・米司教協議会が、難民援助停止のトランプ政権を憲法違反などで提訴、シカゴ大司教は「USAID凍結は何億の人々を危険にさらす」と批判

Archive photo of Cardinal Blase J. CupichArchive photo of Cardinal Blase J. Cupich  (2024 Getty Images)

2025年2月20日

・米大統領の海外援助打ち切りに世界の人道支援団体衝撃、イエズス会の援助機関も

JRS project in South SudanJRS project in South Sudan  (JRS)

*広がる人道危機

 

米政府の援助打ち切りで、米国の拠出金に頼っているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やその他の米政府と連携して活動していた組織を含む、より広範な人道支援ネットワークが資金凍結の危機にさらされている。米国は世界の開発援助総額の40%以上を提供しているため、その影響はJRSだけに留まらない。

Br.シュプーフは「これはまだ第一波に過ぎない。他の人道支援組織が米政府の援助打ち切りに対する対応策を決定すれば、混乱の第二波が起こるだろう。世界の人道支援ネットワーク全体が苦境に立たされる。そして、難民の子供たちは教育を受けられなくなるだけでなく、前述の通り、学校が提供する安全と安定も失うことになる。また、多くの子供たちは学校で食事を受け取っているため、援助打ち切りは、即座に、救命を必要とする人道上の危機を引き起こすだろう」と警告。

このシナリオは、「人命救助」の意味そのものを議論に付すことにもなる。米政府は「人命救助」活動に関する一定の免除を想定しているため、プロジェクトの資金が精査されることになるだろうが、「では、人命救助とは何だろうか? もし飲み物や食べ物があれば、それで人命救助は終わりなのだろうか? ”死ななければいい”ということか?これは今まさに議論すべき重要な問題だと考えている」とBr.シュプーフは述べた。

*多国間主義の終焉?

 

Br.シュプーフはさらに、「米政府のこのような動きは、単に資金援助の削減にとどまらず、世界秩序のより深い変化をの前兆となり得る」とも指摘。

「もし多国間主義と価値に基づく世界秩序に別れを告げれば、それに代わるものは存在しない。これは新たな世界秩序への出発なのだ。教皇 フランシスコは、このような変化に対して繰り返し警告を発してきた。 米国の司教たちに宛てた最近の書簡でも、『人間の尊厳の真実を認識しない力によって始められたものはすべて、まずい形で始まり、最悪の形で終わるだろう』と警告されている」と強調した。

*「それでも可能な限り援助を続ける」

 

だが、現実がどうであれ、JRSは難民を支援し、可能な限り援助を提供することに引き続き努力する考えだ。「私たちは単なるサービス提供者ではなく、難民と共に歩む組織だ。危機的状況においては、私たちは避難を余儀なくされた人々と揺るぎない連帯を保つ。私たちにとって重要なのは、彼らと共にこの脆弱な事態を受け入れることなのだ。キリスト誕生の物語は、神が意図的に人間となることを選び、最も不安定な状況にある彼らと同一化することを伝えている。これが私たちに求められていることなのだ」とBr.シュプーフと述べた。

*緊急募金の呼びかけ

 

JRSは、今後2ヶ月間の緊急資金不足を埋めるために、150万ドルから200万ドルの寄付金を集めることを目指し、緊急募金(Jesuit Refugee Service (JRS) – Accompany, Serve, Advocate)を始めた。ただし、金銭的な寄付以上に重要なのは、世界的な政策において人間の尊厳の保護を擁護するであり、「私たちは政治権力を持つ人々に訴えかけ、今日ある集団から尊厳を奪うことは、明日は私たち全員に同じことが起こり得るのだ、ということを、彼らに思い出させなければならない」ことも強調した。

 

 

*教皇フランシスコのリーダーシップ

 

また、Br.シュプーフは「JRSのような組織にとって、最も弱い立場にある人々に対する教皇フランシスコの揺るぎない支援と擁護がどれほど重要であるか」ということも強調。

「教皇は、精神性に深く根ざした方だ。政治家ではないが、現実主義者。福音について語る時、善きサマリア人の例について瞑想する時、そして米国の司教団への書簡で、あなたが目にしていることは、あなたが生きている世界で起きていることなのだ、と言われている。『信仰とは単なる道徳的教義ではなく、行動における信仰』なのだ」と語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2025年2月18日

・ミュンヘン安保会議で米副大統領が引用したヨハネ・パウロ2世の言葉は”我田引水”?(Crux)

(2025.2.15 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

 世界各国首脳や閣僚が安全保障について意見を交わすミュンヘン安全保障会議に出席した米国のバンス副大統領が15日の演説を、故ヨハネ・パウロ2世教皇の言葉を引用して締めくくった。

 2019年にカトリックに改宗したバンス氏は1月20日に副大統領に就任して以来、トランプ大統領の物議を醸すことの多い政策の道徳性を強調する際に、自身の宗教について語ってきが、教皇フランシスコは、今週、「ordo amoris(ラテン語で「愛の秩序」の意)」の教義に関するバンス氏の解釈に異議を唱え、不法移民の国外追放を目指すトランプ政権の取り組みを非難している。

 15日の演説でバンス副大統領は、「ウクライナ政策からデジタル検閲まで、すべてが民主主義の防衛として正当化されている。しかし、欧州の裁判所が選挙を無効にしたり、高官が選挙の無効化をほのめかしたりしているのを見ると、我々は自分たち自身に適切な高い基準を課しているのかと問うべきだ」と述べ、「トランプ政権は欧州の安全保障に非常に懸念を抱いており、ロシアとウクライナの間で妥当な妥協点を見出すことができると信じている。また、今後数年間で欧州が自国の防衛を大幅に強化することが重要であると信じている。しかし、私が欧州に関して最も懸念している脅威は、ロシアでも中国でも、その他の外部勢力でもない」と批判。

 さらに、「私が懸念しているのは、内側からの脅威だ… 欧州が、最も基本的な米国と共有する価値観のいくつかから後退している」とし、具体的に、「2年余り前、英国政府は、51歳の理学療法士で退役軍人でもあるアダム・スミス・コナー氏を起訴した。中絶クリニックから50メートル離れた場所で、誰も邪魔せず、誰とも接触することなく、ただ黙って3分間祈っていたのがその理由だった」と非難した。

 そして演説の最後に、「民主主義を信じるということは、我々の市民一人一人が知恵を持ち、発言権を持っていることを理解することだ」としたうえで、「市民一人一人の声を聞こうとしないのなら、どんなに成功した戦いであっても、ほとんど何も得られないだろう。 私の考えでは、この大陸、あるいは他の大陸でも最も傑出した民主主義の擁護者の一人であるヨハネ・パウロ2世はかつてこう言われた―『恐れることはない』と。たとえ国民が指導者と異なる意見を表明したとしても、私たちは彼らを恐れてはならない」と締めくくった。

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 副大統領は自分のカトリック信仰について隠し立てをせず、彼を批判する人々は、「”新”カトリック教徒がしばしば、教会の教えを誤って伝えている」と不満を訴えている。この会議での演説で、彼がヨハネ・パウロ2世教皇の言葉を使ったことに対しては、強い反論があるかもしれない。

 ヨハネ・パウロ2世は、冷戦終結時にレーガン米大統領と協力してソ連邦を崩壊に至らせたことで有名だ。1981年、北大西洋条約機構(NATO)国防大学校の関係者に対し、ヨハネ・パウロ2世は「平和に対する最大の脅威は、核兵器の備蓄だけでなく、利己的な目的のために平和そのものの概念を操作することである」と述べている。

 さらに翌年、同大学関係者との会合で、パウロ6世の言葉を引用し、「弱さ(物理的な弱さだけでなく、道徳的な弱さも含む)を伴う平和、真の権利や公正な正義を放棄した平和、リスクや犠牲を回避した平和、臆病さや他者の横暴に対する服従を伴う平和、そして従属を甘受する平和。これらは真の平和ではありません。抑圧は、平和ではない。臆病は、平和ではない。恐怖によって強制された和解は、平和ではありません」と言明している。

