・米国で”時限立法効果”で聖職者性的虐待の被害訴えが急増-司教も3人(Crux)

(2019.8.16 Crux Christopher White)

 ニューヨーク-”時限立法効果”で聖職者による性的虐待に関する訴状が大量の提出され、その中で新たに米国のカトリック高位聖職者3名について性的虐待被害の訴えが明らかになった。

 裁判所のスポークスマンによると、時限立法のChild Victim’s Act(児童被害者法)が施行された14日、裁判所の業務終了時間までに、被害者からの訴訟申請が427件出された。同法は、教会やその他の団体を相手取った性的虐待被害の訴状を来年の8月までの期限付きで受け付けるもの。受付の総件数は1000件を超えるとみている、という。

 同日提出された訴訟申請の中で、高位聖職者に関するものの一件は、ハワード・フバード名誉司教が1990年代に未成年者を性的虐待したという訴え。フバードは37年間、アルバニー教区長を務め、2014年に退任。今年80歳になる司教が訴訟の内容を否定する一方、同教区は14日、声明を出し「きわめて辛いこと… 誰もが思うように、フバード名誉司教が無実であると確信することが重要であり、この問題に関する全ての事実が明らかになり、解決するまで、いかなる判断も控える」とし、今回の行為は、5月に教皇フランシスコが出された、司教に関わる虐待問題への対応に関する指針に従ったもの、と説明。「教区長のシャーフェンバーガー司教は、上司に当たるニューヨーク首都大司教のティモシー・ドーラン枢機卿と駐米バチカン大使に、この件を通知し、ドーラン枢機卿からは捜査当局に全面的に協力するよう指示を受けた」と経過を述べた。

 また、サウス・カロライナ州のチャールストン教区長のロバート・グリエルモン司教は、40年前にニューヨークのアミティビル教会で性的虐待を受けたとする被害者が出した訴訟申請に名前が出た。

 司教は訴訟内容を否定し、顧問弁護士から手紙で「原告は、金銭的な解決を目当てに訴状を書いたことを認めた」と知らせてきている、と語った。同教区の司教総代理のリチャード・D・ハリス、D・アンソニー・ドローズ両神父も声明を出し、「グリエルモン司教は、過去十年以上にわたって、私たちの教区の信頼される指導者であり、彼の誠実と無実を心から信じている」と彼を擁護している。

 これに対して、ワイオミング州シャイアン教区のジョセフ・ハート元司教は性的虐待で刑事責任を問われることになりそうだ。

 彼はバチカンの懲罰手続きの対象にもされようとしており、教区長を務めていた1976年から2001年の間に行ったとされる性的虐待について当局の捜査再開の対象となっている。司教になる前、20年にわたって教区司祭を務めたカンサスシティ-セント・ジョセフ教区はすでに、ハートが少なくとも10人に対して性的虐待を働いたする件について被害弁済をしている。当局の捜査でハートが起訴されれば、米国のカトリック司教で性的虐待によって刑事訴追される初のケースとなるはずだ。

 ニューヨークの8つの教区について大量の性的虐待案件が持ち込まれる中で、教会幹部たちはまた、被害者たちが「独立和解・賠償プログラム(IRCP)」活用するのを推進している。IRCPは、任意団体で、時によっては厳密な証拠がなくても案件を採り上げ、速やかに裁判外の解決を図るのが狙いで、これまでにニューヨーク大司教区だけでも、性的虐待の被害者と認められた335人に6600万ドル(約70億円)の賠償金が支払われている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年8月17日