(2017.3.19 Crux Editor John L. Allen Jr. )地政学と反テロの専門家は、世界中で行われているキリスト教徒への迫害を現実の危機とは見なしていないようだ。それは、一つには、キリスト教徒が武力で反撃をしようとしないことがある。アフリカでは、とくにナイジェリアではそのような‶伝統″がいつまでも続くと思えないことが起きつつある。
最近数か月の間に、ナイジェリア中央のカドゥナ州南部で、遊牧民労働者が現地の農民を襲い、数百人が命を落とした。遊牧民の大部分はイスラム教徒で、農民はキリスト教徒だったから、宗教的な側面があったことは否定できまい。
ナイジェリアは世界で最も大きいイスラム教徒とキリスト教徒が共存する国だ。2つの宗教の信徒が1億9000万人の人口のほぼ半分づつを占めている。首都アブジャのイマームが語ったように、バチカンとサウジアラビアが一つになったような国なのだ。
カトリック教会は昨年12月に、カドゥナの衝突で800人以上が命を落としたと見ているが、ナイジェリア政府は公式発表で、それよりも死者数は少ない、としている。政府幹部はまたこの衝突には宗教的な要素はないと強調し、少数民族のフラニ族遊牧民とその地域で農業を営む小さな部族の集団の間で生じた緊張によるものだ、という見方を示している。だが、フラニの武装集団が「アラー・アクバル」と叫び、イスラムの旗を振り回し、「異教徒をこの地から追い出す」と公言しながら、自分たちの村を焼いているのを目撃したキリスト教徒の農民たちにとって、そのような言い方は通じない。
ナイジェリアの問題は、孤立したカドゥナの農民の共同体社会は無力だが、同国全体としてみた場合、キリスト教徒は無力ではない、ということだ。彼らは国の人口の半分を占めており、キリスト教徒の企業経営者、政治家、その他の専門職で功している人は多くいる。その意思があれば、武力で反撃することができるのだ。実際、二人のフラニ族牧童が18日、カドゥナ南部で殺された。明らかに先日の事件の報復とみられ、多くの関係者は紛争拡大の前兆ではないかと懸念している。
2015年6月、同僚記者、 Inés San Martín と私はナイジェリアの別の場所にいたが、そこでは、イスラム教徒の遊牧民とキリスト教徒の農民の間で紛争が何年も繰り返されており、犠牲となった人たちは、紛争に宗教的な側面があることを隠さなかった。「本当の問題は宗教的な危機にあるのです」とナイジェリア・キリスト教会の会長、ダウダ・ムサ・チョイア師は語り、キリスト教徒を襲ったフラニ族武装集団に他の少数民族のイスラム教徒も加わっていた、と非難した。
もう一つ、ナイジェリアのキリスト教徒が共感を示していることがある。それは彼らが、‶左の頬を出す″ことに耐えられなくなっており、相手と同じ銃火で反抗する用意が次第に整ってきている、ということだ。キリスト教徒の弁護士で、プラトー州の多くの犠牲者の家族を代表しているダイロップ・サロモン氏に聞いたことがある。「なぜ自分たちを襲う人々に反撃しないのか」と。彼は答えた。「我々には、反撃する武器がないのです。武器が手に入れば、それを持って、戦う権利が法的に認められている」。
サロモンは、この地域のキリスト教徒は「国際機関が、政府の保護を得られない人々には武器を購入して自分を守ることが認められる、との判断を示してくれることを望んでいる。我々は常に受け身だ」「なぜなら、キリスト教徒はいつも犠牲者なのです」と指摘している。
暴力の犠牲者の1人、ダイロップ・ダボウ・ジュグ氏も全く同じ考えだ。「我々の宗教指導者たちがなぜ『戦ってはならない』と教えるのか、理解できない。彼らは、何もしてはならない、これが我々の宗教の行き方だ、と言う。だが、我々は自分たちを守らねばならないのです」。
これらすべてが、キリスト教徒に対する迫害の激化になぜ注意を払わねばならないかの理由だ。大規模な人権侵害、信教の自由、良心の自由、そして特にキリスト教徒にとって、信仰上の私たちの兄弟姉妹に関わることだ、と言うことで十分だ。もしそれが不十分なら、反テロ戦略の問題である、ということも言える。仮にキリスト教徒と他の宗教的少数者たちが世界の様々なところで罰されることのない攻撃の標的になるなら、過激な行動を誘発し、地域を不安定にし、世界を今よりも危険なところにしてしまうだろう。
