・ナイジェリアでは5万人以上のキリスト教徒がイスラム過激派によって殺害されている

Burnt church in Maiduguri, Nigeriaナイジェリア北東部、ボルノ州の州都マイドゥグリで過激派の焼き討ちに遭った教会(Copyright: Aid to the Church in Need)

 スーダンで、国の実権をめぐる国軍と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の激しい衝突が勃発し、民間人の死者が100人近くに上っていると伝えられ、教皇フランシスコも強い懸念をもって注視しているが、同じアフリカのナイジェリアでは2009 年の過激派イスラム組織「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来、キリスト教徒に対する激しい迫害が続き、すでに5万人を超える死者が出ている。

 ナイジェリアの自由・人権団体Intersociety が、同国におけるキリスト教徒の現状をまとめた調査報告書を発表した。「Martyred Christians in Nigeria(ナイジェリアで殉教したキリスト教徒たち)」と題するこの報告書によると、2009 年の「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来これまで14年の間に少なくとも 5万2250 人のキリスト教徒がイスラム過激派の手によって残忍に殺害されている。

 うち3万人以上がブハリ前大統領の政権下にあった 8 年間に殺害されており、治安悪化に対して十分な措置を取らなかった、と批判されている。穏健派のイスラム教徒も14年間で約3万4000人が、イスラム過激派によって殺害された。

 またこの14年間に、放火などで破壊された教会は1万8000、キリスト教系学校が2200に上っっている。

 報告書によると、今年2023年に入っても、事態が改善される見通しは立っていない。年初から4カ月足らずで、すでに1000人を超えるキリスト教徒が殺され、少なくとも 707 人が拉致されている。特に酷いのはナイジェリア北部のニジェール州で、 3 月 14 日にアドゥヌ で 100 人を超えるキリスト教徒が拉致された。 被害は、カツィナ、タラバ、エド、オグン、ナサラワ、クワラ、コギ、ボルノ、ヨベ、アダワマ バウチ、エヌグ、イモ、ケビ、ゴンベ、バイエルサ、クロス リバーなどの州に広がっている。

 ナイジェリアのキリスト教徒は、「ボコ ハラム」だけでなく、過激派グループに加わったイスラム教徒の遊牧民フラニ族によっても命を脅かされている。

 このような事態が続く中で、故郷を捨てることを余儀なくされたキリスト教徒は約 500 万人に上り、ナイジェリア国内や国境に設けられた難民 キャンプに収容されているという。

 ナイジェリアがアフリカのキリスト教徒にとって最も危険な国の一つになっていることは、迫害されるキリスト教徒の国際支援組織「Open Doors 」が1月に発表した現状報告の危険国・地域監視リストにも載せられている。報告によると、ナイジェリアは近年、全世界で迫害により命を落としたキリスト教徒総数の 89% を占めている。また教皇庁の支援組織「Aid to the Church in Need (ACN) 」の最新の年次報告によれば、2021 年 1 月から 2022 年 6 月までの1年半の間だけで 7600 人を超えるキリスト教徒が殺害された、としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年4月18日