(2022.3.1 Vatican News Linda Bordoni)
カトリックの国際人道支援組織、カリタス・インターナショナルは2月28日、戦火を逃れて国外に脱出を余儀なくされているウクライナの人々を受け入れる人道回廊を隣接各国が速やかに開設するよう、同日開いたビデオ会議を通して関係国に要請した。
教皇フランシスコは27日の年間第八主日の正午の祈りで、ロシアの軍事侵略で危機にさらされているウクライナの人々に心を寄せ、「彼らのために、人道回廊を各所に開設することが急務になっています。彼らは、私たちが心から受け入れねばならない兄弟姉妹です」と訴えられた。カリタスはこの訴えに足並みをそろえたものだ。
カリタス・インターナショナルの28日のビデオ会議では、Aloysius John事務局長はじめ、ウクライナ、ポーランドのカリタス代表、カリタス・ヨーロッパ会長が出席。冒頭あいさつでJohn事務局長は「ウクライナの人々に悪夢が襲っています。女性や子供を含む人々が、全てを残して、国外への脱出を余儀なくされている」とし、カリタスが苦闘する人々の最前線にとどり続ける必要を強調。「彼らとの連帯は、希望の行為です」と述べた。
カリタス・ウクライナの代表、Tatiana Stawnychy氏は、「現在、カリタスのスタッフはウクライナ全土、攻撃を受けている多くの都市で活動中です」と報告。
首都キエフで自宅の地下壕や地下鉄の駅などに避難している人々の救援を統括しているカリタス・スペスの Sviatoslav 神父が「人々は日中の数時間だけ外に出て、食料など生活必需品を探しに出かけることが許されていますが、店には何もありません。道路も建物も車も、至るところで破壊され、保護を求めて教会に逃げ込む子供や母親もいる」と現状を説明し、「私たちは、妊娠中や出産したばかりの女性のために、5つの都市で特別な支援体制を取ろうとしています。子供たちが安全に避難できるように、他の支援組織と連絡を取り合っていますが、爆撃が続く中で、行動を起こすことは困難であり、危険です」と訴えた。
カリタス・ウクライナでは現在、クラマトルスク、ルビズネ、ザポリジヤ、ヴォルノヴァーハ、マリウポリ、ハルキウ、ドニプロ、キエフ、ジトーミル、オデッサ、イヴァーノ・フランキーウシクなどの都市はじめウクライナの数多くの地域で、これまでに約1万3000人に支援を実施。西部地域や国外に安全な避難場所を求めている数千人にも支援を実施している。
Sviatoslav神父とStawnychy氏がそろって強く懸念しているのは、現在起きている軍事攻撃が、特に子供たちに与える長期的な心理的ダメージだ。
Sviatoslav神父は「軍事攻撃は大人と子供の両方を苦しませています。私たちは、爆撃を受け、地下室に隠れた時にそれを実感しました。戦争で傷ついた心は決して癒されません。物理的な損失は、時間が立てば回復可能でも、人々が経験する痛みと恐れが癒されるのには、とても長い時間がかかります」と語り、Stawnychy氏は「恐怖の体験は、すべての人に大きなトラウマとして残る。空襲警報が鳴るたびに親も子も、必死に地下室に走っています」と述べた。
また、カリタス・ヨーロッパのMichael Landau会長は、 「ヨーロッパと世界は、ウクライナを忘れてはならない。欧州各国に避難を余儀なくされるウクライナの人々を快く迎える用意が必要です。資金援助も必要です。連帯が何よりも必要とされています」と強調した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)