ナイジェリアが際立だせているのは、キリスト教徒に対する迫害を深刻に捉えるさらに別の動機だ:暴力行為が起きており、キリスト教徒がもはや嵐が過ぎ去るのを待つ、小さく、弱々しい羊の群れではなくなっている地域が、地球上にはいくつもある、ということである。彼らには(反撃するための)人数も、資源もあり、暴力を振るわれる時間が長くなればなるほど、‶左の頬を出す”ことは、なくなってくる。
すでに、中央アフリカ共和国でこの見方を立証することが起きている。多数派を占めるキリスト教徒が、我慢の限界に達し、武装集団を組織し、血で血を洗う悪循環の引き金を引き、何千人もの死者を出し、何十万人の難民を生んでいるのだ。この国が小国で、500万人に足らない内陸国だとしても。仮にナイジェリアで同じことが起きたら、広範な地域で連鎖が起き、アフリカ大陸でキリスト教徒とイスラム教徒の‶世界大戦″に似た現象を目の当たりにするような事態になり得る。
ほかの例が必要なら、エジプトを考えればいい。キリスト教徒の推定人口には様々な見方があるが、少なく見積もって1000万人はいるだろう。彼らが過激になれば、この国の安定にとって深刻な脅威になるだろう。中東全域の現状をみれば、追加的な安定措置がほとんど必要ない、とはとても言えない状態だ。
さしあたり、キリスト教徒迫害によってもたらされている地政学的リスクに関する冷徹な分析は、遠慮なく言えば、キリスト教徒が一般的に言って、反撃をしないという可能性は、極めて少ない、ということだ。
(南條俊二訳)
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。
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(2017.3.16 Tablet Rose Gamble )「教皇から10万ユーロ(約1400万円)の義援金をいただきました。シリア内戦が続く中で結婚を決断した何百組の若いカップルたちにまず、役立てたい」とアレッポの教区司祭イブラヒム・アルサバハ神父が語った。神父によると、教皇フランシスコは四旬節の6日間の黙想会を締めくくるにあたって、「シリアの私たちへの希望のしるし」として、義援金をお送りになったという。
若いカップルたちは「激しい内戦が続く中で貧困と食料不足にあえいでいます」と、アルサバハ神父は15日放送のイタリアのカトリック・ラジオ局の番組で語った。「そうした中で、まず考えたのは、最も厳しい環境にあるアレッポの若いカップルたちを可能な限り助けることでした」。
神父はアレッポのアシジの聖フランシスコ大聖堂の教区司祭を務めているが、「いただいた義援金は、このほか、若い家庭への食料援助、水道や電気料金、医療・保健の代金、そして妊婦に必要な手当てに活用します」と言っている。
3月でシリア内戦は6年を迎えた。この間に50万人以上の命が失われ、この国の人口2100万人の四分の一以上が隣接国に逃れたり、欧州に亡命を希望して脱出を図っている。今週初めにUNICEFが発表したところによると、6年にわたる内戦で「最も高い代償」を払わされているのはシリアの子供たちだ。2016年の子供の死者は前年比20%も増えており、どん底の苦しみにあえいでいる。
3月15日には、ダマスカスで二件の自爆テロがあり、少なくとも31人が死亡したほか、多くの負傷者を出している。シリア国内の自爆テロは、この5日間に二度目だ。
(翻訳・南條俊二)
(カトリック・アイでは、英国でイエズス会が発行している有力カトリック週刊誌Tabletから翻訳・掲載の許可を得ています。“The Tablet : The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher” and that you quote our website address http://www.thetablet.co.uk )
*インドで性的暴行容疑の司祭を修道女ら手助け?
