・シノドス:小グループ別討議報告:教会、信徒と女性の役割、召命と既婚者叙階、難民、若者、環境…

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(2019.10.17 VaticanNews ) アマゾン地域シノドスは17日午後、教皇フランシスコと117人の司教が参加して13回目の全体会議を開き、言語別小グループから前日までの討議結果の報告を受けた。 今回のシノドスは、アマゾン地域と全教会への、神学的、司牧的視点から、私たちの共通の家を守り育てるという避けがたい仕事のための聖霊の賜物である。それは Kairos-時の恵み、アマゾン地域の人々と教会の和解のために好ましい機会ーこれが、17日午後にされた小グループによる報告を一致させる共通の糸だった。

*世界全体のシノドス平安

 全ての小グループは報告で、「アマゾン地域で新たなシノドスの道が育つこと」「バチカンで開かれたこの集まりが、真の外に顔を向けた教会の宣教への強い熱意を込めた新たな始まりとなること」への希望が表明された。アマゾン地域の人々の「よき暮らし」が、山上の垂訓の経験と結びつき、神の御言葉の照らされて完全に実現することも、希望された。また、さまざまなグループから、以下のような数多くの多様な具体的提案がなされた-それは、地域シノドスだけでなく、世界シノドスに関わるもの、アマゾン地域から発し、世界全体に影響を与えるものだ。

 

*貧しい人々のための、あらゆる形の暴力に反対する教会

 教会にとって欠かすことのできないことは、人々と地球の叫びを聴くこと。そして、黙っていないで、貧しい人々の側に立って、「暴力に反対」ということだ。 アマゾン地域で、その叫びはさまざまな顔を持っているー過密な刑務所での暴力、性的な虐待と搾取、原住民の人々への人権侵害、自分の土地を守ろうとする人々の殺害、麻薬取引と麻薬ビジネス、若者人口の抹殺、人身売買、女性殺害と”男”文化、大量虐殺、生物資源の略奪、民族文化の抹殺-文化と精神を殺すゆえに、これら全てと戦わねばならない。 組織的な採掘業者の違法行為と森林破壊は有罪であることが明白だ。発言者の中には、最も弱い人々の虐待と自然の破壊の関連を指摘する声もあった。緊急事態を迎えているとされた多くの事柄の中で、気候変動による危機がとくに重視された。

*人権に関する国際的な教会の”観測所”の提案

 その命で最も高い代価を払わされているのは原住民の人々だ。彼らは自分の土地で助けられも、守られもしない。こうした認識から、複数の小グループから提起されたのは、人権に関する国際的な”観測所”だ。人々と自然を守ることは教会の、司牧的な活動の”特権”と確信しているからだ。 小教区は子供たち、青少年、傷つきやすい人々の安全な空間を作らねばならない、との指摘もあった。受胎した時から自然の死に至るまで全期間にわたる生存の権利が改めて確認された。

*教会はNGOではない、必要な”教会一致”のための対話

 小グループから出された指摘の一つが、当局によってしばしば犯罪と見なされる人権保護運動家の活動に寄り添う仕事が、教会にある、だが、同時にNGOに類似した行為は避けねばならない、ということだった。NGO に類似した行為のリスクは、純粋に儀式的な役割を果たすリスクとともに、宗教的な行為や告解に霊的渇きの答えを求めようとする信徒たちを失う原因となるからだ。 複数の小グループからは、教会一致と異宗教間対話の対話推進にもっと力を入れるようにとの提案と、RELEP(ラテンアメリカ・ペンテコステ研究ネットワーク)とカトリックの神学者の間で、アマゾンとローマに二つのセンターを設けることの提案が出された。

*教会の管理・運営、一般信徒の役割、”世俗主義”の拒否

 聖職者中心主義を避けること、そのために、一般信徒の役割を高めねばならないことも、指摘された。大部分の小グループは、「ministerial Church」-一般信徒の共同責任と関与が共にある教会-の意味について理解を深めることを強調した。「スペイン語A」のグループは、「一般信徒の聖職化」を避けつつ、男女信徒が公平な形で教会の運営に関与することを提起した。

*女性の役割と助祭職

 女性の役割については、それを認識するだけでなく、責任の重い役割、指導的役割に関する提案もあり、アマゾンの教会の具体的な活動において、女性の存在の高い価値があることも指摘された。例えば、仕事場において、女性の権利を尊重する保証とあらゆる既成概念の払しょくが求められた。 また、大部分の小グループは、第二バチカン公会議の視点から、女性の助祭職について、アマゾン地域では多くの教会の活動が女性によってすでに担われていることを念頭にして、考えることに注意を払うよう、要請した。だたし、複数の発言者から、この問題は、別の司教たちの会議で扱うこと、その場合、おそらく女性たちにも投票権が与えられるであろう、との指摘もあった。

