・米国の信教の自由担当特使が「バチカンとの暫定合意以後も中国には変化なし」と批判(Crux)

4.23 Crux NATIONAL CORRESPONDENT Christopher White

  ニューヨーク発-米国政府で信教の自由を担当するサム・ブラウンバック 特使が23日、Cruxとの会見に応じ、米国とバチカンは、中国問題を含めて信教の自由を追求するために協力すべきだ、と主張した。

 ブラウンバック特使は、カンサス州選出の上院議員を1996年から5年間勤めた後、2011年から8年間の同州知事を経て、昨年2月から現在のポストに就いた。2011年にカトリックの洗礼を受けている。

 会見で特使は「私たちは、特に信教の自由の問題について、バチカンを支持することを希望している」と述べた。特使は前月、一週間にわたって台湾と香港を訪問中に、中国が国内のイスラム教徒、カトリック教徒、そして仏教徒の対して差別的な措置を強める傾向に懸念を示したうえで、「中国は信仰を持つ人々と戦争状態にある」と批判していた。Cruxとの会見では、この発言を踏まえて、「世界最大の人口を抱える国が、信仰を持つ人々と全面戦争状態にあるのです」とさらに語気を強め、「だが、中国が勝利をおさめることはない」と付け加えた。

 特使の強い言葉は多くの人の関心を引くものだが、(注:このような信教の自由の分野で中国対する厳しい姿勢は)米国国務省の同意を得た者であり、米国が宗教の自由は果敢に擁護することを保障するのは義務だ、と説明した。

 そして、新約聖書でイエスがなさったタラントンのたとえ話を引用して、「多く与えられた者は、多くのことを求められるのです.」と述べ、米国は地球上で最も強力で、”宗教の自由”という相続財産を持った国であり、「私たちは多くのものを与えられています… ですから、信仰の自由を唱道するのが私たちの役目であり、私たちに与えられたものについて責任があるのです」と強調。そうした理由から、宗教の自由について、「私たちは、中国に、門戸を開くよう、圧力をかける必要があります」と語った。

 また特使は、先の台湾、香港訪問中に、昨年9月にバチカンが中国と暫定合意し、バチカンが国内の司教の任命について中国政府に発言権を認めたとされていることを批判。「この暫定合意以来、中国政府はカトリック教会共同体の人々への虐待を続けている。近い将来、事態が変わる兆候も見えない」と指摘していた。

 Cruxとの会見で、こうした批判は、チベット仏教徒たちの抱いている懸念を受けたものだとし、彼らが、この暫定合意が「中国政府にとって都合のいい宗教指導者を選び取る」ような宗教団体規制の前例となることを心配している、と説明した。「宗教団体は、自身の指導者を自分で選ぶことができなければなりません」と強調、独裁主義的な政権は常に、宗教指導者を統制下に置こうとする、と付け加えた。

 暫定合意について特使は、「バチカン、中国の両当事者以外には内容は分からない」として、政府としての特権を擁護する一方で、「大事なことは、信仰を持った人々が抑圧されないようにすることだ」とし、「それは、他と関さりを持たずになされるものではありません」と語った。

 暫定合意に署名したバチカンへの批判は、米国のバノン前大統領上級顧問などからも出ている。これについて、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は今月初め、ローマで開かれた現代のキリスト教徒迫害に関するシンポジウムで「変化は一晩で起きない。忍耐が必要」と釈明し、「私たちが希望するのは、(注:合意が)信教の自由を制限するのではなく、助けることです」と述べていた。

 これに対して、特使はCruxに「教会がこれまで長い間、信教の自由を促進しようと努めてきたことに敬意を表する」とし、特に、ニカラグアとベネズエラで現地教会が継続的な努力をしてきたことを称賛した。そして、戦術的な違いにもかかわらず、米国とバチカンはともに、宗教的な自由において善を推進する力であることを強調し、「カトリック教会は宗教的な自由の灯台となってきました… そして、私たち(米国)は彼らを支持したいのです」と、バチカンに賢明な対応を求めた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年4月24日