【CJC】AFP通信によると、インド南部ケララ州で、カトリック教会のロビン・ワダカンチェリー司祭が16歳の少女に性的暴行を加え、妊娠・出産させたとして逮捕された事件で、警察当局は3月5日、子どもが生まれた事実を隠そうとした疑いのある修道女5人と医師を含む病院関係者ら計8人に逮捕状が発行されたことを明らかにした。修道女らと医師1人は逃走中。
修道女らと医師は少女が出産したことを当局に伝えず、子どもをカトリック系の児童養護施設に隠した容疑で、病院職員2人とともに逮捕状が発行されたという。インドでは法律に基づき、10代少女による妊娠と出産は、医師と病院が当局に届け出なければならない。事件は子どもの権利を擁護する団体が、隠されていた出産の事実を当局に届け出たことで捜査が始まり、司祭の関与が明らかになった。□
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*キリストが両親と暮らした家?ナザレで見つかる
【CJC】聖書を研究する考古学誌『バイブリカル・アーキオロジー・レビュー』によると、英レディング大学のケン・ダーク教授らが率いる調査チームが、イスラエル北部のナザレでイエス・キリストが聖母マリアや父ヨゼフとともに暮らした家を特定したと発表した。
ダーク教授らの調査チームは、2004年あら2010年にかけてナザレの北北西6キロ付近に位置するナハール・ジッポーリ地区を調査した。発掘調査の結果、1世紀に建てられたキリストの家は、丘陵地帯から谷に向かって傾斜するように建てられていて、石造りの壁が残り、内部には穴の開いた調理道具や糸巻きなどのほか、ユダヤ人が家に飾る石灰岩で作った船の飾りが見つかった。
ダーク教授によると、この家は2世紀になる前に空き家となり、集落全体が採石場として使われるようになった。3世紀頃には墓地と教会が建てられたものの、ビザンチン帝国時代に装飾用のモザイクタイルで飾られた形跡を見ると、当時の人たちも、イエスが両親と暮らした聖なる場所だと認識していたのではないかと推測しているという。□
〈2017.3.6 CJC通信)国営『中国環球電視網』(CGTN)が2月26日、英語放送でトークショー「ヤン・ルイとの対話」を約30分間放映した。その中の約10分間、イタリア人レポーター兼リサーチャーのフランチェスコ・シシ氏が公開されていない中国とバチカン(ローマ教皇庁)との協約について触れ、注目を浴びた。
シシ氏は番組の中で、長らく展望が開けなかった司教任命問題で合意に達したと2度も強調した。「知っている限りでは、すでに事実上合意に達している。数人の例外を除き、中国の約120人の司教を双方が認めることになる」とシシ氏。
教皇は「司教に対しては宗教的権威を保持するが、政治的な権威は持たないと語ったが、『それは素晴らしい立派な路線』とシシ氏は言う。「これがバチカンと中国の間の前向きの合意と前向きな歩み寄りにとって非常に重要な点であり基礎なのだ」「だから、原則としては不一致はない。実際には多くの問題が生じようが、それは正常化への道筋なのだ」と付け加えた。
放送されたシシ氏の楽観主義に疑念を抱く人もいる。香港中文大学のジョン・モック・チトワイ助教は、シシ氏を言葉遊びをしているだけだ、と言う。「司教任命と司教指名までの全過程は常に教皇の宗教的権威に委ねられていた。シシ氏は宗教的権威と政治的権威の間の違いを明確にしていない。それでは合意した中に、教皇の宗教的権威が含まれているとシシ氏が言う理由を理解することは難しい」
今回のプログラムは、2月16日に放映される予定だったものが26日に延期されたが、理由は明らかにされてはいない。北京の中国社会科学院の上席カトリック研究員のワン・メイシュウ教授は、中国・バチカン関係を、中央のテレビ網の話題としたこと自体が「前向きな動き」と言う。カトリック系UCAN通信に「宗教的な話題が主流メディアの報道や討論に登場すること自体が、宗教問題に対する過敏性を緩和することになる」とワン教授は語った。
ただカトリック問題に関する「話題が一般化されすぎ、深味ののある議論が無かったのは残念だ」として。教授はプログラムが英語を理解する人だけのものだったのが情けない、と言う。「もしも中国語で流されたら、もっと意義あるものになっていただろうに」□
(2017.3.6 CJC通信)イスラム教は2070年までにキリスト教と肩を並べ、来世紀には世界最大の宗教になる。米首都ワシントンに拠点を置く調査機関『ピュー・リサーチ・センター』が発表したもので、今や移民の流入でヨーロッパやアメリカでも信者が急増している。