 ロシアは2014年に初めてウクライナに侵攻し、2022年には全面侵略を開始した。ロシアの攻撃は残忍で、都市部の民間地域に対する無差別爆撃や、数千人の民間人の死をもたらしている。バンス副大統領が演説を行っている最中、トランプ政権は、ウクライナとロシアに戦争の終結について話し合いをする、と発表した。トランプ大統領は今週、ロシアのプーチン大統領、そしてウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ロシアが現在ウクライナの国土の約20%を侵略・支配している中で、戦争を終結させるための「取引」をしたいと述べた。

 これに対し、米ロ主導でロシア側に有利な“終結”がなされることを懸念するゼレンスキー大統領は、バンス副大統領との会談で、和平合意を結ぶためには「真の安全保障の保証」が必要であることを強調している。そして、多くの外交専門家は、現時点での、(米ロ主導の)和平は、ウクライナにとっての平和、すなわちヨハネ・パウロ2世が言われた「物理的にも道徳的にも脆弱な平和」「他者の横暴に対する臆病さと服従、そして従属への甘受」となることを懸念している。

 バンス副大統領は「欧州はヨハネ・パウロ2世の言葉を聴くべきだ」と言うが、聖人となったヨハネ・パウロ2世は、この時点では、ロシアとウクライナ間の交渉による解決を「真の平和」とは考えていなかっただろう。

 

2025年2月16日

・「バンス副大統領は、移民問題も教会の活動も分かっていない」-米司教団の移住委員会委員長が批判

(2025.2.13 Crux  National  Correspondent  John Lavenburg)

 ニューヨーク発 –全米司教協議会(USCCB)移住委員会の委員長、マーク・セイツ司教は、バンス米副大統領がカトリック教会による移民の定住支援について述べたコメントを「甚だしい誤解」と批判し、「バンス氏は明らかに私を知らない。私の心も知らない」と述べた。その一方で、同司教は副大統領との話し合いも提案している。

 「私はいつかバンス副大統領と腰を据えて話し合い、私たちの定住支援活動などに関するこれらの問題について話し合いたいと思います。なぜなら、彼は明らかに誤った情報を得ているからです。それは非常に残念なことです。そして、今、大きな拡声器を持つ人物からそのような情報が発信されると、非常に弱い立場にある人々に対する教会の活動にとって非常に有害なものになりかねません・本当に懸念すべきことです」と、セイツ司教は述べた。

 カトリックに改宗したバンス氏は、CBSがこのほど放送したニュース番組『Face the Nation(フェイス・ザ・ネーション)』で、米国の司教団が難民の再定住のために連邦政府から受け取っている数百万ドルを挙げ、「彼らは人道的な懸念を心配しているのか?それとも、実際には収益を心配しているのか?」と批判した。

 この発言に対しては、全米司教協議会(USCCB)から迅速な反論があり、その活動を擁護した。ヴァンスが示唆したように、会議の公表された財務報告書によると、USSBは2022年と2023年の両方で、再定住の業務費として連邦政府から1億ドルを超える資金を受け取っている。しかし、記録によると、USSBは毎年、難民再定住の取り組みに連邦政府から受け取った資金よりも多くを実際に支出しており、バンス氏の指摘は正確さを欠いている。

 12日、ジョージタウン大学で開かれたカトリック社会思想・公共生活イニシアティブの対話集会で、セイツ司教は「現在の状況」で助長されてきた偏見についても語り、トランプ政権や他の政治指導者の暴言に言及。「彼らは、移民すべてを犯罪者呼ばわりしている。そして、多くの人が少なくともそれを聞いて、『肌の色が茶色なら、つまり、彼らは悪い人間だ』と言うようになるのです」と強く批判した。

 トランプ政権が大量国外追放の取り組みの第一段階で移民を標的にし、すでに何千人も拘束して国外追放していることについて、「本当に、これらの人々について、私たちは、『あまりにも悪質なので、裁判も適正手続きも行わず、ましてや更生させる努力もせずに、グアンタナモ収容所に送り、彼らのことは忘れてしまおう』と言ってしまっていいのでしょうか?」と参加者に問いかけ、「以前よりも常に悪化する状況に人々を置くことは、利己的な見地から見ても認められない」と語った。

 移民問題に関する教皇フランシスコの米国司教宛ての最近の書簡では、トランプ政権の大規模な国外追放計画を批判しているが、セイツ司教は「教皇が私たちのために立ち上がり、私たちにはほとんどできないような雄弁さをもって、ある特定の方法で語ってくださった」と述べた。

 対話集会では、多くの発言者が、「トランプ政権の移民政策や移民に関する暴言が引き起こている恐怖」を強調。セイツ司教は、「多くの移民が自国で経験したトラウマが、彼らを自国から逃れざるを得ない状況に追いやり、その旅路で経験したこと」について語り、「今では多くの移民がそのような状況に戻らざるを得ない、と感じている」と指摘した。

 また、20代半ばのイエスという名の若者を取り上げ、先週のミサの後、彼は会衆全員の前でスピーチをし、温かいもてなしに感謝し、「移民コミュニティが今抱えている恐怖のただ中に留まるつもりはありません」と語ったと述べ、「このような話は、移民コミュニティ全体で繰り返されています… 多くの移民が『母国での生活がどんなにひどかったとしても、母国で命の危険を感じていたとしても、こんな生活は耐えられない』と言っている」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2025年2月15日

・バンス米副大統領、「トランプ政権は、信教の自由をこれからも優先していく」と言明(Crux)

(2025.2.6 Crux  National Correspondent  John Lavenburg)

 ニューヨーク発 – トランプ第一次政権の功績を誇示する中で、バンス米副大統領は5日、ワシントンD.C.で開かれた「信教の自由サミット」で、「第二次トランプ政権は引き続き、国内および海外で信教の自由の推進を優先していく」と断言。「あなたがたの政府の入り口の扉に信仰を置く必要はないし、トランプ大統領のリーダーシップの下で、そうする必要はありません。トランプ政権は、第一次政権の4年間の成果を復元するだけでなく、拡大することに専念しており、この2週間の成果は確実に拡大されます」と述べた。Vance says will continue to prioritize religious liberty

 カトリック信者である副大統領は、トランプ大統領が、中国との外交政策、欧州全域、そしてアフリカや中東全体を通じて、迫害された聖職者を救出し、ISIS(イスラム国)に脅かされた信仰団体に救済をもたらすなど、宗教の自由を推進したことを強調。

 また、副大統領は、トランプ大統領の1期目は、宗教の自由を守り、反ユダヤ主義と闘い、医療を提供する病院職員や信仰に基づく奉仕団体の良心的権利を保護し、宗教団体や企業が連邦政府と協力するための障壁を取り除くなど、断固とした行動を取ったことで、「米国の宗教的信条を持つ人々にとって最高水準の指標」を示した、と語った

 新政権について、副大統領は、中絶施設の入口を封鎖したとして逮捕されたプロライフ(生命の尊厳)派の抗議者数名を恩赦したことや、連邦政府による検閲を禁止する大統領令、「宗教者の米国人に対する連邦政府の”武器化”を終わらせる」ための大統領令によって、すでに重要な進展があった、と述べた。

 そのうえで、「今、私たちの政権は、信教の自由を単に重要な法的原則としてではなく、国の内外において守るべきもの」とし、「信教の自由を守る取り組みの一環として、外交政策において新教の自由を尊重する体制と尊重しない体制の違いを識別することが必要であり、私たちの政権はこれを行う用意がある… 国の内外で、信仰を持つすべての人々の信教の自由を完全に確保するためには、まだまだ多くのことを行わなければなりません」と決意を語った。

 また、副大統領は、「信仰は米国文化の基盤」と述べ、信仰を持つ人の使命はは「お互いを尊厳を持って扱うこと、困っている人を助けること、道徳的原則に基づいた国家を築くこと」であり、信教の自由は法的な保護を意味するだけでなく、「信仰を育てる文化を養うことで、男女が神から与えられた同胞の権利を、十分に理解できるようにすること」でもある、と述べた。

 最後に副大統領は、「教会は、異なる人種、異なる背景、異なる生活環境の人々が、共通のコミュニティへの献身、そしてもちろん神への献身のために集まる場所であったし、今もそうです… そこは、企業のCEOと従業員が神への崇拝において対等な立場に立つ場所。教会の席だけでなく、奉仕活動や慈善活動、病気や悲しみ、あるいはもちろん新しい命の誕生を祝う際に、人々が団結する場所です」と語り、「これらは、今日の立法者が育むべき絆や美徳ではないでしょうか… うれしいことに、第一次トランプ政権には確かにそれがありました。2期目のトランプ政権では、さらに強固なものとなるでしょう」と言明した。