*司祭職と既婚者の叙階

 既婚者の叙階については、臨時の世界シノドスで扱うことが提案された。この問題についての見解は、グループによって異なり、聖職者の独身制は、原住民の人々の教会共同体に与えられた贈り物であり、問題にならない、との指摘があった。 「イタリア語A」のグループは、独身制の価値が弱められたり、既婚者の司祭叙階制が導入されることで、最も遠く離れた共同体での典礼奉仕で普遍教会の宣教の推進力を失うことへの懸念を示した。

 大部分の小グループー主としてスペイン語、ポルトガル語のグループーは、目指すべきは”訪問”する教会よりも”存在”する教会であり、既婚者に司祭職を与える方法を支持した。その場合、良い評判を得ていること、原住民の人々の共同体から選ばれることが好ましいこと、特定の条件を満たしていることが必要、との指摘もされた。さらに、そのようにして司祭となった人々が、「第二類,あるいは第三類」の司祭と見なされてはならず、真の司祭としての使命を果たす必要があるということも、強調された。

 アマゾン地域においては、現在、多くの人々が一年に一度か二度しか秘跡を受けることができない、という現実を忘れてはならず、聖体拝領だけでなく、神の御言葉が信徒たちの霊的成長をもたらすのだ、という認識を、現地の共同体で高めることが求められていることが、指摘された。

*召命の危機と司祭の養成

 アマゾン地域の広域性と司祭不足に対処する一環として、福音宣教の持続可能性のための地域基金の創設の可能性を検討することが提案された。

 これに加えて、「イタリア語A」グループからは「第二バチカン公会議とその後の教導職によって表明された司祭の独身制を、何らかの形で克服する提案に至った原因について、熟慮されていない」との表明があった。 同時に、司祭とキリストに倣わせることを目的として進行中の新たな教会運営のあり方に希望が表明されるとともに、北半球で司祭職を行っている宣教師たちをアマゾン地域に送ることを強く求める意見も出た。

 召命の危機に直面する中で、複数の小グループは、アマゾン地域の修道士の大幅な減少を指摘するとともに、修道生活の刷新-CLAR(ラテンアメリカ修道会連合)が注力している-が新たな情熱をもって、特に観想生活に関してなされることに希望を示した。 一般信徒の育成にも焦点が当てられ、それは欠かせないことであり、教義面だけでなく、教会の社会規範に基礎を置き、「復活された方」との出会いの経験に導くような福音的なものでなければならない、との指摘もされた。

 また、司祭の育成を、学問的だけでなく、アマゾン地域で「前を向き、苦しむ人々、刑務所や病院にいる人々とともに歩む教会」を実地に経験をさせる形で、強化することも提起された。現地で神学を学び、深めるような原住民の人々の神学校も創設も提案された。

*異文化間対話と非キリスト文化からの影響

 小グループはまた、原住民の人々の顔を持った神学と司牧について考慮を求めている。異文化間の対話と文化受容は、相反するものとして理解されるべきではない、教会の任務は、アマゾンの人々のための決定を下したり、征服者の立場をとったりすることではなく、共に歩み、対話し耳を傾ける共同体的な視点をもつことが必要、との意見も出た。

 具体的には、「アマゾンの儀式」を導入する提案が示された。これは、この地域のカトリック教会の並外れた豊かさの霊的、神学的、神学的、典礼的、そして、規律の面での成長をもたらす。小グループの報告の一つは、「アマゾンの教会の典礼では、ローマ典礼との実質的な整合性を保ちつつ、現地文化のシンボルと動作が重んじられている。教会は、信仰に影響を与えない限り、硬直的にローマ典礼を守ることを望まない」との見方を表明した。

 聖書の知識を高めること、そのために、現地語への翻訳に力を入れることも提案された。ラテンアメリカ教会協議会とリンクし、カリタスが主宰するアマゾン地域の教会ネットワークや地域各国の司教協議会とも連携する「汎アマゾン教会協議会」の創設も提案された。

 また小グループ報告の一つは、「アマゾンの宇宙観」に言及。「テクノロジーに支配され、『金銭崇拝』に傾いた西欧世界に対して、教えることが沢山ある。アマゾン地域の人々は自分たちの聖なる土地について考えている-生物群系、生物多様性、そして土地の権利の持つ精神的価値を思い返すことが奨励される必要がある。一方で、人々の持つ文化を尊重しつつ、福音と死に打ち勝ったキリストの勝利を宣言することが、アマゾン地域の人々の宇宙観を理解し、受け入れるために欠かせない要素だと考えねばならない」としている。