世界人口におけるイスラム教徒の割合は、2070年にキリスト者と同じ約32%に達する。さらに2100年頃までには、イスラム教徒が世界人口に占める割合はキリスト者を1%上回るようになるという。こうした傾向の主要な要因は移民で、これが北アメリカやヨーロッパなどの地域におけるイスラム教徒の増加を促している。
現在イスラム教は世界で最も成長が速い。2010年の時点では世界中に16億人の信者がおり、これは世界人口の23%に相当する。一方、キリスト者は22億人で、世界人口の31%を占める。□
(2017.3.7 朝日新聞・北京=福田直之)中国財務省は6日、2017年予算案の国防費が前年実績比7・1%増の1兆225億8100万元(約16兆8千億円)になったと明らかにした。中国国営新華社通信の取材に同省関係者が答える形が採られた。5日に公表した予算案などの報告には、国防費の金額と前年比が記載されていなかった。公表方法を変えた理由は明らかではないが、1日経ってから国営通信社を通じて公表するという経過は異例だ。
中国の国防費が1兆元を超えるのは初めて。この日の報道では、地方分を加えた額も公表され、前年実績比7%増の1兆443億9700万元だった。一方で、5日の報告に記載されなかった国防費の16年の実績は、この日の報道でも明らかにされなかった。前年比から単純計算すると9550億元前後とみられる。
国防費の増減は、軍事力の増強状況を知るための重要な手がかりだ。中国の軍事力は増強傾向にあり、国防費の動向は周辺国の関心を集めている。今回、財務省は新華社の取材に答えるという形で公表はしたが、政府が恣意(しい)的に判断しうる形式で、情報開示の透明性は後退している。中国外務省の定例会見では、外国メディアから「政府は何を隠しているのか」との質問が出た。
(2017.3.5 言論NPO)言論NPOは3月4日に、世界を代表する、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのG7参加国とブラジル、インド、インドネシアの10カ国のシンクタンクの代表と「東京会議」を立ち上げました。この会議では、不安定化する国際秩序や民主主義の今後を議論し、これらの議論をもとに、日本政府及び2017年の先進国首脳会議(G7サミット)議長国であるイタリア政府に提案を行いました。「東京会議」に先立ち、言論NPOは2月27日から5日間の期間で日本全国の有識者を対象にアンケートを実施し、281人の方から回答を得て、集計結果を公表しました。
(2017.2.27 CJC通信)地中海を渡って欧州に渡ろうとした難民が2017年に入ってからの53日間で、366人死亡したと国連移民機関(IOM)が推定している。昨年同時期では425人だった。
実数では犠牲者は昨年より少ない。ただ欧州へ海から渡ってきた難民は今年はこれまでに1万3924人確認されているが、昨年同時期には10万5427人で、死亡率が極端に上がっている。
地中海を渡ろうとする人々は、手近な船に、漂流している船からエンジンを盗んできて据え付けて海に出ている。この数字を発表したIOMの報道担当者は「このような事態は『事故』ではなく『自殺行為』だ」と強調している。
(2017.2.24 Crux バチカン特派員 Inés San Martín )今週テネシー州のボブ・コーカー共和党上院議員は、教皇フランシスコの社会正義にかかわる関心事の一つ、人身売買と現代の奴隷状態について、米国と教皇庁の連携について協議するためローマ入りした。
コーカー上院議員は24日、記者団に対して「教皇が何度も語っておられることからも、この取り組みについて、我々はバチカンを強力なパートナーとみている」と語った。国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿を含むバチカン当局者と会談する。上院議員は米国上院国際関係委員会の共和党委員長でもあるが、トランプ米大統領は23日、ホワイトハウスで行われた国内および国際人身売買に関する会議で「人身売買の蔓延を解決することは、わが政権の優先課題である」と、この問題に着手することを公約しており、大統領の意向を受けた可能性もある。
上院議員はローマでの会見で、今日の世界で約2700万人が奴隷状態で生活しており、これは世界の歴史上最大の数であり、うち24パーセントは性的労働、76パーセントは重労働で搾取されていると推測されることを明らかにしたうえで、「世界中で多くの人がこの問題に取り組んでいるが、地球規模でエイズ問題に取り組んだように、世界が一体となって取り組む必要がある」と強調した。
