【2025年11月の巻頭言】“風化”する聖書週間の「全国運動」、「数年先に検討」の時期を迎えた『聖書協会共同訳聖書』の扱いをどうするのか

 11月には日本のカトリック教会でいくつかの行事が予定されているが、毎年恒例の「聖書週間」も16日から行われる。

 

 「カトリック・あい」では2年前、2023年11月に(評論)「聖書週間まったく盛り上がらない『全国運動』、発刊5周年の『新旧約聖書・聖書協会共同訳』をどうするのか」と題する評論を掲載した。

 その冒頭で、「聖書週間が『行われる』といっても、カトリック中央協議会のホームページを見る限り、シンポジウムなどの「行事」はいっさい予定されていない。わずかに、リーフレットとポスターの配布のみだ」と書いたが、2年経った今月も、当時と全く変わらないようだ。

 現在の中央協議会のホームページで「聖書週間」を検索すると、「1979年11月の臨時司教総会で、聖書に親しみ、聖書をより正しく理解するための全国的な運動として「聖書週間」を毎年行うことを決定」とあり、その実施機関としての「聖書委員会は1998年2月に解消されたが…常任司教委員会に引き継がれ…リーフレットとポスターの政策も継続されることになり、今日に至っています」と、2年前と全く同じ説明が繰り返されているだけだ。

 これでは、司教団として「全国的な運動」を主導する気が無い、”風化”するに任せている、と見られても仕方あるまい。それとも、そのような努力をしなくても、日本の信徒たちが「聖書に親しみ、聖書をより正しく理解する」ようになったと判断しているのだろうか?

 

 司教団とは関係なく、日本聖書協会(理事長・石田学・日本ナザレン神学校校長)では、11月24日に同協会150周年記念として、ケルン大学のハイドルン・E・マーダー教授(新約聖書学)による講演会「十字架の愚かさから平等の教会論へ―パウロとマルコの対話」を上智大学四谷キャンパスで予定している。 

 信濃町の真生会館では、聖書入門コースや新・旧訳聖書コースなどの講座を開いているが、これは聖書週間に限って開かれているわけではない。

 中央協議会のホームページには全国の教区レベルでの聖書週間の企画などが全く掲載されていないので、教区の取り組みがどうなっているか、同ページから知ることができない。 東京教区のホームページを見るかぎり、聖書週間に関連した講演会、シンポジウムは皆無だ。 

 東京教区に所属する筆者は小教区で毎月第四土曜日に「主日の福音を味わう会」を10年以上続けており、毎回10人前後、聖書に親しもうと熱心な方々の参加をいただいているが、教区全体に積極的な取り組みが無いこともあり、盛り上がりに欠け、ポスターの掲示や毎日曜日のお知らせなど広報に努めているが、信徒の方々、特に若い信徒への広がりはない。

 私たちの信仰の基本にある聖書について、日本の司教団がどれほど真剣に考えているのか、疑問を抱くのは、「聖書週間」ばかりではない。

その聖書協会が中心となり、カトリックとプロテスタントの高位聖職者や聖書学や宗教学、日本語などの専門家が結集し、10年近くかけて制作した「聖書 聖書協会・共同訳」が刊行されたのは2018年12月だった。

だが、司教協議会は不思議なことに、2010年2月の臨時総会で「聖書の新しい共同訳事業」を承認し、事業着手に同意したにもかかわらず、それが完成し、刊行された直後の2019年1月の常任委員会で「『聖書 聖書協会・共同訳』のカトリック教会の典礼での使用については数年先に検討する」ことを決定。その理由も、「数年先」の根拠も、信者たちに説明のないまま、事実上、使用を棚上げしてしまった。

それから7年近く経ち、「数年先」を迎えているのにさっぱり音沙汰がない。2019年1月の司教協議会常任委員会の決定を忘れてしまったように見える。

 

 「聖書 聖書協会・共同訳」の刊行事業は、「『新共同訳』が刊行されて20年が過ぎた現在、聖書の新しい訳が検討されるべき時期が来ている。過去数十年間に生じた聖書学、翻訳学のどの進展、底本の改訂、日本語や日本社会の変化、また『新共同訳』見直しへの要請が、新しい翻訳を求めている」との認識から始まった。

 日本聖書協会が国内のカトリック、プロテスタントの32教派、1団体から推薦された議員21人による「共同訳事業推進計画諮問会議」(カトリックからは司教協議会の推薦で岩本純一、下窄英知の2名)からを設け、2008年から2009年10月まで4回の会合で「翻訳方針前文」をまとめ、理事評議員会で翻訳事業の開始を決定。

 そして、カトリック司教協議会も2010年2月の臨時総会で「聖書の新しい共同訳事業を日本カトリック司教協議会として承認する」との決議をしたことで、正式にカトリック、プロテスタントが協力して翻訳事業が開始されることになった、という経緯がある。

 翻訳事業には、翻訳委員148人、翻訳者62人(翻訳委員プロテスタント107人、カトリック41人、翻訳者プロテスタント37人、カトリック25人)が参加。翻訳者にはカトリックから川中仁・上智大学神学部長、雨宮慧・上智大学神学部名誉教授、浦野洋司・カトリック神学院東京キャンパス非常勤講師、柊暁生・南山大学人文学部教授、高橋由美子上智大学外国語学部教授、編集委員には、カトリックから宮越利光・カトリック司教協議会典礼委員会秘書(肩書はいずれも当時)など。

 さらに、 検討委員には高見三明・長崎大司教、和田幹男・カトリック神学院聖書学講師。加えて 外部モニター(20人)には、梅村昌弘・横浜司教、岡田武夫・東京大司教、幸田和生・東京補佐司教(梅村師除き、肩書は当時)などが入っていた。

 これを見ても分かるように、 聖書の翻訳事業は、カトリック、プロテスタントの信仰一致の取り組みの重要な柱であるはずだ。その取り組みを司教協議会として総会で承認し、カトリック側から高位聖職者も、トップクラスの専門家も大勢参加して出来上がった知恵と努力と祈りの結晶である「聖書 聖書協会共同訳」を、司教協議会として、いまだに棚上げしたままにしているのは理解できない。

 廃止された司教協議会の「聖書委員会」の業務は常任委員会に引き継がれたとされているが、委員会の誰が担当司教なのか、あるいは2019年の常任委員会で、「典礼での使用は…」となっているから「典礼委員会」が、使用の是非を判断するのか。私たちには、司教協議会のどの部署が担当するのか分からないが、いずれにしても、司教協議会として、カトリック教会への「聖書 聖書協会共同訳」の導入について、明確な判断をする必要がある。

 

 日本の司教団のリーダーである司教協議会の会長、菊地功・枢機卿、東京大司教は、日本聖書協会の副理事長でもある。「聖書週間」実行の、そして「聖書協会・共同訳聖書」のカトリック教会への正式導入の是非を判断するキー・パーソンの判断力、実行力に注目したい。

 

(「カトリック・あい」代表・南條俊二)

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2025年10月31日