レオ14世の教皇就任から早や1か月が経とうとしています。「カトリック・あい」の閲覧状況から、世界の読者の反応を見ると、5月の総閲覧件数は4万2000件を超え、通常の月の3倍、2018年の教皇フランシスコ来日時を大幅に上回る、2016年の創刊以来の最大を記録しました。
「カトリック・あい」では、教皇選挙が始まってから、日本語のカトリック系メディアの中で最も早く、詳細に伝え続け、教皇選出当日、日本時間9日は午前5時前までにレオ14世選出のストレートニュースにとどまらず、その人物像や選出の背景や課題に至るまで掲載しました。結果、9日の閲覧件数は1万2500件と空前とも言える閲覧をいただきました。単純比較はできませんが、日本のカトリック信者は、日本国籍だけで約20万人とされています。
それだけ多くの方が、単に一般紙やテレビなどの表面的な報道に満足せず、早く新教皇の人となり、どのような教会のかじ取りをしていくのか、知りたい、という強い関心と願望を示している、と言えるかもしれません。「カトリック・あい」が少しでもお役に立っているとすれば、ありがたいことです。感謝します。
このように多くの方が注目されている新教皇の言動ですが、これまで矢継ぎ早に出されているメッセージ、教会内外の要人たちとの会見や決定から、ご自身が取り組もうとされている重点課題がいくつか見えてきているようです。(続きは、巻頭言本文へ)
(「カトリック・あい」代表・南條俊二)
教皇が9日の選出後に世界に向けて発せられた第一声は「あなた方すべてに平和があるように…シノダル(共働的)な教会として、共に歩もう!」でした。
最優先課題は、平和—具体的には、故教皇フランシスコの努力にもかかわらず、いまだに和平への展望の見えないウクライナ、ガザ…の即時停戦です。
1か月近くに出された多様なメッセージの中で最も多くの呼びかけをされ、特にウクライナに関しては、ウクライナのゼレンスキー大統領や米国のバンス副大統領、バチカン駐在の各国大使たちとの初会見、東方カトリック教会のキエフ大司教との初会見を含めて、ロシアとの交渉の仲介役への意欲を示されました。
「シノダル(共働的)な教会として、共に歩もう」の呼びかけは、教皇フランシスコが始められた”シノドスの道”の継承です。
これまでの歩みの過程で、強く出されてきた課題の一つ、聖職者の性的虐待がもたらしている教会の危機への対処では、担当の教理省のフェルナンデス長官と二度、また教皇庁未成年者・弱者保護委員会のオマリー委員長とも会われたことで、優先課題としていることが分かります。
同様に、教会における女性の役割重視という課題に対しても、奉献・使徒的生活者省の長官、次官を修道女とする人事で行動をもって示されています。
聖ヨハネ23世が始め、教皇フランシスコが推進されたキリスト教諸教会、諸宗教との一致(エキュメニカル)の取り組みを重視されていることは、キリスト教諸宗派・諸宗教代表との会見を速やかになさったことで明白です。
以上を優先課題とされる背景には、教皇としてのご自分の名前を選ばれる動機となったレオ13世が始められたカトリック教会の社会教説の現代社会に対応した形での発展、具体的にはAI(人工知能)の急激な成長・拡大への教会としての対処も、すでに教皇就任直後の枢機卿会議で表明されています。
故教皇フランシスコが取り組まれた教会改革では、教皇庁の財政赤字削減の一環としての人員削減で職員との軋轢を生じたとされる問題と関連して、職員に対する”コンクラーベ・ボーナス”の復活、全職員との会見での「教皇は移り変わるが、教皇庁は残る」発言などにみられるように、関係修復も、重要課題とされているようです。
逆に、バチカンが直面している重要課題の中で、まだ新教皇が明確に語られていないのは対中国関係です。2018年に中国における司教任命について中国政府と暫定合意し、関係が大きく前進すると期待されていましたが、目立った融和は進まないどころか、前教皇が亡くなって、新教皇選出までの期間、つまり、判断すべき教皇が空位の間に中国政府・共産党は、一方的に二人の司教を任命、5月11日から一週間、カトリックなど5つの”公認宗教”の代表を集めて「中国伝統文化を学び、体験するイベント」を開き、“習近平思想”の徹底を図ろうとしています。共産党に忠誠を誓わないカトリックを含む宗教関係者への弾圧を緩める気配もありませんが、新教皇の姿勢はまだ見えてきません。
進展が見られないと言えば、新教皇の度重なる呼びかけや仲介の意向表明にもかかわらず、ロシアによるウクライナ軍事侵攻は止まっていません。和平のための仲介の表明は、欧米の支持を得たものの、ロシアのラブロフ外相の”拒否“に遭って、棚上げ状態です。すぐにも和平実現、と自信を示していたトランプ米大統領も匙を投げそうな雲行きです。ガザ問題も緊急に対処すべき課題ですが、これらの難局を、教皇の立場からどう切り開いて行かれるのでしょうか。
この一か月近くの間に数多くのメッセージを出され、教会内外の多くの要人たちとの会見をこなされた教皇14世が、それをもとにこれから、どのような具体的行動、決定をされ、世界の教会をどのように導いて行かれるのか、引き続き注目していきたいと思います。
(「カトリック・あい」代表・南條俊二)