また、上院議員は、バチカン当局者との会談で焦点となるのは、移民問題もさることながら、「現代の奴隷状況の問題に取り組み、これを根絶させる努力が確実になされることが共通の関心だ」とした。トランプ大統領と教皇フランシスコの会談の可能性については、「大統領が5月にG7に出席するためにイタリアを訪れる時か、あるいはその後に2人が特に人身売買について会談する機会があればいい」と語った。(抄訳・岡山康子)
(2017.3.1 国連WFP=世界食糧計画) 2月20日、南スーダンの北部ユニティ州のレール郡そしてメヤンディット郡で「飢きん(飢饉)」が宣言されました。しかし、その被害はソマリア、ナイジェリア、イエメンにも拡大する危険があります。飢餓の中で最も深刻な「飢きん」が複数の地域で同時に起こるかもしれないという事態は、数多くの人が大変な苦しみの中にあり、中には命を落とす人もいるという、前例のない難題を意味します。
飢きんとは
飢きんの状況にあるかどうかは、国連の専門組織により、「総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification、通称IPC)」という食糧安全保障についての客観的な分析に基づいて判断されます。飢きんは主に以下3つの指標で判断されます。
■20%以上の世帯が極度の食糧不足に直面し、生活のみならず命の危険が明らか ■5歳未満児の30%以上が急性栄養不良 ■人口1万人あたり、毎日2人(5歳未満児の場合は4人)以上が死亡
「飢きん」ほどのひどい飢餓が発生することはめったにありません。ましてや、同時に複数の地域で起こるなどということは、近代においては例がありません。すでに、これら4カ国の人々は極度の栄養不良により生死の狭間にいます。これ以上大切な命が失われないよう、対策がいますぐ求められます。「人々が長期にわたって健康的、そして幸せに生きるためには、平和と統治体制の確保、および社会基盤の開発や強化を推進できる環境の整備が前提となっています。ゆえに、これらの国は飢きんの危機に襲われてしまっているのです」。国連WFPのアーサリン・カズン事務局長はこのように訴えます。
支援が必要な人へのアクセスが鍵
南スーダンにおける国連WFPのこれまでの活動について、カズン事務局長は「治安面や物資の輸送面等で様々な課題に直面しつつも、2016年には400万人という記録的な人数に対し、食糧・栄養支援を届けることが出来ました」と説明します。
この3年間、国連WFPは、南スーダンにおいて大規模な食糧・栄養支援を展開することによって、危機を食い止めてきました。しかし、今回の惨事の拡大を防ぐためには、何よりも、支援を必要としている人々へ物資を自由に届けられるようにすることが重要となります。「例えばユニティ郡では、支援物資を自由に届けられない状況が続いたことで、このような深刻な事態となっています。」とカズン事務局長。
これらの国では、いずれにおいても、まずは紛争がこの惨事の主な要因となっています。そしてさらに共通するのが人道支援を行うための、制限のないそして安全なアクセスが欠如していることです。仮に資金が十分であっても、必要としている人たちのところまで支援を届けるためには、無制限かつ持続的な立ち入り許可が必要です。そのために国際社会が政治的な圧力をかけることも重要です。
継続的な支援へのアピール
現在、最も必要としている人たちへ支援を届けるため、国連WFPは出来る限りのことをしています。南スーダンでは、緊急対策チームがコーク郡、メイヤンディット郡、パインジャール郡などで、18万人以上への支援を実施しています。また、レール郡においても、6万6千人を対象とした緊急食糧支援を行います。2016年の一年間で、国連WFPには59億米ドルと記録的な額が寄せられました。しかし、南スーダンにおける飢きんの拡大を食い止め、さらにソマリア、ナイジェリア、イエメンでの新たな飢きんの発生を阻止するためには、さらなる支援を必要としています。
この4カ国への緊急食糧支援に対し、国連全体では3月末までに44億米ドルを必要としています。これには国連WFPが今年7月まで行う食糧支援の費用12億米ドルが含まれています。国連WFPの食糧支援のため、今後必要とされる支援額(2月23日時点)は、南スーダン:7月末までの活動2億50万米ドル、ソマリア:7月までの活動に3億7,400万米ドル、イエメン:以前より計画していた活動に毎月6,950万米ドル、加えて緊急支援活動を2月から7月まで行うために4億1、700万米ドル、ナイジェリア:7月までの活動に2億1、900万米ドルが見込まれます。
