニューヨークでトランプ次期米大統領と面会し、「私たちの目標は米国を一つにすること」と融和的な姿勢を見せた。
ロイター通信によると、キング牧師の子供たちのコメントは、公民権運動の闘士として知られ、現代のキング牧師とされる民主党のジョン・ルイス下院議員がトランプ氏を正当な大統領とみなさないと批判し、トランプ氏は軽蔑的な発言で反撃するなど、2人の間で争いが生じている最中に行われた。
バーニスさんは、アトランタの教会で行われた集会で、希望を捨てず、「ホワイトハウスに座る人を恐れないで」と訴えた。「神はトランプ氏に打ち勝つ」と述べた際には、スタンディング・オベーションを受け、喝采の嵐に演説が中断される場面もあったという。□
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