2025年2月6日

・米国の司教たちの間でトランプ大統領の移民排除政策に対する批判広がる

移民(2025.2.1 カトリック・あい)

 トランプ米大統領が就任早々に移民排除の強硬策を取り始めたことに対して、米国のカトリック司教の間で批判の声が広がっている。以下に Catholic News Agencyの1月31日付けの記事を翻訳、引用する。

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   移民税関執行局(ICE)の捜査官は、上司の承認を求めることなく、教会や学校のような場所で逮捕する権限を新たに与えられたが、大統領が主に「最も危険な犯罪者」に焦点を当てた「アメリカ史上最大の国外追放作戦」を約束した後、すでにいくつかの主要都市で逮捕を増やし始めていると報じられている。

   トランプ大統領のその他の初日の命令には、数多くの選挙公約を遂行するものとして、米国南部とメキシコの国境での国家非常事態宣言、物議を醸した前任期の「メキシコ残留」国境政策の復活、麻薬カルテルの「外国テロ組織」への指定が含まれていた。

  トランプ大統領が署名した別の命令は、両親の法的地位に関係なく、米国領土内で生まれた個人の生得権市民権を廃止するプロセスを開始したが、州の連合が主導する重大な法的課題の中で、裁判官はすでにその命令を阻止している。

 移民に関する米国司教委員会委員長でエルパソ教区長のマーク・ザイツ司教は、1月23日の声明に「不法移民全員を『犯罪者』や『侵略者』と表現し、法の下での保護を奪うなど、あらゆる集団を中傷する大胆な一般化」を非難した。彼は、そうすることは「私たち一人一人をご自身の姿に似せて創造した神に対する侮辱だ」と書いた。

 マイケル・バービッジ司教は、1月31日にトランプ政権の国外追放の取り組みに反論する声明を発表し、教皇フランシスコと彼の兄弟司教たちが「人間の尊厳の保護を求めるとともに、すべての国が国境を守る権利を確認している」と強調。「私はトランプ大統領と議会指導者たちに、人間の尊厳と共通善に対するカトリックのコミットメントを反映した国家移民政策を策定することを求める」と述べた。また、安全上の理由から必要な場合を除いて、神聖な空間に立ち入ることを控えるよう、法執行機関に促した。

 バージニア州アーリントンの高位聖職者は、彼の教区の移民コミュニティに感謝の意を表し、「私たちの教会と私たちの国に多大な貢献をしている」と述べる一方、不法に米国に入国した多くの移民が「重大な犯罪」を犯していることを認め、「カトリック教会のカテキズムが強調しているように、カトリックの教えは国境開放政策を支持するものではなく、むしろ、見知らぬ人をケアする義務が、国家をケアする義務と調和して実践されるという常識的なアプローチを強調している… 私たちは正義を支持する教会であり、法の執行に反対するのではなく、すべての人々と私たちの国の利益のために、慈悲と理解をもってその適用を支持する教会だ」と述べた。

 だが、多くの個々の司教の声明は、移民に直接向けられ、励ましと支援の言葉を提供し、教会が彼らを歓迎しているという保証を求めている。ミシガン州のカトリック司教たちは最近の声明で、「移民の兄弟姉妹を広く侮辱する大規模な国外追放と有害なレトリック」に対する懸念を表明した。彼らは「すべての移民の人間の尊厳に対する揺るぎない支持と尊重」を誓い、移民家族の安全と団結を保つ政策を支持するよう選出議員に促した。

 しかし、ミシガン州の司教たちは、移民に関するカトリックの教えは、完全に「開かれた国境」という考えを拒否し、国境の安全と思いやりのある歓迎の両方を優先するバランスの取れたアプローチを支持していることを明らかにした。彼らは「市民権への公正な道を提供することで、難民と移民を歓迎する人道的な移民制度」を求めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年2月1日

(評論)トランプの二度目の大統領就任で米国のキリスト教会の深い亀裂が露わに(La Croix)

(2025.1.31  La Croix  Massimo Faggioli)

*聖公会の女性主教はトランプの政策に異議を唱えたが…

    トランプ大統領の2度目の就任式は、米国のキリスト教界に深い亀裂があることを露わにした。彼のビジョンを受け入れる聖職者もいれば、聖公会ワシントン教区のマリアン・ブッディ主教のように異議を唱える聖職者もいる。カトリック教会の権力との関わりは、今、清算の時を迎えている。

 トランプ米大統領の就任式で興味深かったのは、慈悲に根ざした最もフランシスコらしい言葉が、カトリック教会の指導者ではなく、プロテスタントの女性司教から発せられたことだった。

 トランプ大統領の2期目の就任式で、儀式に参加した聖職者たちのさまざまな対応が目についた。カトリックのニューヨーク大司教、ティモシー・ドラン枢機卿、ブルックリン教区のフランク・マン神父、そしてプロテスタントの男性牧師たちが祈りを捧げたことと、聖公会のワシントン教区初の女性主教、マリアン・ブッディ師が新大統領の前で説教をしたことの間には、際立った対照があった。

 ブッディ主教は、米国大統領に呼びかけを行う聖職者たちの長い歴史の一部となり、他の男性聖職者たちは、キリスト教指導者としての役割をまったく異なる観点から捉えるという、別の歴史の一部となった。私たちは、個人的な知恵と勇気の異なる例を目撃したが、同時に、”トランプ現象”の意味についての解釈も分かれることとなった。

 また、異なる教会と米国との関係にも違いが見られた。米国聖公会(世界的な聖公会の一員)は、カトリック教会を含む他の教会がもはやできなくなったり、あるいはする気がなくなったりしているような方法で、米国を批判することができる。ある意味で、米国聖公会は250年前まで北米を支配していた大英帝国の最後の名残りの一つであり、英国国教会の伝統の中で、国教または国家教会としての地位から与えられた独特な”預言的自由”を保持している。

 

 

*カトリック教会とアメリカの権力構造の有機的結びつき

 

 それとは対照的に、米国のカトリック教会は、そのメンバーの多く、さらには司教や枢機卿さえも盲目にするような形で、米国の権力構造とより有機的に結びついている。これは、既成教会のジレンマだ。 逆説的ではあるが、バチカンに存在する教皇庁に象徴される既成教会は、今日における米国の「ターボ資本主義」、急進的な個人主義、そして新帝国主義に対抗する、政府と国家のあるべき姿を侵食から守る数少ない砦のひとつである。

 米国の歴史における現在のこの瞬間は、キリスト教と”アメリカンドリーム”の関係を再考することを私たちに迫っている。トランプ支持派のキリスト教徒はもはや「保守派」とは呼べない。彼らは”超近代的”である。それは、ファシズムとナチズムが神話上のローマ帝国の過去への郷愁を織り交ぜ、未来主義とテクノロジー、社会の近代性と生政治を受け入れた1920年代と1930年代との類似点のひとつである。今日、新しい米国の”寡頭制”がもたらした疑いのない革新的な特徴がある。そして、トランプ主義は、技術的進歩と”post-democratic authoritarianism(超民主主義的独裁主義)”を混ぜ合わせた新たな近代化プロセスを開始しようとしている。

*米国カトリック教会指導部が見せるトランプの世界観に対する恐怖心、軽率さ、日和見主義的態度

 

 2024年11月から2025年1月の間に米国で起こったことは、単なる政権交代ではなく、体制の転換であり、それによって民主主義が危機に瀕している。

 欧州のカトリック教徒は20世紀に、米国のカトリック教徒にはない経験をした。憲法体制と法の支配を守ることが、保守的な姿勢となった。皮肉なことに、今日の米国司教協議会の指導部は保守的とは言えない。ポピュリズムがもたらす言葉の破壊に魅了され、トランプ主義の最も破壊的な側面に対して感覚が鈍くなっている。一部の聖職者が言うこと、そしてさらに重要なのは、彼らがトランプについて言わないことについて、私が最も驚くのは、特定の政策に対する彼らの立場ではなく、トランプによる組織的な言葉の腐敗や歪曲に対する彼らの沈黙である。