「時すでに遅し」になる前に
飢きんが宣言された時点で大切な命はすでに失われ始めています。飢きんの発生や拡大を食い止めるために人道支援を展開する方が、本格的な飢きんが発生してから対応するより必要な資金ははるかに少なく済みます。いまこそ、国際社会が一丸となってこの危機に立ち向かわなければなりません。
( 2017.2.22 MSF/国境なき医師団活動ニュース)
MSFの移動診療を受けにきた母子 子どもは栄養失調になっていた
南スーダン ではマイエンディト郡とレール郡を中心に紛争 が長期化し、住民に大きな影響を与えている。何度も避難 を繰り返していることに加え、食糧、水、医療など生きていくために欠かせないものを確保することに必死の日々だ。直近の数週間で、国境なき医師団(MSF)は子どもたちの間で重度栄養失調が広がっていることを確認、緊急対応を開始した。
MSFは2017年1月、マイエンディト郡北部のダブルアルとミルニャルの両地域で、栄養失調が深刻なレベルに達していることを確認した。MSFの診療所に来院した5歳未満の子どものうち、急性で中程度~重度の栄養失調 患者は約25%に上った。 急性で重度の栄養失調に限っても、最大で8.1%に達していた。MSFは2月第3週から、移動診療に栄養治療も含める対応をとった。
銃弾が飛び交う中、1歳の双子と4歳を連れて
MSFの活動地は現在、緊迫した情勢にある。病院を新たに開院することは不可能で、他の医療機関へ患者を紹介することさえも難しくなっている。患者の移送は患者とスタッフの両方を危険にさらすことになるからだ。住民が避難を繰り返して常に居場所を変えている状況で、医療を提供することがさらに難しくなっている。
ニャヨラさんは1歳の双子を連れてMSF診療所に来院した。2人とも栄養失調だった。2016年10月から11月にかけて3度も、村から逃げてブッシュに避難したのだという。
「兵士の車や戦車の音を聞き分けられるんです。音がすると、とりあえずそばにある物をつかんで逃げました。兵士は逃げる私たちに発砲し、家に押し入って略奪しました。私は双子を両腕に抱え、4歳の娘を連れて走って逃げました。撃たれて倒れる人、走るのにじゃまになる持ち物を捨てる人を何人も見かけました。私たち母子はブッシュに隠れ、そこで夜を待ち、兵士がいなくなってから家に帰りました。襲撃のたびに、家にあったものは減っていきました。飼っていた牛、ヤギ、ニワトリはいなくなり、作物は奪われ、最後は家の中のものが略奪され、家屋が焼かれました」
ニャヨラさん一家はこの事件の数週間後、自宅をあきらめ、17時間の道のりを経て、湿地帯にある小島に避難した。その避難場所で、持ち出すことができたわずかな食糧と沼の水で生き延びた。
食糧入手がさらに難しくなる可能性
ペセルは「避難した人びとは常に移動しています。暴力を避け、安全な生活の場や生活必需品を求めているためです。例えば、もし彼らが食糧の配給のうわさを聞きつけたら、みなそこへ向かうでしょう。そういう状況ですから、MSFは常に、避難者の移動にあわせて医療活動を調整しています」と話す。
ペセルはこれから数ヵ月の見通しは厳しいと感じている。現地は乾期で、食糧入手がさらに難しくなる可能性が高いためだ。「安全に生活できる場所、清潔な飲料水、食糧、避難所、そして医療が手に入らなければ、この深刻な危機が改善する見込みは薄いでしょう」
南スーダン・ベンチュで国連世界食糧計画による食糧配給のために並ぶ避難民の女性たち – AP
(2017.2.22 バチカン放送)2月22日、バチカンで行われた一般謁見の席で教皇は、内戦に苦しむ南スーダンに、さらに深刻な食糧危機が加わり、多くの子どもたちをはじめ、数百万人の市民が飢えによる死の危険に瀕している現状に言及。このような緊急事態において、アピールにとどまることなく、具体的な食糧支援を通し、試練の中にある市民に食べ物の配給を可能にする努力を、すべての人に呼びかけら、神が南スーダンの兄弟たちと彼らを支援する人々を励ましてくださるよう祈られた。
(2017.2.16 Tablet Rose Gamble )パキスタンの主要都市ラホールで13日発生した13人死亡、108人負傷のイスラム過激派による爆弾テロについて、パキスタンの司教団が15日、声明を出し、市民と警官の犠牲を防げなかったとして、政府を非難した。
