・南部アフリカ司教団とナイジェリアの大司教が「女性、子供への性暴力とも戦おう」と呼び掛け

(2020.6.28 カトリック・あい)

 新型コロナウイルスの世界的大感染は保健・医療体制が不十分な地域の多いアフリカも襲っているが、南部アフリカ・カトリック司教協議会(SACBC=南アフリカ、ボツワナ、スワジランドの三国司教団で構成)のSACBC正義と平和協議会が26日、声明を出し、新型ウイルス大感染が始まって以来、女性差別を背景にした暴行・殺人が急増している、とし、このような悪化を食い止める努力を各国政府、民間企業、一般市民に訴えた。バチカンの準公式ニュース・メディアAgenzia Fidesが26日付けヨハネスブルグ発で伝えたもの。

 声明で南部アフリカの司教団は、政府、民間企業、市民団体が新型ウイルスと戦いにおいて、厳正な物理的、社会的な感染防止措置とともに、資金を一つに集めることができれば、「女性差別をもとにした暴行・殺人との戦いにおいて、新型ウイルスに対するのと同様の積極的かつ広範な取り組みが可能になる」と強調している。

 また声明は、「教会もその取り組みに参加せねばならず、女性と子供たちに対する男性による暴力に、神が”ノー”と言われているのだ、という明確なメッセージを徹底するよう、すべての小教区に求めた」とした。

 「神は私たちの存在の全てー心、頭、そして体ーを創造されました。虐待に遭っている体は、キリストに愛されている体です。貴重な体です。私たちが女性差別をもとにした暴力を振るうのを、神は深く悲しまれます。私たちは、暴力的でなくなることを信じています」としたうえで、カトリック教会がすべきこととして「信徒に自分がすることについて責任をもたせる必要があります。悪事を行おうとする者が、(注:そうしないために)必要な助けを得るように導かねばなりません。また、私たちは被害者を治癒するために努めねばなりません」と述べた。

 また司教、司祭、信徒としてなすべきことは「人々を教育し、女性ば別をもとにした暴力を振るわせないようにすることです」とし、「教会としての私たちには、(注:女性や子供たちへの暴力の事実に対して)否定し、黙り、抵抗し、応える用意をしなかったことで、現在の事態を招いた責任があります」と反省した。

 南アフリカでは、新型コロナウイルスの大感染が始まる前から、家庭内暴力が非常に多く発生していたが、都市封鎖がされた最初の週に、警察当局は女性差別に基づく暴力行為について8万7000件を上回る報告を受けた。少なくとも21人の女性と子供が殺害され、うち5人は6月一か月で殺されている。

 南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領は17日の会見で、これまでに新型ウイルスに9万7000人以上が感染し、死者は1930人に達している、とし、そうした中で女性差別に基づく暴力行為の多発を「二つ目の”大感染”」と呼んだ。「私たちは国として、1つではなく2つの破壊的な感染の真っただ中にいます。二つの性質と原因は非常に異なりますが、私たちが互いに世話をしあうなら、この二つは克服できるのです」と訴えた。

 さらに、「この夜、南アフリカの女性と少女たちの前で、この国で猛威を振るっている新型ウイルスと別の大感染、つまり男性による女性と子供たちへの暴力と殺害について話しをするのは、とても辛いことです。男性として、夫として、そして父親として、私は私たちの国の女性と子供たちに対して繰り広げられる酷い行為に戦慄を覚えます…」

 「新型ウイルスの大感染で心身ともに弱っている今、理解しがたいような残忍な暴力が、女性や子供たちに対して解き放たれてしまっているのです。強姦犯や殺人者が私たちの周りを歩いています。彼らは、私たちの共同体社会の中にいます。彼らは、私たちの父親、私たちの兄弟、私たちの息子、そして私たちの友人-人間の命の神聖さに全く考慮を払わない、乱暴な男たちです」と糾弾した。

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 また、有力カトリック・ニュースメディアのLa Croixが25日付けナイジェリア発で伝えたところによると、同国の首都アブジャのイグナチウス・アヤウ・カイガマ大司教がFidesに、新型コロナウイルス大感染の中で、ナイジェリアで強姦なの凶悪犯罪が増えており、こうした社会的状況を「レイプ文化」と呼んで強く批判。

 「レイプは悲惨な罪の行為であるだけでなく、極めて野蛮な犯罪的な行為でもある… 私たちはそのような凶悪犯罪の加害者が法の裁きの前に立たされるのを希望します」と訴えた。

 ナイジェリアの警察当局によると、新型ウイルス感染拡大防止のための都市封鎖が実施されて以来これまでの5か月間に717件の強姦事件を捜査した。そして、特に酷い二つの強姦事件のあと、女性たちがで、犯人逮捕、処罰など速やかな対応を当局に迫る街頭デモを行った。一件は、22歳の女子大学生が、キャンパス閉鎖のため出かけた教会で強姦されたうえに殺害された事件、もう一つは、覆面をした4人の男が、自宅にいた少女を集団で強姦した事件だ。

 女性に対する性的暴行に抗議する  Women Against Rape group in Nigeriaは議会に対する請願の中で「これらの情勢に対する残虐行為はたまたま起きたのではなく、ナイジェリアの不健全な文化的慣行の集大成」と批判した。また、Women at Risk International Foundationのラゴス支部婦女暴行危機管理センターのアニタ・ダシルバ・イブル博士は「強姦はナイジェリアの伝染病です」と米国のテレビ・ネットワークCNNの取材に語った。

 ナイジェリアの36州の知事は、女性と子供に対する強姦、女性差別に基づく暴力について「緊急事態宣言」を出した。

 国連は、ナイジェリアの少女の4人に1人が性的暴力の被害者であると試算しているが、司法当局、警察当局の不備のため数字が低くとどまっている可能性があり、実際には、これよりも高い確率で被害が起きている、と現地の関係者は見ている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年6月28日