 人々の魂の世話をするのが役割である聖職者にとって、これは重大な懸念事項であるべきだ。多くの教会指導者は、トランプ氏のマーケティング的な言葉遣いに慣れてしまっている。彼のレトリックは、「偉大さを取り戻す」という約束の裏に隠された恐怖政治の手段となっている。反動的な世界観やトランプ氏への恐怖に駆り立てられている、というよりも、今日の多くのキリスト教徒は、私たちの言説文化に何が起こっているのかを、哲学的にも解釈学的にも理解できていない。

「カトリックの異なる世界観とアメリカンドリームの間には創造的な緊張関係があり、それが20世紀のアメリカ・カトリシズムにおける統合を生み出した。しかし、その総合は今、トランプの世界観に対する恐怖心、軽率さ、日和見主義的態度(あるいはそれ以上のもの)によって消し去られてしまった。

 米国のカトリックは、常にアメリカン・ドリームと相反する関係にあり、この新しい政治的・宗教的プロジェクトに対しては、保守派とリベラル派の両方から弁証法的見解が示されてきた。すなわち、ヨセフ・フェントンの第二バチカン公会議以前のトミズム、ジョン・コートニー・マレーの宗教的自由の神学、フランシス・スペルマン枢機卿の冷戦下の愛国主義とドロシー・デイの平和主義、フルトン・シーン司教のマルチメディアによる伝道活動とトーマス・マートンの郊外住民のための知的霊性などである。

 カトリック内部の原理主義的な傾向は、アメリカ文化の近代化の傾向に抵抗し、より穏健で対話的な新しい時代への動きと共闘した。それは、カトリックの典型であるet et、つまり「両方」を体現する不安定な均衡だった。カトリック的世界観とアメリカンドリームの間には「創造的な緊張関係」があり、それが20世紀の米国のカトリックにおける統合を生み出したが、それは、トランプの世界観に対する恐れ、軽率さ、日和見主義的な態度(あるいはそれ以上のもの)によって、今や消し去られてしまった。

*”トランプ2”に直面した米国カトリックはバランスを欠いた状態

 

 今という時代は、単なる一時的な混乱ではなく、少なくとも過去30年間にわたってその兆候が現れていた病であり、トランプの二度目の大統領就任に直面した米国カトリシズム内部のバランスを欠いた状態の危険性を露わにしている。

 その原因の一部は構造的な問題である。移民で構成され続けているこの教会において、移民が追い求めるアメリカンドリームを批判することは常に複雑な問題だったが、一部には、本来なら起こるはずのない知的・道徳的な崩壊もある。かつては、アメリカ・カトリシズムのなかのアメリカン・ドリームにも、その道徳的・文化的欠陥を認識しようとする声があった。

 そうした声のひとつは、宗教の自由と民主的機関の関係に関する研究で知られる、アメリカ人イエズス会の神父、ジョン・コートニー・マレー(1904~1967)によるものだった。1950年代には、彼は共有された意味の浸食に寄与していると見なした「技術的世俗主義」「実用的唯物論」「哲学的多元主義」といった主要な問題を指摘した。3月にワシントン大司教に就任するサンディエゴ教区長のロバート・マクエルロイ枢機卿は、1989年に出版したマレーに関する著書で次のように書いている。

 「技術的世俗主義と同様に、実用主義的唯物論は常に、米国における文化の明確に表現されない原理として機能してきた。しかし、技術的世俗主義が『核の冬』や『温室効果』の恐怖によって抑制されてきたのとは異なり、実用主義的唯物論は、米国人の文化的生活の形成原理としてますます強固になっているように見える」

 

 

*カトリックの社会思想と政治思想の新たな世代の出番が来た

 

 トランプの世界観の政治的・文化的台頭は、高度な「技術的世俗主義(AI、火星の征服、イーロン・マスクの「地球外での生活」プロジェクト)」、「実用主義的唯物論「ドリル・ベイビー・ドリル)」、そして抑制の効かない「哲学的多元主義(”オルタナティブ・ファクト”という表現は、トランプ支持派のメディア複合体が生み出した造語)」の勝利である。それは、無限の成長、成功が意味の尺度であること、「決して十分ではない」こと、「消費文化における商品としての宗教」といった既存のイデオロギーの延長線上にある。

 この世界観は、トランプ氏やマスク氏、J.D.ヴァンス米副大統領、そしてトランプ大統領の宮廷入りを狙う新興の”寡頭政治家”たちだけから生まれているわけではない。異なる政党やイデオロギーの対立を超えて、このバージョンのアメリカンドリームの側面を受け入れたり、アメリカ文化の問題点を見たくなくなったりしているカトリック教徒やその他の人々からも生まれているのだ。

 トランプは、アメリカンドリームの最新かつ極端で、ゆがんだバージョンである。ジレンマは、今日、アメリカンドリームへの無条件の憧れを擁護するか、あるいは民主主義、法の支配、人権を擁護するか、どちらかしか選べないことだ。

 しかし、両方を同時に守ることは不可能である。これはしばらく前から明らかであった。今では、より多くのアメリカ人とアメリカ人カトリック教徒にも明らかになっているはずだ。21世紀のカトリックの社会思想と政治思想の新たな世代の出番が来たのである。米国のカトリシズムと米国の関係は、トランプ主義によって、私たちの目の前で変化しつつある。トランプ主義をアメリカンドリームの繰り返しうる一つの形として認識するアメリカンドリーム批判は、どこで見出せるかが、今問われている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=聖書の邦訳は「聖書協会・共同訳」による)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2025年2月1日

(評論)バチカン外交は対トランプに”現実路線”、是々非々でいくか(LaCroix)

2017年5月24日、バチカン市国にて、教皇フランシスコとの会見後、システィナ礼拝堂を見学するドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人。(ホワイトハウス/パブリックドメイン)

President Donald Trump and First Lady Melania Trump tour the Sistine Chapel following their meeting アルゼンチン出身の教皇は、就任したばかりの米国大統領の移民政策を常に批判してきた。しかし、世界で最も小さな国は、米国に対して現実的な外交を維持し続けている。

 教皇フランシスコは、一般に言われているようにドナルド・トランプ氏に対して強硬な反対派なのだろうか? 1月20日の就任式当日、教皇はトランプ新大統領にメッセージを送り、「心からの挨拶」と祈りを捧げることを約束するとともに、トランプ氏の「国境侵入阻止」計画に反対の意を示した。

 メッセージで教皇は「米国は機会に満ちた国であり、すべての人々を歓迎する国であるという、あなたの理想に触発され、あなたのリーダーシップのもとでアメリカ国民が繁栄し、憎悪や差別、排除の余地のない、より公正な社会の構築に常に努力することを願っています」と述べた。

 教皇は、気候変動との闘いと並んで、移民の受け入れを、教皇在任中の主要テーマの一つとしている。

 一見すると、石油と天然ガスの採掘を「促進」すると約束し、一方で不法移民の国外追放の大規模な計画を実施すると公言したトランプ氏と、教皇は、対照的であるようだ。

 19日に放映されたイタリアのテレビ局とのインタビューで、教皇は、トランプの不法移民国外追放計画を「恥ずべきこと」とまで批判した。「もしそれが本当なら、それは恥ずべきことです… 不法移民の大量強制送還は)問題の解決策でありません。何の取り柄もない貧しい人々に不均衡の代償を払わせることになるからです。それは良くありません」と。

*移民追放も、妊娠中絶支持も「生命」に反する

 

 しかし、今回の米大統領選挙前には、バチカン外交は共和党候補に敵対しているように思われないように、細心の注意を払っていた。教皇は昨年9月、東南アジアからの帰路の同行記者団との機上会見で、カマラ・ハリスとトランプの民主、共和両党の大統領候補者を「生命に反対する」立場として、同一視し、「いずれの候補者も『生命』に反対している。移民を追い出す者も、赤ん坊を殺す者も(同様)です」と批判し、中絶を支持する民主党と移民に敵対的な共和党の政治的主張を否定した。

 ただし教皇は続けて、「投票に行かないのは良くありません。投票に行かねばならない… より小さな悪を選ぶべきだ。その女性か、その紳士か? 私には分からない。誰もが良心に従って考え、行動しなければなりません」と付け加えている。