爆弾テロは、薬品の販売を規制する法案に反対する薬剤師たち400人が抗議集会を開いていたパンジャブ地方議会議事堂の前で発生し、警官隊も6人が死亡した。犯行声明は、イスラム過激派タリバン・パキスタンの一派、ジャマト・アル・アラーから出されたが、彼らは今回のテロに先立ち、政府によるテロ撲滅の動きに対抗して政府関係の建物を標的にしたテロを続ける、と宣言。パキスタン国家テロ対策庁も今月7日に「名前を確定できないテロ集団がラホールでのテロを計画している」と警告を発し、「高度の警戒と保安体制の強化」を強く指示していた。
これに対して、パキスタンのカトリック司教協議会の正義と平和委員会は15日に発表した声明で、政府に対して「犯人たちを裁判にかけ、こうした事態を引き起こした原因を究明し、すべての国民を守る手段を強化する」よう求めた。また、政府が、テロ発生へ警告を出しておきながら、必要な措置をとらなかったことを非難し、テロに対する国の計画を確実に実行し、特に、国の保安部隊が爆発物処理の勇気のいる、危険な業務を遂行するために装備を充実させるよう、強く求めた。
この事件に対して、ムハマド・ナワズ・シャリフ首相はテロ行為を弾劾し、テロ撲滅に敢然と立ち向かう、とする声明を13日に出しているが、英国・パキスタン・キリスト教協会のウィルソン・チャウドリ会長は「パキスタンは、保安部隊を強化するだけではテロとの戦争に勝てないだろう。国の教育制度、カリキュラムを通して、過激なイデオロギーの醸成を防がねばならない」と語っている。
パキスタンでの爆弾テロは、今回のラホール事件に先立って、過去3週間、北部と南東部の広い地域で連続して起き、一般市民や警官の死者を出している。昨年も、復活祭シーズンに、ラホールの公園で自爆テロが起き、沢山の子供たちを含む少なくとも72人が命を落としたが、タリバンが「復活祭を祝うキリスト教徒を狙ったものだ」と言明していた。
(翻訳・南條俊二=Tablet から許可を得て、翻訳、掲載をしています。“The Tablet : The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher” and that you quote our website address http://www.thetablet.co.uk )
(2017.2.19 CRUXコントリビュータ ムンバイ・ ニルマラ・カルヴァーリョ )
ミャンマー初の枢機卿、チャールズ・マウン・ボー師が、最近は見過ごされがちになっていた同国に対する国際社会の関心を引いている。ミャンマーで「憎しみの商い人」が再び活発な動きを始め、外部の助けが必要な事態を迎えている、というのだ。
ミャンマーは欧米諸国にとってあまり知られていない国だ。アウン・サン・スー・チー女史が20年近くも自宅軟禁状態に置かれていたことなどが話題になる程度だ。最近、話題となったのはマルタ騎士団が慈善事業の一環として同国でコンドームの配給計画を進めたということで人事にバチカンが介入したとして騒がれもした。 そうした中で、教皇フランシスコによって一昨年、同国初の枢機卿に任命されたチャールズ・マウン・ボー師が、戦争犯罪についての否定的な関心が高まろうとしているのを受けた取り組み始めた。
教皇はミャンマーの平和と安定について祈り、とくに回教徒系少数民族に降りかかった悲劇について関心を向けている。そして、国連も今月初め、ミャンマーの軍と警察がロヒンギアの人々に対して行った非人道的行為を非難する報告書を発表した。それによれば軍や警察が女性に対して性的暴行を加え、大量殺人を行い、自宅からの退去を強要している。
ボー枢機卿は、この発表を受けて声明を発表し、報告に国民が注意を向けるよう訴え、とくにそこで明らかにされた残虐行為を強く非難した。枢機卿は同時に、明るい面も出てきていることを指摘し、「5年間の肯定的な変化を経て、この国は以前よりもオープンになった」と強調しているが、楽観的な見方は長くは続かない。彼はこの先も、軍の残虐さと少数民族が受けている迫害について語らねばならないのだ。ミャンマーのキリスト教徒はしばしば二重の苦しみを味わっている。一つは信者が少数民族、おもにカチン族に集中しているため、人種差別の標的にされている。もう一つは、「西側の仲間と誤解され、急進的な仏教徒集団から「文化的、政治的よそ者」と見なされている、ということだ。
