・”寄宿学校の先住民虐待事件”でカナダ司教団が被害者に30億円強の”賠償”約束

 

People gathering outside the former Kamloops Indian Residential School in British ColumbiaPeople gathering outside the former Kamloops Indian Residential School in British Columbia  (AFP or licensors)

 カナダでカトリックなどが運営していた先住民の寄宿学校における虐待、埋葬問題で、カナダのカトリック司教団は28日、先日の公式謝罪に続いて、被害者、その家族、共同体の”癒しと和解”のために3000万ドル(約30億円強)支出することを約束した。司教団の同日のプレス発表によると、資金は最長5年間にわたって支出され、カナダ全土の小教区が参加して取り組みを拡大することが奨励されている。

 先週開かれたカナダ司教協議会(CCCB)総会で会長に就任したレイモンド・ポアソン司教は声明で、「CCCB総会では、寄宿学校の運営の過ちから深い傷を負った被害者たちに対して、多くの具体的措置を取る必要があることで合意しました」と述べ、3000万ドルの支出は、 「現地の教区主導で進められる取り組み、具体的には寄宿学校の被害者と彼らが生活する共同体の癒しと生活支援のために役立てたい」と説明した。

 具体的な諸支援活動への資金配分は、先住民の組織 First Nationsや各地域の先住民たちと協議のうえ決定される。CCCB副会長の ウィリアム・マクグラタン司教は「我々カナダの司教たちはこれまで、先住民とは話しをせず、先住民については話さない、という原則をとってきてしまった。今後行われる、先住民のリーダーたちとの継続的な対話は、効果的な支援に役立つ」とし、 「被害者たちの痛みを取り除くのは容易ではないが、彼らの声に耳を傾け、関係を深め、可能な限り協力して取り組むことで、新しい希望の道を共に歩む方法を学びたい」と述べた。

カナダ政府の公の謝罪

先住民の子弟のための寄宿学校はを”欧州カナダ文化”に先住民を同化させる目的で、カナダ政府が19世紀から20世紀にかけて計画し、カトリック教会などキリスト教組織に運営を委託する形で実施されてきた。強制的な同化政策のもとで、寄宿学校に入れられた多くの子供たちが虐待に苦しみ、先住民族から強い批判が高まる中で、1996年までに、すべての学校が閉鎖され、2008年に当時の首相、スティーブン・ハーパー首相が正式に謝罪した。

だが、問題はそれでは終わらず、カナダ真実和解委員会(TRC)は、2015年に発表した調査報告書で、カナダ全土の寄宿学校に入れられた子供たちは全期間中の合計で15万人、うち少なくとも4100人が死亡、死因の大半は、虐待、過失、病気が原因、と結論付け、「文化的虐殺」と断罪。さらに今年になって、ブリティッシュコロンビア州カムループスなどでカトリック教会が運営していた複数の寄宿学校跡地から、何百もの遺体が墓石や十字架も立てられないまま埋葬されているのが見つかり、強い批判の声が上がっていた。

カナダの司教協議会は9月24日の秋の定例総会で対応を話し合い、教会が運営を受託した寄宿学校で「重大な虐待」があったことを認める声明を発表。また、教皇フランシスコが12月にバチカンで被害者たち、先住民の代表たちとお会いになることを明らかにしている。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2021年9月29日