 そして、この発言から数週間後、米大統領選の1か月前、ベルギーへの”激動”の訪問から戻った教皇は、妊娠中絶について次のように強調した。「これを行う医師は、言葉を選ばせてもらうと、『殺し屋』です。彼らは殺し屋なのです」。この問題は、2022年6月に全米で中絶の権利を認めた判決が破棄されて2年後の2024年の選挙に向けた民主党のキャンペーンの主要テーマとなっていた。

*カトリック信者の6割がトランプに投票

 

 米有力日刊紙Washington Postによる大統領選の世論調査によると、カトリック信者の約59%がトランプ氏に投票、ハリス氏の得票率を20ポイントも上回った。前回の大統領選挙の2020年、ピュー・リサーチ・センターは、米国の有権者の52%が民主党のジョー・バイデン氏を支持したと推定した。バイデン氏はアメリカ史上2人目のカトリック信者の大統領だった。カトリック信者は米国の総人口の約5分の1(20.8%)を占めている。

 「今回の米大統領選挙で2人の候補者を同一視することは、教皇が未来を侮辱しないための方法だった」とバチカンの関係者は説明した。「私たちは、バチカン外交が価値観のみに基づいていると考えることが多いが、実際には現実的でもある。バチカンは米国を必要としており、大統領の立場がどうであれ、良好な関係を維持する必要があるのだ」。

 

 

 

*バチカン外交は”現実的”、新大統領とは”是々非々”でいく

 

 教皇フランシスコとバイデン前大統領は、後者の在任中の4年間で個人的な関係を築くことに成功したが、中国との対話、ウクライナへの武器輸出、人工知能の規制など、米国とバチカン政府の政策が常に一致していたわけではない。この点について、特に、X、テスラ、スペースXのCEOであるイーロン・マスクが米国の公共支出削減に関する助言者に任命されたことで、シリコンバレーの有力者と親しいトランプ氏に対するバチカンの懸念が高まっている。

 だが一方で、新大統領が「急進左派の目覚めたイデオロギー」と戦うことを約束していることは、バチカンの外交上の優先事項のひとつ―昨年12月5日のCOP29のように、国際フォーラムにおけるリベラルな性に関する法律の推進を抑制しようとすること―と部分的に一致している。

 ウクライナに関しては、新大統領がロシアのプーチン大統領との平和対話を繰り返し約束していることも、教皇が新年のメッセージの結びで何度か述べた呼びかけ―「あらゆる戦闘が止み、平和と和解に向けた断固とした努力がなされるよう祈ろう」を反映している、とも解釈できる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=聖書の邦訳は「聖書協会・共同訳」による)

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2025年1月22日

(評論)キリスト教一致祈祷週間始まるー私たちはまだ前進を続けているだろうか?(La Croix)

(2025.1.18 La Coix   Jean-Paul Sagadou AA=Editor in Chief of Living with Christ Africa)

   毎年恒例となった「キリスト教一致祈祷週間」が18日から始まった。今年のテーマは「(私は復活であり、命である…)あなたはこのことを信じるか」(ヨハネ福音書11章25-26節)

La Croix International

 今年2025年は、西暦325年にコンスタンティノープル近郊のニカイアで開かれた第1回公会議から1700年目にあたる。この記念行事は、キリスト教徒の共有する信仰について考え、その公会議で定められた信条に表現されているように、それを祝うまたとない機会となる。この信仰は今日まで生き続け、実を結んでいる。

 今年の「キリスト教一致祈祷週間」は、この共通の遺産から学び、すべてのキリスト教徒を結びつける信仰をさらに深く掘り下げるよう、私たちに呼びかけている。

*新たな息吹か、それとも増大する疲労か?

 キリスト教徒の一致を達成するための努力が勢いを失っているように見えることがある。長年にわたる祈りと対話にもかかわらず、多くの人々が真の進歩が果たされたのか、疑問に思っている。

 私の住むアフリカ大陸では、キリスト教の教会が増えるほど、教会同士が離れていくように感じられる。多くのキリスト教徒は「一致への歩みが減速し、熱意が欠けている」と感じている。

 私の大陸では、キリスト教一致祈祷週間は独創性や創造性のないままに実施されることが多い。多様なキリスト教会は、漠然とした合意に吸収されることを警戒し、根底にある緊張感の中でアイデンティティを守ろうとする傾向がある。

 しかし、世界は今、政治的にも、経済的にも、そして宗教的にも、団結を切実に必要としている。例えば、教皇フランシスコは、シノドス(世界代表司教会議)を、私たちを分断する障壁を乗り越え、キリスト教の一致を強化する機会と捉えておられる。

 教皇は「私たちがキリストの宣教の弟子となるよう促す『共通の洗礼共通の基盤』に注目しよう。世界は私たちの『共通の証人』を必要としている。世界は私たちが『共通の使命』に忠実であることを必要としている」と強調された。キリスト教の一致を求める探求に新たな息吹を吹き込むことが急務なのは、明らかだ。

*さらなる一歩を踏み出す

 キリスト教一致祈祷週間、教派を超えた集会、神学書、宣言文などは、キリストが弟子たちに命じた次の言葉を前進させるのに役立つ。「彼らについてだけでなく、彼らの言葉によって私を信じる人々についても、お願いします。父よ、あなたが私の内におられ、私があなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らも私たちの内にいるようにしてください。そうすれば、世は、あなたが私をお遣わしになったことを信じるようになります」(ヨハネ福音書17章20‐21節)。

 キリスト教徒は共に集まり祈ることで、互いをより良く理解し、宣教や聖母マリアに関する相違や誤解を乗り越えることができるのだ。

 有意義な進展を実現するには、長期的な変化をもたらす可能性のある、日常生活から生まれた取り組みを優先する必要がある。この点において、大陸では信仰が異なる夫婦の家庭を真剣に受け止めるべきである。キリスト教徒の夫婦(一方がカトリック、もう一方がプロテスタントまたは正教)は、共有する信仰を美しく表現する方法を開発し、共に礼拝する方法を見出すことができる。教会の指導者たちは、エキュメニカルなカテケーシス資料を作成し、イエス・キリストの福音を共同で伝えることを奨励すべきである。

*広がり、豊かになる

 今日、「さまざまなキリスト教会が完全に融合して一つになる」という統一の夢を見ることは、非現実的に思えるかもしれない。しかし、私たちは、私たちが信じるお方、すなわちイエス・キリストに従うために、まだ多くのことを行うことができる。私たちは、正当で有益な相違が分裂の原因となるのではなく、むしろ相互の広がりや豊かさの機会となるように努めなければならないのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=聖書の邦訳は「聖書協会・共同訳」による)

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2025年1月19日

(評論)第二期トランプ政権下で、カトリック教会の役割は…(La Croix)

(2025.1.17 La Croix Massimo Faggioli)

 米国の歴代大統領で ジョン・F・ケネディとジョー・バイデンはカトリック教徒だった。一人は、米国でカトリックが明確な役割を果たそうとする時代を特徴づけ、もう一人は、教会が二極化した国での役割を果たそうとする中で、深い文化的、政治的分裂をもたらした。

 ケネディ大統領は米国のカトリックの歴史に新しい時代を開いた。「貧しいカトリック教徒」(彼の妻、ジャッキーの言葉)を集合的な想像力における”準聖人”に置き、「 貧しい移民の教会」…。米国の政治、文化、社会の中心に教会が来たことを告げた。だが、殉教者のような最後を迎えた。

 バイデン大統領の任期も悲劇的な形で終わった。 有罪判決を受けた重罪犯でクーデター未遂のドナルド・トランプに、大統領選で敗北… 陳腐な言い方をすれば、バイデンは老いていったのだ。合衆国憲法には「司教は75歳で辞表を提出せねばならない(そして80歳で枢機卿として、次の教皇に投票する資格がなくなる)」というカトリック教会のような規定や知恵はない。

 ケネディは、カトリック教徒を新しくするのを助けた。第二次世界大戦後のアメリカとバチカンとの連携も。ケネディが暗殺された時、新たに 選出された比較的若い教皇、パウロ六世は、その確固たる意図は、第二バチカン公会議を成功裏に導くことであり、それを達成した。教会の未来のための計画があった。 そして、米国のカトリック教徒はその重要な部分だった。
 だが、今や米国は、” 投票箱”で二極化しているだけでなく、宗教的にも深く分裂している。祭壇で、学校や大学で、 相互の、事実上の”破門”の状態になりつつある。

