・全米司教協議会の秋季総会始まるーシノドスを強調するバチカン大使、協議会会長は「聖体」に焦点

(2021.11 .16  Crux  National Correspondent  John Lavenburg, Inés San Martín)

 

*”聖体の復活”は”愛の文明”への入り口

 ピエール大使は、聖体拝領の復活に関して、「司教たちは互い耳を傾け、分裂を求めず、聖体の秘跡を少数の特権を持つ人々に与えられるものとして扱わないように」と”sinodarity(共働性)”の重要性を述べた。

 これに対し、ゴメス会長は、大使の出席に謝意を宣べ、米国の司教団が、2年にわたるシノドスを支持し、関心を持っていることを教皇に伝えてくれるように希望を表明したものの、”sinodarity”という言葉を避けた。むしろ強調したのは、この総会に諮る予定の「聖体に関する文書」と「聖体の復活3か年計画」で、これらは「過去二年以上にわたった新型コロナウイルスの大感染と社会不安に対する教会の使命を果たすために、極めて重要である」と述べ、参加した司教たちから大喝采を受けた。

 ゴメス会長は「聖体は、私たちが作りたいと願っている愛の文明への入り口の鍵でもある。イエスは、彼が祭壇の聖体の中に留まると約束され、また私たちの隣人、特に貧しく苦しんでいる人々の肉と血の中にもいることを約束されている」としたうえで、「人々の無関心と社会的不公正を終わらせたいと思うなら、この秘跡への認識を意識を復活させる必要がある。子宮の中にいる胎児から、息を切らす年配の親まで、私たちが出会うすべての人の中に、生ける神のイメージを見なければなりません」と訴えた。

 聖体に関する文書草案の内容について、一部の関係者の間には、「中絶権利擁護派」のカトリックの政治家が聖体拝領を受けることに影響を与える可能性がある、との見方がある。また6月から始まる3か年間計画については、ゴメス会長が「信徒を信仰の神秘の中心に深く引き込み、聖ヨハネパウロが『聖体の驚き』と呼んだものを呼び覚ます『宣教プロジェクト』」であると説明。

 このような教会の使命の遂行は、「高度に世俗化された」米国で司教たちが直面している課題であり、コロナ禍のこれまで2年間を振り返ると、米国の人々が、「神なき世界」が自分たちに幸せをもたらせないことを明確に認識するようになっていることが分かる、とし、「私たちの兄弟姉妹は神を探し求めており、真理の言葉、命の言葉を改めて聞く準備ができていると思う。宗教なしで育った人々も、初めて御言葉を聞く準備のある人々がいると思う」と強調した。

 

*分断された米国社会、教会を修復するために”シノドス的”歩みが必要ーとバチカン大使

 ”シノドスの道”の歩みについては、総会の冒頭で参加した司教たちの全面的な同意をもとに読み上げられたUSCCBの教皇フランシスコへのメッセージで、全米の多くの教区が、教皇が開始された”シノドス・プロセス”の一環として、それぞれの教区において、司祭や信徒たちの声を聴く取り組みを始めている、とすすとともに、「聖体の復活」のための複数年にわたる計画の中で、今後も進めていくことを約束。

 このテーマは、17日の総会での議論の中心課題となり、ゴメス会長とダニエル.フローレス司教(ブラウンズビル教区)が、2023年10月のシノドス通常総会に至る歩みに関してこれまで各教区が進めている取り組みについて報告した。

 ピエール大使は、冒頭のあいさつで、自身が5年前に駐米大使に就任して以来、米国、と米国の教会は、家庭の問題、性的虐待の危機、世俗化の進展、国民の二極化、教会における同様の諸問題が深刻化し、そうした中で新型コロナウイルスの大感染がもたらす危機に直面している、と指摘。「分断された教会のままでは、キリストが強くお望みになっている『一致』に、人々を導くことは決してできないでしょう」と指摘。

 教皇が始められた”シノドスの道”の歩みに触れて、「” synodality”でないもの、それは(ダンテが「神曲」で描いた地獄の(「期待を裏切る行為」など)”低い層”の一つ、”会議についての会議”です。(”シノドスの道”は)相手を打ち負かそうとする”政治的な討論”でもありません」と述べた。教皇フランシスコが言われるように、教会はまず、”耳を傾ける”教会であることから始める必要がある、とした。

 そして、”耳を傾ける行為”は、司教、修道者、一般の平信徒に対してだけでなく、神に対してもされるべきもの、であり、とくに教会が米国を分断する二極化を克服する力となるために、これまで以上に、互いの、そして人々の声に耳を傾ける必要があります」と強調した。

 また大使は、米国の教会にとって差し迫った問題の一つは、「 pro-life(人工妊娠中絶合法化への反対)です。教会は、明確に pro-life、胎児を守る立場を取らねばなりません。しかし、堕胎に対する”シノドス的な対応”は、なぜ人々は妊娠を止めたいと思うのかについてもっと知ることです」とし、具体的に、妊娠中の女性と会って、彼女たちの置かれている状況についてよく理解し、pro-lifeの団体、そしてそこで活動する人たちと会って、堕胎を希望する女性たちにとって精神的、社会的、物的に必要なのは何かを理解することが必要、と訴えた。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年11月17日