国際宗教の自由・米国委員会は最近発表した「ミャンマーにおけるキリスト教徒迫害」と題する報告書で、キリスト教徒が雇用の差別、改宗の強制、暴力を受けており、教会とキリスト教徒共同体が冒涜されている、と結論している。何千人もの住民-その多くがキリスト教徒で占められている-が隣の中国に逃げ込もうとし、援助団体によれば、国境沿いに展開する中国軍に2000人が捕まり、10000人以上がミャンマー側の国境の町、マンハイに避難している。
ボー枢機卿は、ミャンマー政府に対して、ラカイン州、カチン州、シャン州北部での軍事攻撃を終結させるよう求め、さらに、「国際的な人道援助機関やメディア、人権監視団体がこれらの地域に妨害されずに訪れ、・・国際社会と協力して国連が報告した犯罪について、正義と説明責任にもとずいて、どこからも妨害されずに捜査できるようにする」ことを希望した。
さらに、国際社会に対して、「注意を怠らないように。あなた方はミャンマーの前向きの変化を歓迎しました。ミャンマーの国民も、平和で前向きな変化を願っているのです」と呼びかけ、「兄弟に対して兄弟の血を振りかけることで生きる『憎悪の商人』の動きがまた活発になっています。暴力をふるうことはいかなる人々に対するものでも容認できない、と痛切に感じているミャンマー国民、その民主政権に対して、あらゆる支援を拡大する」ように求めた。
同時に枢機卿は、国民に対して、自分の国で何が起きているかを注意深く見届けるように求めたうえで、「国連の私たちの国の悲惨な状況に関する報告を、私たちへの目覚ましにしましょう」と呼びかけた。そして、「この国で起きている暴力と恐怖を終わらすために、一緒に働きましょう。そして、この国に生まれ育った、あらゆる人種、宗教の、男、女、子供の1人1人が、仲間として、人類の兄弟として認められるミャンマーを建設する」ように促し、「平和を目指す巡礼を続けましょう。戦争に戻ることのないように。」と締めくくっている。(南條俊二訳)
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。
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(2017.2.20 CJC通信)中国政府公認『天主教愛国会』のアントニオ・劉柏年(リュウ・バイニアン)前副主席は、香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』とのインタビューで、地下カトリック教会の司教は「党と協働するには不適当」と語った。
劉氏は、香港大司教のヨハネ・湯漢(トン・ホーン)枢機卿が、司教任命に関する合意は差し迫った課題と発言したことに関するもの。香港教区の英字紙『サンデー・エグザミナー』に2月11日寄稿した論文で湯枢機卿は、政府任命の司教を受け入れる代わりに、中国政府も「地下」司教を認めることになろう、と語っていた。
劉氏は、司教任命に関する合意にはなお至っておらず、「中国とバチカンの間の対話の将来」に関わっている、と述べた。□
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(関連)毛沢東出生の地でキリスト教テーマパークの建設中止
【CJC】中国専門メディア『レコード・チャイナ』が2月14日、仏国際放送『ラジオ・フランス・アンテルナショナル』(中国語電子版)によるとして報じるところでは、中国の最高権力者だった故・毛沢東主席の出身地である湖南省長沙市政府がこのほど、キリスト教のテーマパーク建設の中止を発表した。
中国のネット上で「神聖な場所である湖南省に、宗教が入り乱れるのは容認できない」などと批判が強まったためと見られている。
計画では長沙市星沙生態公園内に、華中地方では最大のキリスト教テーマパークが作られる予定で、湖南省キリスト教協会によると、教会やキリスト教の教育機関を複数開設する計画だった。敷地内には多くのキリスト教の「受洗」用の池が設けられ、今年6月にオープンする計画だった。これに対して、ネット上では「政府は宗教思想の浸透に加担すべきではない」「国の安全にとって脅威になる」「毛沢東の出生地に宗教が入り乱れるのは容認できない」などの批判が噴出していた。
長沙市政府はすでに、市の公式ホームページに掲載していたキリスト教テーマパークに関するページを削除している
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