・バチカン財務長官のペル枢機卿が性的暴行容疑で陪審裁判に

【2018.5.1 CJC】オーストラリア・ビクトリア州メルボルンの治安判事裁判所は5月1日、バチカン(ローマ教皇庁)財務長官のジョージ・ペル枢機卿(76)を複数の性的暴行容疑について陪審裁判にかける判断を下した。ペル枢機卿は同国カトリック教会で最高位、バチカンでも3番目の地位にある。世俗裁判所で裁かれるカトリック聖職者としても最高位。

 2017年6月、ビクトリア州警察は「複数の訴え」を元に、過去の性犯罪容疑について同枢機卿を訴追した。今年3月から始まった予備審問は4週間におよび、30人以上の目撃者が証言した。多くの審問はビクトリア州の性犯罪容疑の裁判方針に基づいて非公開で行われた。公開された審問では、1990年代にメルボルンの大聖堂で起こったとされる事例や、ビクトリア州の映画館やプールでの1970年代の事例について証言が行われた。治安判事裁判所のベリンダ・ウォリントン判事は1日、複数の容疑のうち半数について裁判を行うのに十分な証拠がそろっていると判断した。

 一方、不起訴となった案件については「陪審員が判断を下すには証拠が不十分だった」としている。同枢機卿側のロバート・リヒター弁護士は、最も「下品な」容疑が不起訴となったと説明した。リヒター弁護士は、枢機卿はその地位のために攻撃の対象となっているとした上で、疑いは「不可能」で、原告は「信頼できない」と審問で述べた。枢機卿は警察に全面的に協力している、と同弁護士は語った。

 審問で、枢機卿は顔色を一切変えず、判事に対してためらいなく大きな声で「無罪」と述べた。多数の警察官が警備する中で裁判所に出廷した枢機卿は、「公判中は出国しない」と誓約、当局にパスポートを渡し、保釈されている。バチカンのグレッグ・バーク報道官は「メルボルンの司法当局の決定を真摯に受け取っている」と述べた。これまでのところ、教皇のコメントは出ていない。

 同枢機卿の未成年者虐待容疑は数年前から噂されていた。性犯罪の隠蔽問題ではなく、自身が教会合唱隊の少年たちを礼拝後やプールで性的虐待を繰り返した犯罪容疑だ。

 枢機卿の性的虐待被害者の証言を集めた著書「ペル枢機卿の躍進と蹉跌」(仮題)の著者、ジャーナリストのルイス・ミリガン氏は「1990年代にもメルボルン大司教就任後、ペル枢機卿は2人の合唱隊の少年に性的虐待を行った」と書いている。同女史によると、2人の少年の1人は2014年、麻薬中毒で死去、2人目の犠牲者は「ティーンエイジャー時代にペル枢機卿に性的虐待を受けた」と証言したという。それに対し、枢機卿の弁護側は予審で、「ミリガン氏はその著書の中で事実を歪曲している。そしてペル枢機卿への評価を恣意的に傷つけている」と反論してきた。

 同国のカトリック聖職者による未成年者への性的虐待事件を調査した「聖職者性犯罪調査王立委員会」(2013年設置)が17年2月公表した報告書によると、同国のカトリック修道院関連施設で1950年から2009年の間に、同教会全聖職者の7%が性的虐待に関与し、ある施設ではその割合は40%にもなるとしている。□

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2018年5月7日