・米国で司祭の性的不適切行為について大司教へ報告を怠った担当補佐司教が辞任(Crux)

(2020. 5.7 Crux  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

Bishop resigns facing charges of negligence on priest suspended for sexual misconduct

Cincinnati Auxiliary Bishop Joseph R. Binzer is pictured in an April 5, 2011, photo. The Cincinnati Archdiocese announced Aug. 5, 2019, the bishop will no longer oversee priest personnel matters after the mishandling of an abuse allegation against a pastor. (Credit: Colleen Kelley/Catholic Transcript via CNS.)

 ローマ発ーバチカン広報局が7日出した声明によると、教皇フランシスコは同日付けで、米シンシナティ大司教区のジョセフ・ピンツァー補佐司教の辞表を受理した。

 声明では、辞表受理の理由を秋からにしていないが、補佐司教は教会での司牧業務を外された司祭の疑わしい行動について上司に報告しなかった、として、教会関係者から訴えられていた。

 バチカンの情報筋が確認したところによると、教皇フランシスコが昨年出された「Vos estis lux mundi (あなたは世の光)」(司教と修道会総長による性的虐待の隠ぺい防止を目的として、具体的な措置を定めた自発教令)に従って、ビンツァーが取り調べ受けていた。

 7日のバチカン広報局の発表は、昨年7月に米シンシナティ大司教区の聖イグナチオ教会の主任司祭だったジェフ・ドリュー神父が、10代の少年たちに無理に抱きついたり、膝を足でたたいたり、身体や外見について猥褻な言葉をはくなど、不適切な行為をしている、との訴えを受け、司牧業務から外されて、10か月たって行われた。

 大司教区は同日、これについて、問題の司祭が10代の少年たちに不適切な行為を働いたことについては、2013年と2015年に報告を受けており、「一連の報告は、当時、大司教区の司祭人事委員会事務局長だったジョセフ・ビンツァー補佐司教が受け、当事者のドリュー神父と二度面接し、そうした行為は止めるとの確証を得ていた」と弁明。

 また、大司教区の機関紙The Catholic Telegraphに掲載された記事では、これらの件については、大司教区本部事務局に報告された懸念事項が直ちにバトラー郡の検事局と児童サービス局に通報されたが、検事局は犯罪行為とするに足る証拠を見つけることができなかった、としている。

 ビンツァーは昨年、ドリュー神父の問題についてシンシナティ教区を統括し、同教区の司祭人事委員長でもあるデニス・シュナー大司教に対する報告を怠ったとして、司祭人事委員会事務局長のポストから外されていた。また、前米司教協議会の青少年保護委員会の委員でもあったが、昨年8月に辞任している。

 伝えられるところによると、2013年と2015年に以前勤務していた小教区におけるドリューの行動について苦情が寄せられていたにもかかわらず、2018年には担当司祭の空席が生じた聖イグナチオ教会に移ることができた。だがその後、郡の検察局に一通の手紙が届けられ、捜査が行われた結果、ドリューの教会学校への関与を禁じ、定期的に監視担当者と面談するよう指示した。だが、そうした指示にもかかわらず、学校側には知らされることなく、ドリューは教会学校への関係を続けた、という。

 検察局の捜査で、ドリューが(注:刑法上の)いかなる罪も犯していないことが判明したとされている。も、大司教区の顧問法律事務所が雇った業者Strategic HR社とともに、大司教区として調査を行い、犯罪行為はなされていない、との判断を示しつつ、ドリューに昨年6月からカウンセリングを受けさせ、その後、教会の管理運営の仕事から外し、シンシナティ郊外の入院施設で治療を受けるよう命じていた。

 シュナー大司教は、ビンツァー補佐司教の辞任を発表した7日の声明で、彼が今後も、名誉司教として大司教区で奉仕を続けると言明。「今後の司牧については、ビンツァー司教との話し合いの後で、決められるだろう」とし、「この困難で不幸な時期ににおいて、ビンツァー司教と大司教区のすべての人々を守ってくれるように、お祈りください」と大司教区の司祭、信徒たちに求めた。

 一方、ビンツァー司教も声明を出し、「シンシナティ大司教区の人々の信頼と信仰に悪影響を及ぼしたドリュー神父の問題への、私の対応について、深くお詫びします」と謝罪。「昨年夏以来この問題を調査・検討し、先月、聖座から、この結果に同意するとの知らせを受けました。その後、私は祈り、熟考し、シンシナティ大司教区の補佐司教辞任を申し出ました… この判断は、大司教区の為になることと思います」と説明している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年5月9日