・ラ米の司教団、アマゾン森林火災の拡大阻止に国際社会の連帯と協力訴え

ブラジル・ロンドニア州・ポルトベリョでの森林火災 2019年8月22日

ブラジル・ロンドニア州・ポルトベリョでの森林火災 2019年8月22日  (ANSA)

 世界の原生林の3分の1を占め「地球の肺」とも言われるアマゾン熱帯雨林が続発する火災で過去最悪の危機に陥り、開催中の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも対応が議論されているが、カトリックもラテンアメリカ・カリブ司教協議会が23日、声明を発表、事態を憂慮するとともに、危機回避に向けた国際社会の連帯を訴えた。

 ブラジルの国立宇宙研究所の衛星が収集したデータでは、今年初めから8月にかけて見られた森林火災の数はおよそ75.000件にのぼり、2018年の同時期と比較し、85%以上増加している。ラテンアメリカ・カリブ司教協議会は声明で、現在のアマゾン地域の森林火災はもとより、アラスカ、グリーンランド、シベリア、カナリア諸島などで相次ぐ森林火災の悲劇に、重大な憂慮を表明。

 「今秋、バチカンで開かれるアマゾン地域をテーマとしたシノドスを前にした希望も、この災害によって心が曇る思いだ」としたうえで、直接被害を受けているアマゾン地域の先住民たちに深い同情と連帯を示すとともに、破壊を一刻も早く食い止めるよう、国際社会の連帯と協力を訴えた。

 今回の森林火災の拡大、長期化の背景には、アマゾン地域の開発を重視し、一方で環境保護を軽視するボルソナロ大統領の政策があり、乾期に当たり、農地や鉱山を開くため人為的に起こされた疑いがあるものも多い、との見方もある。だが、大統領は当初「私や政府への反発を招こうとするNGO関係者の仕業とみられる」と主張。火災は政府の支援打ち切りで資金難に陥るNGOによる「放火」と決め付け、予算不足などを理由に対応に後ろ向きな姿勢を見せた。しかし、かねて同氏の環境保護軽視に不信感を抱いていた欧州諸国は厳しく反応し、一気に国際問題に発展した。

 開催中の先進7カ国首脳会議G7サミット)の議長国であるフランスのマクロン大統領は、アマゾンの火災を議題にする方針を表明。欧州連合(EU)内では、6月に妥結した南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定(FTA)の批准阻止や、ブラジル産品の禁輸を求める声まで上がり始めている。

 予想外の展開に、ボルソナロ大統領は23日、火災の背景に「異常な乾燥」があると方向転換。「国民には生活向上の機会を与えなければならないが、環境への犯罪は許されない」として、軍を投入して消火と焼き畑などの防止に当たると宣言したが、広大なアマゾンで軍に消火活動をさせても、効果があるかは不明。鎮火に国際社会の人的・物的支援が求められる事態となっている。

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2019年8月25日