・ポーランド・ベラルーシ国境で難民が凍死している(Vatican News)

A woman talks to a Polish border guard on 20 August 2021A woman talks to a Polish border guard on 20 August 2021  (AFP or licensors)

(2021.9.26 Vatican News By Stefan J. Bos)

 26日の現地からの報告によると、戦乱、迫害、貧困から逃れようとする難民たちが欧州連合諸国から押し返され、ポーランドとベラルーシの国境沿いで、少なくとも5人が死亡している。

 ポーランド当局の発表によると、うち3人は同国側の国境地帯で、低体温症により亡くなっているのが見つかった。ベラルーシ国営ベルタ通信によると、4人目の人物は国境から1メートル離れた同国側で亡くなっている、という。

 両国の国境をめぐっては、「ベラルーシ政府が西側諸国による制裁への報復として、欧州連合(EU)の東側の境界に移民を送り込んでいる」との批判の声が上がっていた。

*アフガン、イラク危機で難民急増、国境で”挟みうち”

 ここ数週間、ベラルーシからポーランドとの国境を違法に越境しようとする難民の数が増加。ポーランド内務省によると、8月だけで、アフガニスタンおよびイラク出身者が多くを占める3000人が違法にポーランドへの入国を試みた。

 ポーランド軍は、ベラルーシとの国境にある有刺鉄線の近くに警備兵を配置。欧州連合の加盟国である同国の他、ラトビア、リトアニアが非常事態を宣言し、ベラルーシからの難民の急増を抑えようとしている。

 EU本部は、ベラルーシのルカシェンコ大統領が、EUを不安定化させるための”武器”として難民を利用し、経済制裁を続けるEU諸国に送り込もうしている、と非難。だが、その間にも、国境周辺で行き場を失った人々が犠牲となっている。

*「まるでサッカーのボールにされている」

 キリスト教徒弾圧が激しさを増しているスリランカから逃れてきたカトリック信徒のある男性は、ポーランド国境警備隊からの”氷のような歓迎”を受けたという。「妻と連絡を取ろうとして、電話をしてくれるように彼らに頼みましたが、拒否されました」と訴えた。

 ナイジェリア出身のケリーとオーウェンの兄弟は英国国営BBCの取材に、「これまで3週間、国境でポーランド、ベラルーシ両軍の挟みうちに遭い、動けなくなっています」とし、「彼らは私たちをサッカーのボールのように扱っている。ベラルーシの兵隊が私たちを殴り、ポーランド側に押しやろとし、ポーランドの兵隊が私たちを捕まえ、殴り、そして私たちをベラルーシ側に戻したのです。彼らは銃で私たちを脅迫し、殺されるかと思いました」。

 またカメルーン出身の21歳のメゲランは「私たちが生き残るのは難しい。私たちはベラルーシから国境の鉄条網を這いくぐり、ポーランドに入れたとしても、警察に見つかれば、ベラルーシに戻される」と訴えた。

*「難民を使った“恐喝”には屈しない」とポーランドの首相

 だが、ポーランドのモラヴィエツキ首相は、「不法入国した移民」に対する政府の方針を正当なものだとし、逆にベラルーシを非難。「ポーランド国境で組織的な暴行がされている。だが私たちは(ベラルーシの)恐喝の対象となることはできない」と言明。

*援助団体の活動も禁止、「森の中に何人死者がいるが分からない」

 氷点下の国境で立ち往生している人々の中に死者がでている、という報告を受けたポーランド当局は、彼らに食料、衣服の提供など援助活動をしてきたグループに対して、現地での活動を禁止した。人権弁護士のマルタ・ゴルチンスカ氏は 「森の中に他に何人の死者がいるのかはわかりません。だが、政治家は”政治”にしか関心が無い。でも、私たちが目の当たりにしている援助を求めている人々は”政治”とは関係がありません。国際的な保護を必要とする人々です」と訴えているが、今のところ、彼女の嘆願は答えられていないままだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2021年9月27日