・「苦しむウクライナの人々のために現地に留まる」とマザーテレサの修道会シスター2人

Missionaries of Charity Sisters Rosela Nuthangi (L) and Ann Frida. Missionaries of Charity Sisters Rosela Nuthangi (L) and Ann Frida.  

 「私たちはウクライナで苦しんでいる人たちへの奉仕を、これまで通り続けます!」。ウクライナで活動しているマザー・テレサが創立した女子修道会「神の愛の宣教者会」(MC)の2人のシスターが、ロシア軍の軍事攻撃が続く中で、負傷者の看護や被災者の支援活動のため、現地に留まることを決めた。

*2人はインド東部ミゾラム州出身

 2人は、インド北東部のミゾラム州出身のシスター・ロセラ・ヌタンギとシスター・アンフリーダ。コルカタに本部を置くMCのシスター・プレマ総長は、2日に2人と連絡をとり、安全な場所に移動するように求めたが、2人は人々を助けるために、現在活動中の場所に留まることを選んだ。

 ミゾラム州は、ミゾ族をはじめとするチベットビルマ系の諸族が住んでおり、推定人口は100万人強。プロテスタント、カトリックなどキリスト教徒が9割を占めている。

 シスター・ヌタンギはミゾ族の中で2人目のMCシスター。1984年に同修道会に入り、旧ソビエト連邦(USSR)に派遣され、モスクワで10年間活動し、ロシア語を習得した後、ラトビアとエストニアで、さらに2017年にウクライナに移った。

 シスター・フリーダはミゾラム州の州都アイザウル出身。1998年に修道会に入り、数年間インドで働いた後、ウクライナの首都キエフに派遣され、これまで10年間、奉仕活動を続けている。

*彼女たちは奉献者の鏡、と大司教

 彼女たちの活動について、インド北東地域司教協議会会長のジョン・ムーラシラ大司教は「彼女たちを誇りに思っています。戦乱で荒廃したウクライナで働いている2人が、自らの生命を危険にさらし、ウクライナからの退去を勧告するインド政府の方針にも拘わらず、現地に留まっていることに、驚きません」と称賛し、「奉献者は皆、自分よりも仲間である人々の暮らしを大切にします。人々が助け、祈り、そして支援を必要としている時にその場を去るのは、臆病者のすることであり、自分たちの高貴な務めにふさわしくないと考えているのです」と語った。

 ミゾラム州のサレジオ会司祭、ロバート・フォースティン神父は、2人とここ数日、連絡を取り続けており、 「私たちは、英雄的なシスター二人の尼僧の安全を願っています。ウクライナ、ロシア、その他の世界で平和と正常が回復することを祈ります」と述べた。

 

*国外脱出で、非欧州人が差別されている

 英国の国営放送BBCによると、ウクライナには、約76,000人の留学生がおり、このうちインド人は2万人を超える。ロシアの軍事侵略が激しさを増す中で、多くが、母国へ帰ろうとしているが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナ脱出に当たって、ヨーロッパ人でない人々が差別を受ける事例が増えている。国際移住機関(IOM)も、第三国国民に対する差別、暴力、外国人排斥が起きていることを確認した。

 UNHCRのフィリッポ・グランディ氏は「このような重大な時期に、いかなる人やグループに対しても差別があってはならない」とし、アントニオ・ヴィトリノIOM長官も「人種、民族、国籍、移住状況に基づく差別は容認できない。近隣諸国はウクライナから脱出しようとするすべての人々が自国内に入ることを許可しなければならず、援助と保護が、差別的な仕方でなされていはなりません」と強調した。

*インド・ミゾラム州は、ミャンマー難民に国境を開いている

 2人のシスターの出身地であるインドのミゾラム州は、ミャンマー、バングラデシュの二国と境を接しているが、昨年2月2日のミャンマーでの軍事クーデター後、国軍の攻撃から逃れるミャンマーの人々に避難所を提供している。

 同州知事は1日、「ミャンマー国境を越えて2万4200人以上の難民が州に避難しており、州政府、NGO、教会、学生団体、村の当局から食糧、避難所、その他の支援を提供しているが、彼らが苦境に落ちないように努めています」と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年3月6日