・2025年7月の巻頭言 「新教皇レオ14世の言動で気になる”軌道修正”の動き」

 

*閲覧件数は、”常態”に戻ったが、聖職者の性的虐待、と新教皇レオ14世の関連記事が圧倒的に読まれている

 

 6月の閲覧件数総数は約1万9000件。 教皇フランシスコが帰天された4月の2万6982件、新教皇レオ14世が就任された5月の4万2685件という2016年10月の「カトリック・あい」創刊以来の記録に比べれば大幅減ですが、通常よりも高い数字です。 教皇就任から間もなく2か月、読者の方々も落ち着きを取り戻された、と言えるでしょう。

 記事別閲覧件数を見ると、トップ、準トップが、司祭の信徒女性性的虐待で所属していた神言会に損害賠償を求める東京地裁での9回目の裁判関係で占められ、東京教区の子供と女性権利擁護委員会の担当司祭の更迭(86件)、新教皇の未成年・弱者保護委員会との初会談関連2本(74件、50件)、イタリア司教協議会の性的虐待年次報告で、前年の二倍の被害報告(54件)など、月間閲覧件数が40以上の記事37本のうち、11本。以前から教会の信頼を大きく損なう深刻な問題とされてきた課題が改めて浮き彫りになっています。

 コラムの人気に変わりはなく、3位から5位、6位(「聖霊は、真実と受け入れる・・」163件、「タイ語訳の日本の漫画がシスター誕生に・・」161件、「新教皇への大きな期待・・・」147件、「日本に『修復的司法』が・・」103件、以下69件、62件)など、よく読まれ続けています。寄稿者の方々に感謝します。

 新教皇への関心も決して薄れたわけではありません。「急ピッチのバチカン幹部との会見で見えて来るレオ14世の優先課題」など、月間閲覧件数40以上の記事37本中、10件を占めています。 

 

*司教団がいまだに日本語訳を出さない、前教皇の最後の回勅、世界代表司教会議総会の最終文書が読まれ続けている

 

 関連して、教皇フランシスコの最後の回勅『Delexit Nos(主は私たちを愛された)』の阿部仲麻呂師訳(123件)、昨年10月のシノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議の最終文書の「カトリック・あい」訳(47件)と読まれ続けています。いずれも、日本の司教団からいまだに正式訳が出ていません。後者の最終文書は、昨年10月末に発表され、「カトリック・あい」は翌11月中旬の全訳を終えて、掲載を始め、これまでの閲覧件数は合計612件に上っています。

 5月8日に新教皇に選出されたレオ14世は直後の「ローマと世界への挨拶」で「あなた方すべてに平和があるように…シノダル(共働的)な教会として、共に歩もう!」と呼びかけて以来、数多くのメッセージを出され、教会内外の多くの要人たちとの会見をこなされています。

 それをもとにこれから、どのような具体的行動、決定をされ、世界の教会をどのように導いて行かれるのか、引き続き注目していきたい、と筆者は6月号の巻頭言で申し上げました。

 

 

*新教皇に、フランシスコの「シノドスの道」「バチカン中心から地方分権」路線から”軌道修正”の気配?

 

 「西方の司祭」も7月のコラムで指摘されていますが、故教皇フランシスコの始められた、すべての教会のメンバーが共に耳を傾け合い、共に歩む“シノドスの道”、バチカン中央集権の”地方“への分権などの路線が、新教皇レオ14世のもとで、大きく”軌道修正“される気配がみられるように思われます。

(「カトリック・あい」代表・南條俊二)

 

 

*首都大司教へのパリウム授与を、「現地の教皇大使から」から「教皇から」に戻した

 

 その一つが、教皇から世界の首都大司教が着用するパリウムの授与です。

 教皇が司教たちとの絆を、支配権を強めるために9世紀ごろから本格的に始められたと言われますが、故教皇フランシスコは2015年に、6月29日のミサでご自身から大司教たちにパリウムを授与する代わりに、後日、出身大司教区で、その国に駐在する教皇大使によるミサで授与する、という形に改めました。

 当時のマリーニ教皇儀典長は 「この変更の意味は、新たに指名された大司教と地元教会との関係をより重視することにある。 これは、カトリック教会における”シノダリティ(共働性)の旅”の一部であり、教皇就任当初から、(教皇フランシスコは)教会の歴史におけるこの時期、特に緊急かつ貴重であると常に強調してきた」と説明。

 米サンフランシスコのジョン・R・クイン名誉大司教も、パリウムの方針変更は、 「教会におけるシノダリティ(共働性)を強調するための手段。大司教、自身の教区、そして首都圏管区の司教や教区に対し、教会における参加と交わりの真のシノダリティへの新たな道を開くよう求められていることを思い起させるもの」と意義を強調していました。

