2019年11月6日、フランスのルルドでの司教総会のミサに集まった司教たち(写真:GUILLAUME POLI / CIRIC)
(2020.7.9 かとりっく・あい)
フランスのカトリック教会で今起きている事態は、規模がはるかに小さいが、似たような”境遇”にある日本の教会にとっても、学ぶところが少なくないようだ。以下にLaCroixの記事を翻訳して転載する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2020. 7.6 LaCroix France Christophe Henning and Anne-Laure Juif)
*フランスで司教不在の教区が4つ、来年末までに15人が司教定年、さらに…
フランスのカトリック教会では、現在、司教のいない教区が4つあり、来年末までに、さらに15人の司教が定年を迎える。
フランス西部のバイユー・リジューの教区長、ジャン・クロード・ブーランジェ司教は3月1日に75歳の司教定年を迎え、教皇フランシスコに辞表を提出した。そして、そのわずか3か月月後、教皇は辞表を受理した。そして、教区の顧問団は、教皇が後任司教を選ぶまでの間、教区長を代行する教区管理者を選んだ。
フランスでは、さらに15人の司教が来年末までに定年を迎え、教皇は後任の司教を任命する必要に迫られることになる。また、定年に達しなくでも、健康上の理由から早期退任を希望する可能性のある司教もいる。
例えば、新型コロナウイルスに感染したミシェル・サンティエ司教(パリ郊外のクレティユ教区長)は「もはや、教区の信徒たちを導くのに必要なエネルギーがありません」と語っている。
*駐仏バチカン大使の不祥事で後任司教任命に障害
現在、フランスには、司教が空席の教区が4つある。フランスのカトリック教会で最も重要で、精神的なリーダーとも言われるリヨン大司教区の大司教任命は差し迫った課題だ。ナント、サン・クロード、そして先に述べたバイユー・リジューの各教区も司教任命が求められている。
つまり、フランスのカトリック教会の高位聖職者は大幅な入れ替えの時期を迎えており、司教としての資質が備わった人材をみつける大変な努力が求められているのだ。
フランスでは昨年11月以降、新たな司教の任命はない。後任司教を見つけるのは容易ではなく、手続きには時間がかかる。 新規の司教任命が延び延びになっている主な理由は、間違いなく、前バチカン大使のルイジ・ベンチュラ大司教を巡る問題だ。大司教は2009年からフランス駐在大使を務めていたが、複数の性的暴行の訴えを受け、昨年9月にローマに戻された。(「カトリック・あい」注:バチカン大使は、駐在先の国の司教を教皇が任命する際、候補者を教皇に推薦する実質的な権限を持つ。このため、推薦作業に空白が生じてしまったのだ。)
教皇は今年に入って1月にセレスティーノ・ミリオーレ大司教を後任の大使に任命、3月5日に着任したこの熟練のイタリア人外交官は、司教人事について作業を急いでいる。運悪く、新型コロナウイルスの大感染の中での着任となったが、新大使は「関係者たちと連絡に支障はない」と語り、司教候補選定の作業が進んでいることを強調している。
*20人もの司教候補をどうやって見つけるか?
だが、新大使は、現在空席の4教区の司教、さらに来年末まで定年を迎える15人の司教、そして辞意をもらしている少なくとも一人の司教、あわせて20人もの新司教をどこで見つけるのだろうか?
カトリック教会では伝統的に、司祭自らが司教に立候補することはない。司教任命に当たって、バチカンはまず、最初に現役の司教たちの意見を聞くー「教区あるいは修道会に、司教としての責任を果たすことのできる司祭がいるか?」。
「最良の人材」の中から適任を選ぶのを諦めることを考えねばならない司教の困惑は、容易に想像できる。
次の候補選定作業は、現地駐在のバチカン大使が、対象と考えられる司祭を呼んで話を聞くことだ。だがそれで、作業が終わるわけではない。司教候補に選ばれた”幸運の持ち主”は、推薦をいつでも断ることができる。そうしたことは、一般に考えられているよりも、もっと頻繁に起きている。
バチカン司教省長官のマルク・ウエレット枢機卿は、全世界のカトリック教会で、10人のうち3人の割合で、司教となることを断る司祭が出ている、と指摘している。負担が重すぎる、あるいはリスクが高すぎるー司教になることは、(注:司祭になることとは)まったく別の召命だ。こうしたことからも、適任の司教候補を見つけるのに何か月もかかるのは、無理の名ことだと言えるだろう。
信徒数からみて最重要のいくつかの教区は通常、すでに司教になっている人で充足されている。それは一種の「司教の椅子取りゲーム」のようなものだ。だが、このことは、それよりも小さい教区から霊的指導者を奪うことにつながる。この結果、いくつもの司教の空席を埋めるために、司祭たちをリクルートする必要が出てくる。そのような事情もあって、最近、教皇が任命した補佐司教たちの中に、ある種の”予備軍”が生まれるようになってきたー彼らは若く、教区のリーダーとなる経験を積んでいる。
*”司教若返りの波”がフランスの教会の再活性化に
確かに、フランスで新たに司教に任命される必要のある20人は、全世界に約5700人の司教がいることを考えれば、それほどの数ではないかも知れない。だが、前向きに考えれば、”牧者”の新しい波”は、フランスのカトリック教会の指導部に活力を取り戻させ、変貌させることを期待できるのだ。
フランシスコが2013年に教皇に就任して以来、フランスの99の教区のうち47の教区で司教を任命している。次の任命があれば、現教皇任命の司教がフランスの全司教の過半数を上回るー教皇フランシスコの環境回勅 Laudato sì の司教の世代が形作られることになるのだ。