・(解説)既婚者の司祭叙階、女性助祭、アマゾン典礼-教皇に課題残したアマゾン地域シノドス(CRUX)

(2019.10.26 Crux  Editor John L. Allen Jr.)

 ローマ発 -大きな関心を呼んだアマゾン地域シノドスが閉幕したが、このシノドスでは、アマゾン地域の慢性的な司祭不足の解決策として、「既婚者の司祭叙階」を認めるか否かをめぐって様々な意見が飛び交った。

 同様に、教会における女性の役割の重要性を認める手段として「女性助祭」を認めること、原住民の人々の文化を尊重するために特別な「アマゾン方式のミサ典礼」を作ることについても、議論があった。この三つについては、熱烈に支持する意見が出る一方で、抵抗もあり、今回のシノドスの重要性を象徴するものとなった。

 シノドスの結果をこれらの問題をどのように扱ったかで測るとすれば、主な結論は、教皇フランシスコの”皿”にすさまじく沢山残された、と言わざるを得ない。

 26日に発表されたシノドス最終文書の採決では、大部分がアマゾン地域の9つの国の代表で占められた会議参加司教184人全員が、この三つの課題-既婚者の司祭叙階、女性助祭、アマゾン典礼ーの全てについて十分な”注意”を払うことを条件に、”慎重な賛成”を表明した。

 三つの中には実にあっけない結末を迎えたものもあった。なぜなら、教皇自身が、教会内部の議論に焦点を絞ることの誤りを指摘し、強調されるべきはアマゾン自身の運命であると主張することで、シノドスを終わらせようとしたからである。

 既婚男性の司祭叙階については、シノドスは反対意見を付けて、ゴーサインを出した。最終文書は「私たちは、叙階を認める基準と規定を定めることを提案する… キリスト教共同体の活動を支えるための、司祭の適性を持ち、教会共同体で尊敬されている男性で、終身助祭として立派に働いること、司祭職について十分な教育を受けていること、法的にかなった、しっかりした家庭をもっていることだ」と述べている。

 ただし、補足として、この内容の採決では、128人が賛成、41人が反対を表明した―ことを付け加えた。これは項目ごとの採決で、最も多くの反対票だ。また、この項目の最後の行に、重要な一文、「この問題について、出席した司教たちの中には、(注:アマゾン地域に限らず)世界全体に適用することを支持する意見があった」が入れられている。

 おそらく、これは、今回のシノドスに出席しなかった司教たちも含めて出された「ローマ・カトリック教会全体(23ある東方教会を除いて)の規範とすることは、特定の地域に限定したシノドスでは決められない」という意見を反映したものだ。

 また、司祭叙階の対象を既婚者に広げることに反対した1人の司教は、反対意見は全世界の教会でみればもっと多い、との判断からこの一文の追加に賛成したものと思われる。

 

*女性の終身助祭

 一般的にシノドスの最終文書の項目別の採決では、反対票は一桁にとどまるものだが、「女性助祭」の導入も、「既婚者の司祭叙階」に次いで多い反対票が出た。

 最終文書は「多くの話し合いの中で、女性の終身助祭の導入が提案された」とし、今回のシノドスに至る2年間で集められた意見も反映した、としている。

 そして、「そのような理由から、今回のシノドスの重要なテーマとなったが… すでに教皇は2016年に『女性助祭についての研究委員会』を発足させており、女性の助祭叙階はカトリック教会のこれまでの何世紀かの実態と今日的な意味を基礎に置いて、部分的な結論に達した」とし、「それゆえ、私たちは、我々の経験と考察を同委員会と共有することを希望する」と述べた。

 だから、司教たちの何人かが懸念していたように、この表現は、女性の助祭叙階をズバリ認めたものでは、確かにない。

 

*アマゾン典礼

 アマゾン典礼についても、シノドスは必然的に課題として取り上げた。アマゾン地域の教会の「新たな有機体」-地域の協働的な構造の一種-が既に求められており、最終文書は、原住民の人々の慣習に従ってアマゾン典礼について熟考する「有力な研究委員会と対話の場を創設」の創設を提唱した。

 最終文書は「(注:このような過程を経て)カトリック教会に既に存在する複数の典礼に追加され、福音宣教の働きを豊かにし、適切な文化の中で信仰を表現するための幅を与え、教会の普遍性が示す地方分権化と共同性を示すことが可能となる… そして、人々が自分たちの領域と水域を大切に守る仕方とともに、ミサ典礼を豊かなものとする方法を研究し、提示することができるだろう」としている。

 そのような言葉は、アマゾン典礼の最終的な考えに明確な賛意を示すものである一方で、結局のところ、求めているのは、そうした考えを研究する機関の設置であり、この言葉は、賛否についての判断を出していないことを意味している。それでも、29人が反対票を投じている。

 これより前の項目で、アマゾン典礼の考え方と23の東方教会の典礼を比較することについては、27人の司教が”ノー”としている。

 従って、今シノドスで最も議論を呼んだ三つの問題に関しての結論は、さらに徹底した研究をすること、あるいは、教皇に対して肯定的な勧告を重要な留保条件付きで行うことだ。つまり、アマゾン地域シノドスは、教皇に対して、この地域の高位聖職者たちの考えをエックス線を通して集めた結果を提供する、諮問会議的な機能を果たしたのである。

 これまでと同様、最終判断は教皇に委ねられることになる。そして、教皇が何を選ぼうと、今回のシノドスから、決断へ完全にまっすぐな線を描くことは難しいだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年10月30日