 ところが、レオ14世が教皇の座に就かれた後、教皇儀典室が6月11日に、29日にサンピエトロ大聖堂で行われる「聖ペトロ・聖パウロ使徒の祝日」のミサ聖祭の準備に関する声明を発表し、「聖父レオ14世がミサを司式し、パリウムを祝別し、新しいメトロポリタン大司教にそれを課す」と予告。29日のミサでは、実際に世界の54人の新首都大司教たちに、教皇が直接パリウムを授与され、彼らは教皇に忠誠を誓いました。

 小さいことのように思われるかも知れませんが、これは故教皇のパリウム授与の方針変更に込めた”シノドスの道“の歩みへの深い思いを壊すもののように受け取る関係者もいるようです。

 

 

*バチカン職員への「コンクラーベ・ボーナス」復活は、歳出削減・合理化推進を停止のしるし?

 

 バチカン中央集権から現地教会への権限移行に関連しては、フランシスコはバチカン財政改革の一環として、職員向けの歳出削減、人員合理化を進めようとされていたが、レオ14世は、職員たちとの会見で、「教皇は変わるが、教皇庁は残る」として、その重要な役割を讃え、フランシスコが廃止した”コンクラーベ・ボーナス“を復活させ、改革棚上げと受け取られる姿勢を打ち出しています。

 

 

「collegiality(合議制)」強調は、「sinodality(共働性)」から軸足を移す兆し?

 言葉の表現でも気になることがあります。レオ14世は 5月10日、教皇選出直後の枢機卿との会議で、「collegiality(合議制)」の重要性を強調しました。教皇選挙の前の枢機卿団の全体会議で出された前教皇への批判の一つ、つまり、時に孤立した形で統治したこと、に対する回答。 聖ペトロ大聖堂のバルコニーからの選出直後の挨拶で呼びかけた新しい統治モデルへのシフトを示しているのかもしれない、とLaCroixは論評しています。

 6月17日の、イタリア司教協議会(CEI)の司教たちとの会見でも、教皇は、司教たちの役割としてcollegiality(合議制)を 司教同士、教皇との間で進めるよう促されました。これも、前任者が推進された」に対比するかたちで表現されている懸念があります。

 

 もっとも、レオ14世は、教皇就任以降、短期間に何度も「シノダリティ」について言及しておられます。 例えば5月19日、キリスト教指導者たちに 「共同体とエキュメニズムは密接に結びついている 」と語り、「カトリック教会のシノダル(共働的)な性格を促進し、エキュメニカルな分野で『これまで以上に強力なシノダリティのための新しい具体的な形を作っていく』という教皇フランシスコの強い遺志を受け継いで行く私の意思を確認したい 」と言明。 

 

 

*シノドス事務局との初の会談で教皇は「シノダリティは、真の教会になるために”役立つスタイル”」と強調されたが、具体的方向は見えない

 

 また教皇は6月26日に、バチカンのシノドス事務局のグレック局長はじめ評議員たちと初の会談を持ち、世界の教会が「参加と交わり」の”シノドスの道”を歩み続けることができるように努力を求められ、フランシスコの遺産は、「何よりも次の点にあると、私は考えています… それは、シノダリティ(共働性)が、(すべての信者が)真の参加と交わりの経験を促進することで、私たちが真の教会となるのに役立つスタイルであり、姿勢であるということです」と強調されました。

 だが、今後の取り組みの指針、具体的には女性の助祭叙階など昨年の世界代表司教会議の最終文書で課題として残され、10のチームによる検討結果をどうするのか、”シノドスの道”の当面の締めくくりとするために前教皇フランシスコが提示された世界教会会議を予定どおり2028年に開くのか、会議の構成メンバーは、司教だけでなく、司祭・聖職者、一般信徒の代表も含むのか、そもそも具体的テーマはどうするのか、会議に向けて、世界の教会はどのように”シノドスの道“を歩むのか。 会見は単なる初顔合わせと教皇の”訓示“にとどまったのか、それともこのような具体的な課題まで踏み込んだ意見交換があったのか。 事務局からも、明らかにされていません。

 

 レオ14世は、原則として7月は、夏の教皇離宮カステル・ガンドルフォでお過ごしになる予定だが、中東やウクライナなど世界各地で和平実現の展望が見えず、予断を許さない事態が続く。 7月も、以上のような問題も含め、教皇の言動から目を離せないことになりそうです。

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2025年6月30日