*教会とアメリカ政治との間の亀裂拡大

 バイデン大統領は 1月11日に、教皇フランシスコに民間人の最高の栄誉である「自由勲章」を授与することを発表したが、これによって教皇職とアメリカ政治との間の拡大する溝を隠すことはできない。 2013年の場合のように、伝統主義者で新保守主義のカトリック右派だけでなく、進歩的でリベラルな左派も、中絶に関する民主党の急進主義と、戦争犯罪と犯罪で告発されたイスラエル政府に対する超党派の支持のために、溝が広まった。

 教皇フランシスとの間に強い個人的なつながりがあるにもかかわらず、 バイデン、米国のリベラル派、進歩派(カトリック教徒など)は、教皇フランシスコを、教皇が彼らを必要としていたよりもはるかに必要とした。しかし、アメリカの進歩派が、LGBTQカトリック教徒に対する教皇のシグナルを受け入れ、環境と移民について教えることは、ここ数年に欠けていたもの、つまり道徳的なものに代わるものではなかった。

  20世紀の教義の発展まで、 特に公共の場での信教の自由と立憲民主主義などで果たす教会の役割には、神学があった。米国は、世界の民主主義の理想の砦だったが、今はそうではない。問題は、この民主主義の緩慢な死の伝染をいかにして防ぐかになってきている。そして、主導的な存在としての米国カトリックの役割 は 終わったかもしれない。
 
 反動的で、権威主義的で、あからさまなネオファシストが勢力を増す中で、本当に目新しいのは、米国のカトリック教会内に新しく起こってきた動き― ポストリベラルの理想、または新トマス主義の復活、あるいは 小さな共同体のプロジェクトを通しての、第二バチカン公会議のビジョンと教皇フランシスコの世界観を表した回勅「兄弟の皆さん」からの慎重な撤退や時には怒りの拒絶だ。
 
 再任されたトランプ大統領就任を前に、教皇は、ワシントンDCの大司教にマッケルロイ枢機卿を任命した。スタンフォード大学での彼の博士論文は、道徳と米国の外交政策に関するものだった。彼は、教皇庁立グレゴリオ大学で道徳神学の博士号もを取得しており、 イエズス会士の神学者と共著で1989年に米国政治に関する重要な本を出版している。 今日の米国の司教たちの間で思想家であり、彼の任命は、 教皇による米国司教座の再構築の努力の一環だ。

 

 

*米国のカトリックと民主主義の厄介な未来

 トランプの再選、大統領就任は、政治的な敗北だけでなく、 神学的および文化的没落の結果でもある。マッケルロイ枢機卿をサンディエゴからワシントンに移したのは、それに対する単なる反応以上のものだ。 中央を中心にアメリカのカトリックを再建するための長い道のり―- 政治的ではなく、 道徳的で スピリチュアルなもの。その中心はイデオロギー的には2つの通路の間のどこかに位置している。

 右側には、 第二バチカン公会議の諸憲章の受け入れを拒み、 民主主義と教皇の教えの多くを軽蔑する人々がいる。左側には、社会問題に焦点を合わせた左翼の学術神学と今日の民主党との一致… カトリックの思想を、ジョー・バイデンの民主党が現在置かれているのと同じ”イデオロギー的な無人地帯”へと導いた。

 2025年1月20日、米国と米国のカトリックは新たな危険領域に突入する。ドナルド・トランプと 彼の副大統領、JDバンス(カトリック教徒)はやるつもりだが、米国のカトリック教会が米国と世界に対して、どうするつもりなのかも、彼ら同様、あまり明確ではない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年1月18日

(評論)トランプ米大統領就任ー「大衆迎合主義」の潮流に直面し、教皇は教会の闇を曝すリスクを冒す(Crux)

(2017年5月24日水曜日、バチカンにて、教皇フランシスコはトランプ大統領と非公式の謁見を行った(写真:アレッサンドラ・タランティーノ/AP、プール)

 米大統領選でトランプ氏が当選した後、有識者たちは、移民問題や世界中で起きているさまざまな紛争に対する見解を異にする彼が大統領になることに、教皇フランシスコがどのような反応を示すか注目していた。

 そして、その答えは、教皇がワシントンDCの新大司教にロバート・マケルロイ枢機卿を任命したことで明らかになった。

 2015年よりサンディエゴ大司教を務めてきたマケエルロイ枢機卿は、米国のカトリック教会のリベラル派の主要メンバーの一人であり、トランプ氏が前回の大統領だった時に彼の移民政策に反対し、教会におけるLGBTQ+の問題を支持してきたからだ。

 トランプ氏は、未登録の移民を国外追放する、と発言し、連邦政府が認める性別は2つだけとするよう議会に要請することを公約しており、これは「トランスジェンダーの肯定」を支持する人々から反対されている。

 マケルロイ枢機卿のワシントンDC大司教への任命は、多くの人々にとって驚きだった。昨年11月の米大統領選挙でのトランプ氏の圧勝を踏まえ、教皇がマケルロイ枢機卿よりもトランプと融和的な人物をこの役職に任命するだろう、とする見方もあった。

 枢機卿はCruxとのインタビューで「カトリック教会は、政府には国境を管理する権利がある、と教えています」とする一方で、「私たちは、常に、すべての人間に尊厳がある、という感覚を持つよう求められています。ですから、一部で議論されている、より広範囲で無差別な大規模な国外追放を全国的に行う計画は、カトリック教会の教義と相容れないものとなるでしょう」と語った。

 こうしたワシントン新大司教への、カトリック信徒の評論家の評価は様々だ。

 教皇伝記作家のオースティン・イヴェレイはX(旧Twitter)への投稿で、「マクエルロイ枢機卿は、『明晰な頭脳』と『司牧者の心』、そして『預言者の直感』を備えている。キリスト教民族主義のゆがみを正す福音そのもの。”トランプ時代”に向けた”完璧な任命”だ」と讃えた。

 一方、保守派のカトリック評論家フィリップ・ローラー氏はXで、「マケルロイ枢機卿のワシントン大司教任命によって、2つの結果が予想できる」とし、「一つは、トランプ政権についての”著名な批判者”になること。もう一つは、(未成年者と成人への性的虐待で、教皇から司祭職をはく奪された元ワシントン大司教・枢機卿の)マカリックとのつながりから、今度は彼自身が(この問題を隠ぺいした、として告訴されていることで)批判されるだろう」と指摘。

 「ホワイトハウスに対する彼の批判は、トランプ大統領にダメージを与えるかもしれないし、与えないかもしれない。しかし、マケルロイに関する批判は、カトリック教会の信頼性を確実に傷つけるだろう。つまり、彼の任命はバチカン指導部の現在、何を優先事項としているのか物語っているのだ」と述べた。

 ローラー氏の指摘は的を射ている。88歳と高齢の教皇フランシスコは、2つの大きな問題に直面している。

 まず、世界の民主主義国における右派ポピュリストの台頭。教皇は一昨年、米国の教会が「非常に強固で組織化された反動的な姿勢」をとっている、と非難。昨年トリエステで講話をした際には、「今日の世界で民主主義は健全とは言えません… 人々はイデオロギーやポピュリズムの誘惑に対して批判的な感覚を養わなければならない」と強調している。

 保守派が欧米で勢力を強めている。ハンガリーの首相はヴィクトル・オルバン、イタリアの首相はジョルジャ・メローニ…。英国での労働党の勝利でさえ、英国のリベラリズムの台頭を象徴するものではないようだ。保守党が「保守的ではない」と非難される中での労働党の勝利であり、世論調査では労働党の人気は急速に落ちている。教皇がマクエルロイ枢機卿をワシントンDCの大司教に任命する直前、カナダでは、トルドー首相が、10月の連邦選挙で保守党の勝利が予想されることを阻止しようと、辞任を決めた。

 晩年の教皇が直面しているもう一つの問題は、教会における際限のない性的虐待とそれへの対応の失敗だ。

 マケルロイ枢機卿は2016年に「聖職者による性的虐待の専門家、リチャード・サイプ氏(2018年に死去)による批判に、適切に対応しなかった」と非難されている。教皇自身も、被害者からの告発に対して聖職者たちの”無実の主張”を信じがちであるという非難に長年、悩まされてきた。教皇は、被害者たちの訴えに対し、チリのフアン・バロス司教、アルゼンチンのグスタボ・オスカル・サンチェッタ司教、セオドア・マカリック枢機卿の言葉を信じてきたが、世間の激しい怒りの声を受けて、方針を転換した。

