・豪州の裁判所、ペル枢機卿に性的虐待で6年の実刑

 豪州のビクトリア州裁判所は13日、先に有罪判決を下した前バチカン財務事務局長官で教皇の枢機卿顧問団の元メンバー、ジョージ・ペル枢機卿に対して、児童性的虐待で6年の実刑を言い渡した。全刑期のうち3年8か月服役した後で、仮釈放を請求できる、という条件付きだ。ペルと弁護団は判決を不服として控訴する方針で、その審問は6月5,6両日に予定されている。

 判決理由は、枢機卿がメルボルン大司教を務めていた1990年代に16歳以下の児童二人に性的暴行を働いたというもの。今回の前の罪の有無を問う陪審員の協議では、12人の陪審員全員が有罪の判断をしていたが、刑の重さについては裁判官の判断にゆだねられていた。

 13日の刑の言い渡しで、裁判長のピーター・キッド判事は、ペルと彼についての審理を巡って「魔女狩りか、リンチをする暴徒の性向」が認められた、とし、「それは、正義とは全く縁のないものだ」と弾劾。さらに、ペルについて「カトリック教会の数々の過ちの犠牲にされたのではない」と強く指摘し、教会組織での権力と権威をもつ彼の地位は、その職務に背任いたことで、さらに罪は重くなった、とした。

 そして、彼の犯罪には「不快な要素」があり、「恐ろしく傲慢」な「暴力行為」、「あなたがした事は、正当に評価される余地がないほど言語道断な行為だ」と批判したが、一方で、判事は、彼が裁かれた以外の申し立ては存在せず、今後、ペルが「しっかりと更生」し、教会共同体に対して危険がなくなることを信じている、とも述べた。ペルの名前は、オーストラリアの性的犯罪者の記録に永久に残されることになる。

 77歳のペルは、判決言い渡し前の協議で仮出所が否認された2月27日以来、収監されている。バチカンの財務事務局長官として、財務のトップの地位にあったペルは、未成年性的虐待で有罪になったカトリック教会で最も地位の高い人物だ。この裁判の公益性の高さを反映して、オーストラリアの公共放送であるAustralian Broadcasting Corporationが13日朝の判決言い渡しの模様を実況中継した。

 今回の裁判の一回目の公判は昨年8月に始まったが、陪審が有罪、無罪の評決に至らないまま終わったが、12月の再度の公判で陪審が全員一致で有罪の評決を出した。ペルを有罪としたこの二度目の公判は、当時少年で現在成人して30代になっている男性一人が、非公開審理で、当時メルボルン大司教だった枢機卿に、日曜のミサ後に聖具室でオーラル・セックスを強要された、と証言したことが有罪の決め手になっていた。

 オーストラリアの性的被害者に関する法律では、訴えた人文の名前は秘匿されることが定められており、今回の判決に批判的な人々は、判決内容の妥当性に疑問を投げかけている。判決を受けて地元紙のthe Australianに掲載された投稿で、ペルと長く神学上の対立関係にあるイエズス会士、フランク・ブレナン神父は、判決を「信じられないこと」としている。「判決理由によると、扉が開いたままで廊下から見通すことにできる聖具室の中で、祭服を着たままの大司教が、ミサ直後に犯行に及んだ、としているのは、私の考えでは、信じられない」と神父は書いた。

 今回の判決を受けて、バチカン報道官は、ペルの財務事務局長官としての任期はすでに切れており、彼に対する措置は教会法に基づいて行われるだろう、とし、「バチカン教理省は所定の手続きにより、教会法の規定に定められた期間内に、この問題を処理する」と説明した。

 また、ペルの後継者であるシドニー教区長のアンソニー・フィッシャー大司教は、判決に先立つ今月3日に、「ペル枢機卿の件は裁判が続いており、判決の内容についてコメントできない。控訴でこの件が見直される機会がある限り、最終的な判断をしないように、信徒たちに強く求めたい」と語っていた。「現在の感情的な過熱状態の中で、落ち着いて、礼節をわきまえた振る舞いをするようにお願いする」と訴える一方、「控訴審では重要な問題が調べられる」との見方を示し、「性急な判断を下せば、血を求めて叫ぶ悪魔や弁解者の仲間入りをすることになる」とも警告していた。

(以下、英語原文)

The Supreme Court of the Australian state of Victoria, where Melbourne is located, has set June 5 and 6 for the bid for an appeal to be heard by three justices. Australian sources have described that schedule as “fast-tracked,” given that appeal hearings are often put on the calendar a year or more in advance, and dates are rarely set before a sentence is assigned.

Pell’s appeal will not be led by the lawyer who represented him during the criminal trial, Robert Richter, who came under fire for mismanaging the defense and also for making insulting remarks during the pre-sentencing hearing, in which he described the assault for which Pell was convicted as “a plain vanilla sexual penetration case, where the child is not volunteering or not actively participating.”

Richter later apologized for those comments after abuse survivors termed them “insulting” and “outrageous.”

Instead, prominent Sydney lawyer Bret Walker will represent Pell in the appeal. It remains to be seen if Walker will base the appeal on the same grounds that Richter identified during the sentencing hearing, which were unreasonableness, the prohibition of video evidence in the closing address, and composition of the jury.

Professor Jeremy Gans, a criminal appeals and procedure expert at the University of Melbourne, told the Guardian Australia that unreasonableness is likely Pell’s “best shot.”

“It’s not a rare grounds to succeed on,” Gan said. “This is the defense’s best shot and carries a bonus for them in that if they win there can almost certainly be no new trial. Once a court decides a guilty verdict is unreasonable it means they don’t think guilty should be the verdict in the next trial either.”

“Basically on this grounds of appeal, the court gets to decide if the jury got it right,” Gans said.

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2019年3月13日