・米、豪、英などの司教団が新回勅 “Fratelli tutti”に歓迎を表明・・日本は?

Pope Francis signing “Fratelli tutti” Encyclical on the tomb of St. Francis of Assisi 

 教皇フランシスコが4日、新たな回勅「Fratelli tutti」を発表されたのに対し、米国、英国、そしてオーストラリアの司教団が相次いで、これに歓迎を表明。連帯と人間の友愛に対する教皇の訴えを真剣に受け止めている。

 残念ながら、日本では、「カトリック中央協議会」のインターネット・ページを見る限り、新回勅の内容はもちろん、発表されたことさえ、6日現在、全く伝えられていない。従来、教皇フランシスコが出される回勅や使徒的勧告の、日本語の翻訳には半年から一年を要しているので、今回もそれを待たねばならないのだろうか。新型コロナウイルスの大感染が世界を危機に陥れ、教会の危機克服への対応が注目されている今、この”周回遅れ”は致命的なことになりかねない。

*オーストラリアの司教団「ポスト・コロナの世界のロードマップに」

 Vatican Newsによると、オーストラリア司教協議会会長のコールリッジ大司教は4日、声明を出し、「新型コロナウイルス大感染の後のあり方を見出すことのできない世界は、新回勅で、新たなロードマップを手に入れることが可能になった」と述べ、「友愛と対話の新しい文化を構築するための呼びかけが、すべての人間の尊厳のビジョンになる」と強調した。

 また大司教は、教皇の言葉に倣って「コロナ危機が過ぎ去った後の私たちの最悪の対応は、『熱狂的な消費主義と新しい形の自己中心の自己保存』に陥ること」としてき、「私たちは『彼ら』や『それら』の観点でなく、『私たち』の観点から、物事を考えねばならない」と自省を込めて語った。

 さらに、教皇が特定の人々、つまり女性、高齢者、胎児、先住民、移民が公正さを欠いた形で扱われている、とされていることを取り上げ、オーストラリアでも同じようなことが行われていることを認めたうえて、教皇のメッセージが世界の自分たちとは別の地域だけに関係していると考えることが誤りであることを指摘している。

*米国司教団「政治経済システムの道徳的刷新の強力で緊急のビジョン」

 米国司教協議会の会長、ホセ・.ゴメス大司教も4日、新しい回勅を歓迎する声明を発表。「米国のカトリック教会を代表して、私は教皇フランシスコの人間の友愛に関する新しい回勅を歓迎します。この回勅は、前の回勅「Laudato si」以前のラウダートシとともに、教会の豊かな社会教説の伝統に大きく貢献するもの」と評価した。

 そして、新回勅に込められた教皇のメッセージは、「私たちの個人的な関係や社会や経済の組織化など、私たちの生活のあらゆる側面に影響を与える神の人類の計画を思い起こさせる」とし、現在の世界の状況に対し、「教皇は、政治と政治経済システムの道徳的刷新のための強力で緊急のビジョンを提示された」と強調。

 また、教会にとって、教皇は私たちに「自分たちの文化における個人主義を克服し、愛をもって隣人に仕え、すべての人の中にイエス・キリストを見、正義と憐れみ、思いやりと互いへの関心をもつ社会を追求する」ことを求めておられる、と受け止め、カトリック教徒と善意のすべての人々が教皇のメッセージをしっかりと受け止め、熟考し、「人間の家族の団結を求めるための新たな誓約をする」ことができるように祈った。

*英国司教団・社会正義委員会「”善きサマリア人”は個人の関係だけでなく国もレベルにも」

 一方、Cruxによると、英国でも司教協議会の社会正義委員会の委員長を務めるリチャード・モス司教が、インタビューに答え、新回勅で、「教皇は、個人や国に、早すぎるスピードを落とし、耳を傾け、兄弟姉妹として関わり合うように呼びかけておられます」とし、新回勅の「大きな挑戦」は、善きサマリア人の福音のたとえ話に示されている原則を採用し、「同じレンズを通して他の人々を見るように人々を促すことだ」と語った。

 そして、新型コロナウイルスの大感染との関係では、「もちろん、多くの人が、愛する人の喪失を悲しんでいます。医療従事者たち今も、途方もない緊張の下で働いています。非常に多くの人を襲っているこのウイルスに対処しようとする闘いの中で、それが、私たちの知っているすべてのこと」とだが、同時に、 この現実から、多くの人が思ったのは、「私たちが必ずしも物事を元の状態に戻すことを望んでいない、ということでした」「教皇も、この回勅で言っておられます。元に戻すことではない、と」と言明。

  「私たちの兄弟姉妹に対する見方を考えましょう。地域だけでなく世界的に、共通善のために、人類の未来と神が私たちに与えてくださった地球のため。これらすべてが非常にうまくかみ合っている、と私は思います」と述べた。

 また新回勅で教皇が使われた「善きサマリア人」のたとえ話を取り上げ、盗賊に襲われて重傷を負ったにもかかわらず、通行人に無視された人を、サマリア人が助けた、という行為は、個人同士の関係だけでなく、すべての国々と国民にも適用することが課題として示されている、と指摘。「これは私たちにとって非常に大きな挑戦です。なぜなら、私たちが普通に持っている考え方を改める必要があるからです」とした。

 「他の人の人間性を認めるのは当たり前のこととして、他のすべてのことを見るために飛躍する誘惑がある」が、実際には、教皇は私たちに、「物事をもっと深く見つめ、まず人間を見、そのうえで他のすべてのことに注意を向けるように言われている」と述べ、「それが、この回勅を通して、教皇が示された極めて強力なメッセージであり、私たちがこの挑戦を受け入れるなら、世界がどのレベルでもなすべきことをする方法を実際に変革する潜在的な力をもつことになります」と強調した。

 

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2020年10月17日