 1950年代以降、欧米の保守派の政治家は概してバチカンに対して敬意を払い、カトリック教徒の票を失うことを恐れることも多かった。だが今や、ミサに出るカトリック教徒から強い支持を得ることが多いポピュリストの指導者たちは、教皇から攻撃されたと感じた場合でも、バチカン自身のスキャンダルを持ち出すことで教会指導部を怒らせることを恐れる可能性は低い。

 …今後数年間は興味深いものになるかもしれない。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2025年1月9日

・ノーベル平和賞受賞者の三牧・被団協共同代表がL’Osservatore Romanoと会見、改めて核兵器廃絶を訴え

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年12月31日

・ウクライナで支援中の教皇特使、「この戦争で最後のクリスマスとなりますように!」

Cardinal Krajewski meeting with children in Fastiv, Ukraine
Cardinal Krajewski meeting with children in Fastiv, Ukraine

(2024.12.24 Vatican News Kielce Gussie)ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中で、教皇のウクライナ支援特使、コンラッド・クラジェフスキ枢機卿は、大きな被害を受けている村々を回り、主の降誕のミサを捧げ、首都キエフの南西80キロにあるファスチフ市で炊き出しを開始した。

 クラジェフスキ枢機卿の現地での支援活動はまだ終わっていない。教皇の意向を受けてリヴィウ市に医療用バンを寄贈し、被害を受けた病院に6000台の超音波診断装置を届けたことで、新たな段階が始まっている。枢機卿が12月23日にキエフに到着した際、教皇から電話を受けた。「教皇は支援がどのように進んでいるかを知りたがっておられました。この取り組みはいくらかの危険を伴うものですから」。

 人口6万人のファスティフ市では、クラジェフスキ枢機卿と駐ウクライナ大使のヴィスヴァルダス・クルボカス大司教が、地元の子供たちからクリスマスの出し物で歓迎された。 彼らの多くは音楽学校の生徒だが、ロシアの砲爆撃で両親などが殺され、孤児となっている。 枢機卿からは子供たちにクリスマスプレゼントとしてテディベアが贈られた。

 枢機卿はこの後、高齢者や多くの避難民が収容されている施設を訪問、白いパンを割る「メリークリスマスを願う伝統行事」に参加した。この施設、聖マルティン・デ・ポレス・センターはドミニコ会の修道士によって運営されており、多くの避難やヘルソンから他の都市へ食料を運ぶ多くのボランティアもいる。このセンターは、20年近く前から病気の子供、シングルマザー、ホームレス、高齢者の避難所となっている。そして、枢機卿はこれまでこのセンターになかった「炊き出し所」を開設した。国内外からボランティアが活動する場にもなる。

 この日の終わりに枢機卿は関係者たちに「戦いで荒廃した地域の共同体ともクリスマスのメッセージを分かち合いたい」という教皇の願いを表明、「私たちは、今回が最後の戦争のクリスマスになることを願っています… 信仰と祈りは山をも動かせるのです。ですから、神を信じるなら、この馬鹿げた戦争は終わるのです」と述べ、皆に祈りを続けるよう呼びかけた。

 また枢機卿は、福音書にある「パンと魚の奇跡」を振り返り、イエスの「あなた方の手で食べ物をあげなさい」(ルカ9章13節)という言葉を思い出し、「イエスが言われた『あなた方』とは、私たち全員、教会全体、すべての信者、福音のすべての人々のこと。そして、ファスチフで起きているのはまさにこれです… 毎日、誰かがパン、米、パスタ、肉などを持ち寄っており、何も不足していない―これこそが、現代の奇跡です」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年12月25日

・「ガザの人たちは飢餓状態、だが、支援もままならない、同僚と家族も死亡、早く停戦を」ーカリタス・エルサレムの代表が訴え

(2024.12.24 La Croix Anton Asper)

IDF forces in the Gaza Strip in October 2024. (Photo: IDF/Wikimedia Commons)
IDF forces in the Gaza Strip in October 2024. (Photo: IDF/Wikimedia Commons)

 この1年、カトリックの援助団体、カリタス・エルサレムのスタッフは、人道支援および開発組織としての役割を果たしながら、カトリック教会の社会・牧会的使命を体現してきた。ガザ地区での戦いで、イスラエル軍によるガザ地区の聖ポルフィリオス正教会への空爆で、スタッフの一人が夫と幼い娘と共に命を落とす、という痛ましい悲劇に見舞われるなど、大きな困難にも直面した。

 2022年9月以来、カリタス・エルサレムの代表を務めるアントン・アスパー氏は、La Croixの取材に応じ、現在も直面し続けている困難について語り、降誕節の希望を語った。

 アスパー氏と彼のチームは、イスラエルによるハマスに対する戦争の交戦地域に取り残された何千人もの男女や子供たちを支援している。エルサレムのシリア・カトリック教会の助祭であるアスパー氏は、戦争が始まって以来、自身とスタッフが目撃し、耐えてきた苦難について振り返りつつ、待降節の時期に輝く小さな希望の光をしっかりと抱きしめている。

  一問一答の内容は次の通り。

問:クリスマスはキリスト教徒にとって喜びにあふれた期待の時です。しかし、聖地に住む多くの人々、特にガザ地区の人々にとっては、希望を持つことはほとんどできない。混沌とした状況の中で、希望の兆しは見えますか?

アスパー:信仰に基づく見方では、私たちは常に内なる希望を抱いています。つまり、「何か良いことが起こり、平和の王が自らの土地、聖地に平和をもたらす」という希望です。レバノンで停戦が実現し、そこで何が起こったのかを私たちは目の当たりにしました。そして一時、「ガザ地区でも停戦が実現し、それが恒久的なものとなる」という希望が持てるのではないかと、私たちは本当に楽観的しました。

 当地のキリスト教徒たちは、自分たちのやり方で、自分たちの家でクリスマスを祝おうとしていますが、公共の場では祝えない。ガザ地区でこれほど多くの人々が殺傷されたことを考えると、それは本当に容易なことではありません。ガザ地区やヨルダン川西岸地区に親戚がいる人も多い。それでも、「変化が訪れる」と信じている。変化が訪れる兆しは、すでに少し見えています。私たちは、大きなコミュニティの中の小さな、しかし、たくましいコミュニティです。私たちは、聖地に住むキリスト教徒であり、主イエス・キリストを、私たちにできる方法で証ししています。そして、それが私たちの誇りでもあるのです。

 

 

問:キリスト教徒として、またカリタス・エルサレムのディレクターとして、聖地で過ごすこの特別な時期は、あなたにとってどのような意味を持つのでしょうか?

アスパー:降誕節は全世界に希望をもたらします。 私は、エルサレム・カリタスの事務局長として、この希望を少しでも伝えるために全力を尽くしている。 まず、戦争中ずっと本当に多くの苦難を経験してきた同僚たちに伝えるために。 ガザ地区には約100名のスタッフがいます。そして2名の同僚を失いました。スタッフを危険にさらさないよう最善を尽くしていますが、ガザに「人道地帯」が設けられているにもかかわらず、依然として危険が伴う。数週間前には、ガザの南にあるヌセイラ難民キャンプ、私たちはそこに医療施設を設けているのですが、が砲撃を受け、私たちの医師2名が負傷した。

 パレスチナ人であれイスラエル人であれ、特にイスラエル政府に対して、この戦争を終わらせるよう圧力がかかることを望んでいます。即時かつ恒久的な停戦は非常に重要です。私たちは、罪のない一般市民を支援している医療チームや援助活動家の保護を、援助物資の輸送ルートの確保を求めている。ガザでは人々が飢饉の危機に瀕しており、援助物資は本当に不足している。また、ヨルダン川西岸地区全域における軍事作戦と入植者による侵略行為の停止を求めています。

 

