・「”思いやりと連帯、正義のワクチン“開発が教会に求められている」-アジア司教協議会連盟議長、各国司教に新回勅の実践呼びかけ

(2020.10.14 VaticanNews  Robin Gomes)

 アジア司教協議会連盟会長のチャールズ・ボー枢機卿(ミャンマー・ヤンゴン大司教)が、教皇フランシスコが出された新回勅「Fratelli tutti」を受けた書簡を12日付けで、連盟加盟の各国司教たちに送り、アジアの現状と未来を見据えて、実践に強めるよう呼びかけた。

   書簡でボー枢機卿は、新型コロナウイスが白日の下にさらした数多くの”社会的な感染症”の最中あって、「アジアのカトリック教会は、兄弟愛と社会的友愛を論じた教皇フランシスコの新回勅の精神を生かし、”思いやりと連帯、正義のワクチン”を開発するよう求められています」と強調。

 そして、「私たちの教皇の連帯、出会い、そして無償への呼びかけが、人生と地域社会に響き渡りますように。(聖なる父が)すべての人に対話、敬意、寛大な姿勢を示すようにとの教皇の懸命の呼び掛けを受け入れてくださいますように」と神に祈った。

*共通善

 また枢機卿は、「私たちのアジアの現実は、緊急のメッセージである新回勅に反映されています… そのアジアは今、岐路に立っており、私たちがとる道が、次の世代に残す遺産を決定する」としたうえで、各国の教会の指導者、政治家、政府関係者たちに対して、「その遺産は、浪費されてしまうのでしょうか?それとも蓄えられるのでしょうか?アジアは個人の欲望を選ぶのでしょうか、それとも共通善に専心するのでしょうか?」と問いかけ、アジアが将来どうなるかは、「新型コロナウイルス大感染終息後の社会をどのように再建するかにかかっています」と訴えた。

 だが、それにもかかわらず、アジアの多くの政府は「すでに試みられ、失敗した経済、社会モデルに戻ろうとしています」と警告し、「共通の、普遍的な善のための政治。人々のための、人々と共にある政治。人間の尊厳を大事にする政治。政治の場で愛を実践する女性と男性の政治。経済と社会、文化の構造を、首尾一貫して元気を与える人間的な事業に統合する政治」を目指すよう呼び掛けた。

*危機を超える

 さらに、枢機卿は、新型コロナウイルスの世界的な大感染で、2020年は「人々にとって混乱、恐れ、喪失の時期となりました… それでも、教皇は私たち司教に、使命を果たすことを決してやめないように促され、『生きている教会であるなら、いつも驚きを持たねばなりません』と訴えておられます」と強調。「福音の喜びを心の中で衰えさせないように。”無関心の文化”に屈しないように。苦痛に取り巻かれていても、聖なる父は、圧倒的で、計り知れない、驚くべき、不相応なほどの友愛の賜物を強く求めておられるのです」と訴えた。

 また、教皇が新回勅で強調された友愛について、「私たちの姉妹と兄弟への配慮と敬意を意味します… 平和の基盤、道。連帯と対話。真の宗教です。友愛がなければ、自由と平等は意味がありません」と説いた。

*たくさんの潜在的なウイルス

 枢機卿は、新回勅で教皇が「新型コロナウイルスの大感染は、人種差別、不平等、ヘイトスピーチ、貧しい人々や高齢者、胎児の軽視、女性と子供の人身売買、死の文化など、社会に潜在しているのあらゆる”感染症”を白日の下にさらした」と指摘。また、アジアは、少なくとも18の国で死刑が合法となっている地域であること、世界の中で最も長期にわたる紛争がいくつも続いていること、何百万人もの人々が、職を求めて、家族と離れ、国を出ざるを得ない状況にあること、などの問題も挙げた。

*善きサマリア人

 こうした問題すべてに対して、教皇は新回勅で「善きサマリア人のたとえ話」と使って、「平和への専心、戦争と死刑の拒絶、社会内での許しと和解の奨励、そして私たちの共通の家へのいたわりなどによって、人類のための共通の道筋を示しておられます」と枢機卿は語り、「善きサマリア人の目で、私たちは”捨てる文化”を批判し、社会によって弱くされた人々ー女性、子供、少数民族、難民、胎児、高齢者、その他多くの人々ーの人権を守るように求められています。人々と共通善に対する敬意は、真の友愛だけから育つのです」と強調した。

 

*宗教間の関係

 枢機卿は書簡で、新型コロナウイルスの大感染がもたらしている危機に処する際の宗教間の友愛関係と、それが生み出す危険と機会についても言及。教皇は新回勅で「神が望んでおられる世界を今ここに築く機会を、勇気と創造力を持って探求するように私たちに促しておられます。大感染から再び立ち上がる社会は、友愛が大切にされる社会でなければなりません」と改めて訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2020年10月17日