・「(ロシアを批判する)”こけおどしの連中”は、過酷なシベリアの鉱山に来るべきだ」キリル総主教、強硬姿勢改めず(BW)

キリル総主教がノリリスクの鉱山を訪ねる。テレグラムから。

(左の写真は、シベリア・ノリリスクの鉱山を視察するキリル総主教=Telegram)

   先日カザフスタンで開かれた世界伝統宗教者会議を欠席し、教皇フランシスコの会見の希望にも応じなかったロシア正教の指導者、キリル総主教に、ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する姿勢を変える兆しはないようだ。

 総主教は17、18の両日、北極線よりさらに300km北に位置する世界最北の都市、シベリアのノリリスクを訪問。郊外にある鉱山を訪れる一方、18日に鉱山労働者の守護聖人である聖バルバラを称える新しい教会を祝福した。

 鉱山は世界有数のニッケルとパラジウムの産出量を誇り、ロシアにとっても戦略的に重要な鉱山だが、そこに働く8万人の労働者が困難で危険な環境にあることでも知られている。

 総主教は、教会でのミサ中の説教で、前日17日に鉱山を訪問した時の経験を振り返り、「2000メートルの深さまで降り、鉱山労働者の作業の実態を見た。本当に英雄的な仕事だ。地球内部の熱にさらされ、酸素不足を感じ、非常に厳しい環境の中で働いていることが分かった」と述べた。

 また、ロシア軍に従軍し、ウクライナで戦っている兵士たちを思い起こし、「祖国に仕える義務、そして最も重要なロシア正教の信仰を堅持する義務を果たしている者たち」を称えた。

ノリリスクの新しい聖バーバラ教会の奉献中のキリル総主教。テレグラムから。
(右の写真は、ノリリスクの新しい聖バルバラ教会を祝別するキリル総主教=Telegram)

 過酷な環境で働く人々を教会指導者が慰めることは、珍しいことではないし、軍隊の宗教的精神を称賛することはロシア正教会でも珍しいことではない。

 だが、キリル総主教は、それを超えて、次のような国際社会への脅迫めいた言葉まで発したのだ。

 「シベリアの鉱山を見て、国際関係の中で起きている私たちの国を脅す試みがいかに無駄であるかが分かった。”scarecrows(こけおどしの連中)”をここに連れてきて、鉱山労働者が働いている現場を体験させるべきだ… ロシア人を怒らせる価値があるかどうか考え直させるために」。

 このような総主教の発言に対して批判の声が上がったのに対して、ロシア教会の総主教庁は、「総主教の言葉は『ロシアを批判する人々はノリリスクに行き、ロシアの鉱山労働者の鉄の意志を見るべきだ』という意味だ」と説明した。

 だが、総主教の言葉が脅迫のように聞こえたのは確かだし、ウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、総主教が示してきた姿勢と一貫するものだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
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2022年9月23日