問:現在、カリタス・エルサレムが直面している問題は何でしょうか。また、今年のクリスマスに期待することは何でしょうか。

アスパー:ガザ地区では、戦争が始まって以来、大きな問題が山積しています。多くのスタッフはガザ地区の聖家族ラテン典礼修道会や正教会の施設に避難することを余儀なくされていますが、その正教会の中央施設に隣接する建物が砲撃されてシェルターが崩壊し、18人のキリスト教徒が亡くなっています。死者の中には私たちの同僚のビオラと彼女の幼児の娘、夫、そして姉妹も含まれていた。同じ家族の12人が、その砲撃で命を落としたのです。

 支援業務の遂行やガザ地区内の移動にも多くの困難や課題があります。ガザ地区の北部であれ南部であれ、容易なことではない。ガザ地区では、燃料もきれいな水も不足しており、ゴミがあふれ、病気が蔓延している。ガザ地区では環境の大惨事が起こっているのです。

 またガザの医療センターに隣接する学校が砲撃された際に被害を受け、修復のために エンジニアや請負業者と、何度かそこへ行こうとしたのですが、2週間ほど前に、その医療センターから2.5キロ以内の地域に立ち退き命令が出された。私は、そこに住む人々に危険を冒させたくないので、現地での復興作業の開始を延期しました。

 南部では、医療チームの移動に大きな課題があります。ガザでは9つの医療拠点で17の医療チームが活動していました。ガザで活動するスタッフは100人。燃料不足により、スタッフの輸送がいかに困難が想像していただけるでしょう。スタッフはロバが引く荷車に乗せられて、支援地に行くこともある。地域社会に提供しようとしているサービスでさえ、物資不足で、その質と水準は高くない。救援物資や支援物資の輸送は、10月2日以降減少しています。人道支援のための輸送ルートが開かれ、質の高い物資が地域社会に提供されることを願っています。

 ガザ地区には、本当に苦しんでいる子供たち、母親、家族など、罪のない人々が大勢います。彼らには食料も水も野菜も手に入らない。生活必需品がまったく手に入らないのです。このクリスマスシーズンに、私たちは主が介入し、特にヨーロッパの指導者たちの目と心を開いて、この苦しみを終わらせるためにさらに圧力をかけるよう、祈りを捧げています。私たちは、彼らが2つの社会間の真の対話を促進し、この長引く紛争の解決策を見出すことを願っています。この紛争は10月7日に始まったわけではありません。その根源は40年前にさかのぼるのです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年12月25日

(評論)「次期教皇」をめぐる憶測をするのは不敬? そのような批判は気にしないことだ!(Crux)

 

(写真の出典:バチカンメディア)

(2024.12.15 Crux Editor  John L. Allen Jr.)

Is ‘next pope’ speculation inappropriate? Get over it!について憶測を始める…

 最も熱心な憶測は、現職の教皇のイデオロギー上の反対派から出てくることが多いから、予想の助けにはならない。実際、ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の時代には、カトリック左派の間で多く出回っていたが、今日では右派の間で多く出回っている。

 教皇フランシスコの88回目の誕生日に間に合うように発表された新しいプロジェクト「The College of Cardinals Report」(別名「Cardinalium Collegii Recensio」)を考えると、こうしたことがすべて頭に浮かぶ。英語でもラテン語でも意味は同じだが、ラテン語の方が気取った響きがある。

 これは、現職の253人の枢機卿全員の経歴情報を提供する、洗練されたインタラクティブなウェブサイトだ。特に、教皇候補者となる可能性があると考えられている22人のpapabili(教皇候補)には特別な注意が払われている。

 このサイトでは、女性助祭、同性愛者の祝福、司祭の独身制、ラテン語ミサ、バチカンと中国の関係、「シノドス(教会会議)」の考え方など、物議を醸している問題について、彼らがどのような立場を取っているか紹介している。

 当然のことながら、すでに一部の人々から、このサイトは「不敬だ」という理由と、「思想的に右寄りだ」という理由の両方で、苦言が呈されている。

 

 まず最初の反対意見について考えてみよう。これに対する最善の答えは、おそらく「気にしないことだ!」というものだろう。

 次のペトロの玉座の継承者について考えることは、失礼にあたるどころか、むしろ不可欠だ。教皇職は、カトリック信者だけでなく全世界に多大な影響を及ぼす可能性を秘めた、世界で最も重要な「ソフトパワー」である。ジャーナリストやアナリストが、この「ソフトパワー」が将来、どのように展開されるかを考慮しないのは、無責任であり、怠慢とさえ言える。

 2002年に私は『コンクラーベ』という本を出版したが、その中で、当時の20人の教皇候補のプロフィールを掲載した。保守派を中心とした一部の不満を抱くカトリック信者たちは「そのような憶測はヨハネ・パウロの教皇職を貶め、彼をレームダックにしようとする試みだ」と不満を述べたが、重要なのは、私が自分の限界の範囲内で、情報に通じた有権者や一般市民が必要とする情報を提供しようとした、ということだ。

 この種の情報を最も熱心に収集しているのは枢機卿たち自身だ。それは、「自分や同僚たちがどのように評価されているか」という”病的”な好奇心からだけではなく、何よりも、次期教皇を選ぶ投票は、おそらく「自分がこれまでの人生で下す最も重要な選択となるだろう」と認識しており、「正しい選択をせねばならない」という義務感からである。

 確かに、コンクラーベの神学では聖霊に重要な役割が与えられているが、それによって、枢機卿が「自分の知性と判断力を働かす」という重荷から解放されるわけではない。「教皇への敬意を欠く」などとは決して言われないシカゴの故フランシス・ジョージ枢機卿が私に、「教皇候補となり得る人物に関する一般公開されている情報をファイルにまとめ、2005年のコンクラーベのためにローマに持参した」と語ったことを思い出す。

 さらに広く言えば、カトリック信者は「誰が次の指導者になる可能性があるのか」を知る正当な関心を持っている。そして、その関心を満たすことは、決して無礼なことではない。むしろ、それは教皇への最高の敬意であり、その職務に世界中のカトリック信者が寄せる信頼の表れである。

 

 最後に、現職の教皇自身も、枢機卿を任命するたびに後継者を考慮していることを指摘したい。なぜなら、避けられない問いかけがあるからだ―「この人物は教皇にふさわしいだろうか?」。

 

 結論から言えば、「次の教皇について疑問を呈する者は、大罪を犯している」という時代遅れの俗説を捨てる時が来たということだ。それは愚かであり、さらに悪いことに、危険でもある。教皇職は重要であり、私たちは皆、それが次にどうなるかに関心を持っている。(確かに、それは特に「シノドス」の時代には特にそうである、n’est-ce pas?

 2つ目の不満点、つまり「今回の取り組みが保守的である」という点については、明らかな答えは「だから何?」である。 確かにCardinalium Collegii Recensio はかなり右寄りである。ラテン語の表記がその証拠だ。主要な問題の選択は、「伝統主義者の固定観念」を代表するものであり、papabili(教皇になる可能性のある枢機卿)のリストは、現実的なハンディキャップというよりも、右派カトリックの空想のように見えることもある。例えば、レイモンド・バーク枢機卿? 本当か?

 しかし、正直なところ、それらはすべて無関係である。 偏りはあるものの、有益な情報もたくさんあり、参考にすれば多くのことを学べる。このプロジェクトに関わっているジャーナリスト、エドワード・ペンティンとダイアン・モンターニャは、ローマの現場で知り合った友人である。彼らが保守的であることは確かだが、同時に賢明で勤勉であり、情報源も豊富であることは知っているので、彼らの発言には注目する価値がある。
 いずれにしても、ペティンとモンターニャに「次期教皇に関する論評の独占権」を与えた者はいない。他の人々が異なる、そしてより良い情報源を構築することを妨げている唯一のものは、「そのようなことをするのは無作法だ」という愚かで、ほとんど自己矛盾した考え方である。 それを乗り越えれば、コンクラーベ考察という”成長産業”が待っている。

 …ところで、波風を静めるための提案がある。次期教皇についての話題に興奮している人も、落胆している人も、新作映画『コンクラーベ』を観に行ってはどうだろう。その途方もない非現実性、漫画的な登場人物、そして政治的に正しい結末は、途中で良い演技が見られるにもかかわらず、両者を嘲笑の念で結びつけるかもしれない。そして、時にはそれさえも、交わりへの”前払い”となり得るのだ。

2024年12月17日