*宣教と殉教 

 宣教師は、植民地主義者的な考え方を捨て、民族に対する先入観を克服し、人々の慣習、儀式、信仰を尊重することが、求められている。複数の小グループは、人々が信仰を表現する仕方は正当に評価され、側に付いて促進されるべきだ、とした。また、ラテンアメリカ教会協議会、各教区の正義と平和委員会、その他の活動組織と連携して、汎アマゾン社会司牧”観測所”を創設することも提案された。

 アマゾンの教会の歴史に光と影があることを認識しなければならない、原住民の人々を「司牧ケアの受け身的な受け手」とみなす教会と、「アマゾンの人々と共に、アマゾンを救う」という原則に従って「原住民の人々を、信仰の体験の主役」として扱う教会を分けて考える必要がある、また、アマゾン地域で福音の愛のためにいのちを捧げた多くの宣教師と殉教者によって示された輝かしい模範を大事にすることも重要だ、との意見もあった。

 スペイン語のAグループは、アマゾン地域で殉教した人々の列福を推進することを提案した。

*移民・難民、若者たち、そして都市部の問題

 また、小グループの報告では、自分の意志で孤立状態にある人々を忘れてはならない、と指摘し、巡回宣教師チームが彼らに対応することが求められた。移民・難民問題に関連しては、特に若者たちの問題を考える必要があること、アマゾン地域の人口の八割が住む都市部では、文化的アイデンティティの喪失、社会的な排除、崩壊、家庭崩壊や不安定化など負の現象が起きており、都市の中心部での福音宣教が緊急の課題になっているが、一方で、都市のスラム街や都市郊外地域、農村部も忘れずに、司牧活動を現場の状況に合わせていかねばならないこと、若者司牧について早急に刷新する必要があること、教育の分野では、教育面では、教会に、複数言語による異文化間教育の推進、原住民の人々のためのアマゾンの科学と異文化間の高等教育に特化した大学ネットワークの同盟を支援することが、教会に求められていること、なども指摘された。

*被造物の保護と環境問題

 環境の分野についても、小グループで討議され、被造物は神の傑作であり、すべての被造物は関連を持っていることを再確認した。

 「真の環境的な回心は、家庭で始まり、個人的な回心を通して、イエスとの出会いを通してなされる」との確信を前提に、気温の上昇やCO2排出との戦いなど、最も実際的な問題に対処することが重要であること、私有化されたり汚染されたして共同体社会全体が生命の危険にさらされないように、人権ー落ち着いた生活と水のように貴重な財産などーを保護すること、アマゾンのビジョンに従って、自然の秘蜜と神聖さを知ることにつながる道を通し、持続可能なプロジェクトの開発と共に、医療に役立つ植物の価値も強調されるべきこと、も強調された。

 また、小グループの一つからは、農業技術の訓練校で植林プロジェクトを進めることも提案された。

 *環境的な罪と連帯の経済の推進

 以上に関連して、二つの提案がされた-教会協議会の指針に欠かすことのできない環境を取り入れること、道徳神学に告解の秘跡の手順の改定を通して”共通の家”への敬意と環境的な罪を取り入れること、である。また、討議に参加した司教の中から、人類は法の主題として自然を認識する方向に進んでおり、「功利主義的な人間中心のビジョンは時代遅れとなり、人は、人類そのものを危険にさらす無限の搾取に自然の資源をさらすことができなくなっている」と見方が表明された。

 また、「ポルトガル語A」グループからは、経済連帯のモデルの推進と私たちの”共通の家”をケアするための体制の確立が、相互関係の中で地球上の生命に関する緊急の一連の措置として求められている、との主張があった。

*アマゾン地域シノドスとコミュニケーション

 最後に、多くの小グループからの報告では、メディアについても多く触れられ、カトリックのコミュニケーション・ネットワークには、アマゾン地域を主たる関心事とし、良いニュースを広め、母なる地球に対するあらゆる種類の攻撃を非難し、真実を伝えるよう、強く求められた。また、この今回の地域シノドスの成果を広めるために、ウェブ・ラジオ、ウェブ・テレビ、ラジオ通信のためのソーシャルネットワークの活用も提案された。

「アマゾン河」の力強さを持つ今回の地域シノドスの流れは、福音宣教のの新たな道を共に歩んだ経験から、多くの賜物と会議場での司教たちの発言を反映したアイデアであふれており、必須の環境学が生まれる可能性を生んでいる、と結論した。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年10月19日